「何度治療しても同じ場所にニキビができてしまう」「市販薬や保険診療の外用薬を試したけれど改善しない」――そんな悩みを抱えている方は少なくありません。繰り返すニキビに対する根本的なアプローチとして、近年注目を集めているのが「皮脂腺破壊治療」です。
この治療法は、ニキビの原因となる皮脂腺そのものに直接働きかけることで、従来の対症療法とは異なる根本的な改善を目指します。新宿エリアでもこの治療を受けられる医療機関が増えており、難治性のニキビに悩む方々にとって新たな選択肢となっています。
本記事では、皮脂腺破壊治療の仕組みや効果、治療の流れ、メリット・デメリット、他の治療法との比較まで、専門的な知見をもとにわかりやすく解説します。新宿でニキビ治療をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

目次
- 皮脂腺とは何か?その構造と働き
- ニキビ(尋常性ざ瘡)が発生するメカニズム
- 皮脂腺破壊治療とは
- 代表的な皮脂腺破壊治療の種類
- 皮脂腺破壊治療の効果と持続期間
- 治療の流れとダウンタイム
- メリットとデメリット
- 他のニキビ治療法との比較
- 皮脂腺破壊治療が適している方
- 新宿で皮脂腺破壊治療を受ける際のポイント
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
1. 皮脂腺とは何か?その構造と働き
皮脂腺破壊治療を理解するためには、まず皮脂腺がどのような器官であるかを知ることが重要です。
皮脂腺の基本構造
皮脂腺は、皮膚の真皮層に存在する小さな腺組織で、皮脂(油分)を分泌する役割を担っています。手のひらや足の裏を除くほぼ全身の皮膚に分布しており、特に顔面、頭皮、背中の上部、胸部などに多く存在します。これらの部位は「脂漏部位」と呼ばれ、皮脂腺が400〜900個/平方センチメートルという高密度で分布しています。
皮脂腺は毛包(毛穴)に付随する形で存在し、分泌された皮脂は毛穴を通じて皮膚表面に排出されます。皮脂腺で作られた脂質は、腺細胞が成熟して崩壊することで放出される「全分泌腺」(ホロクリン腺)という特殊な分泌様式をとっています。
皮脂の役割
皮脂は単なる「油分」ではなく、皮膚にとって重要な役割を果たしています。
皮脂の主な構成成分は、トリグリセリド(約60%)、ワックスエステル(約25%)、スクアレン(約12%)などの脂質です。これらの成分が皮膚表面で汗と混合して乳化し、「皮脂膜」と呼ばれる保護膜を形成します。
皮脂膜の主な機能としては、皮膚の水分蒸散を防ぐ保湿作用、皮膚や毛髪に滑らかさとツヤを与える作用、弱酸性(pH4〜6)を維持することで雑菌の繁殖を抑える抗菌作用、外部からの物理的・化学的刺激を緩和するバリア機能などが挙げられます。
皮脂分泌の調節
皮脂の分泌量は、主にホルモンによって調節されています。特に男性ホルモン(テストステロン)の影響が大きく、思春期以降に皮脂分泌が急増するのはこのためです。
皮脂腺細胞内には、テストステロンをより活性の高いジヒドロテストステロン(DHT)に変換する5α-リダクターゼという酵素が存在します。このDHTが皮脂腺の活動を促進し、皮脂分泌を増加させます。
年齢による皮脂分泌量の変化を見ると、思春期から20代にかけて急増し、男性では80歳頃まで比較的高い分泌量が維持される傾向があります。一方、女性では40代以降に徐々に減少していきます。また、季節の影響も受け、春から夏にかけて皮脂分泌は亢進します。
2. ニキビ(尋常性ざ瘡)が発生するメカニズム
ニキビは医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれ、毛穴(毛包脂腺系)を中心とした慢性の炎症性疾患です。日本では約90%の人が生涯で一度は経験するとされ、平均発症年齢は13.3歳と思春期を中心に発症します。
ニキビ発生の4つの主要因子
