デュアック配合ゲルの正しい塗り方|効果を最大限に引き出すための完全ガイド

皮膚科で処方されるニキビ治療薬「デュアック配合ゲル」は、炎症性ニキビの改善に高い効果が期待できる医薬品です。しかし、せっかく処方されても、正しい塗り方を知らなければ十分な効果を得られないばかりか、副作用のリスクが高まることもあります。

本コラムでは、デュアック配合ゲルの基礎知識から正しい塗り方、使用量の目安、副作用への対処法まで、治療効果を最大限に引き出すために知っておきたい情報を詳しく解説します。これからデュアック配合ゲルによる治療を始める方、現在使用中だけれど効果を実感できていない方は、ぜひ参考にしてください。


目次

  1. デュアック配合ゲルとは
  2. デュアック配合ゲルに含まれる2つの有効成分
  3. デュアック配合ゲルが効くニキビの種類
  4. 正しい塗り方の基本手順
  5. 使用量の目安とFTU(フィンガーチップユニット)
  6. 塗り始めは少量から段階的に増やす
  7. 塗る前に行う準備
  8. 塗った後のケアと注意点
  9. 起こりうる副作用と対処法
  10. 使用期間の目安と治療の流れ
  11. 他のニキビ治療薬との違い
  12. 保管方法と取り扱いの注意
  13. よくある質問
  14. まとめ

1. デュアック配合ゲルとは

デュアック配合ゲルは、2015年に厚生労働省から「尋常性ざ瘡(ニキビ)治療剤」として承認された医療用医薬品です。尋常性ざ瘡とは、いわゆる「ニキビ」の正式な医学用語であり、毛穴に皮脂や古い角質が詰まり、アクネ菌が増殖して炎症を起こすことで発症する慢性の皮膚疾患を指します。

デュアック配合ゲルの最大の特徴は、2種類の有効成分が1つのゲルに配合されている「合剤」であることです。これにより、従来は別々に塗布する必要があった2つの薬の効果を、1回の塗布で得ることができます。

また、日本皮膚科学会が策定した「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、炎症性ニキビ(赤ニキビ)に対する治療薬として、軽症から重症まですべての重症度において「推奨度A(行うよう強く推奨する)」に位置づけられています。これは、デュアック配合ゲルの有効性と安全性が、多くの臨床試験によって科学的に裏付けられていることを意味します。

デュアック配合ゲルは医療用医薬品であるため、ドラッグストアや通販で購入することはできません。使用するためには、皮膚科を受診し、医師の診察を受けた上で処方してもらう必要があります。


2. デュアック配合ゲルに含まれる2つの有効成分

デュアック配合ゲルには、「過酸化ベンゾイル」と「クリンダマイシン」という2種類の有効成分が配合されています。それぞれの成分がどのような働きをするのか、詳しく見ていきましょう。

過酸化ベンゾイル(BPO)

過酸化ベンゾイルは、海外では数十年前からニキビ治療の標準薬として広く使用されてきた成分ですが、日本では2014年に初めて医薬品として承認されました。単独成分としては「ベピオゲル」や「ベピオローション」という商品名で処方されています。

過酸化ベンゾイルは強力な酸化剤であり、皮膚に塗布されると分解されてフリーラジカル(酸化ベンゾイルラジカルやフェニルラジカルなど)が生じます。このフリーラジカルが、ニキビの原因菌であるアクネ菌や黄色ブドウ球菌の細胞膜やDNAを直接障害し、殺菌作用を発揮します。

過酸化ベンゾイルの重要な特徴として、抗菌薬とは異なる仕組みで殺菌するため、長期間使用しても耐性菌が出現しにくいという点が挙げられます。抗菌薬の耐性化は世界的な問題となっていますが、過酸化ベンゾイルはこの問題を回避できる成分として注目されています。

