ニキビ治療薬として皮膚科で処方される「デュアック配合ゲル」は、その効果の高さから「すごい」と評判の外用薬です。日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨度Aに位置づけられており、炎症性ニキビの治療において第一選択薬のひとつとなっています。臨床試験では、使用開始からわずか2週間で約60%、12週間で約90%もの赤ニキビが減少したという驚くべき結果が報告されています。本記事では、アイシークリニック新宿院の監修のもと、デュアック配合ゲルがなぜこれほど高い評価を得ているのか、その効果のメカニズムから正しい使い方、副作用への対処法まで、詳しく解説していきます。

目次
- ニキビ(尋常性痤瘡)とは
- ニキビができるメカニズム
- ニキビの種類と進行段階
- デュアック配合ゲルとは
- デュアック配合ゲルがすごいと言われる理由
- 2つの有効成分の働き
- 日本皮膚科学会ガイドラインでの位置づけ
- デュアック配合ゲルの正しい使い方
- 副作用と対処法
- 使用上の注意点
- 他のニキビ治療薬との比較
- よくある質問
- まとめ
1. ニキビ(尋常性痤瘡)とは
ニキビは医学的には「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれる皮膚の慢性炎症性疾患です。日本では約90%以上の人が生涯に一度は経験すると言われており、思春期を中心に発症しますが、近年では20代以降の「大人ニキビ」も増加しています。
ニキビは単なる「青春のシンボル」として軽視されがちですが、不適切な管理や治療の遅れは、炎症後の色素沈着や瘢痕(ニキビ跡)といった永続的な整容上の問題を引き起こす可能性があります。日本皮膚科学会のガイドラインでも、軽症であっても瘢痕を形成する可能性があるため、早期の適切な治療介入が重要であると強調されています。
また、ニキビはQOL(生活の質)を著しく低下させることが多数の研究で示されています。外見上の問題から自信を喪失し、社会的活動に消極的になったり、うつ病を発症したりするケースも少なくありません。そのため、ニキビは「たかがニキビ」と侮らず、適切な治療を受けることが大切です。
2. ニキビができるメカニズム
ニキビが発生するメカニズムを理解することは、治療薬の効果を理解するうえで重要です。ニキビの発症には主に4つの要因が関与しています。
毛穴の閉塞(角化異常)
毛穴の出口付近の角質が厚くなり、毛穴が詰まることがニキビ発症の第一段階です。これは角化異常と呼ばれ、ストレスやホルモンバランスの乱れ、不適切なスキンケアなどさまざまな原因で起こります。毛穴が詰まると、本来外に排出されるはずの皮脂が毛穴の中に閉じ込められてしまいます。
皮脂の過剰分泌
思春期になると男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌が増加し、これが皮脂腺を刺激して皮脂の分泌量が増えます。詰まった毛穴の中に皮脂がどんどん溜まっていくと、ニキビの原因菌にとって格好の栄養源となります。
アクネ菌の増殖
アクネ菌(Cutibacterium acnes、旧名:Propionibacterium acnes)は、もともと私たちの肌に存在する常在菌です。通常は肌を弱酸性に保ち、黄色ブドウ球菌などの病原菌の増殖を防ぐという有益な働きをしています。しかし、アクネ菌は酸素を嫌う嫌気性菌であり、毛穴が詰まって酸素が乏しい環境になると急激に増殖を始めます。
炎症反応
増殖したアクネ菌は、皮脂を分解して遊離脂肪酸を作り出したり、キャンプファクターという毒素を産生したりします。これらの物質が周囲の組織を刺激し、体の免疫システムが反応して炎症が起こります。これがいわゆる「赤ニキビ」や「黄ニキビ」の状態です。
3. ニキビの種類と進行段階
ニキビは進行段階によっていくつかの種類に分類されます。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