ニキビの発生には、複数の要因が複雑に絡み合っています。主な要因として以下の4つが挙げられます。
第一に、皮脂の過剰分泌があります。思春期のホルモン変化やストレス、生活習慣の乱れなどにより、皮脂腺の活動が活発化し、皮脂の分泌量が増加します。過剰な皮脂は毛穴に蓄積し、ニキビの原因となります。
第二に、毛穴の角化異常があります。通常、毛穴の出口では古い角質が自然に剥がれ落ちていきますが、何らかの原因でこの過程が乱れると、角質が厚くなって毛穴をふさいでしまいます。これを「毛包漏斗部の角化異常」と呼びます。
第三に、アクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖があります。毛穴が詰まって皮脂が溜まると、皮脂を栄養源とするアクネ菌が異常増殖します。アクネ菌は嫌気性菌で、酸素の少ない環境を好むため、詰まった毛穴の中は格好の繁殖場所となります。
第四に、炎症反応があります。増殖したアクネ菌に対して免疫システムが反応し、炎症が引き起こされます。この炎症反応がニキビの赤みや腫れ、痛みの原因となります。
ニキビの進行段階
ニキビは進行度によって以下のように分類されます。
微小面皰(びしょうめんぽう)は、肉眼では見えない初期段階のニキビで、毛穴の詰まりが始まった状態です。
白ニキビ(閉鎖面皰)は、毛穴に皮脂と角質が溜まり、皮膚表面が白く盛り上がった状態です。毛穴の出口は閉じています。
黒ニキビ(開放面皰)は、溜まった皮脂が毛穴を押し広げ、表面に露出した皮脂が酸化して黒く見える状態です。
赤ニキビ(炎症性丘疹)は、アクネ菌の増殖により炎症が起こり、赤く腫れた状態です。
黄ニキビ(膿疱)は、炎症がさらに進行し、白血球の死骸などが膿として溜まった状態です。
嚢腫・結節は、炎症が真皮や皮下脂肪にまで及んだ重症の状態で、硬いしこりや大きな膿の袋を形成します。
大人ニキビの特徴
思春期ニキビは主にTゾーン(額・鼻)にできやすく、成長とともに自然に改善することが多いのに対し、大人ニキビは顎やフェイスラインなどのUゾーンにできやすく、同じ場所に繰り返しできる傾向があります。
大人ニキビが繰り返しできる原因の一つとして、皮脂腺の肥大化があります。何度も同じ場所にニキビができるうちに、皮膚の中で複数の皮脂腺がつながって肥大化し、より治りにくく再発しやすい状態になってしまうのです。
このような難治性のニキビに対する根本的な治療法として注目されているのが、皮脂腺破壊治療です。
3. 皮脂腺破壊治療とは
治療の基本概念
皮脂腺破壊治療とは、ニキビの原因となる皮脂腺そのものに直接アプローチし、その機能を抑制または消失させる治療法の総称です。従来のニキビ治療が毛穴の詰まりを解消したり、細菌を抑制したりする「対症療法」であるのに対し、皮脂腺破壊治療は皮脂の「発生源」に働きかける「根本療法」といえます。
皮脂腺を選択的に破壊または凝固させることで、その部位からの皮脂分泌が抑制され、同じ場所に繰り返しできるニキビを防ぐことが期待できます。破壊された皮脂腺は基本的に再生しないため、治療効果は長期間持続するとされています。
治療の原理
皮脂腺破壊治療には主に以下の原理が用いられています。
高周波(RF:Radio Frequency)エネルギーを用いた方法では、高周波の電磁波を皮脂腺に照射することで、組織内の水分子が振動して熱が発生します。この熱によって皮脂腺の細胞が凝固・変性し、機能が停止します。
レーザーエネルギーを用いた方法では、特定の波長のレーザー光が皮脂腺に吸収され、熱エネルギーに変換されます。この熱によって皮脂腺細胞が選択的に破壊されます。
いずれの方法でも、皮膚表面へのダメージを最小限に抑えながら、皮脂腺のある深さに効率的にエネルギーを届けることが重要です。
従来治療との違い
従来のニキビ治療と皮脂腺破壊治療の違いを整理すると、以下のようになります。
