「顔にできた赤ニキビがなかなか治らない」「皮膚科でデュアック配合ゲルを処方されたけれど、どんな薬なのかよくわからない」——そんなお悩みをお持ちの方は少なくありません。ニキビは日本人の約90%が経験するといわれる非常に身近な皮膚疾患ですが、適切な治療を受けずに放置すると、ニキビ跡(瘢痕)として残ってしまうことがあります。
デュアック配合ゲルは、2015年に厚生労働省から承認を受けた比較的新しいニキビ治療薬です。過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンという2つの有効成分を配合しており、炎症を起こしている赤ニキビや黄ニキビに対して高い効果を発揮します。日本皮膚科学会が策定する「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」においても、炎症性ニキビの治療において推奨度Aと位置づけられている信頼性の高い外用薬です。
本記事では、デュアック配合ゲルの作用機序や効果、正しい使い方、副作用への対処法、他のニキビ治療薬との違いまで、詳しく解説していきます。デュアック配合ゲルについて正しく理解し、より効果的なニキビ治療につなげていただければ幸いです。

目次
- ニキビ(尋常性ざ瘡)とは
- デュアック配合ゲルの基本情報
- デュアック配合ゲルの有効成分と作用機序
- デュアック配合ゲルの効果
- デュアック配合ゲルの正しい使い方
- デュアック配合ゲルの副作用と対処法
- デュアック配合ゲルの使用上の注意点
- デュアック配合ゲルと他のニキビ治療薬との比較
- デュアック配合ゲルに関するよくある質問
- 皮膚科受診の重要性
- まとめ
1. ニキビ(尋常性ざ瘡)とは
ニキビの定義と疫学
ニキビは医学用語では「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれ、毛穴(毛包・皮脂腺ユニット)に生じる慢性の炎症性皮膚疾患です。思春期から青年期にかけて発症することが多く、日本では約90%以上の人が一生のうちに経験するとされています。
日本皮膚科学会の調査によると、ニキビの平均発症年齢は13.3歳とされており、男女差はほとんどありません。思春期の35~90%の方にニキビが見られるという報告もあり、非常に一般的な皮膚疾患であることがわかります。
かつてニキビは「青春のシンボル」と呼ばれ、生理的な現象として軽視される傾向がありました。しかし現在では、適切な治療を行わないと瘢痕(ニキビ跡)が残る可能性があることから、早期治療の重要性が認識されるようになっています。
ニキビができるメカニズム
ニキビの発生には、主に以下の3つの要因が関与しています。
第一に、皮脂分泌の増加があります。思春期になると男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌が活発になり、皮脂腺からの皮脂分泌が増加します。この皮脂が毛穴に溜まりやすくなることがニキビの始まりです。
第二に、毛穴の詰まり(角化異常)が起こります。毛穴の出口部分で角質が厚くなり、毛穴が塞がれてしまいます。これにより、分泌された皮脂が毛穴の中に閉じ込められてしまいます。
第三に、アクネ菌の増殖があります。毛穴に溜まった皮脂を栄養源として、アクネ菌(Cutibacterium acnes、旧名Propionibacterium acnes)が増殖します。アクネ菌が産生する酵素や代謝産物が炎症を引き起こし、赤ニキビや黄ニキビへと進行していきます。
ニキビの種類
ニキビは進行度によって以下のように分類されます。
面皰(コメド)は、ニキビの初期段階です。毛穴が詰まり、皮脂が溜まった状態で、白ニキビ(閉鎖面皰)と黒ニキビ(開放面皰)があります。白ニキビは毛穴が閉じた状態で皮脂が溜まっており、黒ニキビは毛穴が開いて皮脂が酸化し黒く見える状態です。