マイクロコメド(微小面皰)
目に見えないほど小さな初期段階のニキビです。毛穴は詰まっていますが、まだ皮脂が毛穴の中で溜まり始めたばかりの状態で、見た目にはほとんど分かりません。この段階での予防的な治療が、ニキビの悪化を防ぐ鍵となります。
白ニキビ(閉鎖面皰)
毛穴が閉じた状態で、内部に皮脂や角質が溜まっている状態です。皮膚表面に白い小さな盛り上がりとして現れます。炎症はまだ起きていないため、この段階で適切に対処すれば、赤ニキビへの進行を防ぐことができます。
黒ニキビ(開放面皰)
毛穴が開いた状態で、内部に溜まった皮脂や角質が空気に触れて酸化し、黒く見える状態です。白ニキビと同様に炎症は起きていませんが、放置すると炎症性ニキビに進行する可能性があります。
赤ニキビ(丘疹)
アクネ菌の増殖により炎症が起こり、赤く腫れ上がった状態です。痛みや熱感を伴うこともあります。この段階のニキビは適切に治療しないと、ニキビ跡になりやすくなります。
黄ニキビ(膿疱)
炎症がさらに進行し、毛穴の中に膿が溜まった状態です。中心部が黄色や白色に見えます。これはニキビの最終段階であり、膿疱の壁が破れると周囲の組織にダメージを与え、ニキビ跡のリスクが高まります。
嚢腫・硬結
最重症のニキビで、深部に大きなしこりができた状態です。治療が難しく、瘢痕(凹凸のあるニキビ跡)を残すリスクが非常に高いため、早急な治療が必要です。
4. デュアック配合ゲルとは
デュアック配合ゲルは、2015年に日本で発売されたニキビ治療のための外用薬です。製品名の「デュアック(Duac)」は、「二重に作用する」という意味の「デュアルアクション(dual action)」に由来しています。
この名前が示す通り、デュアック配合ゲルには2種類の有効成分が配合されています。ひとつは過酸化ベンゾイル(BPO:Benzoyl Peroxide)3%、もうひとつは抗生物質のクリンダマイシン(ダラシンの有効成分)1%です。
過酸化ベンゾイルは、海外では1960年代から50年以上にわたってニキビ治療に使用されてきた成分ですが、日本では長らく認可されていませんでした。2014年に過酸化ベンゾイル単剤の「ベピオゲル」が承認され、続いてクリンダマイシンとの配合剤である「デュアック配合ゲル」が発売されたことで、日本のニキビ治療は大きく進歩したと言われています。
デュアック配合ゲルは医療用医薬品であり、市販や通販で購入することはできません。使用するためには皮膚科などの医療機関を受診し、医師の診察を受けて処方してもらう必要があります。
5. デュアック配合ゲルがすごいと言われる理由
デュアック配合ゲルが「すごい」と評価される理由は、いくつかの臨床的なエビデンスに基づいています。
驚くべき臨床効果
臨床試験において、デュアック配合ゲルは赤ニキビ(炎症性皮疹)に対して非常に高い効果を示しました。使用開始から2週間で約60%、12週間で約90%もの赤ニキビが減少したという結果が報告されています。この効果の速さと高さは、従来のニキビ治療薬と比較しても際立っています。
1日1回の塗布で効果を発揮
多くの外用抗菌薬が1日2回の塗布を必要とするのに対し、デュアック配合ゲルは1日1回の塗布で効果が得られます。研究によれば、クリンダマイシン単剤を1日2回・12週間使用した場合とほぼ同程度の治療効果が、デュアック配合ゲルでは1日1回・8週間で得られたと報告されています。これは忙しい現代人にとって、治療の継続がしやすいという大きなメリットになります。
2つの成分の相乗効果
デュアック配合ゲルの最大の特徴は、過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンという異なる作用機序を持つ2つの成分を組み合わせていることです。これにより、単剤では得られない相乗効果が期待できます。