外用薬(アダパレン、過酸化ベンゾイルなど)は、毛穴の角化異常を改善し、抗菌作用でアクネ菌を抑制しますが、皮脂腺そのものには作用しません。治療を中止すると再発する可能性があります。
抗菌薬(内服・外用)は、アクネ菌の増殖を抑制しますが、長期使用による耐性菌の出現が問題となることがあります。
ケミカルピーリングは、角質を除去して毛穴の詰まりを改善しますが、皮脂分泌自体は抑制されません。
これらに対し、皮脂腺破壊治療は皮脂腺の機能を直接抑制するため、根本的な改善が期待できます。ただし、すべてのニキビに対して皮脂腺破壊治療が必要なわけではなく、標準的な保険診療で改善するケースも多いため、まずは皮膚科専門医による適切な診断を受けることが重要です。
4. 代表的な皮脂腺破壊治療の種類
皮脂腺破壊治療にはいくつかの方法があり、それぞれ使用するエネルギーや機器、適応などが異なります。ここでは代表的な治療法について解説します。
アグネス(AGNES)
アグネスは、韓国で開発された高周波(RF)を用いたニキビ治療機器です。特殊な絶縁針(マイクロインシュレーションニードル)を毛穴に挿入し、皮脂腺に直接高周波エネルギーを照射することで、皮脂腺を選択的に凝固・破壊します。
針の先端部分のみが絶縁されていない構造になっているため、皮膚表面には熱が伝わらず、火傷などのリスクを軽減しながら皮脂腺にピンポイントで作用することができます。
アグネスの特徴として、微小面皰から炎症性ニキビ、嚢腫性ニキビまで幅広いタイプに対応可能であること、顔だけでなく首、胸、背中など体の各部位にも施術できること、針の深さや高周波の出力を調整することで、一人ひとりの肌状態に合わせた治療が可能であることなどが挙げられます。
施術は1〜3週間おきに3〜5回程度行うのが一般的で、1回目から効果を実感できるケースも多いとされています。
皮脂腺電気凝固法(小林式ニキビ治療法)
皮脂腺電気凝固法は、特殊な絶縁電気針を用いて肥大化した皮脂腺を凝固させる治療法です。「小林式ニキビ治療法」とも呼ばれ、日本で開発された治療法として知られています。
この治療法の特徴は、肥大化した皮脂腺のみを選択的に凝固し、正常な皮脂腺は残すという点にあります。凝固した皮脂腺はコラーゲン(タンパク質)となって体内に吸収されます。過剰に分泌されていた皮脂のみが抑制されるため、治療後に乾燥肌になるなどのトラブルが起こりにくいとされています。
施術後1〜3日以内に、治療により生じた浸出物を除去する処置(メルティング)を行うことで、より高い治療効果が得られます。
アビクリア(AviClear)
アビクリアは、波長1,726nmのレーザーを用いた最新のニキビ治療機器です。2021年に米国FDA(食品医薬品局)から、ニキビ治療用レーザー機器として世界で初めて承認されました。
この波長のレーザーは皮脂腺に選択的に吸収される特性があり、皮脂腺細胞を熱エネルギーで破壊することで皮脂分泌を抑制します。従来のレーザー治療と異なり、メラニンやヘモグロビンへの影響が少ないため、肌の色に関係なく治療が可能です。
アビクリアの治療は通常、1ヶ月に1回、計3回の施術で1セットとされています。治療後6ヶ月頃に効果が客観的に観察され、治療終了後1年経過しても94%の方が改善を実感しているというデータが報告されています。
ダウンタイムがほとんどなく、施術直後からメイクや日常生活が可能な点も特徴です。
ポテンツァ(POTENZA)ニードルRF
ポテンツァは、マイクロニードル(微細な針)と高周波(RF)を組み合わせた治療機器です。針を皮膚に刺入し、真皮層に直接高周波エネルギーを照射することで、皮脂腺や毛細血管に作用します。
ニキビ治療だけでなく、ニキビ跡の改善、毛穴の開き、シワ、肌質改善など幅広い適応があり、ニキビとニキビ跡を同時にケアしたい方に選ばれています。
イソトレチノイン(内服薬)
