ベピオゲルの正しい使い方|効果を最大限に引き出す塗り方・副作用対策・スキンケアまで徹底解説

ニキビ治療で皮膚科を受診すると、多くの方が処方される「ベピオゲル」。海外では50年以上の実績がある過酸化ベンゾイルを主成分とした治療薬ですが、「正しい使い方がわからない」「副作用が心配」という声をよく耳にします。実は、ベピオゲルは使い方次第で効果に大きな差が出る薬です。本記事では、ベピオゲルの基本知識から具体的な塗り方、副作用への対処法、スキンケアとの併用方法まで、皮膚科専門の視点から詳しく解説します。ニキビでお悩みの方が安心して治療を続けられるよう、実践的な情報をお届けします。


目次

  • ベピオゲルとは?基本情報と特徴
  • ベピオゲルの2つの作用メカニズム
  • ベピオゲルが効くニキビの種類
  • ベピオゲルの正しい使い方|基本の塗り方
  • 段階的なステップアップ方法
  • 1日のスキンケアの流れとベピオゲルの順番
  • ベピオゲルの副作用と対処法
  • 使用上の注意点|漂白作用と紫外線対策
  • ベピオゲルの保存方法
  • ベピオゲルとベピオローションの違い
  • 他のニキビ治療薬との比較
  • ベピオゲルに関するよくある質問
  • まとめ
  • 参考文献

ベピオゲルとは?基本情報と特徴

ベピオゲルは、過酸化ベンゾイル(BPO:Benzoyl Peroxide)を2.5%配合した白色のゲル状ニキビ治療薬です。正式名称は「ベピオゲル2.5%」といい、日本では2015年4月に保険適用となりました。皮膚科で処方される医療用医薬品であり、市販では購入できません。

過酸化ベンゾイルは欧米では50年以上前からニキビ治療のスタンダードとして使用されてきた成分です。日本での承認は遅れましたが、その有効性と安全性は世界的に確立されています。日本皮膚科学会が策定した「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」においても、ベピオゲルはニキビ治療において高い推奨度で位置づけられています。

ベピオゲルの最大の特徴は「薬剤耐性菌ができにくい」という点です。従来のニキビ治療に使われてきた抗生物質は、長期間使用すると細菌が抵抗力を持つ「耐性菌」が発生するリスクがありました。しかし、ベピオゲルは抗生物質とは異なる作用機序で殺菌するため、現在まで耐性菌の報告はありません。このため、長期間の継続使用が可能であり、ニキビの再発予防にも適しています。

製品情報として、1本15gのチューブで処方されることが一般的で、顔全体に使用する場合は約1ヶ月で1本を使い切る計算になります。保険適用のため、3割負担の方であれば比較的手頃な価格で治療を続けられます。


ベピオゲルの2つの作用メカニズム

ベピオゲルがニキビに効果を発揮するのは、「抗菌作用」と「角質剥離作用(ピーリング作用)」という2つの異なるメカニズムを持っているためです。この2つの作用が相乗的に働くことで、ニキビの改善と予防の両方にアプローチできます。

抗菌作用

ベピオゲルに含まれる過酸化ベンゾイルは、皮膚に塗布されると分解されて「フリーラジカル」と呼ばれる活性酸素を発生させます。このフリーラジカルがニキビの原因菌であるアクネ菌(Cutibacterium acnes)や黄色ブドウ球菌に作用し、強力な殺菌効果を発揮します。

一般的な抗生物質は、細菌の細胞壁を破壊したり、タンパク質合成を阻害したりする特定のメカニズムで殺菌します。しかし、細菌はこうした攻撃に対してDNAを変化させて耐性を獲得することがあります。

一方、過酸化ベンゾイルによるフリーラジカルは、細菌の細胞膜、酵素、DNAなど複数の器官を同時に物理的に破壊します。アクネ菌はこの活性酸素を無毒化する能力を持っていないため、効果的に殺菌されます。また、複数の攻撃ポイントがあるため、細菌が耐性を獲得することが極めて難しいのです。

角質剥離作用(ピーリング作用)