過酸化ベンゾイルは活性酸素を発生させてアクネ菌を殺菌する作用を持ち、抗生物質とは異なるメカニズムで働くため、薬剤耐性が生じにくいという特徴があります。一方、クリンダマイシンは細菌のタンパク質合成を阻害することで速やかに抗菌作用を発揮します。この「速効性のある抗生物質」と「耐性菌の心配がない殺菌剤」の組み合わせにより、効果的かつ安全な治療が可能になっています。
ガイドラインで推奨度A
日本皮膚科学会が2023年に発行した「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」において、デュアック配合ゲル(クリンダマイシン1%/過酸化ベンゾイル3%配合ゲル)は、炎症性皮疹(赤ニキビ)の治療に対して最高ランクの「推奨度A」に位置づけられています。これは、十分な科学的根拠に基づいて、強く推奨される治療法であることを意味します。
ニキビ跡の予防効果
デュアック配合ゲルは、赤ニキビを早期に改善することで、ニキビ跡の形成を予防する効果も期待できます。ニキビが長期間炎症を起こしていると、周囲の組織がダメージを受け、色素沈着や凹凸のある瘢痕が残りやすくなります。早期に炎症を抑えることで、こうした後遺症を防ぐことができるのです。
6. 2つの有効成分の働き
デュアック配合ゲルに含まれる2つの有効成分について、それぞれの働きを詳しく見ていきましょう。
過酸化ベンゾイル(BPO)の作用
過酸化ベンゾイルは、皮膚に塗布されると分解され、フリーラジカル(活性酸素)を発生させます。このフリーラジカルが、アクネ菌やブドウ球菌などの細菌の細胞膜構造やDNA、代謝機能を阻害し、強力な抗菌作用を発揮します。
重要なのは、この殺菌メカニズムが通常の抗生物質とは全く異なる点です。抗生物質は特定の生化学的経路を標的とするため、細菌がその経路を変化させることで耐性を獲得してしまうことがあります。しかし、過酸化ベンゾイルは酸化作用という非特異的な方法で殺菌するため、細菌が耐性を獲得しにくいのです。実際、50年以上の使用歴があるにもかかわらず、過酸化ベンゾイルに対する耐性菌はほとんど報告されていません。
また、過酸化ベンゾイルには角質剥離作用(ピーリング作用)もあります。毛穴の出口付近の角質細胞同士の結合を緩め、古い角質が自然に剥がれやすくなることで、毛穴の詰まりを改善します。この作用により、新しいニキビの発生を予防する効果も期待できます。
クリンダマイシンの作用
クリンダマイシンは、リンコマイシン系に分類される抗生物質です。細菌のリボソーム(タンパク質を合成する細胞内器官)の50Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害することで、アクネ菌の増殖を抑制します。
クリンダマイシンの利点は、塗布後すぐに効果を発揮する即効性にあります。過酸化ベンゾイルの効果が現れるまでにはある程度の時間がかかりますが、クリンダマイシンは速やかにアクネ菌の活動を抑えるため、炎症を早期に鎮めることができます。
また、クリンダマイシンには抗炎症作用もあります。アクネ菌が産生する炎症を引き起こす物質の生成を抑制し、赤ニキビの腫れや痛みを軽減します。
2成分の相乗効果
デュアック配合ゲルでは、これら2つの成分が協力して働きます。クリンダマイシンが速やかにアクネ菌の増殖を抑えている間に、過酸化ベンゾイルがじわじわと殺菌作用を発揮し、同時に毛穴の詰まりも改善していきます。
さらに重要なのは、過酸化ベンゾイルが抗生物質耐性菌の出現を抑制する効果があることです。抗生物質を単独で長期間使用すると、薬が効きにくい耐性菌が出現するリスクがありますが、過酸化ベンゾイルと併用することで、このリスクを大幅に低減できます。
このように、2つの成分はそれぞれの長所を活かしながら、お互いの短所を補い合う関係にあります。これがデュアック配合ゲルが「すごい」と言われる最大の理由です。
7. 日本皮膚科学会ガイドラインでの位置づけ
日本皮膚科学会は、最新の医学的エビデンスに基づいてニキビ治療のガイドラインを作成・公開しています。2023年版のガイドラインでは、デュアック配合ゲルは以下のように位置づけられています。
