「皮膚科でベピオゲルを処方されたけれど、本当に効果があるの?」「副作用が心配で使い続けていいか不安」。ニキビ治療を始めたばかりの方から、こうしたご相談をいただくことが少なくありません。ベピオゲルは、日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡治療ガイドライン」において最も高い推奨度を得ているニキビ治療薬のひとつです。有効成分である過酸化ベンゾイルは、欧米では50年以上にわたって使用されてきた実績があり、2015年に日本でも保険適用となりました。
本記事では、ベピオゲルの効果や作用機序、正しい使い方、気になる副作用とその対処法、さらには他のニキビ治療薬との違いまで、医学的なエビデンスに基づいて詳しく解説します。ニキビ治療に取り組む皆さまが、安心して治療を続けられるよう、必要な情報をわかりやすくお伝えしていきます。

目次
- ベピオゲルとは?基本情報と特徴
- ニキビができるメカニズムを理解しよう
- ベピオゲルの作用機序|2つの効果でニキビを改善
- ベピオゲルが効果を発揮するニキビの種類
- 効果が出るまでの期間|臨床試験データから見る実績
- ベピオゲルの正しい使い方
- 副作用と対処法|使い始めの刺激症状を乗り越えるコツ
- 他のニキビ治療薬との比較
- ベピオゲルを使用する際の注意点
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
1. ベピオゲルとは?基本情報と特徴
ベピオゲルは、有効成分として過酸化ベンゾイル(Benzoyl Peroxide、略称BPO)を2.5%含有する外用ニキビ治療薬です。白色のゲル状製剤で、マルホ株式会社が製造販売しています。2014年12月に厚生労働省から製造販売承認を取得し、2015年4月から保険適用で処方可能となりました。
過酸化ベンゾイルは、欧米ではニキビ治療のスタンダードとして50年以上の使用実績があります。日本では長らく承認されていませんでしたが、ようやく導入されたことで、日本のニキビ治療は大きく進歩しました。日本皮膚科学会が策定した「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」および最新の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、ベピオゲルは炎症性皮疹(赤ニキビ)と面皰(白ニキビ・黒ニキビ)の両方に対して「推奨度A」という最高ランクの評価を受けています。
ベピオゲルの最大の特徴は、抗菌作用とピーリング作用という2つの作用を併せ持っている点です。これにより、ニキビの原因となるアクネ菌を殺菌しながら、毛穴の詰まりを改善することができます。また、一般的な抗生物質とは異なり、長期間使用しても耐性菌が発生しないという大きなメリットがあります。
薬価は87.1円/gで、1本15gのチューブで約1,306円です。3割負担の場合、薬剤費のみで約392円となります(別途、診察料等がかかります)。
2023年には、同じ有効成分・濃度でローションタイプの「ベピオローション」も発売されました。ゲルタイプよりもしっとりとした使用感で塗り広げやすく、乾燥しやすい方や敏感肌の方に適しています。
2. ニキビができるメカニズムを理解しよう
ベピオゲルの効果を正しく理解するために、まずニキビ(医学名:尋常性痤瘡)ができるメカニズムを確認しておきましょう。日本では約90%の人がニキビを経験するといわれており、平均発症年齢は13.3歳と思春期に多く見られますが、大人になってからも悩まされる方は少なくありません。
ニキビの発生には、主に以下の4つの要因が関係しています。