ベピオゲルには、皮膚表面の古い角質を取り除くピーリング作用もあります。角質細胞同士の結合を緩めることで、古くなった角質が自然に剥がれやすくなります。

ニキビの根本原因は「毛穴の詰まり」です。角質が厚くなって毛穴の出口を塞ぐと、皮脂が排出されなくなり、その中でアクネ菌が増殖して炎症を起こします。ベピオゲルのピーリング作用によって毛穴部分の角質肥厚が改善されると、皮脂の排出がスムーズになり、ニキビができにくい状態を維持できます。

この2つの作用が組み合わさることで、「今あるニキビを治す」と「新しいニキビを予防する」の両方が実現します。これがベピオゲルがニキビ治療において高く評価されている理由です。


ベピオゲルが効くニキビの種類

ベピオゲルは幅広いタイプのニキビに効果を発揮します。ニキビの種類と、それぞれに対するベピオゲルの効果について解説します。

白ニキビ(閉鎖面皰・コメド)

白ニキビは、毛穴に皮脂や角質が詰まった初期段階のニキビです。見た目は白っぽく、ぷつぷつとした小さな盛り上がりとして現れます。まだ炎症は起きていない状態です。

ベピオゲルのピーリング作用によって毛穴の詰まりが解消され、白ニキビの改善が期待できます。また、詰まりを予防することで新たな白ニキビの発生も抑制します。

黒ニキビ(開放面皰)

黒ニキビは、白ニキビの毛穴の入り口が開いて、詰まった皮脂が空気に触れて酸化し、黒く変色した状態です。いわゆる「いちご鼻」の原因にもなります。

ベピオゲルは黒ニキビに対しても、毛穴の詰まりを改善するピーリング作用で効果を発揮します。角質ケアによって毛穴の汚れが排出されやすくなります。

赤ニキビ(炎症性丘疹)

赤ニキビは、毛穴の中でアクネ菌が増殖し、炎症を起こして赤く腫れた状態です。痛みやかゆみを伴うこともあります。

ベピオゲルの抗菌作用によってアクネ菌の増殖が抑えられ、炎症が鎮まります。同時にピーリング作用で毛穴の環境も改善されるため、炎症の治まりが早まることが期待できます。

黄ニキビ(膿疱)

黄ニキビは、赤ニキビがさらに進行して膿を持った状態です。炎症がピークに達しており、中心部に黄白色の膿が見えます。

ベピオゲルは黄ニキビにも効果がありますが、炎症が強い場合は抗生物質の外用薬や内服薬と併用されることが一般的です。

マイクロコメド(微小面皰)

マイクロコメドは、肉眼では見えないほど小さな毛穴の詰まりです。ニキビの最初期段階であり、これが白ニキビ、赤ニキビへと進行していきます。

ベピオゲルを継続使用することで、このマイクロコメドの段階からケアでき、ニキビができにくい肌質へと改善していくことが可能です。日本皮膚科学会のガイドラインでも、ニキビ治療は「目に見えるニキビ」だけでなく、この微小面皰の段階から予防的に治療することの重要性が強調されています。

体のニキビにも使用可能

ベピオゲルは顔のニキビだけでなく、胸や背中など体のニキビにも使用できます。背中ニキビは自分では見えにくく、手が届きにくい場所ですが、ベピオゲルで治療することが可能です。体に使用する場合は、入浴後に患部に塗布するようにしましょう。


ベピオゲルの正しい使い方|基本の塗り方

ベピオゲルの効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方を守ることが非常に重要です。間違った使い方をすると効果が得られないだけでなく、副作用のリスクも高まります。ここでは基本的な塗り方を詳しく解説します。

使用のタイミング

ベピオゲルは1日1回、洗顔後に塗布します。塗布するタイミングは「夜」がおすすめです。

その理由は、ベピオゲルを塗った部分に紫外線が当たると、乾燥や刺激感などの副作用が出やすくなるためです。夜に塗布して就寝し、翌朝洗顔で洗い流すという使い方が一般的です。

ただし、医師の指示によっては朝晩2回の使用や、朝に塗布するよう指示される場合もあります。処方時の医師・薬剤師の指示に従ってください。

塗布前の準備

塗布前には必ず洗顔を行い、肌を清潔な状態にします。洗顔のポイントは以下の通りです。

まず、ぬるま湯(32〜34℃程度)で顔を軽く洗い流します。熱いお湯は皮脂を取りすぎて乾燥の原因になります。

次に、洗顔料をよく泡立て、きめ細かい泡で優しく洗います。ゴシゴシこすらず、泡を転がすように洗うのがポイントです。スクラブ入りの洗顔料は肌への刺激が強いため、ベピオゲル使用中は避けましょう。