丘疹(赤ニキビ)は、面皰に炎症が起こり、赤く腫れた状態です。アクネ菌の増殖により炎症物質が産生され、毛穴周囲の組織が赤く腫れ上がります。
膿疱(黄ニキビ)は、炎症がさらに進行し、毛穴の中に膿が溜まった状態です。中央部が黄色や白色に見え、周囲が赤く腫れています。
嚢腫・結節は、重症のニキビで、炎症が深部にまで及んだ状態です。大きく腫れ上がり、触ると硬いしこりとして触れることがあります。治癒後に瘢痕が残りやすいタイプです。
2. デュアック配合ゲルの基本情報
製品概要
デュアック配合ゲルは、サンファーマ株式会社が製造販売する尋常性ざ瘡(ニキビ)治療用の外用配合剤です。2015年7月に厚生労働省から製造販売承認を取得し、保険適用で処方される医療用医薬品として広く使用されています。
製品名の「デュアック(Duac)」は、「デュアルアクション(dual action=二重の作用)」に由来しています。これは、2つの有効成分が協力してニキビを治療するという意味が込められています。
薬価と保険適用
デュアック配合ゲルは保険診療で処方される医薬品です。薬価は1gあたり99.5円となっています。処方を受ける際は、初診料や再診料、薬剤料などを合わせて、保険証が3割負担の場合、1回の診察で1,000円~3,000円程度となることが一般的です。
入手方法
デュアック配合ゲルは医療用医薬品であるため、市販薬として薬局やドラッグストアで購入することはできません。また、インターネット通販で購入することもできません。使用するためには、皮膚科などの医療機関を受診し、医師の診察を受けた上で処方してもらう必要があります。
3. デュアック配合ゲルの有効成分と作用機序
2つの有効成分
デュアック配合ゲルには、以下の2つの有効成分が配合されています。
クリンダマイシンリン酸エステル水和物(濃度1%)は、リンコマイシン系の抗生物質です。細菌のタンパク質合成を阻害することで、アクネ菌やブドウ球菌の増殖を抑制します。抗菌作用に加えて、抗炎症作用も持ち合わせており、炎症を起こしたニキビの改善に貢献します。
過酸化ベンゾイル(濃度3%)は、海外では60年以上前からニキビ治療に使用されてきた実績のある成分です。日本では2015年にベピオゲルとして初めて承認されました。過酸化ベンゾイルには複数の作用があり、強力な抗菌作用によってアクネ菌を殺菌するほか、角質剥離作用(ピーリング作用)によって毛穴の詰まりを改善します。
作用機序の詳細
クリンダマイシンの抗菌作用について説明します。クリンダマイシンは、細菌のリボソーム50Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害します。これにより、アクネ菌が増殖するために必要なタンパク質を作れなくなり、菌の増殖が抑制されます。即効性があり、比較的速やかに効果を発揮することが特徴です。
過酸化ベンゾイルの作用機序は複数あります。まず、酸化作用による殺菌効果があります。過酸化ベンゾイルは皮膚に塗布されると分解され、フリーラジカル(活性酸素)を発生させます。このフリーラジカルがアクネ菌の細胞膜や細胞内の必須成分を酸化することで、強力な殺菌作用を発揮します。抗生物質とは異なるメカニズムで殺菌するため、耐性菌が生じにくいという大きな利点があります。
また、過酸化ベンゾイルには角質剥離作用があります。毛穴周囲の角質細胞同士の結合を弱め、古い角質が剥がれやすくなります。これにより、毛穴の詰まりが改善され、面皰(コメド)の形成を予防することができます。
配合剤としてのメリット
デュアック配合ゲルは、クリンダマイシン単剤(ダラシンTゲル)とベピオゲル(過酸化ベンゾイル単剤)を混合した製剤と考えることができます。2つの成分を1回の塗布で使用できるため、治療の手間が軽減され、塗り忘れも防ぎやすくなります。