まず、ホルモンバランスの変化やストレス、生活習慣の乱れなどにより、皮脂の分泌が過剰になります。次に、肌のターンオーバー(新陳代謝)が乱れることで、毛穴の出口部分の角質が厚くなり、毛穴が塞がれてしまいます。この状態を「マイクロコメド(微小面皰)」と呼び、目に見えないニキビの始まりです。
毛穴が塞がれると、皮脂が毛穴の中に溜まっていきます。この段階が「白ニキビ(閉鎖面皰)」です。さらに、毛穴の入り口が開いて皮脂が酸化すると「黒ニキビ(開放面皰)」となります。白ニキビと黒ニキビを合わせて「面皰(めんぽう)」または「コメド」と呼び、炎症を伴わない非炎症性皮疹に分類されます。
毛穴の中に溜まった皮脂は、皮膚の常在菌であるアクネ菌(Cutibacterium acnes)の栄養源となります。アクネ菌が増殖すると、炎症を引き起こす物質が産生され、免疫細胞が反応して炎症が起こります。これが「赤ニキビ(丘疹・紅色丘疹)」です。さらに炎症が進行すると、膿が溜まった「黄ニキビ(膿疱)」となります。赤ニキビと黄ニキビは炎症性皮疹に分類されます。
このように、ニキビは「毛穴の詰まり」と「アクネ菌の増殖」という2つの要因が重なることで発生・悪化します。効果的なニキビ治療には、この両方にアプローチすることが重要であり、ベピオゲルはまさにその両方に作用する治療薬なのです。
3. ベピオゲルの作用機序|2つの効果でニキビを改善
ベピオゲルに含まれる過酸化ベンゾイルは、2つの主要な作用によってニキビを改善します。
抗菌作用
過酸化ベンゾイルは皮膚に塗布されると、分解されて活性酸素の一種である「フリーラジカル」を生成します。このフリーラジカルは、ニキビの原因菌であるアクネ菌(Cutibacterium acnes)や黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞膜やDNAを直接攻撃し、殺菌作用を発揮します。
一般的な抗生物質(抗菌薬)は、細菌の特定の機能(細胞壁の合成やタンパク質合成など)を標的として阻害するため、長期間使用すると細菌がその薬に対して抵抗力を持つ「薬剤耐性菌」が出現するリスクがあります。実際に、日本でも抗菌薬を長期使用したニキビ患者において、耐性菌の検出率が増加傾向にあることが報告されています。
しかし、過酸化ベンゾイルはフリーラジカルによって細菌の複数の器官を物理的に破壊するため、細菌が耐性を獲得することが非常に困難です。欧米で50年以上使用されてきた歴史の中で、過酸化ベンゾイルに対する薬剤耐性菌の報告は確認されていません。これは長期治療が必要なニキビ治療において、非常に大きなメリットといえます。
角層剥離作用(ピーリング作用)
過酸化ベンゾイルには、角質を作る細胞(角化細胞)同士の結合を緩める作用があります。これにより、皮膚表面の古い角質が剥がれやすくなり、毛穴の出口部分に溜まった角質の肥厚を改善します。
この角層剥離作用によって、毛穴の詰まりが解消され、皮脂の排出がスムーズになります。また、すでにできている白ニキビや黒ニキビを改善するだけでなく、目に見えないマイクロコメドの段階からニキビの発生を予防する効果も期待できます。
このように、ベピオゲルは「アクネ菌を殺菌する」と「毛穴の詰まりを改善する」という2つの作用が相乗効果を発揮することで、既存のニキビの治療と新しいニキビの予防を同時に行うことができるのです。
4. ベピオゲルが効果を発揮するニキビの種類
ベピオゲルは、ニキビの進行段階を問わず幅広い種類のニキビに効果を発揮します。具体的には、以下のニキビに有効です。
白ニキビ(閉鎖面皰・コメド)
毛穴に皮脂が詰まった初期段階のニキビです。肌表面に白いポツポツとした小さな盛り上がりとして見えます。ベピオゲルの角層剥離作用により、毛穴の詰まりを改善し、白ニキビの解消と新たな発生の予防が期待できます。
黒ニキビ(開放面皰)