洗顔後は清潔なタオルで水分を軽く押さえるように拭き取ります。このとき、ゴシゴシこすらないよう注意してください。

塗布する量の目安

顔全体に塗る場合、1回の使用量は約0.5gが目安です。これは「1FTU(フィンガーチップユニット)」と呼ばれ、人差し指の先端から第一関節までチューブから絞り出した長さに相当します。

1FTUは大人の手のひら2枚分の面積に塗り広げられる量です。顔全体に塗布する場合、この量で薄く均一に広げることができます。

部分的に使用する場合は、以下を目安にしてください。

  • おでこのみ:約1/6FTU
  • 片頬のみ:約1/6FTU
  • 鼻のみ:ごく少量
  • あごのみ:約1/6FTU

塗り方の手順

ベピオゲルを塗る具体的な手順は以下の通りです。

まず、清潔な指にベピオゲルを適量とります。長い髪はまとめ、前髪はピンなどで留めておくと、髪に薬がつくのを防げます。

次に、指にとった薬を「左額」「右額」「左頬」「右頬」「鼻」「あご」の6箇所に少量ずつ置きます。

そして、こすらず優しく、顔全体にまんべんなく薄く伸ばします。この際、以下の部位には塗らないよう注意してください。

  • 眼の周り
  • 口唇
  • 鼻の入り口などの粘膜
  • 傷口

万が一、眼に入った場合はただちに水で洗い流してください。

塗り終わったら、必ず手を石鹸でよく洗います。これは、手に残った薬が他の部位や衣類に付着するのを防ぐためです。

塗る範囲について

ベピオゲルでよくある間違いが「赤ニキビだけにポイントで塗る」という使い方です。

ニキビは赤くなる前に、目に見えない毛穴の詰まり(マイクロコメド)から始まります。ベピオゲルには毛穴詰まりを改善する作用があるため、赤ニキビだけでなく、ニキビができやすい部分全体に「面」で塗り広げることが大切です。

ニキビがある部分だけでなく、普段からニキビができやすいエリア全体に薄く塗ることで、新しいニキビの予防効果が期待できます。最終的には顔全体に塗ることを目指しましょう。


段階的なステップアップ方法

ベピオゲルは使い始めに刺激を感じやすい薬です。いきなり多くの量を広い範囲に塗ると、赤みやヒリヒリ感などの刺激症状が出やすくなります。そのため、少量から始めて、1ヶ月ほどかけて段階的に量と範囲を増やしていく「ステップアップ法」が推奨されています。

最初の4〜5日間:薬が合うかチェック

まずは自分の肌にベピオゲルが合うかどうかを確認する期間です。

おでこ、頬、あごなど1箇所を選び、ごく少量(1/8FTU程度、米粒大)だけを塗布します。この段階で強いかゆみ、腫れ、ただれなどの症状が出た場合は、すぐに使用を中止して医師に相談してください。これらはアレルギー反応の可能性があります。

軽い乾燥感や軽度のヒリヒリ感程度であれば、薬の作用による一時的な反応の可能性が高いため、そのまま継続しても問題ないことが多いです。

1〜2週目:顔全体に薄く塗る

問題がなければ、少しずつ塗る範囲を広げていきます。

顔全体に1/8FTU〜1/4FTU(米粒大〜あずき大)程度を薄く塗り広げます。まだ少量ですが、ニキビができやすい部分全体をカバーするように意識してください。

この時期は刺激を感じやすい時期です。もし刺激が強いと感じたら、塗る量を減らしたり、塗布時間を短くしたり(後述の「ショートコンタクトセラピー」)して調整します。

3〜4週目:通常量へステップアップ

刺激がなければ、塗る量を通常量(1FTU、約0.5g)まで増やしていきます。

顔全体にまんべんなく塗り広げ、これを毎日継続します。この頃には肌が薬に慣れてきて、刺激を感じる頻度は減ってくることが多いです。

1ヶ月以降:継続使用

1ヶ月を過ぎると、多くの方で刺激症状は落ち着いてきます。ここからは効果を実感し始める方も増えてきます。

ベピオゲルの効果を実感するには、最低でも1〜3ヶ月程度の継続使用が必要です。臨床データでは、3ヶ月使用することでニキビが約62%減少したという報告があります。

ニキビが改善しても、自己判断で使用を中止しないでください。中止すると少しずつニキビができやすい状態に戻ってしまうことが多いです。ニキビができやすい時期は、症状が良くなった後も継続して使用することで、ニキビのできにくい肌質を目指せます。