炎症性皮疹に対する推奨度
ガイドラインのCQ1「炎症性皮疹にクリンダマイシン1%/過酸化ベンゾイル3%配合ゲルは有効か?」に対して、デュアック配合ゲルは推奨度Aと評価されています。推奨度Aは「行うよう強く推奨する」という最高ランクの評価であり、十分な科学的根拠に基づいて、炎症性ニキビの治療に強く推奨されることを意味します。
重症度別の治療アルゴリズム
ガイドラインでは、ニキビの重症度に応じた治療アルゴリズムが示されています。デュアック配合ゲルは、軽症から重症まで幅広い炎症性ニキビに対して第一選択薬のひとつとして推奨されています。特に中等症から重症の炎症性ニキビでは、内服抗菌薬との併用も検討されます。
維持療法での位置づけ
急性期の治療でニキビが改善した後も、再発を防ぐための維持療法が重要です。ただし、デュアック配合ゲルにはクリンダマイシン(抗生物質)が含まれているため、長期連続使用は推奨されていません。炎症が落ち着いた後は、過酸化ベンゾイル単剤(ベピオゲル/ローション)やアダパレン(ディフェリンゲル)など、抗生物質を含まない外用薬に切り替えて維持療法を行うことが推奨されています。
8. デュアック配合ゲルの正しい使い方
デュアック配合ゲルの効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるためには、正しい使い方を守ることが重要です。
基本的な使用方法
デュアック配合ゲルは、1日1回、就寝前の洗顔後に使用します。清潔にした肌に適量を塗布し、ニキビのできやすい部位全体に薄く広げるように塗ります。
重要なのは、赤ニキビがある部分だけにポイントで塗るのではなく、ニキビができやすい範囲全体に「面」で塗ることです。これは、目に見えないマイクロコメド(微小面皰)や白ニキビの段階から予防的に治療することで、新しい赤ニキビの発生を防ぐためです。
適切な塗布量
顔全体に塗る場合の目安は、人差し指の指先から第一関節までチューブから絞り出した量(約0.5~0.6g)です。これを1FTU(フィンガーチップユニット)と呼び、顔全体をカバーするのに適した量とされています。
ただし、使い始めの時期は刺激感が出やすいため、いきなり顔全体に塗るのではなく、段階的に増やしていくことが推奨されています。最初は米粒大(1/8FTU程度)の量を、おでこ、頬、顎などのうち1か所の狭い範囲から塗り始めます。数日から1週間様子を見て、問題がなければ少しずつ塗る量と範囲を増やしていき、最終的に顔全体に塗ることを目指します。
保湿との併用
デュアック配合ゲルには乾燥を引き起こしやすい性質があります。そのため、薬を塗る前に化粧水や乳液でしっかり保湿をしてから使用することが大切です。保湿によって乾燥が緩和されると、治療を続けやすくなります。
保湿剤を選ぶ際は、「ノンコメドジェニックテスト済み」と記載のある商品がおすすめです。これは、ニキビの原因となるコメド(面皰)ができにくい成分で作られていることが検査で確認されていることを意味します。
使用の順序
スキンケアの順序は以下のようになります。
- 洗顔(優しく、こすらないように)
- 化粧水で保湿
- 乳液やクリームで保湿
- デュアック配合ゲルを塗布
保湿剤が肌になじんでから、デュアック配合ゲルを塗るようにしましょう。
治療期間の目安
デュアック配合ゲルの効果は、一般的に2週間から3か月程度で現れます。12週間(約3か月)使用しても効果が実感できない場合は、医師に相談して他の治療法への変更を検討する必要があります。
一方、効果がみられている場合でも、デュアック配合ゲルには抗生物質(クリンダマイシン)が含まれているため、長期連続使用は基本的に3か月程度を限度とすることが推奨されています。これは耐性菌の出現を防ぐためです。3か月を超えて使用する場合は、医師の判断のもと、必要性を慎重に検討する必要があります。
9. 副作用と対処法
