おしりにできた「しこり」や「できもの」に気づいたとき、多くの方が不安を感じることでしょう。実はそのしこりは、粉瘤(ふんりゅう)と呼ばれる良性の皮膚腫瘍である可能性があります。粉瘤は全身のどこにでも発生しますが、背中や顔、首などと並んで、おしり(臀部)も好発部位のひとつです。おしりにできた粉瘤は、日常的に座る動作による圧迫や下着との摩擦など、常に刺激を受けやすい環境にあるため、炎症を起こしやすく、放置すると痛みや腫れが生じることがあります。本記事では、おしりにできる粉瘤の特徴や原因、症状、そして治療法について詳しく解説します。粉瘤は自然に治ることはなく、根本的な治療には手術が必要ですが、早期に適切な治療を受けることで、傷跡を最小限に抑えながら完治を目指すことができます。おしりにしこりを見つけて不安を感じている方は、ぜひ最後までお読みください。

目次
- 📌 粉瘤とは?基本的な知識を理解しよう
- 📌 おしりに粉瘤ができる原因と特徴
- 📌 おしりの粉瘤の症状と進行
- 📌 粉瘤と間違えやすい他の皮膚疾患
- 📌 粉瘤を放置するとどうなる?リスクについて
- 📌 粉瘤の治療法と手術の種類
- 📌 手術の流れと術後のケア
- 📌 粉瘤の手術費用と保険適用について
- 📌 おしりの粉瘤で受診する際のポイント
- 📌 よくある質問
- 📌 まとめ
この記事のポイント
おしりの粉瘤は良性腫瘍だが自然治癒せず、放置すると炎症・化膿のリスクがある。根本治療は局所麻酔の日帰り手術(保険適用)のみで、早期受診が傷跡最小化につながる。
🎯 粉瘤とは?基本的な知識を理解しよう
粉瘤は皮膚の下にできる良性の腫瘍で、皮膚の角質や皮脂などの老廃物が溜まってできたものです。このセクションでは、粉瘤の基本的な仕組みと種類について詳しく解説します。
🔍 粉瘤の定義と医学的な名称
粉瘤(ふんりゅう)は、皮膚の下にできる良性の腫瘍です。医学的には「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」や「アテローム」「アテローマ」とも呼ばれます。一般の方の間では「脂肪のかたまり」と表現されることがありますが、実際には脂肪ではなく、皮膚の角質や皮脂などの老廃物が溜まってできたものです。
粉瘤は、何らかの原因で皮膚の内側に袋状の構造物(嚢腫)が形成され、その袋の中に本来であれば体外に排出されるはずの角質や皮脂が蓄積していくことで発生します。この袋状の構造物の壁は、表皮と同じ細胞でできており、内部には白っぽい粥状(おかゆ状)の内容物が詰まっています。この内容物は独特の臭いを持つことがあり、粉瘤の特徴のひとつとなっています。
⚙️ 粉瘤ができる仕組み
人間の皮膚は、表面から順に「表皮」「真皮」「皮下組織」という三層構造になっています。通常、表皮の細胞は皮膚の表面に向かって成長し、最終的に角質となって自然に剥がれ落ちていきます。これがいわゆる「垢(あか)」です。また、皮脂腺から分泌される皮脂も、毛穴を通じて皮膚表面に排出されます。
しかし、何らかの原因で表皮の一部が真皮の中に入り込んでしまうと、そこに袋状の構造物が形成されます。この袋の内側は表皮と同じ構造をしているため、角質や皮脂を作り続けますが、体外に排出する出口がないため、内部にどんどん老廃物が溜まっていきます。その結果、袋は徐々に大きくなり、皮膚の表面から触れると「しこり」として認識されるようになります。
📋 粉瘤の種類
粉瘤にはいくつかの種類があります。最も一般的なものが「表皮嚢腫」で、これが粉瘤全体の大部分を占めます。そのほかに「外毛根鞘性嚢腫(がいもうこんしょうせいのうしゅ)」があり、これは表皮嚢腫よりも硬く、主に頭部に発生しやすい特徴があります。また、「多発性毛包嚢腫(脂腺嚢腫)」は、小さな粉瘤が複数発生するタイプで、遺伝的な要因が関与していることがあります。
いずれのタイプも良性の腫瘍であり、悪性化することは極めてまれです。しかし、放置していると徐々に大きくなり、炎症を起こす可能性があるため、早めの治療が推奨されます。