また、過酸化ベンゾイルには「角層剥離作用(ピーリング作用)」もあります。フリーラジカルが角質細胞同士を結合しているタンパク質(コルネオデスモソーム)を変性させることで、角質細胞同士の結合が緩み、古い角質がはがれやすくなります。これにより、毛穴の詰まりが改善され、ニキビのできにくい肌環境を整えることができます。

クリンダマイシン

クリンダマイシンは、リンコマイシン系に分類される抗菌薬(抗生物質)です。単独成分としては「ダラシンTゲル」や「ダラシンTローション」という商品名で処方されています。

クリンダマイシンは、細菌がタンパク質を合成する過程を阻害することで、アクネ菌の増殖を抑制します。過酸化ベンゾイルの殺菌作用とは異なるメカニズムで作用するため、2つの成分を組み合わせることで、より強力かつ確実にニキビの原因菌を退治することができます。

また、クリンダマイシンには抗炎症作用もあり、すでに炎症を起こしている赤ニキビの症状を鎮める効果も期待できます。

2つの成分の相乗効果

デュアック配合ゲルでは、過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンが1つのゲルに配合されることで、以下のような相乗効果が得られます。

まず、速効性のある抗菌薬(クリンダマイシン)と、耐性菌の心配がない殺菌剤(過酸化ベンゾイル)を組み合わせることで、効果的にニキビの原因菌を減らすことができます。

また、過酸化ベンゾイルの存在により、クリンダマイシンに対する耐性菌が出現しにくくなるという報告もあります。つまり、過酸化ベンゾイルがクリンダマイシンの「弱点」を補う形で働いているといえます。

さらに、過酸化ベンゾイルの角層剥離作用によって毛穴の詰まりが改善されるため、新たなニキビの発生を予防する効果も期待できます。


3. デュアック配合ゲルが効くニキビの種類

ニキビは進行段階によって、いくつかの種類に分類されます。デュアック配合ゲルがどのようなニキビに効果を発揮するのか、ニキビの種類とあわせて解説します。

ニキビの進行段階

ニキビは以下のような段階を経て進行します。

まず最初の段階は「マイクロコメド」と呼ばれる状態です。毛穴の中で皮脂がたまり始めていますが、まだ肉眼では見えない微小な状態です。この段階では、本人も自覚がないことがほとんどです。

次の段階が「コメド(面皰)」です。毛穴に皮脂や古い角質が詰まった状態で、肉眼でも確認できるようになります。コメドには「白ニキビ(閉鎖面皰)」と「黒ニキビ(開放面皰)」の2種類があります。白ニキビは毛穴が閉じた状態で皮脂がたまっているもの、黒ニキビは毛穴が開いており、詰まった皮脂が空気に触れて酸化し、黒っぽく見えるものです。

その後、毛穴の中でアクネ菌が増殖し、炎症を起こすと「赤ニキビ(紅色丘疹)」になります。赤く腫れて痛みを伴うことがあります。さらに炎症が進行すると、膿がたまった「黄ニキビ(膿疱)」となります。

最も重症化した段階では、「結節」や「囊腫(のうしゅ)」と呼ばれる大きなしこりが形成されることもあります。この段階まで進行すると、ニキビ跡(瘢痕)が残りやすくなります。

デュアック配合ゲルの適応

デュアック配合ゲルは、主に炎症を起こした「赤ニキビ」や「黄ニキビ」の治療に使用されます。臨床試験では、12週間の使用で赤ニキビが約90%減少したという結果が報告されています。2週間という比較的早い段階から効果が現れ始め、約60%の減少が確認されています。

また、デュアック配合ゲルは白ニキビや黒ニキビにも効果があります。過酸化ベンゾイルの角層剥離作用によって毛穴の詰まりが改善されるため、コメドの段階でも治療効果が期待できます。

さらに重要なのは、デュアック配合ゲルは「面で塗る」薬であるという点です。赤ニキビができている部分だけでなく、ニキビができやすい部位全体に塗布することで、まだ目に見えないマイクロコメドの段階から予防的に治療することができます。これにより、新たなニキビの発生を抑制し、ニキビ跡の形成を予防する効果も期待できます。