デュアック配合ゲルは効果の高い薬ですが、副作用も起こりえます。特に使い始めの時期に症状が出やすいため、対処法を知っておくことが大切です。
よく見られる副作用
デュアック配合ゲルの使用開始後2週間から1か月程度は、以下のような副作用が現れることがあります。
・皮膚の乾燥 ・皮むけ(落屑) ・赤み(紅斑) ・ヒリヒリ感・刺激感 ・かゆみ ・ほてり
これらの症状は、主に過酸化ベンゾイルの角質剥離作用によるものです。多くの場合、使い続けるうちに肌が慣れて自然に軽減していきます。臨床試験のデータでは、刺激感の発現頻度は使用開始1か月目が約30%でしたが、2か月目以降は約10%に減少したと報告されています。
副作用への対処法
軽度の副作用に対しては、以下の対処法が有効です。
まず、しっかりと保湿することが重要です。低刺激性の保湿剤を使って、いつも以上に丁寧に保湿ケアを行いましょう。
刺激感が強い場合は、塗る量を減らしたり、1日おきに塗るなどして、少しずつ肌を慣らしていくのも有効です。どうしても我慢できないほど刺激が強い場合は、一時的に使用を中断し、医師に相談してください。
刺激感が特に強い時は、水で薬を洗い流すことも選択肢のひとつです。
重篤な副作用の兆候
まれではありますが、以下のような重篤な副作用が起こる可能性があります。これらの症状が現れた場合は、直ちに使用を中止し、医師に相談してください。
・顔全体や首にまで及ぶ広範囲の紅斑や腫脹 ・水疱(水ぶくれ)やびらん ・激しいかゆみや発疹(全身性のアレルギー反応) ・重症の下痢や腹痛(クリンダマイシンによる大腸炎の可能性)
特に、過去にクリンダマイシンやリンコマイシン系抗生物質でアレルギー反応を起こしたことがある方、過酸化ベンゾイルでかぶれたことがある方は、使用を避ける必要があります。
接触皮膚炎(かぶれ)について
過酸化ベンゾイルでは、100人中3人程度の頻度で接触皮膚炎(かぶれ)が起こることがあります。通常の刺激症状とは異なり、強い赤み、かゆみ、ジュクジュクした腫れなどが特徴です。このような症状が現れた場合は、すぐに使用を中止し、医師の診察を受けてください。
10. 使用上の注意点
デュアック配合ゲルを安全かつ効果的に使用するために、いくつかの重要な注意点があります。
保管方法
デュアック配合ゲルは、冷蔵庫(2~8℃)で保管する必要があります。これは、過酸化ベンゾイルが熱に弱く、常温で保管すると品質が劣化しやすいためです。室温や直射日光の当たる場所での保管は避けてください。ただし、凍らせないように注意が必要です。
脱色作用への注意
過酸化ベンゾイルには漂白作用があり、髪の毛や着色・染色された衣類、タオル、寝具などに付着すると脱色してしまうことがあります。薬を塗った後は、髪や眉毛に触れないように注意し、白いタオルや白い枕カバーを使用することをおすすめします。朝の洗顔時は、洗顔料をしっかり使って薬を洗い流すようにしましょう。
日光対策
デュアック配合ゲルの使用中は、日光への曝露を最小限にとどめることが推奨されています。過酸化ベンゾイルの作用で肌が敏感になりやすく、日焼けしやすくなることがあります。外出時は日焼け止めを使用し、帽子などで紫外線対策を行いましょう。日焼けサロンの利用や紫外線療法は避けてください。
併用に注意が必要な薬剤
デュアック配合ゲルを他の外用剤と併用する場合は、皮膚刺激が増す可能性があるため注意が必要です。特に、レチノイド製剤(アダパレンなど)との同時塗布は刺激が強くなることがあります。
また、エリスロマイシン(マクロライド系抗生物質)との併用は、クリンダマイシンの効果に干渉する可能性があるため推奨されません。
使用を避けるべき方
以下の方は、デュアック配合ゲルの使用を避けるか、医師に相談してから使用する必要があります。
・デュアック配合ゲルの成分またはリンコマイシン系抗生物質に対してアレルギーのある方 ・アトピー性皮膚炎の方(重症のアレルギー反応が起こりやすい) ・妊娠中または妊娠の可能性のある方 ・授乳中の方 ・12歳未満の小児(安全性が確認されていない)