皮脂腺破壊治療とは厳密には異なりますが、皮脂腺に作用する内服薬として「イソトレチノイン」があります。ビタミンA誘導体(レチノイド)の一種で、皮脂腺を縮小させ、皮脂分泌を強力に抑制する作用があります。
欧米では重症ニキビ治療の第一選択薬として40年以上の使用実績がありますが、日本では未承認のため、自由診療での処方となります。胎児への影響(催奇形性)があるため、妊娠中や妊娠の可能性がある方は使用できないなど、厳格な管理が必要です。
5. 皮脂腺破壊治療の効果と持続期間
期待できる効果
皮脂腺破壊治療によって期待できる効果は以下の通りです。
まず、繰り返すニキビの改善があります。同じ場所に何度もできるニキビに対して、その原因となる皮脂腺を処理することで、再発を防ぐことができます。
次に、ニキビの予防効果があります。皮脂分泌が抑制されることで、新しいニキビができにくい肌環境が整います。
また、毛穴の改善も期待できます。高周波やレーザーの熱エネルギーにより、毛穴が収縮し、コラーゲンの再生が促されることで、毛穴の開きや肌のキメが改善される副次的な効果も報告されています。
さらに、脂性肌の改善効果があります。皮脂分泌が減少することで、肌のテカリや化粧崩れが軽減されます。
効果の持続期間
破壊された皮脂腺は基本的に再生しないとされているため、治療効果は半永久的に持続すると考えられています。ただし、以下の点に留意が必要です。
顔には約20万個もの皮脂腺があるといわれており、治療で処理できるのはそのうちの一部(数百個程度)です。治療した部位の皮脂腺は再生しませんが、周囲に残っている皮脂腺からの分泌は続くため、完全に皮脂がなくなるわけではありません。
また、皮脂腺には高い再生力があるという報告もあり、十分な効果を得るために複数回の治療が必要となることがあります。
治療後も生活習慣の乱れやホルモンバランスの変化により、治療していない部位に新たなニキビができる可能性はあります。継続的なスキンケアや生活習慣の改善も重要です。
効果を実感するまでの期間
効果の現れ方には個人差がありますが、一般的な経過は以下の通りです。
施術直後から1週間程度は、一時的な赤みや腫れ、治療部位に小さなかさぶたができることがあります。
1〜2週間後には、治療部位のニキビが落ち着き始め、新しいニキビができにくくなってきます。
1〜3ヶ月後には、複数回の治療を重ねることで、より明確な改善効果を実感できるようになります。
6ヶ月以降は、治療効果が安定し、長期的な改善が維持されます。
6. 治療の流れとダウンタイム
治療前のカウンセリング・診察
皮脂腺破壊治療を受ける際は、まず医師による診察とカウンセリングが行われます。ニキビの状態や肌質、これまでの治療歴、期待する効果などを確認し、皮脂腺破壊治療が適切かどうかを判断します。
治療が決まれば、施術の詳細や注意事項、費用、想定される経過などについて説明を受けます。不明な点や不安なことがあれば、この段階でしっかり確認しておきましょう。
施術当日の流れ
施術当日は、まずクレンジングと洗顔を行い、肌の汚れやメイクを落とします。
次に、施術部位に麻酔クリーム(表面麻酔)を塗布します。麻酔が効くまで20〜30分程度待機します。
麻酔が効いたら施術を開始します。アグネスの場合は特殊な絶縁針を毛穴に挿入し、高周波を照射します。アビクリアの場合はレーザーを照射します。施術時間は治療範囲によりますが、顔全体で20〜30分程度が目安です。
施術後は、冷却や保湿などのアフターケアを行い、肌の状態を確認して終了となります。
ダウンタイムと経過
皮脂腺破壊治療のダウンタイムは比較的軽度とされていますが、治療法や個人差により異なります。
施術直後には、治療部位に赤みや腫れ、軽度の痛みが生じることがあります。冷却により軽減できます。
翌日から数日間は、赤みや腫れが続くことがありますが、多くの場合は数日から1週間程度で落ち着きます。治療部位に小さなかさぶたができることがありますが、無理に剥がさないようにしましょう。