また、抗生物質であるクリンダマイシンは長期使用により耐性菌が出現するリスクがありますが、過酸化ベンゾイルと併用することで、耐性菌の発現を抑制する効果も期待できます。これは、過酸化ベンゾイルが抗生物質とは異なる酸化作用によって殺菌するためです。
4. デュアック配合ゲルの効果
適応症
デュアック配合ゲルの適応症は「尋常性ざ瘡」です。適応菌種は、本剤に感性のブドウ球菌属およびアクネ菌とされています。
特に炎症を起こしている赤ニキビや黄ニキビに対して高い効果を発揮します。過酸化ベンゾイルの角質剥離作用により、白ニキビや黒ニキビに対しても効果が期待できます。
臨床試験による効果
臨床試験では、デュアック配合ゲルを使用することで、赤ニキビが2週間で約60%、12週間で約90%減少したという結果が報告されています。この効果の速さが、デュアック配合ゲルの大きな特徴です。
炎症性ニキビを早期に改善することは、ニキビ跡の予防にもつながります。現在の保険診療ではニキビ跡の治療は困難であり、自費診療となると患者さんの負担も大きくなります。そのため、炎症性ニキビの段階で適切に治療し、ニキビ跡を残さないことが重要です。
治療ガイドラインでの位置づけ
日本皮膚科学会が策定した「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、炎症性皮疹(赤ニキビや黄ニキビ)の治療において、クリンダマイシン1%/過酸化ベンゾイル3%配合ゲル(デュアック配合ゲル)は推奨度Aとして位置づけられています。
推奨度Aとは、「行うよう強く勧められる」という意味であり、科学的根拠に基づいた信頼性の高い治療法として認められていることを示しています。軽症から重症まで、幅広い炎症性ニキビの治療に適しています。
効果が出るまでの期間
デュアック配合ゲルの効果は、一般的に2週間から1か月程度で実感できることが多いとされています。ただし、個人差があり、ニキビの状態や皮膚の状態によって効果の現れ方は異なります。
12週間(約3か月)使用しても効果が認められない場合は、使用を中止し、医師に相談することが推奨されています。これは、効果が不十分な場合に長期間使用を続けても改善が見込めないこと、また、クリンダマイシンの長期使用による耐性菌出現のリスクを避けるためです。
5. デュアック配合ゲルの正しい使い方
基本的な使用方法
デュアック配合ゲルは、1日1回、洗顔後に患部に適量を塗布します。就寝前の使用が一般的です。
使用の手順としては、まず洗顔料を使って優しく洗顔し、清潔なタオルで水分を拭き取ります。次に、化粧水や乳液で肌を保湿します。その後、デュアック配合ゲルを適量手に取り、ニキビができている部分とその周囲に優しく塗り広げます。
塗る際のポイントは、ニキビの部分だけにポイントで塗るのではなく、ニキビができやすい部位全体に面で塗り広げることです。これは、見えているニキビだけでなく、まだ表面化していない初期段階のニキビ(マイクロコメド)にも作用させるためです。
塗布量の目安
顔全体に塗布する場合の目安は約0.6gです。これは、人差し指の先端から第一関節までチューブから絞り出した量(1FTU:フィンガーチップユニット)の約2倍に相当します。1FTUは約0.3gで、顔の半分の面積に塗布できる量です。
ただし、使い始めは刺激症状が出やすいため、最初から顔全体に塗布するのではなく、米粒大程度の少量から始めることが推奨されています。数日から1週間かけて問題がなければ、徐々に塗布量と塗布範囲を増やしていき、最終的に顔全体に塗ることを目指します。
保湿との併用
デュアック配合ゲルの特性上、皮膚が乾燥しやすくなります。そのため、薬を塗る前に化粧水や乳液で保湿をしてから使用することが推奨されています。乾燥が緩和されると、刺激症状も軽減され、治療を続けやすくなります。
保湿剤を選ぶ際は、「ノンコメドジェニックテスト済み」と記載のある製品を使用することをお勧めします。ノンコメドジェニックテスト済みとは、ニキビの初期段階であるコメドができにくい成分で作られていることが検査で確認されていることを意味します。