Q. おしりに粉瘤ができやすい理由は何ですか?
おしり(臀部)は座る動作による常時の圧迫、下着やズボンとの摩擦、汗による蒸れやすい環境、毛包の多さといった複数の要因が重なる部位です。これらの複合的な刺激が粉瘤の発生や炎症を引き起こしやすくしており、おしりが粉瘤の好発部位となっています。
💊 おしりに粉瘤ができる原因と特徴
おしりは粉瘤ができやすい部位のひとつで、座る動作や摩擦などの特有の環境が影響しています。このセクションでは、おしりの粉瘤の原因と特徴を解説します。
🔬 粉瘤が発生する原因
粉瘤ができる正確な原因は、現在の医学でも完全には解明されていません。しかし、いくつかの要因が関連していると考えられています。
ひとつは外傷です。皮膚に傷がついた際に、表皮の細胞が真皮内に入り込むことで、袋状の構造物が形成される可能性があります。また、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が粉瘤の発生に関与しているという報告もあります。ただし、これらの原因がすべての粉瘤に当てはまるわけではなく、特に明確なきっかけがなく発生することも少なくありません。
重要な点として、粉瘤は清潔にしていないから発生するというものではありません。体質や遺伝的な要因も影響していると考えられており、同じ人に繰り返し粉瘤ができることもあります。生活習慣の改善で確実に予防できるものではないため、発生した場合は早めに専門医を受診することが大切です。
🎯 おしりが粉瘤の好発部位である理由
粉瘤は全身のあらゆる部位に発生する可能性がありますが、特にできやすい部位があります。顔、首、背中、耳の後ろ、そしておしり(臀部)が代表的な好発部位です。
おしりに粉瘤ができやすい理由としては、この部位が持つ特有の環境が挙げられます。おしりは日常生活において座る動作によって常に圧迫を受けており、下着やズボンとの摩擦も多い部位です。また、汗をかきやすく蒸れやすい環境であることも影響していると考えられます。さらに、毛包(毛穴)が多く存在する部位でもあり、これらの複合的な要因が粉瘤の発生に関与している可能性があります。
✨ おしりの粉瘤の特徴
おしりにできた粉瘤は、初期の段階では皮膚の下に小さなしこりとして触れる程度で、痛みやかゆみなどの症状はほとんどありません。しこりは弾力があり、触ると皮膚と一緒に動くのが特徴です。粉瘤の中央部には、小さな黒い点のような開口部が見えることがあり、これは皮膚表面と粉瘤の内部がつながっている部分です。
おしりにできた粉瘤は、座る動作による圧迫や下着との摩擦など、日常的に刺激を受けやすい環境にあります。そのため、他の部位にできた粉瘤と比較して、炎症を起こしやすい傾向があります。炎症を起こすと、赤く腫れ上がって強い痛みを伴うようになり、「座れない」「痛くて日常生活に支障がある」といった状態になることもあります。
📈 おしりの粉瘤の症状と進行
粉瘤は無症状から炎症まで段階的に進行します。このセクションでは、症状の変化と特徴的なサインを解説します。
🔸 初期症状(無症候性粉瘤)
粉瘤の初期段階では、炎症や感染を起こしていない「無症候性粉瘤」の状態です。この段階では、皮膚の下にコリッとした硬いしこりが触れる程度で、痛みや赤みなどの症状は見られません。しこりの大きさは数ミリ程度で、見た目にはほとんどわからないこともあります。
無症候性粉瘤は、時間の経過とともにゆっくりと大きくなっていきます。内部に角質や皮脂が蓄積し続けるため、数か月から数年かけて徐々にサイズが増大します。大きさは最終的に数センチメートルから、まれに10センチメートルを超えるまで成長することもあります。
この段階での粉瘤は、日常生活に支障をきたすことは少ないため、放置されがちです。しかし、小さいうちに治療したほうが傷跡も小さく済むため、しこりに気づいた段階で専門医を受診することが推奨されます。
🚨 炎症を起こした粉瘤(炎症性粉瘤)
無症候性の粉瘤に細菌が侵入したり、袋が破れて内容物が周囲の組織に漏れ出したりすると、炎症が起こります。これを「炎症性粉瘤」または「感染性粉瘤」と呼びます。