1〜2週間後には、赤みやかさぶたが治まり、通常の肌状態に戻ります。
アグネスなどの場合、施術翌日または翌々日に皮脂腺内の残渣物を圧出する「メルティング」という処置を行うことで、治療効果を高めることができます。
施術後の注意事項
施術後は以下の点に注意してください。
施術当日から洗顔やシャワーは可能ですが、治療部位を強くこすらないようにしましょう。
メイクは施術直後から可能な場合が多いですが、赤みが強い場合は翌日以降にした方がよいでしょう。
施術後は肌が敏感になっているため、日焼け止めを使用して紫外線対策を行ってください。
治療部位を触ったり、かさぶたを無理に剥がしたりしないでください。
医師から処方された塗り薬がある場合は、指示通りに使用してください。
7. メリットとデメリット
メリット
皮脂腺破壊治療のメリットとして、まず根本的な改善が期待できる点が挙げられます。皮脂腺そのものに作用するため、従来の対症療法では改善しなかった難治性のニキビにも効果が期待できます。
次に、効果が長期間持続する点があります。破壊された皮脂腺は再生しないため、治療効果は半永久的に続くとされています。
また、ダウンタイムが比較的短い点も挙げられます。外科的な切開を伴わないため、日常生活への影響が少なく、施術当日からメイクや洗顔が可能な場合がほとんどです。
さらに、様々なタイプのニキビに対応できる点があります。白ニキビ、黒ニキビ、赤ニキビ、嚢腫性ニキビなど、幅広いニキビに対応可能です。
そして、体の各部位にも施術できる点があります。顔だけでなく、首、背中、胸など体のニキビにも対応できます。
デメリット
一方、デメリットとしては、まず保険適用外である点が挙げられます。皮脂腺破壊治療は自由診療となるため、費用が高額になる傾向があります。
次に、複数回の治療が必要な点があります。1回の治療で完了することは少なく、通常3〜5回程度の施術が必要です。
また、副作用のリスクがある点も挙げられます。一時的な赤み、腫れ、内出血、色素沈着などが起こる可能性があります。まれに感染や瘢痕形成のリスクもあります。
さらに、すべてのニキビに有効とは限らない点があります。ニキビの原因や肌の状態によっては、期待した効果が得られないこともあります。
そして、治療を受けられない場合がある点があります。妊娠中や授乳中の方、ペースメーカーを使用している方、治療部位に皮膚疾患や炎症がある方などは、治療を受けられない場合があります。
費用の目安
皮脂腺破壊治療は自由診療のため、費用はクリニックによって異なります。一般的な目安として以下の範囲が挙げられます。
アグネスは、1回あたり2〜5万円程度(治療範囲により変動)です。アビクリアは、3回セットで20〜30万円程度です。イソトレチノイン(内服薬)は、1ヶ月あたり1〜3万円程度(検査費用別途)です。
これらの費用はあくまで目安であり、実際の費用はクリニックや治療範囲、必要な回数によって大きく異なります。カウンセリング時に詳細な見積もりを確認してください。
8. 他のニキビ治療法との比較
皮脂腺破壊治療以外にも、ニキビ治療にはさまざまな方法があります。それぞれの特徴を理解し、自分の症状や目的に合った治療法を選ぶことが大切です。
保険診療で受けられる治療
日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、保険診療で受けられる標準治療が推奨されています。
外用薬として、アダパレン(ディフェリンゲル)は毛穴の角化異常を改善し、面皰(コメド)の形成を抑制します。炎症性ニキビにも非炎症性ニキビにも有効で、第一選択薬として広く使用されています。
過酸化ベンゾイル(ベピオゲル)は、抗菌作用と角質剥離作用を併せ持ち、アクネ菌に対する耐性が生じにくいという特徴があります。
配合剤(デュアック、エピデュオ)は、複数の成分を配合することで、より高い効果が期待できます。