4. 正しい塗り方の基本手順

デュアック配合ゲルの効果を最大限に引き出すためには、正しい塗り方を守ることが重要です。以下に基本的な手順を説明します。

手順1:洗顔

デュアック配合ゲルを塗る前に、まず洗顔を行います。洗顔料を使って顔全体をやさしく洗い、汚れや余分な皮脂を落としましょう。ゴシゴシと強くこすると肌への刺激になり、ニキビを悪化させる可能性がありますので、やさしく丁寧に洗うことが大切です。

洗顔後は、清潔で柔らかいタオルを使って水分を拭き取ります。このとき、ゴシゴシこすらず、タオルを肌に軽く押し当てるようにして水分を吸い取りましょう。

手順2:保湿

洗顔後、デュアック配合ゲルを塗る前に、化粧水や乳液で保湿を行います。

「ニキビがあるのに保湿して大丈夫?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、保湿はニキビ治療において非常に重要です。肌が乾燥すると、バリア機能が低下して外部刺激を受けやすくなるだけでなく、肌を守ろうとして皮脂の分泌が過剰になり、かえってニキビができやすくなります。

特にデュアック配合ゲルに含まれる過酸化ベンゾイルには、肌を乾燥させる作用があります。事前に保湿をしっかり行っておくことで、デュアック配合ゲルによる乾燥を軽減し、治療を続けやすくなります。

保湿に使用する化粧水や乳液は、「ノンコメドジェニックテスト済み」と記載のある製品を選ぶことをおすすめします。ノンコメドジェニックテスト済みとは、その製品がニキビの初期段階であるコメド(毛穴の詰まり)を誘発しにくいことが、臨床試験で確認されていることを意味します。

手順3:デュアック配合ゲルの塗布

保湿が完了したら、デュアック配合ゲルを塗布します。

適量を指先に取り、ニキビができている部分とその周囲に広げるようにして塗ります。このとき、以下の点に注意しましょう。

まず、強くこすらないことが重要です。ニキビは刺激を受けると悪化しやすいため、やさしく塗り広げるようにしましょう。

次に、赤ニキビだけでなく、ニキビができやすい部位全体に「面」で塗ることが大切です。ポイント塗りではなく、おでこ、頬、顎など、ニキビができやすいエリア全体に薄く塗り広げます。これにより、目に見えないマイクロコメドの段階から予防的に治療することができます。

また、目の周囲、口唇、鼻翼(小鼻の横)、粘膜には塗らないように注意しましょう。これらの部位に付着した場合は、すぐに水で洗い流してください。

塗るタイミング

デュアック配合ゲルは1日1回、就寝前に使用します。入浴後、洗顔と保湿を行ってから塗布するのがおすすめです。

就寝前に塗布する理由は、過酸化ベンゾイルには漂白作用があるため、日中に使用すると髪や眉毛、衣類などを脱色してしまう可能性があるからです。また、紫外線を浴びると肌への刺激が強くなる可能性もあるため、夜間の使用が推奨されています。


5. 使用量の目安とFTU(フィンガーチップユニット)

デュアック配合ゲルを適切な量で使用することは、効果を得るために非常に重要です。量が少なすぎると十分な効果が得られず、多すぎると副作用のリスクが高まります。ここでは、使用量の目安について詳しく説明します。

FTU(フィンガーチップユニット)とは

外用薬の使用量を測る目安として、「FTU(フィンガーチップユニット)」という単位がよく使われます。1FTUとは、人差し指の指先から第一関節までの長さに、チューブから絞り出した薬の量のことで、約0.5gに相当します。

1FTUの薬を塗り広げると、大人の手のひら約2枚分(約300〜400平方センチメートル)の面積をカバーできるとされています。

顔全体への使用量

デュアック配合ゲルを顔全体に塗布する場合、約0.3g〜0.6g程度が目安となります。これは、人差し指の第一関節の長さ程度の量で、顔の半分に塗る量が約0.3g、顔全体であれば0.5g〜0.6g程度と考えてください。