1日のスキンケアの流れとベピオゲルの順番

ベピオゲルを使用する際、「化粧水や乳液と一緒に使っても大丈夫?」「塗る順番は?」という疑問をお持ちの方は多いでしょう。ここでは、1日のスキンケアの流れの中でベピオゲルをどのタイミングで使うかを解説します。

夜のスキンケアの順番

夜にベピオゲルを使用する場合の基本的な順番は以下の通りです。

  1. クレンジング(メイクをしている場合)
  2. 洗顔
  3. 化粧水
  4. 美容液(使用している場合)
  5. 乳液またはクリーム
  6. ベピオゲル

ポイントは「ベピオゲルは最後に塗る」ということです。先に保湿剤でスキンケアを完了させてから、最後にベピオゲルを重ねるようにします。

先にベピオゲルを塗ってから化粧水や乳液を塗り広げると、ベピオゲルの有効成分が一緒に広がってしまい、塗っていない健康な部分にまで薬が届いて刺激を起こすリスクがあります。

保湿の重要性

ベピオゲルには乾燥を引き起こしやすいという特性があります。そのため、保湿ケアをしっかり行うことが非常に重要です。

ベピオゲルを塗る前に化粧水や乳液で十分に保湿しておくことで、薬による乾燥や刺激を軽減できます。乾燥が緩和されると治療が続けやすくなり、結果的に効果も得られやすくなります。

保湿剤の選び方

ベピオゲルと併用する保湿剤は、以下の条件を満たすものがおすすめです。

  • 低刺激性であること
  • ノンコメドジェニック(毛穴を詰まらせにくい処方)であること
  • オイルフリーまたは油分が少ないこと
  • 無香料・無着色であること

「ノンコメドジェニックテスト済み」と表示された製品は、ニキビの原因となるコメドを作りにくいことが確認されており、ニキビ肌の方に適しています。

避けたほうがよい成分

ベピオゲル使用中は、以下の成分を含む製品との併用に注意が必要です。

  • AHA(グリコール酸、乳酸など)
  • BHA(サリチル酸)
  • レチノール
  • ビタミンC誘導体(高濃度のもの)

これらの成分はそれぞれ単独でも肌に刺激を与える可能性があります。ベピオゲルと併用すると刺激の相乗効果で、強い乾燥や赤みが生じやすくなります。ベピオゲルでの治療期間中は、これらの成分を含むスキンケア製品の使用は控えましょう。

他のニキビ治療薬との併用

医師から複数の外用薬を処方された場合の塗る順番について説明します。

ディフェリンゲル(アダパレン)とベピオゲルを併用する場合、どちらを先に塗っても問題ありません。

抗菌薬の外用剤(ダラシンTゲル、アクアチムクリーム、ゼビアックスローションなど)が処方されている場合は、ベピオゲルを先に塗り、その後に炎症のあるニキビ部分だけにピンポイントで抗菌薬を塗布します。

処方内容によって異なる場合もありますので、必ず医師・薬剤師の指示に従ってください。


ベピオゲルの副作用と対処法

ベピオゲルは効果的なニキビ治療薬ですが、使用初期に副作用が現れることがあります。副作用の多くは薬の作用による一時的な反応であり、適切に対処すれば治療を継続できます。ただし、稀にアレルギー反応が起こることもあるため、症状を正しく見極めることが大切です。

よく見られる刺激症状

ベピオゲルを使い始めてから2週間以内に、以下のような刺激症状が現れることがあります。

  • 乾燥
  • 皮むけ(落屑)
  • ヒリヒリ感(刺激感)
  • 赤み
  • かゆみ

これらの症状は、ベピオゲルの角質剥離作用によって古い角質が剥がれ、新しい皮膚が露出することで生じます。いわゆる「薬が効いている証拠」とも言えますが、症状が強すぎると治療を継続できなくなってしまいます。