外用抗菌薬(クリンダマイシン、ナジフロキサシンなど)は、アクネ菌に対する抗菌作用があり、炎症性ニキビに使用されます。ただし、長期使用による耐性菌の出現に注意が必要です。
内服薬として、抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)は重症の炎症性ニキビに対して使用されますが、長期使用は避け、維持療法では外用薬に切り替えることが推奨されています。
漢方薬(十味敗毒湯、荊芥連翹湯、清上防風湯など)は、ニキビの状態や体質に合わせて処方されることがあります。
面皰圧出は、専用の器具を用いてニキビの中身(皮脂や角質)を押し出す処置です。自分で潰すのと違い、衛生的に行われ、ニキビ跡が残りにくいとされています。
自由診療で受けられる治療
ケミカルピーリングは、サリチル酸やグリコール酸などの薬剤を塗布し、古い角質を除去する治療です。毛穴の詰まりを改善し、ニキビのできにくい肌へと導きます。皮脂腺には直接作用しないため、効果は一時的です。
光治療・レーザー治療として、IPL(光治療)はニキビの赤みや色素沈着の改善に有効です。フラクショナルレーザーはニキビ跡(クレーター)の治療に用いられます。
イソトレチノイン(内服薬)は、前述の通り、皮脂腺を縮小させて皮脂分泌を抑制する強力な内服薬です。重症ニキビや他の治療で改善しないケースに検討されます。
治療法の選び方
ニキビ治療は段階的に行うことが基本です。まずは保険診療の標準治療を試し、それでも改善しない場合に自由診療を検討するのが一般的な流れです。
軽症から中等症のニキビには、外用薬(アダパレン、過酸化ベンゾイルなど)を中心とした保険診療が第一選択となります。
中等症から重症の炎症性ニキビには、外用薬に加えて内服抗菌薬の併用が検討されます。
標準治療で改善しない難治性ニキビや、繰り返すニキビには、皮脂腺破壊治療やイソトレチノインなどの自由診療が選択肢となります。
ニキビ跡(クレーター、赤み、色素沈着)には、フラクショナルレーザー、ダーマペン、ピーリングなどの治療が行われます。
重要なのは、自己判断で治療法を選ぶのではなく、皮膚科専門医の診察を受けて、自分の症状に最適な治療法を相談することです。
9. 皮脂腺破壊治療が適している方
皮脂腺破壊治療は、すべてのニキビ患者に必要なわけではありません。以下のような方に特に適していると考えられます。
適応となる方
同じ場所に繰り返しニキビができる方は、皮脂腺破壊治療の良い適応となります。特定の部位に何度もニキビができる場合、その部位の皮脂腺が肥大化している可能性があり、皮脂腺破壊治療が有効です。
保険診療の治療で効果が得られなかった方も適応となります。外用薬や内服薬を一定期間使用しても改善しない難治性のニキビには、異なるアプローチが必要です。
大人ニキビに悩んでいる方にも適しています。思春期を過ぎても続く大人ニキビは、皮脂腺の肥大化が原因となっていることが多く、根本的な治療が効果的です。
ニキビによるQOL(生活の質)の低下が大きい方にも検討されます。ニキビのせいで人前に出るのがつらい、精神的に参ってしまうという方には、早期の改善を目指す積極的な治療が有益かもしれません。
ニキビ跡ができやすい体質の方にも適応があります。ニキビができるとほぼ確実に跡が残ってしまう方は、ニキビ自体を作らないことが最優先となるため、皮脂腺破壊治療が選択肢となります。
体にニキビがある方にも適しています。背中や胸など、外用薬を塗りにくい部位のニキビには、皮脂腺破壊治療が有効な選択肢となります。
適応とならない場合
妊娠中・授乳中の方は、安全性が確立されていないため、治療は控える必要があります。
治療部位に活動性の皮膚疾患や感染症がある場合は、それらの治療を優先する必要があります。
ケロイド体質の方は、治療による瘢痕形成のリスクが高まる可能性があるため、慎重な判断が必要です。