ただし、個人の顔の大きさや、ニキビのできている範囲によって適切な量は異なります。最初は少なめから始めて、医師の指示に従いながら調整していくことが大切です。


6. 塗り始めは少量から段階的に増やす

デュアック配合ゲルは、特に使い始めの時期に刺激感(乾燥、皮むけ、ヒリヒリ感、赤み)を感じやすい薬です。これは主に過酸化ベンゾイルの角層剥離作用によるもので、多くの場合、使い続けるうちに肌が慣れて症状は軽減していきます。

しかし、最初から規定量を顔全体に塗布すると、刺激が強すぎて治療を継続できなくなってしまうことがあります。そのため、以下のような段階的なアプローチが推奨されています。

第1段階:最初の数日〜1週間

最初は、1/8FTU(米粒大)〜1/4FTU(あずき大)程度の少量を、おでこ、頬、顎のうち1か所の狭い範囲だけに塗り始めます。

例えば、「まずはおでこだけに塗ってみる」「頬の一部だけに塗ってみる」といった具合です。数日間続けて、肌に異常がないか確認しましょう。

第2段階:1〜2週間目

第1段階で問題がなければ、塗る範囲を少しずつ広げていきます。おでこ、頬、顎と、塗布する部位を増やしていきましょう。使用量も少しずつ増やしていきます。

第3段階:2〜3週間目以降

肌が慣れてきたら、最終的には1FTU程度の量を顔全体に塗ることを目指します。ただし、無理に増やす必要はありません。自分の肌の状態を見ながら、徐々に調整していくことが大切です。

このように段階的に使用量と範囲を増やしていくことで、副作用を最小限に抑えながら、効果的な治療を行うことができます。


7. 塗る前に行う準備

デュアック配合ゲルの効果を最大限に発揮させ、副作用を軽減するためには、塗る前の準備が重要です。ここでは、準備のポイントについて詳しく解説します。

正しい洗顔方法

洗顔は、ニキビ治療において基本中の基本です。しかし、間違った洗顔方法はかえってニキビを悪化させることがあります。

洗顔は1日2回、朝と夜に行いましょう。洗いすぎると肌のバリア機能が低下し、乾燥や刺激の原因となります。

洗顔料は、低刺激性のものを選びましょう。スクラブ入りの洗顔料や、刺激の強い成分が含まれているものは避けた方がよいでしょう。ニキビ肌用の洗顔料や、ノンコメドジェニックテスト済みの洗顔料を選ぶことをおすすめします。

洗顔のときは、まず手をきれいに洗い、洗顔料をしっかり泡立てます。泡で顔を包み込むようにして、やさしく洗いましょう。ゴシゴシこすることは厳禁です。

すすぎは十分に行い、洗顔料が肌に残らないようにしましょう。特に、生え際やフェイスラインは洗顔料が残りやすいので注意が必要です。

保湿の重要性

前述のとおり、デュアック配合ゲルを塗る前の保湿は非常に重要です。保湿を行うことで、以下のようなメリットがあります。

まず、デュアック配合ゲルによる乾燥や刺激を軽減することができます。過酸化ベンゾイルには肌を乾燥させる作用があるため、事前に保湿をしておくことで、治療に伴う不快な症状を和らげることができます。

また、肌のバリア機能を維持することで、外部刺激から肌を守り、ニキビの悪化を防ぐことができます。

保湿剤を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。

ノンコメドジェニックテスト済みの製品を選ぶことが最も重要です。ノンコメドジェニックテスト済みの製品は、毛穴を詰まらせにくい処方になっているため、保湿をしながらニキビを予防することができます。