基礎化粧品との順番
基礎化粧品との塗布順序は、「化粧水 → ゲル状の保湿剤や美容液 → デュアック配合ゲル → 保湿クリーム」が一般的です。ただし、デュアック配合ゲルを塗る範囲や基礎化粧品のテクスチャ(ローション・乳液・クリームなど)によって順番が変わることもあります。
不明な点があれば、処方時に医師や薬剤師に確認することをお勧めします。
使用期間の目安
デュアック配合ゲルの使用期間の目安は約3か月(12週間)です。12週間で効果が認められない場合は使用を中止し、他の治療法への切り替えを検討します。
一方、効果が認められて炎症性ニキビが改善した場合も、デュアック配合ゲルに含まれるクリンダマイシンは抗生物質であるため、長期連続使用は推奨されません。炎症性皮疹が消失した場合には、ベピオゲルやディフェリンゲルなど他の外用薬に切り替えて維持療法を行うことが推奨されています。
6. デュアック配合ゲルの副作用と対処法
主な副作用
デュアック配合ゲルの使い始めの2週間から1か月程度は、副作用が出やすい時期です。これは主に、配合されている過酸化ベンゾイルの作用によるものです。
主な副作用には、皮膚の乾燥、皮むけ(鱗屑)、赤み(紅斑)、刺激感・ヒリヒリ感、かゆみなどがあります。これらの症状は、多くの場合、使い続けるうちに肌が慣れて自然に軽減していきます。
副作用の発現頻度について、添付文書では皮膚乾燥、皮膚炎、接触皮膚炎、湿疹、皮膚剥脱、紅斑、適用部位反応、適用部位疼痛、適用部位皮膚刺激、適用部位発赤などが報告されています。
副作用への対処法
副作用が現れた場合の対処法として、まず保湿を十分に行うことが重要です。低刺激性の保湿剤でしっかりと保湿してください。
ヒリヒリ感が強い場合は、塗る量を減らす、1日おきに塗るなどして、少しずつ肌を慣らしていく方法が有効です。刺激感が強くなった場合は、水で洗い流すことをお勧めします。
どうしても我慢できない場合や、症状がひどくなる場合は、自己判断で中止せず、処方した医師に相談してください。
重篤な副作用
稀ではありますが、重篤な副作用として以下のものが報告されています。
接触皮膚炎(アレルギー性のかぶれ)は、過酸化ベンゾイルに対するアレルギー反応として起こることがあります。強い発赤、腫れ、水疱などが現れた場合は、直ちに使用を中止し、医師に相談してください。
偽膜性大腸炎などの重篤な大腸炎が報告されることがあります。これはクリンダマイシン成分によるもので、外用薬でも吸収されて全身性の副作用を起こす可能性があります。激しい腹痛、血便、下痢などの症状が現れた場合は、すぐに医師に相談してください。
副作用発現時の注意点
通常の刺激症状(乾燥、軽度の赤み、軽度のヒリヒリ感など)は、使用を継続することで軽減することが多いため、すぐに中止する必要はありません。しかし、アレルギー性のかぶれ(接触皮膚炎)の場合は、使用を中止しない限り改善しません。
症状の区別が難しい場合もありますので、副作用が気になる場合は必ず医師に相談してください。
7. デュアック配合ゲルの使用上の注意点
使用できない方
以下に該当する方は、デュアック配合ゲルを使用することができません。
本剤の成分またはリンコマイシン系抗生物質に対して過敏症(アレルギー)の既往歴がある方は使用禁忌となっています。以前にダラシンTゲルなどで皮膚のかぶれを経験したことがある方は、必ず医師に伝えてください。
使用に注意が必要な方
以下に該当する方は、使用に際して注意が必要です。
抗生物質に関連した下痢または大腸炎の既往歴がある方は、偽膜性大腸炎等の重篤な大腸炎があらわれるおそれがあります。
アトピー性体質の方は、重症の即時型アレルギー反応があらわれるおそれがあります。
妊婦または妊娠している可能性のある方は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用することとされています。使用前に必ず医師に相談してください。