ペースメーカーや金属インプラントを使用している方は、高周波治療を受けられない場合があります。
光線過敏症の方は、レーザー治療を受けられない場合があります。
思春期で軽症のニキビの方は、まずは保険診療の標準治療を試すことが推奨されます。
10. 新宿で皮脂腺破壊治療を受ける際のポイント
クリニック選びのポイント
新宿エリアには多くの美容皮膚科・皮膚科クリニックがあり、皮脂腺破壊治療を受けられる医療機関も複数あります。クリニックを選ぶ際は、以下のポイントを参考にしてください。
まず、皮膚科専門医が在籍しているかどうかを確認しましょう。ニキビは皮膚疾患の一種であり、皮膚科専門医による適切な診断が重要です。美容目的だけでなく、医学的な観点からも評価してもらえるクリニックを選びましょう。
次に、治療実績と経験を確認しましょう。皮脂腺破壊治療は技術を要する施術であり、経験豊富な医師による治療が望ましいです。症例数や症例写真(ビフォーアフター)を確認できると安心です。
また、カウンセリングの充実度も重要です。治療内容、期待できる効果、リスク、費用などについて丁寧に説明してくれるクリニックを選びましょう。質問に対して明確に回答してくれるかどうかも確認してください。
さらに、アフターケア体制も確認しましょう。施術後の経過観察や、万が一トラブルが生じた際の対応など、アフターケアが充実しているかどうかも重要なポイントです。
そして、アクセスのしやすさも考慮しましょう。複数回の通院が必要になるため、通いやすい立地であることも大切です。新宿は交通の便が良いため、この点では有利といえます。
最後に、費用の透明性を確認しましょう。施術費用だけでなく、初診料・再診料、麻酔代、アフターケア費用なども含めた総額を事前に確認しましょう。
治療前に確認すべきこと
実際に治療を受ける前に、以下の点を医師に確認しておくことをおすすめします。
自分のニキビの状態に皮脂腺破壊治療が適しているか、他の治療法との比較、予想される効果と限界、必要な治療回数と期間、起こりうる副作用とその対処法、治療費の総額(すべての費用を含む)、治療後の注意事項とスキンケア方法などを確認しましょう。
治療後のセルフケア
皮脂腺破壊治療の効果を維持し、新たなニキビを予防するためには、日常的なセルフケアも重要です。
適切な洗顔として、1日2回、朝と夜に優しく洗顔しましょう。強くこすったり、洗いすぎたりするのは逆効果です。
保湿ケアも大切です。皮脂分泌が減少すると、肌が乾燥しやすくなることがあります。オイルフリーや低刺激の保湿剤を使用して、適度な保湿を心がけましょう。
紫外線対策も欠かせません。紫外線は肌にダメージを与え、ニキビやニキビ跡を悪化させる要因となります。日焼け止めを使用し、紫外線対策を行いましょう。
生活習慣の改善も重要です。睡眠不足、ストレス、偏った食事などはニキビを悪化させる要因となります。規則正しい生活を心がけましょう。
適切な化粧品選びも大切です。ニキビ肌には、油分の少ない化粧品(ノンコメドジェニック)を選ぶことが推奨されます。

11. よくある質問(Q&A)
皮脂腺破壊治療に関してよくある質問にお答えします。
A. 顔には約20万個もの皮脂腺があり、治療で処理するのはそのうちの数百個程度です。また、多くの治療法では、肥大化した皮脂腺や過剰に活動している皮脂腺のみを選択的に処理し、正常な皮脂腺は残します。そのため、治療後に極端な乾燥肌になることは通常ありません。ただし、一時的に乾燥を感じることがあるため、適切な保湿ケアを行うことが大切です。
A. 多くのクリニックでは、施術前に麻酔クリーム(表面麻酔)を塗布するため、施術中の痛みは軽減されます。痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの方が「チクチクする程度」「我慢できる程度」と表現されます。痛みに敏感な方は、事前に医師に相談し、麻酔の方法を調整してもらうことも可能です。