油分が多すぎる製品は避けましょう。過度な油分はアクネ菌のエサとなり、ニキビを悪化させる可能性があります。ジェルタイプや軽いテクスチャーの乳液がおすすめです。

セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンなどの保湿成分が含まれている製品を選ぶと、効果的に肌のうるおいを保つことができます。

化粧水と乳液の塗り方

化粧水は、洗顔後すぐに使用しましょう。洗顔後の肌は乾燥しやすい状態にあるため、できるだけ早く水分を補給することが大切です。

化粧水を手のひらに適量取り、顔全体にやさしく押さえるようにしてなじませます。コットンで拭き取るように塗ることは、ニキビへの刺激となるため避けましょう。

化粧水がなじんだら、乳液を使用します。乳液は化粧水で補った水分を閉じ込め、肌のうるおいを保つ役割があります。適量を手のひらで温めてから、顔全体にやさしくなじませましょう。

保湿剤が肌になじんだら、デュアック配合ゲルを塗布します。保湿剤とデュアック配合ゲルの間隔は特に決められていませんが、保湿剤がべたつかない程度に浸透してから塗布するとよいでしょう。


8. 塗った後のケアと注意点

デュアック配合ゲルを塗布した後にも、いくつかの注意点があります。適切なケアを行うことで、治療効果を高め、副作用を軽減することができます。

紫外線対策

デュアック配合ゲルを塗布した肌は、紫外線に対して敏感になっています。日光や日焼けランプなどを浴びると、乾燥や赤みなどの副作用が現れやすくなる可能性があります。

外出する際は、日焼け止めクリームを使用し、帽子や日傘などで紫外線を避けるようにしましょう。日焼け止めもノンコメドジェニックテスト済みの製品を選ぶことをおすすめします。

夏場や日差しの強い時期は特に注意が必要です。できるだけ直射日光を避け、日中の屋外活動は控えめにしましょう。

漂白作用に注意

デュアック配合ゲルに含まれる過酸化ベンゾイルには、漂白作用があります。髪の毛や眉毛に付着すると脱色する可能性があるため、塗布時には注意が必要です。

また、衣類や寝具(枕カバー、シーツなど)に付着すると、色落ちや変色を起こすことがあります。就寝時は白いタオルを枕に敷くなどの対策をとりましょう。

朝、洗顔する際に水だけで洗うと、タオルに付着した薬剤で変色が起こることがあります。洗顔料を使ってしっかり洗顔するか、白いタオルを使用するようにしましょう。

他の外用剤との併用

デュアック配合ゲルを他の外用剤と併用する場合は、医師の指示に従ってください。一般的には、以下の順番で塗布することが多いです。

  1. 化粧水
  2. 乳液(保湿剤)
  3. デュアック配合ゲル
  4. その他の外用薬(医師の指示がある場合)