授乳中の方は、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討することとされています。母乳中への移行は不明です。
15歳未満の小児に対しては、低出生体重児、新生児、乳児、幼児または12歳未満の小児を対象とした臨床試験は実施されていません。使用にあたっては医師と相談してください。
併用に注意が必要な薬剤
エリスロマイシンを含む製剤との併用では、デュアック配合ゲルの効果が減少するおそれがあります。
外用スルホンアミド製剤との併用では、一過性の皮膚の変色が生じる可能性があります。
トレチノインとの併用では、過酸化ベンゾイルがトレチノインを分解するため、トレチノインの効果が減弱する可能性があります。
他のニキビ治療外用剤と併用する場合は、刺激感が増すおそれがあるため注意が必要です。
脱色・漂白作用への注意
デュアック配合ゲルに含まれる過酸化ベンゾイルには、脱色・漂白作用があります。薬剤が付着した髪の毛、衣類、寝具、タオルなどが変色する可能性があります。
塗布後は、薬剤が毛髪や着色・染色された布織物、家具、絨毯などに付着しないよう注意してください。就寝時は白いシーツや枕カバーを使用することをお勧めします。
朝の洗顔時に水だけで洗顔すると、タオルに薬剤が付着して脱色されることがあります。洗顔料を使ってしっかり洗い流すか、白いタオルを使用することをお勧めします。
日光への注意
デュアック配合ゲルの使用中は、日光への曝露を最小限にとどめることが推奨されています。日焼けランプの使用や紫外線療法は避けてください。外出時は帽子や日傘などで日焼け対策を行いましょう。
保存方法
デュアック配合ゲルは、2~8℃(冷蔵庫)での保存が必要です。これは、含まれているクリンダマイシンが室温や25℃で保存すると数か月で規格外となってしまうためです。
常温で保管すると、質感や匂い、塗り心地に変化が生じることがあります。また、成分の劣化や変質が起こり、肌トラブルを引き起こす可能性もあります。必ず冷蔵庫で保管してください。
8. デュアック配合ゲルと他のニキビ治療薬との比較
主なニキビ治療外用薬の種類
現在、日本で保険適用で使用できる主なニキビ治療外用薬には、以下のものがあります。
ディフェリンゲル(アダパレン)は、レチノイド(ビタミンA誘導体)の一種で、毛穴の角化を正常化し、面皰の形成を抑制します。2008年に日本で承認され、ニキビ治療に革新をもたらした薬剤です。主に白ニキビや黒ニキビに効果があります。
ベピオゲル(過酸化ベンゾイル)は、2015年に承認された過酸化ベンゾイル単剤の製品です。抗菌作用と角質剥離作用を持ち、白ニキビ、黒ニキビ、赤ニキビのいずれにも効果があります。
エピデュオゲル(アダパレン+過酸化ベンゾイル)は、2016年に承認された配合剤で、ディフェリンゲルとベピオゲルの成分を組み合わせたものです。面皰に対する効果が高く、炎症性ニキビにも有効です。
デュアック配合ゲル(クリンダマイシン+過酸化ベンゾイル)は、ダラシンTゲルとベピオゲルの成分を組み合わせた配合剤です。特に炎症性ニキビに対して効果が高いのが特徴です。
ダラシンTゲル(クリンダマイシン)は、抗生物質の外用薬で、アクネ菌の増殖を抑制します。赤ニキビに効果がありますが、単剤での長期使用は耐性菌のリスクがあります。
アクアチム、ゼビアックスなどの抗菌外用薬も、赤ニキビの治療に使用されます。
デュアック配合ゲルと他剤の違い
デュアック配合ゲルとベピオゲルの違いについて説明します。デュアック配合ゲルは、ベピオゲルにクリンダマイシンという抗生物質を配合したものです。抗菌作用がより強力であり、炎症性ニキビへの効果がより高いと考えられます。ただし、クリンダマイシンによる耐性菌リスクがあるため、使用期間は約3か月を目安とし、その後はベピオゲルなどに切り替えることが推奨されます。