炎症性粉瘤になると、それまで無症状だったしこりが突然赤く腫れ上がり、強い痛みや熱感を伴うようになります。患部に触れると熱を持っていることがわかり、軽く触れただけでもズキズキと響くような痛みを感じることがあります。
さらに進行すると、粉瘤内部に膿がたまり、皮膚が破れて中身が外に出てくることもあります。おしりにできた炎症性粉瘤の場合、膿が下着に染み出したり、座る動作が激痛を伴うなど、日常生活に大きな支障をきたす状態になります。
炎症性粉瘤は、抗生物質の内服だけでは完全に治すことが難しい場合があります。これは、炎症の主な原因が細菌感染だけでなく、袋の内容物に対する異物反応であることが多いためです。そのため、炎症が起きた場合は早期に適切な処置を受けることが重要です。
炎症性粉瘤でお困りの場合は、粉瘤が感染したら抗生物質は効く?治療法や予防策を専門医が解説の記事も参考にしてください。
👃 臭いについて
粉瘤の特徴のひとつに、独特の臭いがあります。粉瘤の内部には角質や皮脂などの老廃物が蓄積しており、これらが発する臭いは不快なものです。粉瘤が大きくなったり、開口部から内容物が少しずつ漏れ出したりすると、周囲に臭いが感じられることがあります。
特におしりにできた粉瘤は、蒸れやすい環境にあるため、臭いが気になりやすい傾向があります。炎症を起こして膿が出るようになると、さらに強い臭いを発することがあり、社会生活に影響を及ぼすこともあります。
粉瘤の臭いについて詳しくは、粉瘤が臭い原因とは?独特の臭いが発生するメカニズムと治療法を医師が解説の記事をご覧ください。

Q. 粉瘤を放置するとどうなりますか?
粉瘤は自然に治ることがなく、放置すると内部に老廃物が蓄積し続けて徐々に大きくなります。特におしりの粉瘤は炎症を起こしやすく、赤く腫れて強い痛みが生じ座れなくなることもあります。また、大きくなるほど手術の傷跡も大きくなるため、早期治療が推奨されます。
🔍 粉瘤と間違えやすい他の皮膚疾患
おしりにしこりやできものができた場合、粉瘤以外の疾患である可能性もあります。正確な診断のためには専門医の診察が必要ですが、ここでは粉瘤と間違えやすい主な皮膚疾患について説明します。
🔸 脂肪腫
脂肪腫は、脂肪細胞が増殖してできる良性の腫瘍です。粉瘤と同様に皮膚の下にしこりとして触れますが、いくつかの違いがあります。脂肪腫は触ると柔らかく弾力のある感触で、皮膚との境目が比較的はっきりしており、指で押すと少し動きます。一方、粉瘤は皮膚の一部が袋を形成しているため、皮膚と一緒に動きます。
また、脂肪腫は粉瘤と異なり、中央に黒い開口部がなく、臭いもありません。脂肪腫は炎症を起こすことがほとんどないのに対し、粉瘤は炎症を起こして痛みや腫れを生じることがあります。どちらも良性腫瘍ですが、治療法が異なるため、正確な診断を受けることが重要です。
脂肪腫との違いについて詳しくは、脂肪腫と粉瘤の違いを画像診断で解説|見分け方・特徴・治療法を専門医が徹底解説の記事をご覧ください。
🦠 おでき(せつ)
おでき(せつ)は、毛包に細菌(主に黄色ブドウ球菌)が感染して起こる皮膚感染症です。炎症性粉瘤と症状が似ていることがありますが、発症の経過に違いがあります。おできは感染が起きてから比較的早い段階でしこりができて痛みが生じるのに対し、粉瘤は元々存在していたしこりが後から炎症を起こすという経過をたどります。
おできは適切な治療(抗生物質の投与など)で治癒することが多いですが、粉瘤は袋を取り除かない限り根本的な治療にはなりません。
💧 ニキビ
ニキビは顔だけでなく、おしりにもできることがあります。粉瘤の初期段階はニキビと見た目が似ていることがありますが、いくつかの違いがあります。ニキビは炎症がひどくなっても数ミリ程度の大きさにとどまりますが、粉瘤は放置すると数センチメートル以上に大きくなることがあります。また、粉瘤には中央に黒い開口部が見られることが多いのに対し、ニキビにはそのような特徴はありません。
さらに、ニキビは市販薬でも改善することがありますが、粉瘤は薬では治りません。粉瘤の場合は手術で袋を取り除く必要があります。