ただし、エリスロマイシンを含む製剤との併用は、デュアック配合ゲルの効果を減弱させる可能性があるため避けましょう。また、トレチノインとの併用も注意が必要です。

併用する薬がある場合は、必ず医師に相談し、適切な使用方法の指示を受けてください。


9. 起こりうる副作用と対処法

デュアック配合ゲルは、特に使い始めの2週間〜1か月程度、副作用が出やすいという特徴があります。ここでは、起こりうる副作用とその対処法について解説します。

よくみられる副作用

デュアック配合ゲルの使用でよくみられる副作用は、主に塗布部位に現れる皮膚症状です。

皮膚の乾燥は最もよくみられる症状の一つです。過酸化ベンゾイルの角層剥離作用により、肌が乾燥しやすくなります。

皮むけ(落屑)も頻度の高い症状です。古い角質がはがれ落ちることで、粉を吹いたような状態になることがあります。

赤み(紅斑)も比較的よくみられます。肌が敏感になり、赤くなることがあります。

ヒリヒリ感や刺激感を感じることもあります。特に塗布直後に感じやすい症状です。

かゆみを伴うこともあります。

これらの症状は、肌が薬に慣れていない使い始めの時期に現れやすく、多くの場合、使い続けるうちに自然に軽減していきます。

副作用への対処法

軽度の副作用が現れた場合、以下の対処法を試してみましょう。

まず、保湿を十分に行うことが重要です。低刺激性の保湿剤を使って、いつも以上にしっかりと保湿してください。これにより、乾燥や皮むけを軽減することができます。

使用量を減らすことも効果的です。ヒリヒリ感が強い場合は、塗る量を減らしてみましょう。少量でも継続することで、徐々に肌を慣らしていくことができます。

使用頻度を調整することも一つの方法です。毎日の使用が辛い場合は、1日おきに塗るなどして、少しずつ肌を慣らしていくのも有効です。ただし、この場合は必ず医師に相談してください。

刺激感が強いときは、一度水で洗い流すことも検討しましょう。

医師に相談すべき症状

以下のような症状が現れた場合は、使用を中止し、速やかに医師に相談してください。

強いかぶれや接触皮膚炎(湿疹様の症状)が現れた場合は注意が必要です。これは薬剤に対するアレルギー反応の可能性があります。

症状が長期間改善しない、または悪化する場合も医師に相談しましょう。

重度の下痢や腹痛が現れた場合も、すぐに医師に相談してください。これは非常にまれですが、クリンダマイシンの内服薬で報告されている大腸炎の副作用が、外用剤でも起こる可能性があります。

自己判断で使用を中止せず、必ず医師に相談した上で対応を決めることが大切です。


10. 使用期間の目安と治療の流れ

デュアック配合ゲルによる治療は、どのくらいの期間続ける必要があるのでしょうか。ここでは、使用期間の目安と治療の流れについて解説します。

効果が現れるまでの期間

デュアック配合ゲルの効果は、一般的に2週間〜3か月程度で現れるとされています。臨床試験では、使用開始から2週間で赤ニキビが約60%減少し、12週間で約90%減少したという結果が報告されています。

ただし、効果の現れ方には個人差があります。すぐに効果を感じられる方もいれば、効果を実感するまでに時間がかかる方もいます。焦らず、継続して使用することが大切です。

使用期間の上限

デュアック配合ゲルには、クリンダマイシンという抗菌薬が含まれています。抗菌薬を長期間連続して使用すると、耐性菌が出現する可能性があります。

そのため、添付文書では「12週間で効果が認められない場合には使用を中止すること」とされています。また、効果が認められている場合でも、12週間を超えて連続使用する際には、その必要性を慎重に判断することが求められています。

一般的には、デュアック配合ゲルの連続使用は3か月(12週間)程度を目安とし、それ以降は他の外用薬に切り替えることが推奨されています。

治療の流れ

ニキビ治療は、「急性炎症期」と「維持期」の2つのフェーズに分けて考えられます。

急性炎症期は、炎症を起こしているニキビを治療する期間です。この期間にデュアック配合ゲルのような抗菌薬配合の外用薬を使用し、炎症性ニキビを減らしていきます。期間の目安は約3か月です。

維持期は、ニキビが改善した後、再発を防ぐために行う治療期間です。この期間には、抗菌薬を含まない外用薬(ベピオゲル、ベピオローション、ディフェリンゲル、エピデュオゲルなど)に切り替え、毛穴の詰まりを改善しながら、ニキビのできにくい肌環境を維持します。

デュアック配合ゲルで炎症性ニキビが改善したら、担当医と相談の上、維持療法に移行することが重要です。ニキビは再発しやすい疾患であるため、症状が改善しても、適切な維持療法を続けることが大切です。

効果が感じられない場合

デュアック配合ゲルを12週間使用しても効果が実感できない場合は、以下の可能性が考えられます。

まず、薬の塗り方が適切でない可能性があります。正しい量を正しい方法で塗布できているか、改めて確認してみましょう。ポイント塗りではなく、面で塗布することが重要です。