デュアック配合ゲルとエピデュオゲルの違いについて説明します。両者は異なる成分の配合剤です。デュアック配合ゲルは過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン(抗生物質)、エピデュオゲルは過酸化ベンゾイル+アダパレン(レチノイド)という組み合わせです。
デュアック配合ゲルは抗菌作用が強く、炎症性ニキビ(赤ニキビ、黄ニキビ)に対して速やかな効果が期待できます。一方、エピデュオゲルは毛穴の角化正常化作用が強く、面皰(白ニキビ、黒ニキビ)への効果が高いです。
エピデュオゲルは抗生物質を含まないため耐性菌のリスクがなく、長期的な維持療法に適しています。どちらを選択するかは、ニキビの状態や患者さんの肌質によって医師が判断します。
保存方法の違い
過酸化ベンゾイルを含む製剤は、それぞれ保存方法が異なります。
ベピオゲルは25℃以下での保存が必要です。エピデュオゲルは室温保存が可能です。デュアック配合ゲルは2~8℃(冷蔵)での保存が必要です。
この違いは、配合されている成分の安定性の違いによるものです。デュアック配合ゲルに含まれるクリンダマイシンは室温では安定性が保てないため、冷蔵保存が必須となっています。
治療の進め方
ニキビ治療では、最初から配合剤を使用するのではなく、単剤から開始することが一般的です。これは、副作用が発現した際に、どの成分によるものかを判断しやすくするためです。
例えば、ディフェリンゲルから開始し、効果が不十分な場合にベピオゲルやデュアック配合ゲルに切り替える、あるいはディフェリンゲルとベピオゲルの併用を経てエピデュオゲルに移行する、といった段階的なアプローチが取られることがあります。
急性炎症期(赤ニキビが多い時期)には、抗菌薬を含むデュアック配合ゲルなどを使用して早期に炎症を抑え、炎症が落ち着いた維持期にはベピオゲルやディフェリンゲルなどで再発を予防する、という二段階の治療が推奨されています。

9. デュアック配合ゲルに関するよくある質問
いいえ、デュアック配合ゲルは医療用医薬品であるため、市販薬として薬局やドラッグストアで購入することはできません。また、インターネット通販で購入することもできません。使用するためには、皮膚科などの医療機関を受診し、医師の診察を受けた上で処方してもらう必要があります。
デュアック配合ゲルは、主に炎症を起こしているニキビ(赤ニキビ、黄ニキビ)を治療するための薬剤です。すでにできてしまったニキビ跡(瘢痕、色素沈着)を直接治す効果はありません。
ただし、炎症性ニキビを早期に治療することで、ニキビ跡の形成を予防する効果は期待できます。ニキビ跡を残さないためには、炎症性ニキビの段階で適切な治療を行うことが重要です。
デュアック配合ゲルを塗ると痛いのですが、大丈夫ですか?
使い始めの時期に、ヒリヒリ感や刺激感を感じることは比較的よくあります。多くの場合、使い続けるうちに肌が慣れて症状は軽減します。
ただし、痛みが強い場合は、塗布量を減らす、使用頻度を1日おきにするなどの調整を行ってください。症状が改善しない場合や、悪化する場合は、自己判断で使用を続けず、処方した医師に相談してください。
デュアック配合ゲルを塗った後、化粧はできますか?
はい、デュアック配合ゲルを塗った後に化粧をすることは可能です。ただし、薬剤が十分に乾いてから化粧をするようにしてください。また、化粧品は「ノンコメドジェニックテスト済み」のものを選ぶと、ニキビの悪化を防ぎやすくなります。
デュアック配合ゲルを冷蔵庫に入れ忘れてしまいました。使用しても大丈夫ですか?
デュアック配合ゲルは2~8℃での冷蔵保存が必要です。室温で長時間放置すると、クリンダマイシンの安定性が低下し、効果が減少する可能性があります。
短時間であれば問題ない場合もありますが、判断が難しい場合は、処方を受けた医療機関や薬局に相談することをお勧めします。
デュアック配合ゲルはどのくらいの期間使用できますか?