白ニキビの毛穴の入り口が開き、中の皮脂が空気に触れて酸化することで黒く見えるニキビです。いわゆる「毛穴の黒ずみ」の原因のひとつでもあります。ベピオゲルは白ニキビと同様に、角層剥離作用で毛穴の詰まりを改善します。
赤ニキビ(炎症性丘疹)
アクネ菌の増殖により炎症が起き、赤く腫れた状態のニキビです。ベピオゲルの抗菌作用がアクネ菌を殺菌し、炎症の原因を取り除くことで改善を促します。
黄ニキビ(膿疱)
赤ニキビがさらに悪化し、膿が溜まって黄色く見える状態のニキビです。ベピオゲルの抗菌作用は黄ニキビにも有効ですが、重症の場合は抗菌薬の内服を併用することもあります。
マイクロコメド(微小面皰)
目に見えないレベルの毛穴の詰まりで、将来的にニキビへと発展する可能性がある状態です。ベピオゲルを継続して使用することで、このマイクロコメドの段階からニキビの発生を予防し、ニキビができにくい肌質への改善が期待できます。
このように、ベピオゲルは炎症を起こす前の白ニキビ・黒ニキビから、炎症を起こした赤ニキビ・黄ニキビまで、幅広いステージのニキビに対応できる治療薬です。これが、日本皮膚科学会のガイドラインで高い推奨度を得ている理由のひとつです。
また、ベピオゲルは顔だけでなく、胸や背中などの体にできるニキビにも使用することができます。体のニキビは顔よりも治りにくい傾向がありますが、同様の効果が期待できます。
5. 効果が出るまでの期間|臨床試験データから見る実績
「ベピオゲルを使い始めたけれど、いつ頃から効果が出るの?」という疑問を持つ方は多いでしょう。ここでは、国内で実施された臨床試験のデータに基づいて、効果発現の目安をお伝えします。
臨床試験の結果
マルホ株式会社が実施した国内第II/III相臨床試験では、ベピオゲル2.5%を12週間使用した結果、以下のような効果が確認されました。
炎症性皮疹(赤ニキビ・黄ニキビ)の減少率(中央値)は、2週間後に36.4%、4週間後に48.1%、8週間後に60.4%、12週間後には73.3%に達しました。また、非炎症性皮疹(白ニキビ・黒ニキビ)の減少率(中央値)は、2週間後に17.4%、4週間後に27.2%、8週間後に35.5%、12週間後に57.1%でした。
総皮疹数の減少率(中央値)は、2週間後に22.6%、4週間後に33.8%、8週間後に43.8%、12週間後に62.5%という結果でした。これらの結果は、プラセボ(有効成分を含まない偽薬)と比較して統計学的に有意な差があることが確認されています。
さらに、52週間(約1年間)の長期投与試験では、総皮疹数の減少率が12週間後の62.1%から継続的に維持され、52週間後には75.3%に達しました。このことから、ベピオゲルは長期間使用することで、より高い効果が期待できることがわかります。
効果を実感できる時期の目安
臨床試験の結果と実際の診療経験を踏まえると、ベピオゲルの効果は以下のような経過で実感できることが多いです。
使用開始から2週間程度で、一部の方は効果を実感し始めます。この時期は副作用(赤み、乾燥など)も出やすい時期であるため、効果より先に不快な症状が気になる方も少なくありません。
2〜3週間後には、毛穴の詰まりの改善や炎症の軽減が見られるようになります。新しいニキビができにくくなったと感じる方もいます。
1〜3ヶ月後には、多くの方がニキビの明らかな減少を実感できます。臨床試験では3ヶ月時点でニキビが約62%減少したというデータがあり、これが効果判定の目安となる期間です。
ただし、効果の現れ方には個人差があります。ニキビの重症度や肌質、生活習慣などによって異なりますので、効果がないと感じても自己判断で使用を中断せず、最低でも3ヶ月は継続することが推奨されています。
6. ベピオゲルの正しい使い方