過度な塗布は逆効果
「たくさん塗れば早く治る」と思って過度に塗布しても、上乗せの効果は期待できません。むしろ皮膚刺激が増すおそれがあります。適切な量を守って使用しましょう。
11. 他のニキビ治療薬との比較
現在、日本で保険適用されているニキビの外用治療薬には複数の種類があります。それぞれの特徴を理解し、自分のニキビの状態に合った治療法を選ぶことが大切です。
ベピオゲル/ベピオローション(過酸化ベンゾイル単剤)
有効成分は過酸化ベンゾイル2.5%です。デュアック配合ゲルから抗生物質を除いた処方で、抗菌作用と角質剥離作用があります。抗生物質を含まないため、長期間の使用が可能で、維持療法に適しています。白ニキビから赤ニキビまで幅広く使用できます。
ディフェリンゲル(アダパレン)
有効成分はアダパレン0.1%(ビタミンA誘導体)です。毛穴の詰まりを改善する作用があり、主に白ニキビや黒ニキビ(面皰)の治療に使用されます。抗菌作用はないため、炎症性ニキビには他の薬との併用が推奨されます。乾燥や刺激感などの副作用がありますが、長期使用が可能です。
エピデュオゲル(アダパレン+過酸化ベンゾイル)
アダパレン0.1%と過酸化ベンゾイル2.5%の配合剤です。毛穴の詰まりを改善するアダパレンと、抗菌・角質剥離作用のある過酸化ベンゾイルの両方の効果が得られます。白ニキビから赤ニキビまで使用でき、維持療法にも適しています。デュアック配合ゲルと異なり抗生物質を含まないため、長期使用が可能です。
ダラシンTゲル/ローション(クリンダマイシン単剤)
有効成分はクリンダマイシン1%です。抗菌・抗炎症作用があり、赤ニキビの治療に使用されます。ただし、抗生物質の単独使用は耐性菌の問題があるため、現在のガイドラインでは単剤での使用は推奨されておらず、過酸化ベンゾイルやアダパレンとの併用が推奨されています。
ゼビアックスローション(オゼノキサシン)
有効成分はオゼノキサシン(キノロン系抗菌薬)です。アクネ菌に対する抗菌作用があります。ダラシンと同様に、単独での長期使用は推奨されていません。
デュアック配合ゲルの位置づけ
デュアック配合ゲルは、過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンの「いいとこ取り」ができる薬です。炎症性ニキビ(赤ニキビ)に対して高い効果を発揮し、ガイドラインでも第一選択薬のひとつに位置づけられています。
ただし、抗生物質を含むため長期連続使用には向いておらず、炎症が落ち着いた後は、ベピオやディフェリン、エピデュオなど抗生物質を含まない薬に切り替えて維持療法を行うのが一般的です。
どの薬が自分に合っているかは、ニキビの種類や重症度、肌質などによって異なります。必ず医師に相談して、適切な薬を処方してもらいましょう。

12. よくある質問
デュアック配合ゲルについて、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
いいえ、デュアック配合ゲルは医療用医薬品であり、市販や通販で購入することはできません。使用するためには、皮膚科などの医療機関を受診し、医師の処方を受ける必要があります。
一般的に、2週間程度で効果を実感し始める方が多いです。臨床試験では、使用開始から2週間で約60%の赤ニキビが減少したと報告されています。ただし、個人差がありますので、効果が出るまで根気強く治療を続けることが大切です。
Q3. どのくらいの期間使い続けてよいですか?
デュアック配合ゲルには抗生物質(クリンダマイシン)が含まれているため、連続使用は基本的に12週間(約3か月)を目安としています。3か月使用しても効果がない場合は他の治療法への変更を検討します。効果がある場合でも、炎症が落ち着いたら抗生物質を含まない維持療法薬に切り替えることが推奨されています。
Q4. 副作用の乾燥や皮むけがひどいのですが、使い続けても大丈夫ですか?