多くの場合、使い続けていくうちに肌が薬に慣れ、1ヶ月を過ぎると刺激を感じる頻度は減っていきます。

刺激症状への対処法

刺激症状が出た場合の対処法をいくつかご紹介します。

まず「塗る量を減らす」ことです。1FTUが多すぎる場合は、1/4FTU〜1/2FTU程度に減らして様子を見ましょう。

次に「塗る範囲を狭くする」ことです。顔全体ではなく、ニキビが特に気になる部分だけに限定して塗る方法があります。

「しっかり保湿する」ことも重要です。ベピオゲルを塗る前の保湿を徹底し、日中もこまめに保湿するようにしましょう。乾燥を防ぐことで刺激感も軽減されます。

「ショートコンタクトセラピー」という方法も効果的です。これはベピオゲルを塗ってから10〜15分程度で洗い流すという使い方です。薬の成分は10〜15分程度で浸透するため、洗い流しても効果に大きな影響はありません。刺激が強くて辛い場合は、この方法を試してみてください。

「使用を1〜2日休む」ことも選択肢のひとつです。症状がひどい場合は無理に続けず、数日休んで肌を回復させてから再開するという方法もあります。

ヒリヒリ感が強い場合は、塗った薬を水で洗い流してから保湿剤を塗り、翌日は塗る量を減らして再開してみましょう。

注意が必要な症状(アレルギー反応)

上記の刺激症状とは別に、約3%(100人中3人程度)の頻度でアレルギー性接触皮膚炎が起こることがあります。以下のような症状が現れた場合は、アレルギー反応の可能性があるため、すぐに使用を中止して医師に相談してください。

  • 全身性の発疹
  • 発熱
  • 塗布部位の強い腫れを伴う赤み
  • ジクジクとした発疹(水疱、びらん)
  • 広範囲に広がる強いかゆみ
  • 顔全体の腫れ

アレルギー反応は、使い始めてすぐに起こることもあれば、しばらく問題なく使えていたのに途中から発症することもあります。症状に気づいたらすぐに使用を中止し、医療機関を受診してください。

副作用を軽減するためのポイント

副作用のリスクを最小限に抑えるためのポイントをまとめます。

洗顔は優しく行いましょう。洗浄力の強すぎない洗顔料を使い、ゴシゴシこすらず泡で優しく洗います。スクラブ入りの洗顔料は避けてください。

保湿はこまめに行いましょう。ベピオゲル使用前だけでなく、日中も乾燥を感じたら保湿するようにします。

少量から始めて段階的に増やしましょう。前述のステップアップ法を守り、焦らずに肌を慣らしていくことが大切です。

紫外線対策をしっかり行いましょう。ベピオゲル使用中は肌が敏感になっているため、日焼け止めや帽子で紫外線から肌を守りましょう。


使用上の注意点|漂白作用と紫外線対策

ベピオゲルには、副作用以外にも知っておくべき注意点があります。特に「漂白作用」と「紫外線への感受性」は日常生活に影響するため、必ず覚えておきましょう。

漂白作用について

ベピオゲルに含まれる過酸化ベンゾイルには強い漂白作用(脱色作用)があります。これは薬としての作用ではなく、化学的な性質によるものです。

髪の毛に付着すると脱色して茶色や金色に変色します。塗布前に髪をまとめ、前髪はピンで留めるなどして、薬が髪につかないようにしましょう。

衣類やタオル、枕カバー、シーツなどの繊維製品に付着すると漂白されて色が抜けてしまいます。特に濃い色の布製品は目立ちやすいので注意が必要です。

就寝時には、白いタオルを枕に敷いたり、白い枕カバーを使用したりすることをおすすめします。お気に入りの服や高価な寝具は使用を避けるか、十分に注意して使用してください。