🔥 化膿性汗腺炎(慢性膿皮症)
化膿性汗腺炎は、アポクリン汗腺が多く存在する部位(わきの下、鼠径部、おしりなど)に発生する慢性の炎症性皮膚疾患です。毛包と周囲の組織に炎症が生じ、再発と寛解を繰り返しながら慢性的に経過します。粉瘤と同様におしりに発生することがあり、痛みを伴う結節や膿瘍を形成するため、炎症性粉瘤と間違えられることがあります。
化膿性汗腺炎は、複数の病変が癒合して瘻孔(皮膚の深部から表面につながるトンネル状の構造)を形成することがあり、進行すると治療が困難になることがあります。また、特に臀部に発生する化膿性汗腺炎(臀部慢性膿皮症)は、喫煙者に高頻度で見られ、まれに有棘細胞癌を合併することもあるため、専門医による適切な診断と治療が必要です。
🔸 毛巣洞
毛巣洞は、臀部の正中線(おしりの割れ目付近)に好発する疾患で、毛髪が皮膚内に入り込んで炎症や感染を起こすものです。長時間座っていることが多い人や、体毛が濃い人に発症しやすいとされています。粉瘤と同様に腫れや痛み、膿の排出が見られることがあり、混同されることがあります。
毛巣洞は適切な治療を行わないと再発を繰り返すことが多く、根治には外科的な手術が必要になることがあります。
💊 痔瘻
痔瘻は肛門周囲に発生する疾患で、粉瘤とは別の病気です。痔瘻は肛門の中(肛門陰窩)に原因があるのに対し、粉瘤は肛門の外側の皮膚に原因があります。症状が似ていることがあるため判別に迷うケースもありますが、適切な診察を受けることで区別することができます。
⚠️ 粉瘤を放置するとどうなる?リスクについて
粉瘤を放置すると様々なリスクが発生します。このセクションでは、放置による危険性を詳しく解説します。
❌ 自然治癒することはない
粉瘤は放置していても自然に治ることはありません。一度袋状の構造物ができてしまうと、内部に老廃物が蓄積し続けるため、時間の経過とともに徐々に大きくなっていきます。小さいうちは目立たないかもしれませんが、数年単位で放置すると数センチメートル以上に成長することも珍しくありません。
🚨 炎症のリスク
粉瘤を放置していると、いつ炎症を起こすかわかりません。特におしりにできた粉瘤は、座る動作による圧迫や摩擦、蒸れなどの影響を受けやすく、炎症を起こしやすい環境にあります。炎症を起こすと、強い痛みや腫れが生じ、日常生活に大きな支障をきたすことになります。
また、炎症が起きた状態で手術を行うと、術後の合併症リスクが高まります。そのため、炎症を起こしてしまった場合は、まず投薬や切開排膿で炎症を落ち着かせてから、後日改めて手術を行うことが一般的です。このように、炎症を起こしてしまうと治療期間が長くなり、通院回数も増えることになります。
炎症を起こした粉瘤の治療について詳しくは、粉瘤が炎症を起こしたときの対処法|放置のリスクと治療について解説の記事をご覧ください。
✂️ 傷跡が大きくなる
粉瘤は大きくなってから手術すると、それだけ切除する範囲が広くなり、傷跡も大きくなります。小さいうちに手術すれば、傷跡も最小限で済みます。特に目立つ場所にできた粉瘤の場合は、早めの治療が傷跡を目立たなくするために重要です。
🚫 自分で潰すリスク
粉瘤が気になって自分で潰そうとする方がいますが、これは絶対に避けてください。粉瘤を潰すと、外部から細菌が侵入しやすくなり、炎症や感染を起こすリスクが高まります。また、潰しても袋自体は残っているため、再び老廃物が溜まって再発します。さらに、自己処置によって袋が周囲の組織と癒着してしまうと、その後の手術で傷跡が残りやすくなることもあります。
自分で粉瘤を取ろうとする危険性について詳しくは、粉瘤は自分で取れる?潰すのは危険!正しい治療法を皮膚科医が解説の記事をご覧ください。
⚠️ 悪性化の可能性
粉瘤は良性の腫瘍であり、悪性化(がん化)することは極めてまれです。しかし、ごくまれに長期間放置した粉瘤から有棘細胞癌(皮膚がんの一種)が発生した症例が報告されています。このような悪性化のリスクは非常に低いものの、長期間放置することの危険性を示す事例といえます。