ベピオゲルの効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方を理解することが大切です。ここでは、基本的な使用方法と塗り方のポイントを解説します。
基本的な使用方法
ベピオゲルは1日1回、洗顔後に使用します。紫外線に当たると乾燥や刺激感が強まる可能性があるため、夜寝る前に塗ることをおすすめします。
使用の流れは以下の通りです。まず、ぬるま湯で優しく洗顔し、清潔なタオルで水分を軽くふき取ります。次に、化粧水や乳液でしっかりと保湿を行います。肌が完全に乾いてから、ベピオゲルを塗布します。洗顔後すぐに塗るよりも、15〜30分程度時間を置いてから塗ると刺激を抑えやすくなります。塗り終わったら、手をきれいに洗いましょう。
使用量の目安
ベピオゲルを顔全体に塗る場合の1回使用量は約0.5gです。これは「1FTU(フィンガーチップユニット)」と呼ばれ、人差し指の先端から第一関節までの長さにチューブから絞り出した量に相当します。1本15gのチューブで約1ヶ月分の使用量となります。
ベピオローションの場合は、手のひらに出した際に1円玉大(直径約2cm)の量が顔全体に塗る目安です。
塗り方のポイント
指に取ったベピオゲルを、左額、右額、左頬、右頬、鼻、あごの6箇所に置き、そこから顔全体にまんべんなく広げるように塗ります。こすらず、優しく塗り広げることが大切です。
塗る際は、眼や眼の周り、唇、鼻の粘膜、傷口は避けてください。万が一眼に入った場合は、すぐに水で洗い流してください。
ベピオゲルは「ニキビができている部分だけに塗ればよい」と思われがちですが、実際にはニキビができやすい部分全体に面で塗り広げることが推奨されています。目に見えないマイクロコメドの段階からニキビの発生を予防するためです。
使い始めの注意点
ベピオゲルは使い始めに刺激症状が出やすいため、最初は少量・狭い範囲から始めることをおすすめします。具体的には、米粒大(約1/8FTU)の量を、おでこ、頬、あごのうち1箇所から始めます。数日間様子を見て問題がなければ、あずき大(約1/4FTU)に増やし、塗る範囲も徐々に広げていきます。最終的に1FTUの量を顔全体に塗ることを目指しましょう。
まずは3ヶ月間の使用を目標に続けてみてください。症状が改善した後も、ニキビの再発を防ぐために継続使用が推奨されます。
7. 副作用と対処法|使い始めの刺激症状を乗り越えるコツ
ベピオゲルは効果的なニキビ治療薬ですが、使用初期に副作用が現れることがあります。副作用について正しく理解し、適切に対処することで、治療を継続しやすくなります。
主な副作用
国内臨床試験では、ベピオゲル2.5%を使用した方の約37〜49%に何らかの副作用が認められました。主な副作用は以下の通りです。
皮膚剥脱(鱗屑・落屑)は約15.3%の方に見られました。これは皮膚の表面が薄く剥がれる症状で、ベピオゲルの角層剥離作用によるものです。紅斑(赤み)は約12.3%の方に見られ、塗布部位が赤くなる症状です。皮膚刺激感は約11.4%の方に見られ、ヒリヒリ感やピリピリ感として感じられます。皮膚乾燥も多くの方に見られる症状で、カサつきやつっぱり感が生じます。
これらの症状は薬の作用によって起こる正常な反応であり、多くの場合は一時的なものです。臨床試験のデータでは、刺激感の発現頻度は使用開始1ヶ月目で約30%ですが、2ヶ月目以降は約10%に減少することが確認されています。
注意が必要な副作用
まれに(100人中3人程度の頻度で)、アレルギー性の接触皮膚炎(かぶれ)が起こることがあります。以下の症状が現れた場合は、すぐに使用を中止して医師に相談してください。
強い赤みが広範囲に広がる場合、激しいかゆみが続く場合、ジュクジュクとした湿疹やひどい腫れがある場合、水ぶくれができた場合、そして使用を続けても症状が改善せず悪化し続ける場合は注意が必要です。