また、症状に対して薬の効果が不十分である可能性もあります。この場合は、他の治療法への切り替えを検討する必要があります。

効果が感じられない場合は、自己判断で使用を中止せず、必ず医師に相談してください。


11. 他のニキビ治療薬との違い

皮膚科で処方されるニキビ治療薬には、デュアック配合ゲル以外にもさまざまな種類があります。ここでは、主な外用薬との違いについて解説します。

ベピオゲル・ベピオローションとの違い

ベピオゲルおよびベピオローションは、過酸化ベンゾイル単独の製剤です。デュアック配合ゲルとの違いは、クリンダマイシン(抗菌薬)が含まれていない点です。

デュアック配合ゲルは、過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンの相乗効果により、ベピオよりも強力な抗菌作用が期待できます。そのため、炎症性ニキビがたくさんある場合には、デュアック配合ゲルの方が適している場合があります。

一方、ベピオには抗菌薬が含まれていないため、長期間の使用が可能です。維持療法や、軽症のニキビの治療にはベピオが適しています。

ディフェリンゲルとの違い

ディフェリンゲル(アダパレン)は、レチノイド様作用を持つ外用薬です。毛穴の詰まりを改善し、コメド(白ニキビ・黒ニキビ)を減らす効果があります。

ディフェリンゲルは主に非炎症性ニキビ(コメド)に効果があり、炎症性ニキビに対する効果はデュアック配合ゲルに比べると限定的です。一方、デュアック配合ゲルは主に炎症性ニキビに効果があります。

両者は作用機序が異なるため、ニキビの症状によって使い分けられたり、併用されたりすることがあります。

エピデュオゲルとの違い

エピデュオゲルは、過酸化ベンゾイルとアダパレンの配合剤です。過酸化ベンゾイルの抗菌作用・角層剥離作用と、アダパレンの毛穴詰まり改善作用を兼ね備えています。

デュアック配合ゲルとの違いは、配合されている成分です。デュアックには抗菌薬(クリンダマイシン)が含まれているのに対し、エピデュオにはアダパレンが含まれています。

エピデュオは抗菌薬を含まないため、長期間の使用が可能です。維持療法にも適しています。一方、デュアック配合ゲルは抗菌薬が含まれているため、連続使用は3か月程度を目安とします。

ダラシンTゲル・ダラシンTローションとの違い

ダラシンTゲルおよびダラシンTローションは、クリンダマイシン単独の製剤です。デュアック配合ゲルに含まれる抗菌薬と同じ成分です。

デュアック配合ゲルには過酸化ベンゾイルが配合されているため、ダラシンよりも強力な抗菌効果が期待でき、また耐性菌が出現しにくいというメリットがあります。

治療薬の選び方

どの治療薬が適しているかは、ニキビの種類、重症度、患者の肌の状態などによって異なります。自分の症状に合った治療薬を使用するためには、皮膚科を受診し、医師の診察を受けることが大切です。


12. 保管方法と取り扱いの注意

デュアック配合ゲルは、保管方法に注意が必要な医薬品です。適切に保管しないと、薬の品質が低下し、効果が減弱したり、副作用のリスクが高まったりする可能性があります。

冷蔵庫での保管

デュアック配合ゲルは、密栓したまま冷蔵庫(2〜8℃)で保管してください。室温で保管すると、クリンダマイシンに変化がみられることがあります。

特に夏場は室温が上昇しやすいため、必ず冷蔵庫で保管しましょう。30℃を超える環境で保管すると、薬の品質が低下する可能性があります。

凍らせないように注意してください。冷凍庫での保管は避けましょう。

保管場所の注意点

小さい子どもの手の届かない場所に保管してください。

直射日光の当たる場所は避けましょう。光によって薬が分解される可能性があります。

他の容器への移し替えはしないでください。誤用や品質低下の原因となります。

使用期限

デュアック配合ゲルの有効期間は3年です。使用期限を過ぎた場合は使用しないでください。

また、使用期限内であっても、ゲルの質感、色、匂いに異変を感じた場合は使用を中止し、新しい製品を処方してもらいましょう。


13. よくある質問

デュアック配合ゲルに関して、よく寄せられる質問にお答えします。

デュアック配合ゲルはどこで買えますか?