粉瘤の悪性化について詳しくは、粉瘤は悪性化する?がんとの違いや注意すべき症状を医師が解説の記事をご覧ください。
Q. 粉瘤の手術にはどんな種類がありますか?
粉瘤の手術には主に「切開法」と「くりぬき法」の2種類があります。切開法は袋を確実に摘出でき再発リスクが低い一方、傷跡がやや大きくなります。くりぬき法は直径数ミリの小さな穴から袋を取り出すため傷跡が小さく済みますが、粉瘤の状態によっては適応できない場合もあります。
🏥 粉瘤の治療法と手術の種類
粉瘤を根本的に治すには手術が必要です。このセクションでは、主要な手術方法とその特徴を詳しく解説します。
💡 根本的な治療は手術のみ
粉瘤を根本的に治すためには、手術によって袋状の構造物を完全に取り除く必要があります。薬物療法(抗生物質や外用薬など)は、炎症を抑える効果はありますが、粉瘤自体を消滅させることはできません。内容物を押し出したり、注射器で吸い出したりしても、袋が残っている限り再び老廃物が溜まって再発します。
粉瘤の手術は、ほとんどの場合が局所麻酔による日帰り手術で行われます。入院の必要はなく、手術時間も比較的短いため、忙しい方でも治療を受けやすいのが特徴です。
粉瘤の日帰り手術について詳しくは、粉瘤の日帰り手術とは?費用・流れ・術後の注意点を専門医が詳しく解説の記事をご覧ください。
✂️ 切開法(従来法)
切開法は、従来から行われている標準的な手術法です。粉瘤の上の皮膚を紡錘形(葉っぱの形)に切開し、粉瘤の袋を周囲の組織から丁寧に剥離して、内容物ごと一塊として摘出します。その後、切開した皮膚を縫合します。
切開法のメリットは、袋を確実に完全摘出できるため、再発のリスクが低いことです。また、炎症を起こしている場合や、袋が周囲の組織と癒着している場合にも対応できます。デメリットとしては、切開する範囲が粉瘤の大きさに比例して大きくなるため、傷跡が比較的大きくなることが挙げられます。また、縫合が必要なため、後日抜糸のために再度受診する必要があります。
🎯 くりぬき法(へそ抜き法)
くりぬき法は、近年広く行われるようになった手術法で、従来の切開法に比べて傷跡が小さく済むのが特徴です。円筒状の特殊なメス(パンチ)を使用して、粉瘤の中央に直径数ミリ程度の小さな穴を開けます。その穴から粉瘤の内容物を押し出し、空になった袋をピンセットなどで丁寧に摘出します。
くりぬき法のメリットは、傷跡が小さく目立ちにくいこと、手術時間が短いこと、縫合が不要な場合もあることなどです。傷跡は最終的にニキビ跡程度のへこみが残る程度とされています。
一方、デメリットとしては、粉瘤が非常に大きい場合や、皮膚が分厚い部位にできている場合、過去に炎症を繰り返して袋が周囲と癒着している場合などには適応できないことがあります。また、切開法に比べると再発のリスクがわずかに高いとされています。くりぬき法で手術を行うかどうかは、粉瘤の状態や部位を診察した上で、医師が判断します。
手術方法の違いについて詳しくは、粉瘤の切開法とくり抜き法の違いとは?治療法の特徴と選び方を解説や粉瘤のくりぬき法とは?メリット・デメリットや切開法との違いを解説の記事をご覧ください。
🔥 炎症性粉瘤の治療
粉瘤が炎症を起こしている場合の治療方針は、炎症の程度によって異なります。軽度の炎症であれば、抗生物質の内服で炎症を抑えてから手術を行うことが一般的です。しかし、膿が溜まって腫れや痛みがひどい場合は、まず切開して膿を排出する処置(切開排膿)を行います。