通常の刺激症状は使い続けるうちに軽減していきますが、アレルギー反応は使用を中止しない限り改善しません。両者を見分けることが重要です。
副作用を軽減するための対処法
副作用を軽減しながら治療を続けるために、以下の対処法が有効です。
しっかりと保湿を行いましょう。ベピオゲルを塗る前に化粧水や乳液で肌を整え、必要に応じて保湿剤を併用します。保湿はベピオゲルの副作用を抑える効果があります。皮膚科で処方されるヒルドイドやビーソフテンなどの保湿剤は、毛穴の詰まりを起こしにくいノンコメドジェニック処方のため安心して使用できます。
使用量・使用範囲を調整することも大切です。副作用が強い場合は、塗る量を減らしたり、塗る範囲を狭めたりすることで症状を軽減できます。少量から始めて徐々に増やしていく方法が推奨されます。
短時間塗布法(ショートコンタクトセラピー)という方法もあります。ベピオゲルを塗って10〜15分ほど経ったら洗い流すという方法です。薬の成分は10〜15分程度で浸透するため、洗い流しても効果は維持されます。副作用が辛い場合に試してみてください。
洗顔方法の見直しも重要です。洗浄力の強すぎない洗顔料を使い、きめ細かく泡立てて優しく洗いましょう。スクラブ入りの洗顔料は肌への刺激が強いため、使用を控えてください。
ベピオローションへの切り替えも選択肢です。ベピオゲルで刺激症状が強く出る場合、より保湿効果の高いベピオローションに変更することで改善する場合があります。医師に相談してみてください。
8. 他のニキビ治療薬との比較
日本で保険適用されているニキビ治療の外用薬には、ベピオゲル以外にもいくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を理解しておくと、自分に合った治療法を選ぶ参考になります。
ディフェリンゲル(アダパレン)
ディフェリンゲルは、2008年に日本で承認されたレチノイド(ビタミンA誘導体)系の外用薬です。主に毛穴の角化を正常化し、毛穴の詰まりを改善する作用があります。
ディフェリンゲルは白ニキビ・黒ニキビ(面皰)に対して非常に高い効果を発揮しますが、抗菌作用がないため、赤ニキビへの直接的な効果は限定的です。そのため、赤ニキビがある場合は抗菌薬との併用が必要となります。
副作用として、使い始めに赤み、乾燥、皮むけ、刺激感などの症状が高頻度で現れます(随伴症状)。これはベピオゲルと同様ですが、ディフェリンゲルの場合はアレルギー性のかぶれは起こりにくいという違いがあります。
妊娠中や授乳中は使用できないという制限があります。
デュアック配合ゲル
デュアック配合ゲルは、過酸化ベンゾイル(3%)とクリンダマイシン(抗菌薬)を配合した外用薬です。2015年に発売されました。
ベピオゲルの成分に抗菌薬が加わることで、赤ニキビに対してより高い効果が期待できます。ただし、抗菌薬成分が含まれているため、長期間使用すると耐性菌が発生するリスクがあります。そのため、使用は3ヶ月程度にとどめ、その後はベピオゲル単剤に切り替えて維持療法を行うことが推奨されています。
エピデュオゲル
エピデュオゲルは、過酸化ベンゾイル(2.5%)とアダパレン(0.1%)を配合した外用薬です。2016年に発売されました。
ベピオゲルとディフェリンゲルの両方の成分が含まれているため、白ニキビ・黒ニキビと赤ニキビの両方に高い効果を発揮します。2つの薬を別々に塗る手間が省けるというメリットもあります。
しかし、2つの有効成分が同時に作用するため、赤みや乾燥などの副作用がベピオゲル単独やディフェリンゲル単独よりも強く出る可能性があります。そのため、最初からエピデュオゲルを使用するのではなく、先にベピオゲルまたはディフェリンゲルで副作用の出方を確認してから切り替えることが推奨されています。