塗布後は必ず手をよく洗い、手に残った薬が他の場所に付着するのを防ぎましょう。

紫外線への感受性

ベピオゲルを塗布した部位は、紫外線に対して敏感になります。日光に当たると乾燥や刺激感、赤みなどの副作用が出やすくなります。

外出時は日焼け止めを塗り、帽子や日傘を活用して紫外線を防ぎましょう。日焼け止めはノンコメドジェニックタイプのものを選ぶとニキビの悪化を防げます。

夜に塗布するのが推奨されているのは、この紫外線対策の面でも理にかなっています。朝に使用する場合は、特に入念な紫外線対策が必要です。

その他の注意点

眼、口唇、鼻の入り口などの粘膜部位には使用しないでください。万一、眼に入った場合はただちに水で十分に洗い流してください。

傷口や湿疹、かぶれのある部位には使用しないでください。

他の外用剤と併用する場合は、皮膚刺激症状がひどくなる可能性があります。医師に処方されたもの以外の塗り薬を併用する場合は、必ず医師に相談してください。

妊娠中・授乳中の方は、使用前に必ず医師に相談してください。安全性が十分に確立されていないため、慎重な判断が必要です。

12歳未満の小児への使用についても安全性が確立されていないため、原則として使用しません。


ベピオゲルの保存方法

ベピオゲルは温度変化に敏感な薬です。正しく保存しないと成分が変化して効果が落ちる可能性があるため、保存方法にも注意が必要です。

基本的な保存条件

ベピオゲルは「凍結を避け、25℃以下に保存すること」が添付文書に記載されています。

冬場や気温の低い時期は室温での保管で問題ありません。ただし、暖房の近くや直射日光が当たる場所は避けてください。

夏場や気温が25℃を超える時期は、冷蔵庫での保管がおすすめです。冷蔵庫に入れる場合は、凍結しないよう野菜室などに入れると安心です。冷凍庫には入れないでください。

保存期間の目安

未開封の状態であれば、25℃以下で2年間は品質が保たれます。

開封後は、1ヶ月程度を目安に使い切ることが推奨されています。1日5分程度の開封であれば1ヶ月間は薬剤の安定性が保持されることが確認されています。

ただし、過酸化ベンゾイルは酸化剤であるため、長期間開封した状態が続くと効果が低下する可能性があります。効果的な治療のためにも、月1回の受診と処方を受けて新しい薬を使用することをおすすめします。

万が一、室温で放置してしまった場合

うっかり冷蔵庫に入れ忘れてしまった場合でも、30℃以下であれば1ヶ月程度は品質に大きな問題はないことがインタビューフォームに記載されています。

ただし、40℃以上の高温に長時間さらされた場合は、品質が変化している可能性があります。真夏の車内や直射日光が当たる場所に放置してしまった場合は、使用を控えて新しいものを処方してもらうことをおすすめします。


ベピオゲルとベピオローションの違い

2023年に「ベピオローション2.5%」が発売され、ベピオシリーズには現在2つの剤形があります。有効成分と濃度は同じですが、それぞれに特徴があります。

剤形の違い

ベピオゲルは透明なゲル状の製剤です。塗るとひんやりとした感触があります。

ベピオローションは白色の乳液状(クリーミーローション)の製剤です。しっとりとした使用感で、ゲルに比べて伸びが良く塗り広げやすいのが特徴です。

効果の違い

有効成分の過酸化ベンゾイルが同じ濃度(2.5%)で配合されているため、ニキビに対する効果自体は変わりません。一定期間使用したときのニキビ減少率に大きな差はないことが確認されています。

副作用の違い

ベピオローションは乳剤性のローションであるため、ベピオゲルよりも保湿効果が高く、乾燥などの刺激症状が起きる頻度が少ないことがわかっています。

ベピオゲルで刺激症状が強くて続けられなかった方や、もともと敏感肌の方は、ベピオローションに切り替えることで治療を継続できる可能性があります。

どちらを選ぶべきか

基本的には医師が患者さんの肌質や季節、使用感の好みに応じて最適な剤形を選択して処方します。

さっぱりした使用感が好みの方や、脂性肌の方にはベピオゲルが向いています。しっとりした使用感が好みの方、乾燥肌や敏感肌の方、以前ベピオゲルで刺激が強かった方にはベピオローションが向いています。

どちらの剤形でも、基本的な使い方や注意点は同じです。


他のニキビ治療薬との比較

皮膚科で処方されるニキビ治療薬には、ベピオゲル以外にも様々な種類があります。それぞれの特徴を理解しておくと、自分の治療をより深く理解できます。

ディフェリンゲル(アダパレン)