切開排膿を行った場合、傷が治って炎症が完全に落ち着くまで待ってから、後日改めて粉瘤を摘出する手術を行います。炎症が起きている状態で無理に摘出手術を行うと、袋が破れやすくなって完全摘出が困難になったり、術後の感染や傷の開きなどのリスクが高まったりするためです。
なお、最近では炎症性粉瘤に対しても当日手術を行う医療機関が増えています。技術や設備が整った専門医療機関であれば、炎症がある状態でも安全に手術を行えるケースがあります。炎症性粉瘤でお困りの場合は、専門の医療機関に相談してみてください。
📝 手術の流れと術後のケア
粉瘤の手術は日帰りで行われ、適切な術後ケアが重要です。このセクションでは、手術の流れとケア方法を詳しく解説します。
🔍 手術前の診察と検査
粉瘤の手術を受ける際は、まず医師による診察を受けます。視診や触診で粉瘤であることを確認し、大きさや位置、炎症の有無などを評価します。必要に応じて超音波検査(エコー)を行い、腫瘍の深さや周囲の組織との関係を確認することもあります。
診察の結果、手術が適応と判断されれば、くりぬき法と切開法のどちらが適しているかを検討します。患者様のご希望も踏まえた上で、治療方針を決定します。小さな粉瘤であれば当日そのまま手術を行えることもありますが、大きな粉瘤や準備が必要な場合は、後日改めて手術日を予約することになります。
⏰ 手術当日の流れ
手術は以下のような流れで行われます。
まず、手術部位にマーキングを行い、局所麻酔を注射します。麻酔が十分に効いていることを確認してから手術を開始するため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射自体が痛いと感じる方もいますが、希望すれば麻酔テープを事前に貼って注射の痛みを軽減することもできます。
くりぬき法の場合は、円筒状のメスで小さな穴を開け、内容物を取り出した後に袋を摘出します。切開法の場合は、皮膚を切開して粉瘤を袋ごと摘出し、縫合します。手術時間は粉瘤の大きさや状態によって異なりますが、通常は10分から30分程度、大きなものでも1時間程度で終わることがほとんどです。
摘出した組織は、病理検査に提出することがあります。これは、摘出したものが本当に粉瘤であったかを確認するためです。病理検査の結果は後日説明を受けます。
粉瘤の手術時間について詳しくは、粉瘤手術の時間はどのくらい?手術の流れや術後の過ごし方を医師が解説の記事をご覧ください。
🏠 術後のケアと注意点
手術後は、傷口に軟膏を塗ってガーゼで保護します。手術当日と翌日は、出血のリスクを避けるために入浴と飲酒は控えてください。翌日以降はシャワーを浴びることができますが、傷口を強くこすらないように注意し、石鹸で優しく洗浄してください。湯船に浸かることは、傷の状態によって医師の指示に従ってください。
くりぬき法で手術を行った場合は、傷口を縫合しないことが多いため、傷がふさがるまでに少し時間がかかることがあります。毎日軟膏を塗ってガーゼで保護するケアを続けてください。切開法で縫合した場合は、約1週間後に抜糸のために再度受診する必要があります。
おしりの粉瘤の場合、座る動作で傷口に負担がかかることがあります。手術後数日間は、できるだけ傷口への圧迫を避けるように心がけてください。円座クッションなどを使用すると、座るときの負担を軽減できます。