デュアック配合ゲルは医療用医薬品であるため、ドラッグストアや通販で購入することはできません。使用するには、皮膚科を受診し、医師の処方を受ける必要があります。

デュアック配合ゲルは何ニキビに効きますか?

デュアック配合ゲルは、白ニキビ、黒ニキビ、赤ニキビ、黄ニキビすべてに効果があります。特に、炎症を起こしている赤ニキビや黄ニキビに対して高い効果を発揮します。

デュアック配合ゲルを使い続けるとどうなりますか?

デュアック配合ゲルには抗菌薬(クリンダマイシン)が含まれているため、長期間連続して使用すると、耐性菌が出現する可能性があります。そのため、基本的には3か月(12週間)程度を連続使用の目安とし、その後は他の外用薬への切り替えを検討します。

デュアック配合ゲルの副作用はひどいですか?

副作用の程度には個人差がありますが、特に使い始めの2週間程度は、乾燥、皮むけ、ヒリヒリ感、赤みなどの症状が現れやすいです。多くの場合、使い続けるうちに肌が慣れて症状は軽減していきます。少量から段階的に使用量を増やしていくことで、副作用を最小限に抑えることができます。

デュアック配合ゲルでニキビはどのくらいで治りますか?

個人差がありますが、一般的には2週間〜3か月程度で効果が現れます。臨床試験では、2週間で約60%、12週間で約90%の赤ニキビが減少したという結果が報告されています。

妊娠中や授乳中でも使用できますか?

妊娠中の方は、有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用し、使用前に必ず医師に相談してください。授乳中の方も、使用前に医師に相談することをおすすめします。

12歳未満の子どもでも使用できますか?

デュアック配合ゲルの12歳未満の小児に対する安全性は確認されていないため、使用を控えるべきとされています。お子様のニキビ治療については、皮膚科医にご相談ください。

化粧はしても大丈夫ですか?

デュアック配合ゲルを使用中でも、化粧をすることは可能です。ただし、使用する化粧品はノンコメドジェニックテスト済みの製品を選ぶことをおすすめします。また、厚塗りは毛穴を詰まらせる原因となるため、軽めのメイクを心がけましょう。


14. まとめ

デュアック配合ゲルは、過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンの2つの有効成分を配合した、炎症性ニキビに対して高い効果が期待できる治療薬です。

正しい塗り方のポイントをまとめると、以下のようになります。

使用のタイミングは、1日1回、就寝前です。入浴後、洗顔と保湿を行ってから塗布します。

塗布前の準備として、低刺激性の洗顔料でやさしく洗顔し、ノンコメドジェニックテスト済みの化粧水や乳液でしっかり保湿します。

塗り方は、ニキビができている部分だけでなく、ニキビができやすい部位全体に「面」で塗り広げます。強くこすらず、やさしく塗ることが大切です。

使用量は、最初は少量(米粒大〜あずき大)から始め、1〜2週間かけて徐々に増やしていきます。最終的には顔全体に1FTU程度を塗布することを目指します。

副作用として、使い始めの時期に乾燥、皮むけ、ヒリヒリ感、赤みなどが現れることがありますが、多くの場合、使い続けるうちに軽減します。十分な保湿と段階的な使用量の増加で、副作用を最小限に抑えましょう。

使用期間は、連続使用は3か月程度を目安とし、その後は医師と相談の上、維持療法への切り替えを検討します。

保管方法は、冷蔵庫(2〜8℃)で密栓して保管します。

ニキビは再発しやすい疾患であり、根気強く治療を続けることが大切です。効果がすぐに現れなくても諦めず、医師の指示に従って適切な治療を続けましょう。気になる症状や疑問があれば、遠慮なく皮膚科医にご相談ください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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