各薬剤の比較まとめ
ベピオゲルは白ニキビと赤ニキビの両方に効果があり、耐性菌の心配がなく長期使用が可能です。ディフェリンゲルは特に白ニキビに強い効果がありますが、赤ニキビには抗菌薬の併用が必要です。デュアック配合ゲルは赤ニキビに強い効果がありますが、耐性菌リスクがあるため短期使用が基本です。エピデュオゲルは効果が高い反面、副作用も強い傾向があります。
どの薬剤を選択するかは、ニキビの種類や重症度、患者さんの肌質、過去の治療歴などを考慮して医師が判断します。多くの場合、最初はベピオゲルまたはディフェリンゲルから開始し、効果や副作用の状況を見ながら治療を調整していきます。
9. ベピオゲルを使用する際の注意点
ベピオゲルを安全かつ効果的に使用するために、以下の注意点を守ってください。
使用を避けるべき方
過去にベピオゲルを使用して過敏症(全身性の発疹、発熱、塗った部分のアレルギー反応など)を起こしたことがある方は使用できません。妊娠中、授乳中の方は、安全性が確立されていないため、使用前に必ず医師に相談してください。12歳未満の小児については、安全性が確立されていないため、通常は使用されません。
使用部位の注意
眼や眼の周り、唇、鼻の粘膜、傷口には使用しないでください。皮膚が敏感な部分やひげそり後の肌には刺激が強く出る可能性があるため注意が必要です。
漂白作用への注意
ベピオゲルには漂白作用があります。髪の毛や眉毛、衣類、タオル、寝具などに付着すると色落ち(脱色)する可能性があります。以下の点に注意してください。
塗る際は髪をまとめ、前髪はピンなどで留めておきましょう。塗り終わったら必ず手を洗いましょう。夜寝る前に塗る場合は、枕カバーに色落ちしても良いタオルを敷くなどの対策をしましょう。白や色落ちしても目立たない色のパジャマや寝具を使用するとよいでしょう。
紫外線への注意
ベピオゲルを使用中は、皮膚が紫外線に敏感になる可能性があります。日中に外出する際は、帽子をかぶるなどして塗布部位を強い日光に長時間当てないようにしましょう。日焼けランプの使用や紫外線療法は避けてください。日焼け止めを使用する場合は、ベピオゲルを塗った後に重ねて塗ることができます。
保存方法
ベピオゲルは25℃以下の涼しいところで保存してください。夏場は冷蔵庫での保管が推奨されますが、凍結しないよう注意してください。冷蔵庫のドアポケットなど、凍りにくい場所に保管するとよいでしょう。
他の薬との併用
他の外用薬と併用する場合は、皮膚症状が悪化する可能性があるため、必ず医師に相談してください。同時に処方された保湿剤などは、医師の指示に従って併用しても問題ありません。市販の化粧品やスキンケア製品との併用は基本的に可能ですが、刺激を感じる場合は使用を控えてください。

10. よくある質問(Q&A)
ベピオゲルについて、患者さんからよくいただく質問にお答えします。
効果を判定するためには、最低でも3ヶ月は継続使用することが推奨されています。ニキビが改善した後も、再発を防ぐために継続使用(維持療法)が重要です。ガイドラインでは、症状軽快後も1年以上継続することが基本とされています。使用期間については、自己判断で中断せず、医師の指示に従ってください。
1回分を塗り忘れた場合は、気づいた時点で塗布してください。ただし、次の塗布時間が近い場合は、塗り忘れた分は飛ばして、次回から通常通り使用してください。2回分を一度に塗ることは避けてください。
Q3. ベピオゲルは市販で購入できますか?
いいえ、ベピオゲルは医療用医薬品であり、医師の処方が必要です。薬局やドラッグストアでは販売されていません。皮膚科を受診して処方を受けてください。最近はオンライン診療で処方を受けられるクリニックも増えています。
Q4. ベピオゲルと化粧品は一緒に使えますか?