術後ケアについて詳しくは、粉瘤手術後のケア方法を医師が解説|傷跡を残さないためのポイントの記事をご覧ください。
Q. 粉瘤の手術費用と保険適用はどうなりますか?
粉瘤の診察・手術・病理検査はすべて健康保険が適用されます。おしりは「非露出部」に分類され、3割負担の場合、直径3センチメートル未満で約4,000〜5,000円、3〜6センチメートル未満で約10,000〜11,000円が目安です。初診料や病理検査費用が別途加算されます。
💰 粉瘤の手術費用と保険適用について
粉瘤の治療はすべて健康保険が適用されます。このセクションでは、費用の詳細と保険について解説します。
✅ 健康保険が適用される
粉瘤の治療は、診察、検査、手術、病理検査など、すべての医療行為が健康保険の適用対象です。そのため、患者様の自己負担は、保険の負担割合(1割から3割)に応じた金額となります。
📊 手術費用の目安
粉瘤の手術費用は、粉瘤の大きさと発生部位によって異なります。保険診療では、体の部位が「露出部」と「非露出部」に分類されており、それぞれ診療報酬点数が異なります。露出部とは、半袖・半ズボンで隠れない部分(頭、顔、首、肘から先、膝から下)を指し、非露出部はそれ以外の部分(胸部、腹部、背中、上腕部、大腿部、臀部など)を指します。おしりは非露出部に該当します。
3割負担の場合の手術費用の目安は以下のとおりです(あくまで目安であり、実際の費用は医療機関や粉瘤の状態によって異なります)。
非露出部(おしりなど)の場合、直径3センチメートル未満で約4,000円から5,000円程度、直径3センチメートル以上6センチメートル未満で約10,000円から11,000円程度、直径6センチメートル以上で約13,000円から14,000円程度となります。
このほかに、初診料・再診料、処方料、病理検査費用(約1,000円から3,000円程度)などが別途かかります。
🏦 民間の医療保険や生命保険について
民間の医療保険や生命保険に加入している場合、契約内容によっては粉瘤の手術に対して手術給付金が支払われることがあります。粉瘤の手術は「皮膚・皮下腫瘍摘出術」という術式名で行われることが多く、多くの保険で給付の対象となっています。
ただし、保険商品によっては支払い対象外となるケースもあります。例えば、「皮膚切開術」で処置が行われた場合(主に切開排膿のみの処置の場合)は対象外となることがあります。給付の可否や金額は契約内容によって異なるため、事前に加入している保険会社に確認することをおすすめします。給付を受ける場合は、診断書の提出が必要になることがあるため、手術を受ける際に医師にその旨を伝えてください。
🏥 おしりの粉瘤で受診する際のポイント
おしりの粉瘤は受診をためらいがちですが、適切な医療機関選びが重要です。このセクションでは、受診のポイントを解説します。
🏥 何科を受診すべきか
おしりにしこりができた場合、皮膚科または形成外科を受診するのが一般的です。皮膚科では粉瘤の診断や治療を幅広く行っており、形成外科では傷跡を目立たなくすることに重点を置いた手術を得意としています。
最近では粉瘤の治療を専門的に行うクリニックも増えています。手術症例数が多い医療機関を選ぶことで、袋の取り残しによる再発のリスクを減らすことができます。また、くりぬき法での手術を希望する場合は、その術式に対応しているかどうかを事前に確認するとよいでしょう。
😳 恥ずかしさへの対応
おしりにできた粉瘤は、その部位の特性上、受診することに恥ずかしさを感じる方も少なくありません。しかし、粉瘤は非常に一般的な皮膚疾患であり、医療従事者にとっては日常的に診察・治療を行っている疾患です。おしりの粉瘤で受診される患者様は決して珍しくありませんので、安心して受診してください。
診察時には、患部のみを露出して診察を行い、プライバシーに配慮した対応をしています。恥ずかしさから受診をためらっている間に、粉瘤が大きくなったり炎症を起こしたりすると、治療が大変になることがあります。できるだけ早めの受診をおすすめします。
⏰ 受診のタイミング
おしりにしこりを見つけたら、できるだけ早く受診することをおすすめします。小さいうちに治療すれば、手術も簡単で傷跡も小さく済みます。特に以下のような場合は、早めの受診が必要です。
📌 しこりが徐々に大きくなっている場合
📌 しこりが赤く腫れてきた場合
📌 痛みが出てきた場合
📌 膿や分泌物が出てきた場合
📌 臭いが気になる場合
などは、早急に医療機関を受診してください。炎症を起こしている場合は、症状が悪化する前に適切な治療を受けることが重要です。

👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