軽度から中程度の乾燥や皮むけは、多くの場合、使い続けるうちに肌が慣れて軽減していきます。保湿をしっかり行いながら、必要に応じて塗る量を減らしたり、1日おきに塗るなどして調整してください。ただし、症状が強すぎる場合や悪化する場合は、自己判断で継続せず、医師に相談してください。
Q5. 妊娠中や授乳中でも使用できますか?
妊婦または妊娠している可能性のある女性は、治療上の有益性が危険性を上回ると医師が判断した場合にのみ使用できます。授乳中の方についても、母乳への移行や乳児への影響を考慮して、医師と相談のうえ使用を検討してください。
Q6. 白ニキビや黒ニキビにも効きますか?
デュアック配合ゲルは、過酸化ベンゾイルの角質剥離作用により、白ニキビや黒ニキビ(面皰)にも一定の効果があります。ただし、面皰に対してはアダパレン(ディフェリンゲル)やエピデュオゲルがより効果的とされています。
Q7. 化粧をしてもよいですか?
デュアック配合ゲルを塗った後、薬が乾いてから化粧をすることは可能です。ただし、ノンコメドジェニック(毛穴を詰まらせにくい)の化粧品を選ぶことをおすすめします。帰宅後はメイクをしっかり落とし、肌を清潔に保ちましょう。
Q8. なぜ冷蔵庫で保管する必要があるのですか?
デュアック配合ゲルに含まれる過酸化ベンゾイルは熱に弱く、常温で保管すると成分が劣化しやすくなります。効果を保つために、2~8℃の冷蔵庫で保管してください。ただし、凍らせないように注意してください。
Q9. 塗り忘れた場合はどうすればよいですか?
塗り忘れた場合は、気づいた時点で1回分を塗布してください。ただし、次の使用時間が近い場合は、塗り忘れた分は飛ばして、次回から通常通り使用してください。一度に2回分を塗らないようにしてください。
Q10. ニキビ跡にも効果がありますか?
デュアック配合ゲルは、炎症性ニキビを早期に治療することで、ニキビ跡の形成を予防する効果があります。ただし、すでにできてしまった凹凸のあるニキビ跡(瘢痕)を治す効果はありません。ニキビ跡の治療には、レーザー治療やケミカルピーリングなど、別の治療法が必要です。
13. まとめ
デュアック配合ゲルは、過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンという2つの有効成分を配合した、炎症性ニキビの治療に高い効果を発揮する外用薬です。臨床試験では2週間で約60%、12週間で約90%の赤ニキビが減少したという結果が報告されており、日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨度Aに位置づけられています。
デュアック配合ゲルが「すごい」と評価される理由は、速効性のある抗生物質と、耐性菌の心配がない殺菌剤の「いいとこ取り」ができる点にあります。1日1回の塗布で効果が得られ、忙しい方でも治療を継続しやすいことも大きなメリットです。
一方で、使用開始時に乾燥や皮むけなどの副作用が出やすいこと、抗生物質を含むため長期連続使用は推奨されていないこと、冷蔵保管が必要なことなど、いくつかの注意点もあります。
ニキビは放置すると悪化してニキビ跡が残るリスクがあります。赤ニキビや黄ニキビでお悩みの方は、早めに皮膚科を受診し、デュアック配合ゲルをはじめとする適切な治療を受けることをおすすめします。
当院では、患者様一人ひとりのニキビの状態や肌質に合わせた最適な治療プランをご提案しています。ニキビでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
参考文献
- 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(日本皮膚科学会)
- 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023 – Mindsガイドラインライブラリ
- デュアック配合ゲルの基本情報 – 日経メディカル処方薬事典
- 過酸化ベンゾイル製剤の解説 – 日経メディカル処方薬事典
- 過酸化ベンゾイル – Wikipedia
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務