基本的に使用可能です。朝はベピオゲルを塗った後、十分に乾いてから日焼け止めやメイクをすることができます。ただし、刺激の強い化粧品(ピーリング成分配合など)は避けた方が安心です。ノンコメドジェニック(毛穴を詰まらせにくい)処方の化粧品を選ぶことをおすすめします。
Q5. ニキビが悪化したように感じます。使用を中止すべきですか?
使用開始初期に一時的にニキビが増えたように見えることがあります。これは、毛穴の中に隠れていたニキビの予備軍が表面化する現象で、治療が進んでいる証拠とも言えます。通常は継続使用により改善していきますので、すぐに中止せず様子を見てください。ただし、強い赤みやかゆみ、腫れなどアレルギー反応の兆候がある場合は使用を中止し、医師に相談してください。
Q6. ベピオゲルとベピオローションはどちらが良いですか?
有効成分と濃度は同じで、効果に大きな違いはありません。ベピオローションは乳剤性のため保湿効果が高く、乾燥や刺激症状が起きにくい傾向があります。敏感肌の方や、ゲルで副作用が強く出た方はローションタイプが適している場合があります。どちらを使用するかは、医師と相談して決めてください。
Q7. ベピオゲルは背中のニキビにも使えますか?
はい、使用できます。ベピオゲルは顔だけでなく、胸や背中など体のニキビにも有効です。背中など広い範囲に塗る場合は、使用量を調整してください。体のニキビは治りにくいこともありますが、根気よく続けることで改善が期待できます。
Q8. 思春期ニキビと大人ニキビ、どちらにも効果がありますか?
はい、どちらにも効果があります。ベピオゲルは年齢を問わず、思春期のニキビにも大人のニキビにも有効です。ニキビの原因となるアクネ菌の殺菌と毛穴の詰まりの改善という作用は、年齢に関係なく効果を発揮します。
11. まとめ
ベピオゲルは、過酸化ベンゾイルを有効成分とする外用ニキビ治療薬です。抗菌作用と角層剥離作用という2つの作用により、白ニキビ・黒ニキビから赤ニキビまで幅広いニキビに効果を発揮します。日本皮膚科学会のガイドラインでも最高ランクの推奨度を得ており、現在のニキビ治療の中心的な薬剤となっています。
最大の特長は、長期間使用しても耐性菌が発生しないことです。これにより、ニキビの治療から予防まで、安心して継続使用することができます。
使用開始初期には赤みや乾燥、皮むけなどの副作用が現れることがありますが、多くの場合は一時的なものであり、1ヶ月程度で軽減していきます。副作用を軽減するためには、保湿をしっかり行うこと、少量から始めて徐々に増やすことが大切です。
効果を実感するまでには2〜3ヶ月程度かかることが多いため、自己判断で使用を中断せず、医師の指示に従って継続することが重要です。ニキビが改善した後も、再発予防のために維持療法を続けることが推奨されています。
ニキビは適切な治療を行えば改善できる疾患です。「たかがニキビ」と放置せず、早期に皮膚科を受診し、適切な治療を始めることがニキビ跡を残さないためにも重要です。ベピオゲルによる治療について気になることがあれば、遠慮なく医師やスタッフにご相談ください。
当院では、患者さま一人ひとりの肌の状態やライフスタイルに合わせて、最適なニキビ治療をご提案しています。ニキビでお悩みの方は、ぜひお気軽にご来院ください。
参考文献
- 尋常性痤瘡治療ガイドライン2017(日本皮膚科学会)
- 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(日本皮膚科学会)
- ベピオゲル・ベピオローションを使用される方へ(マルホ株式会社)
- コメド治療薬の副作用対策(マルホ株式会社)
- ベピオゲル2.5%の基本情報(日経メディカル処方薬事典)
- 尋常性痤瘡治療ガイドライン2017(Mindsガイドラインライブラリ)
- 尋常性痤瘡(Wikipedia)
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務