Q. 1回の治療で効果はありますか?
A. 1回の治療でも効果を実感できるケースはありますが、十分な効果を得るためには通常3〜5回程度の治療が必要とされています。治療回数は、ニキビの状態や重症度、治療への反応などによって個人差があります。医師と相談しながら、適切な治療計画を立てることが大切です。
Q. 治療後、元の状態に戻ることはありますか?
A. 破壊された皮脂腺は基本的に再生しないため、治療した部位からの皮脂分泌は長期間抑制されます。ただし、治療していない部位に新たなニキビができる可能性はあります。また、ホルモンバランスの変化や生活習慣などにより、肌の状態が変化することもあります。治療効果を維持するためには、適切なスキンケアと生活習慣の改善も重要です。
Q. 保険は適用されますか?
A. 皮脂腺破壊治療は、現在のところ保険適用外の自由診療となります。そのため、費用は全額自己負担となります。費用はクリニックや治療内容によって異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
Q. 副作用や合併症のリスクはありますか?
A. 一般的な副作用として、一時的な赤み、腫れ、軽度の痛み、内出血、かさぶたの形成などが挙げられます。これらは通常、数日から1〜2週間で治まります。まれな合併症として、感染、色素沈着、瘢痕形成などが報告されていますが、適切な施術と術後ケアにより、リスクを最小限に抑えることができます。気になる症状があれば、早めにクリニックに相談してください。
Q. 施術後、いつからメイクできますか?
A. 多くの場合、施術直後または翌日からメイクが可能です。ただし、赤みや腫れが強い場合は、肌の状態が落ち着くまで待った方がよいでしょう。メイクをする際は、低刺激の化粧品を使用し、肌に負担をかけないようにしましょう。
Q. ニキビ跡(クレーター)にも効果はありますか?
A. 皮脂腺破壊治療は、主に活動性のニキビ(新しくできるニキビ)に対する治療であり、すでに形成されたニキビ跡(クレーター、凹み)への直接的な効果は限定的です。ニキビ跡の治療には、フラクショナルレーザー、ダーマペン、サブシジョンなど、別のアプローチが必要となります。ただし、新しいニキビを作らないことでニキビ跡の悪化を防ぐ効果は期待できます。
12. まとめ
繰り返すニキビに悩んでいる方にとって、皮脂腺破壊治療は根本的な改善を目指せる新たな選択肢です。皮脂腺そのものに働きかけることで、従来の対症療法では得られなかった効果が期待できます。
本記事のポイントを整理すると、皮脂腺破壊治療は、高周波やレーザーなどのエネルギーを用いて皮脂腺を選択的に破壊・凝固させる治療法です。破壊された皮脂腺は再生しないため、効果は長期間持続するとされています。代表的な治療法として、アグネス、皮脂腺電気凝固法、アビクリアなどがあります。同じ場所に繰り返しできるニキビや、保険診療で改善しない難治性ニキビに適しています。自由診療のため費用は自己負担となり、複数回の治療が必要です。すべてのニキビに必要なわけではなく、まずは皮膚科専門医の診察を受けることが重要です。
ニキビ治療は、症状に応じた適切な方法を選ぶことが大切です。軽症のニキビであれば、保険診療の標準治療で十分改善できるケースが多くあります。一方、何をしても治らない、同じ場所に繰り返しできるといった難治性のニキビでお悩みの方には、皮脂腺破壊治療が有効な選択肢となるかもしれません。
新宿エリアには皮脂腺破壊治療を提供するクリニックが複数あります。治療を検討されている方は、まずは専門医に相談し、ご自身のニキビの状態に最適な治療法を見つけてください。
アイシークリニック新宿院では、患者様一人ひとりの肌状態を丁寧に診察し、最適な治療プランをご提案しております。ニキビでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(日本皮膚科学会)
- アキュテイン(ACCUTANE)(わが国で未承認の難治性ニキビ治療薬)に関する注意喚起について(厚生労働省)
- 皮膚の構造と機能(MSDマニュアル家庭版)
- 皮脂腺(Wikipedia)
- 尋常性ざ瘡(にきび)(済生会)
- スキンケアナビ 肌にあるその他の器官(花王)
- Mindsガイドラインライブラリ 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務