デュアック配合ゲルの使用期間の目安は約3か月(12週間)です。12週間使用しても効果が認められない場合は使用を中止します。また、効果が認められて炎症性ニキビが改善した場合も、耐性菌リスクを避けるため、ベピオゲルなど他の外用薬に切り替えることが推奨されます。
12週間を超えて使用する場合は、その必要性を医師が慎重に判断します。
10. 皮膚科受診の重要性
なぜ皮膚科を受診すべきなのか
ニキビは非常に一般的な皮膚疾患ですが、適切な治療を受けずに放置したり、自己流のケアを続けたりすると、以下のような問題が生じる可能性があります。
炎症の長期化と重症化により、ニキビが繰り返し発生し、治りにくくなることがあります。また、ニキビ跡として瘢痕、色素沈着、クレーターなどが残ることがあります。さらに、市販薬の不適切な使用によって症状が悪化することもあります。
調査によると、ニキビがあっても皮膚科を受診する人は約1割に過ぎないという報告があります。多くの人がニキビを「皮膚の病気」としてとらえず、放置してしまいがちです。
しかし、現在の皮膚科でのニキビ治療は大きく進歩しています。2008年にアダパレン(ディフェリンゲル)、2015年に過酸化ベンゾイル(ベピオゲル)やデュアック配合ゲルが承認され、治療の選択肢が広がりました。以前と比べて、より効果的な治療が保険診療で受けられるようになっています。
皮膚科での診察の流れ
皮膚科を受診すると、まず医師がニキビの状態を診察します。面皰(白ニキビ、黒ニキビ)が主体なのか、炎症性皮疹(赤ニキビ、黄ニキビ)が主体なのか、その両方が混在しているのかを確認します。
その上で、患者さんの症状や肌質、生活習慣などを考慮して、最適な治療法を提案します。デュアック配合ゲルが適切な場合は処方されますが、症状によっては他の外用薬が処方されることもあります。
治療効果の判定には通常約3か月程度かかります。定期的に通院し、症状の経過を医師に確認してもらいながら、必要に応じて治療法を調整していきます。
治療費の目安
保険適用でニキビ治療を受けた場合、初診料や再診料、薬剤料などを合わせて、保険証が3割負担の場合は1回の通院で1,000円~3,000円程度に収まることがほとんどです。
また、学生の場合、お住まいの自治体によっては医療費の助成が適用になることもあります。詳しくは各自治体にお問い合わせください。
11. まとめ
デュアック配合ゲルは、過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンという2つの有効成分を配合したニキビ治療薬です。炎症性ニキビ(赤ニキビ、黄ニキビ)に対して高い効果を発揮し、日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨度Aとして位置づけられています。
臨床試験では、赤ニキビが2週間で約60%、12週間で約90%減少したという結果が報告されており、炎症性ニキビを早期に改善することで、ニキビ跡の予防にも貢献します。
正しい使い方として、1日1回洗顔後に、ニキビができやすい部位全体に面で塗り広げることが重要です。使い始めは少量から開始し、徐々に塗布量を増やしていきます。使用期間の目安は約3か月であり、効果が認められた場合は他の外用薬に切り替えて維持療法を行います。
副作用として、皮膚の乾燥、赤み、刺激感などが起こることがありますが、多くの場合は使用を続けることで軽減します。保存は2~8℃の冷蔵庫で行う必要があり、また脱色作用があるため衣類などへの付着に注意が必要です。
ニキビでお悩みの方は、自己判断で市販薬を使用したり放置したりせず、皮膚科を受診して適切な治療を受けることをお勧めします。現在のニキビ治療は大きく進歩しており、デュアック配合ゲルをはじめとする効果的な治療薬が保険診療で使用できます。早期に治療を開始することで、ニキビ跡を残さず、健やかな肌を取り戻すことができます。
当院では、患者様一人ひとりの症状や肌質に合わせた最適なニキビ治療をご提案しております。ニキビでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(日本皮膚科学会)
- 尋常性痤瘡治療ガイドライン2017(日本皮膚科学会)
- デュアック配合ゲル 製品情報(サンファーマ株式会社)
- デュアック配合ゲル 添付文書情報(日経メディカル処方薬事典)
- 思春期ニキビに関する調査結果(マルホ株式会社)
- ニキビに関する意識と実態 47都道府県調査(マルホ株式会社)
- ざ瘡の治療(マルホ株式会社 医療関係者向けサイト)
- 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(Mindsガイドラインライブラリ)
本記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状や治療についてのご相談は、医療機関を受診してください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務