ディフェリンゲルはビタミンA誘導体(レチノイド)に分類される薬で、2008年に日本で承認されました。

主な作用は毛穴の角化を抑制し、面皰(毛穴の詰まり)を改善することです。抗炎症作用もあります。

ベピオゲルとの違いは、ディフェリンゲルには殺菌作用がないことです。また、妊婦・妊娠の可能性がある方には禁忌(使用できない)となっています。

副作用として、ベピオゲルと同様に乾燥、皮むけ、赤み、ヒリヒリ感などの刺激症状が出ることがあります。

エピデュオゲル(アダパレン + 過酸化ベンゾイル)

エピデュオゲルは、ディフェリンゲルの有効成分であるアダパレン0.1%と、ベピオゲルの有効成分である過酸化ベンゾイル2.5%を配合した合剤です。

2つの成分の効果が組み合わさることで、単剤よりも高い効果が期待できます。日本皮膚科学会のガイドラインでも、中等症から重症のニキビに対して強く推奨されています。

ただし、2つの成分を含むため刺激症状が出やすく、特に使い始めは乾燥や赤みがベピオゲル単独より強く出る傾向があります。

デュアック配合ゲル(過酸化ベンゾイル + クリンダマイシン)

デュアック配合ゲルは、過酸化ベンゾイル3%と抗生物質のクリンダマイシン1%を配合した合剤です。

殺菌作用が強化されているため、炎症性ニキビ(赤ニキビ)に対して特に効果的です。

ただし、クリンダマイシンは抗生物質であるため、長期間使用すると耐性菌が発生するリスクがあります。そのため、短期間(急性炎症期)の使用が推奨されます。

保存方法にも注意が必要で、デュアック配合ゲルは2〜8℃の冷蔵保存が必要です。

外用抗菌薬(ダラシンTゲル、アクアチムクリーム、ゼビアックスローションなど)

これらはアクネ菌に対する抗菌作用を持つ外用抗生物質です。炎症性ニキビの治療に使用されます。

抗生物質であるため、単独での長期使用は耐性菌の問題があります。ガイドラインでは、ベピオゲルやディフェリンゲルと併用し、炎症が落ち着いたら抗菌薬は中止してベピオゲルやディフェリンゲルでの維持療法に移行することが推奨されています。

治療の流れ

日本皮膚科学会のガイドラインに基づく一般的なニキビ治療の流れは以下の通りです。

急性炎症期(炎症が強い時期)には、ベピオゲル、ディフェリンゲル、またはそれらの配合剤に加え、必要に応じて抗菌薬の外用・内服を併用します。この期間は原則として3ヶ月までとされています。

維持期(炎症が落ち着いた後)には、抗菌薬を中止し、ベピオゲルやディフェリンゲルを継続使用します。これにより、ニキビの再発を予防し、ニキビができにくい肌質への改善を目指します。

ベピオゲルは急性炎症期から維持期まで一貫して使用できる薬であり、耐性菌の心配なく長期間継続できることが大きなメリットです。


ベピオゲルに関するよくある質問

ベピオゲルについて患者様からよく寄せられる質問にお答えします。

Q1:ベピオゲルは市販で買えますか?

いいえ、ベピオゲルは医療用医薬品であり、市販では購入できません。皮膚科を受診し、医師の診察を受けて処方してもらう必要があります。
インターネットなどで販売されている海外製品は、品質や安全性が保証されていないためおすすめできません。

Q2:効果が出るまでどれくらいかかりますか?

個人差がありますが、一般的に2週間〜3ヶ月程度で効果を実感し始める方が多いです。
軽度のニキビであれば4週間程度で改善が見られることもありますが、重症のニキビの場合は8週間以上かかることもあります。
効果が出ないからといって自己判断で中止せず、最低3ヶ月は継続使用してみることをおすすめします。それでも改善が見られない場合は、医師に相談して治療方針を見直しましょう。

Q3:ニキビが治ったらやめてもいいですか?