当院では、おしりの粉瘤で受診される患者様が非常に多く、恥ずかしがって受診をためらっている方も少なくありません。しかし、おしりは座る動作や摩擦により炎症を起こしやすい部位のため、早期の治療が特に重要です。最近は若い方の受診も約30%増加しており、デスクワークの増加や在宅勤務の影響が考えられます。小さなうちに治療すれば傷跡も目立ちませんので、躊躇せずに早めの相談をお勧めしています。
❓ よくある質問
粉瘤を自分で治すことはできません。粉瘤は皮膚の下に袋状の構造物ができており、この袋を手術で取り除かない限り根本的な治療にはなりません。自分で潰そうとすると、細菌感染を起こして炎症が悪化したり、袋が周囲と癒着して後の手術が困難になったりするリスクがあります。粉瘤に気づいたら、自己処置せずに専門の医療機関を受診してください。
粉瘤の手術は局所麻酔を行ってから実施するため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射自体に痛みを感じることがありますが、事前に麻酔テープを貼ることで注射の痛みを軽減することもできます。術後は麻酔が切れると多少の痛みを感じることがありますが、痛み止めの処方でコントロールできる程度です。
粉瘤の手術は日帰りで行われ、手術時間も短いため、翌日から通常の仕事や日常生活に復帰できることがほとんどです。ただし、おしりの粉瘤の場合、座る動作で傷口に負担がかかることがあるため、デスクワークの方は円座クッションを使用するなどの工夫が必要かもしれません。激しい運動や重いものを持つ作業は、傷の状態によって数日から1週間程度控えていただくことがあります。
粉瘤の手術で袋を完全に摘出できれば、同じ場所に再発することはほとんどありません。しかし、袋の取り残しがあると再発する可能性があります。また、体質的に粉瘤ができやすい方の場合、同じ場所ではなく別の場所に新たな粉瘤ができることがあります。再発のリスクを減らすためには、経験豊富な医師による確実な手術を受けることが重要です。
粉瘤が複数ある場合でも、同時に手術を行うことは可能です。ただし、粉瘤の数や大きさ、位置によっては複数回に分けて手術を行うこともあります。同時に手術できるかどうかは、診察の上で医師が判断します。
おしりの粉瘤の診察は、プライバシーに十分配慮して行います。患部のみを必要最小限露出していただき、診察・手術を行います。おしりの粉瘤で受診される方は非常に多く、医療従事者にとっては日常的な診療ですので、恥ずかしがる必要はありません。気になる症状があれば、早めに受診することをおすすめします。
📝 まとめ
おしりにできる粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に角質や皮脂が溜まって発生する良性の腫瘍です。おしりは座る動作による圧迫や摩擦、蒸れなど、粉瘤が悪化しやすい環境にあるため、放置すると炎症を起こして強い痛みや腫れを生じることがあります。
粉瘤は自然に治ることはなく、薬でも完治しません。根本的な治療には手術で袋を取り除く必要があります。手術は局所麻酔による日帰り手術で行われ、健康保険が適用されるため、経済的な負担も大きくありません。小さいうちに治療すれば、手術も簡単で傷跡も最小限で済みます。
おしりにしこりを見つけた場合は、恥ずかしがらずに早めに皮膚科や形成外科を受診することをおすすめします。特に、しこりが大きくなってきた、赤く腫れてきた、痛みがある、膿が出るといった症状がある場合は、早急に医療機関を受診してください。
アイシークリニック新宿院では、粉瘤の診断から手術まで、患者様一人ひとりの症状に合わせた適切な治療を提供しております。おしりの粉瘤でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 兵庫医科大学病院 みんなの医療ガイド「粉瘤(ふんりゅう)」
- MSDマニュアル家庭版「皮膚嚢腫」
- 順天堂大学医学部附属浦安病院 形成外科「皮膚がん・軟部肉腫・皮膚腫瘍・皮膚外科」
- 横浜市立大学附属病院 形成外科「皮膚軟部腫瘍・皮膚がんの外科的治療」
- 日本病理学会 病理コア画像「表皮嚢腫」
- MSDマニュアル家庭版「化膿性汗腺炎」
- 日本医科大学武蔵小杉病院 皮膚科「化膿性汗腺炎」
- 日本大学医学部附属板橋病院 医療情報検索「化膿性汗腺炎」
※本記事の内容は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を行うものではありません。症状がある場合は、医療機関を受診して専門医の診察を受けてください。
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