ニキビが改善しても、自己判断で使用を中止しないことをおすすめします。

ニキビは再発しやすい慢性的な疾患です。目に見えるニキビがなくなっても、皮膚の中ではマイクロコメド(微小面皰)が形成されている可能性があります。

ベピオゲルを継続使用することで、この目に見えない段階からニキビの形成を予防し、ニキビができにくい肌質を維持することができます。

治療の終了時期については、必ず医師と相談して決めてください。

Q4:ベピオゲルでニキビ跡は治りますか?

ベピオゲルは「今あるニキビ」と「新しくできるニキビ」の治療・予防には効果がありますが、すでにできてしまったニキビ跡(瘢痕、色素沈着)を直接治す効果は認められていません。

ただし、ピーリング作用によって古い角質が除去されることで、肌のトーンが明るくなり、軽度の色素沈着が目立たなくなることはあります。

ニキビ跡の治療には、レーザー治療やケミカルピーリングなど別のアプローチが必要です。ニキビ跡を作らないためにも、ニキビを早期に治療することが大切です。

Q5:ベピオゲルとレチノール化粧品を併用してもいいですか?

ベピオゲルとレチノール(ビタミンA誘導体)を含む化粧品の併用は、刺激が強くなる可能性があるためおすすめできません。

過酸化ベンゾイルとレチノールを同時に使用すると、お互いの効果を打ち消し合う可能性があるという報告もあります。

レチノール配合の化粧品を使用したい場合は、ベピオゲルでの治療が落ち着いてから、または医師に相談のうえで使用してください。

Q6:背中のニキビにも使えますか?

はい、ベピオゲルは顔だけでなく、背中や胸など体のニキビにも使用できます。

体に使用する場合は、入浴後の清潔な状態で患部に塗布します。ただし、衣類への色落ちに注意が必要なので、塗布後は薬が乾いてから衣服を着るようにしてください。

背中は自分では塗りにくい場所なので、家族に塗ってもらうか、塗布用の長いスポンジなどを活用するとよいでしょう。

Q7:メイクはしてもいいですか?

はい、ベピオゲル使用中もメイクは可能です。

朝にベピオゲルを塗布する場合は、薬が十分に乾いてから日焼け止めやメイクをするようにしてください。

ただし、油分の多いファンデーションや毛穴を詰まらせやすい製品は、ニキビを悪化させる可能性があります。ノンコメドジェニックと表示されたメイク製品を選ぶことをおすすめします。

夜に塗布する場合は、クレンジングと洗顔でしっかりメイクを落としてから使用してください。


まとめ

ベピオゲルは、過酸化ベンゾイルを主成分とした効果的なニキビ治療薬です。抗菌作用と角質剥離作用の2つのメカニズムにより、今あるニキビを改善しながら、新しいニキビができにくい肌質を目指すことができます。

正しい使い方のポイントを振り返りましょう。

塗布は1日1回、夜の洗顔後に行います。紫外線に当たると副作用が出やすくなるため、夜の使用がおすすめです。

塗る量は顔全体で1FTU(人差し指の先から第一関節まで)が目安です。少量から始めて段階的に量を増やしていくステップアップ法を守りましょう。

塗る範囲はニキビだけでなく、ニキビができやすい部分全体に面で広げます。最終的には顔全体に塗布することを目指します。

スキンケアとの順番は、化粧水・乳液などで保湿した後、最後にベピオゲルを塗布します。

副作用(乾燥、皮むけ、ヒリヒリ感など)は使い始めに出やすいですが、多くの場合1ヶ月程度で落ち着きます。保湿をしっかり行い、刺激が強い場合は塗る量を減らすなどして対処しましょう。

漂白作用があるため、髪や衣類に付着しないよう注意が必要です。塗布後は必ず手を洗いましょう。

保存は25℃以下で行い、夏場は冷蔵庫での保管がおすすめです。

効果を実感するには1〜3ヶ月程度の継続使用が必要です。ニキビが改善しても、再発予防のために継続使用することが大切です。

ニキビは多くの方が経験するありふれた皮膚疾患ですが、適切な治療を行わないとニキビ跡として残ってしまうこともあります。ベピオゲルは正しく使えば高い効果が期待できる薬です。副作用に対する正しい知識を持ち、根気強く治療を続けることで、ニキビのない健やかな肌を目指しましょう。

治療について不安なことや疑問がある場合は、自己判断せず、皮膚科医に相談することをおすすめします。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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