ニキビ治療薬として処方される「デュアック配合ゲル」は、日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨度Aに位置づけられる効果の高い外用薬です。しかし、インターネット上では「副作用がひどい」「肌が真っ赤になった」「皮がむけて痛い」といった声も多く見られます。
本記事では、デュアック配合ゲルの副作用について、その種類や発生メカニズム、そして適切な対処法について詳しく解説します。副作用を正しく理解し、適切に対処することで、ニキビ治療を成功に導くことができます。副作用に不安を感じている方、すでに症状が出て困っている方は、ぜひ最後までお読みください。

目次
- デュアック配合ゲルとは
- デュアック配合ゲルの有効成分と作用機序
- 臨床試験データから見る副作用の発生頻度
- よくある副作用の種類と症状
- 副作用が起こる原因とメカニズム
- 刺激性の副作用とアレルギー性の副作用の違い
- 副作用がひどいときの対処法
- 副作用を軽減するための正しい使い方
- 副作用が出ても治療を続けるべき場合
- 使用を中止すべき重篤な副作用のサイン
- 他のニキビ治療薬との副作用の比較
- 医師に相談すべきタイミング
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
1. デュアック配合ゲルとは
デュアック配合ゲルは、尋常性ざ瘡(ニキビ)の治療に用いられる外用薬で、2015年に日本で保険適用となりました。ニキビ治療のガイドラインにおいて、急性炎症期の治療薬として推奨度Aに位置づけられており、赤ニキビや黄ニキビなどの炎症性ニキビに対して高い効果を発揮します。
デュアック配合ゲルの最大の特徴は、2つの有効成分を1つの製剤に配合した「合剤」であることです。過酸化ベンゾイル(3%)とクリンダマイシン(1%)という2つの成分が配合されており、それぞれ単独で使用する場合よりも高い治療効果が期待できます。
製品名の「デュアック」は「デュアル(2つの)」と「アクネ(ニキビ)」を組み合わせた造語で、2つの成分によるニキビ治療という意味が込められています。
薬価は1gあたり99.5円(2025年現在)で、保険適用により3割負担であれば1本(15g)あたり約500円程度で処方を受けることができます。
2. デュアック配合ゲルの有効成分と作用機序
デュアック配合ゲルには、以下の2つの有効成分が含まれています。
過酸化ベンゾイル(BPO)3%
過酸化ベンゾイルは、欧米では1960年代から使用されてきた実績のあるニキビ治療成分です。日本では2015年に「ベピオゲル」として初めて保険適用となり、その後デュアック配合ゲルやエピデュオゲルにも配合されるようになりました。
過酸化ベンゾイルの主な作用は以下の通りです。
まず、抗菌作用があります。過酸化ベンゾイルは皮膚に塗布されると分解され、フリーラジカル(酸化ベンゾイルラジカルやフェニルラジカルなど)を発生させます。このフリーラジカルがニキビの原因菌であるアクネ菌やブドウ球菌の膜構造やDNA、代謝を直接障害し、強力な殺菌効果を発揮します。
次に、角層剥離作用(ピーリング作用)があります。フリーラジカルが角質細胞同士の結合(デスモソーム)を弛めることで、古い角質が剥がれやすくなります。これにより、毛穴の詰まり(コメド)が改善され、ニキビの初期段階から治療することができます。
さらに、重要な特徴として、過酸化ベンゾイルは抗生物質とは異なるメカニズムで作用するため、耐性菌が生じにくいという利点があります。抗生物質は長期使用により効果が低下することがありますが、過酸化ベンゾイルは長期間使用しても効果が維持されます。
クリンダマイシン1%
クリンダマイシンは、リンコマイシン系抗生物質に分類される抗菌薬です。単独では「ダラシンTゲル」「ダラシンTローション」などの製品名でニキビ治療に使用されています。
クリンダマイシンの作用機序は、細菌のリボソーム50Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害することでアクネ菌の増殖を抑制するというものです。また、抗炎症作用も持ち合わせており、炎症を起こしているニキビの赤みや腫れを改善する効果があります。
2つの成分の相乗効果
デュアック配合ゲルでは、これら2つの成分が相乗的に作用することで、単独使用よりも高い治療効果が得られます。
過酸化ベンゾイルの速やかな殺菌作用により炎症が抑えられ、クリンダマイシンの抗菌・抗炎症作用がこれを補強します。さらに、過酸化ベンゾイルが耐性菌の発生を抑制する効果があるため、クリンダマイシン単独使用時に問題となる耐性菌の出現リスクも軽減されます。
臨床試験においても、デュアック配合ゲルはクリンダマイシン単独よりも高い治療効果を示しています。
3. 臨床試験データから見る副作用の発生頻度
デュアック配合ゲルの副作用について、国内臨床試験のデータを詳しく見ていきましょう。
日本人の尋常性ざ瘡患者を対象とした臨床試験では、以下のような副作用発現率が報告されています。
副作用発現率
1日1回塗布群(204例)では、49例(24.0%)に副作用が認められました。1日2回塗布群(296例)では、104例(35.1%)に副作用が認められました。
このデータから、約4人に1人は何らかの副作用を経験することがわかります。塗布回数が多いほど副作用の発生率も高くなる傾向があります。
主な副作用の内訳(1日1回塗布群)
1日1回塗布群における主な副作用とその発生率は以下の通りです。
皮膚乾燥が最も多く、15例(7.4%)に認められました。次いで接触性皮膚炎が11例(5.4%)、そう痒症(かゆみ)が9例(4.4%)、顔面痛が9例(4.4%)、紅斑(赤み)が8例(3.9%)、灼熱感が6例(2.9%)、皮膚剥脱が4例(2.0%)、剥脱性皮膚炎が4例(2.0%)となっています。
主な副作用の内訳(1日2回塗布群)
1日2回塗布群では、より高い頻度で副作用が見られました。
皮膚乾燥が34例(11.5%)と最も多く、皮膚剥脱が25例(8.4%)、接触性皮膚炎が23例(7.8%)、紅斑が21例(7.1%)、そう痒症が17例(5.7%)、灼熱感が12例(4.1%)、顔面痛が9例(3.0%)、皮膚刺激が8例(2.7%)、剥脱性皮膚炎が6例(2.0%)となっています。
副作用が出やすい時期
これらの副作用は、デュアック配合ゲルの塗り始めに現れやすいという特徴があります。特に使用開始から2週間以内に症状が出現することが多く、多くの場合、使い続けていくうちに肌が慣れて症状は軽減していきます。
ただし、約3〜5%の方にはアレルギー性の接触皮膚炎(かぶれ)が起こる可能性があり、これは使用を継続しても改善しないため、別の対応が必要になります。
4. よくある副作用の種類と症状
デュアック配合ゲルの副作用は、大きく分けて「局所の副作用」と「全身性の副作用」に分類できます。圧倒的に多いのは局所の副作用であり、塗布した部位に限定して症状が現れます。
局所の副作用
局所に現れる副作用について、それぞれ詳しく説明します。
皮膚乾燥
最も頻度の高い副作用です。肌がカサカサになり、つっぱり感を感じます。過酸化ベンゾイルのピーリング作用により、皮膚表面の角質が剥がれやすくなることで生じます。特に使用開始初期に顕著に現れ、適切な保湿ケアにより軽減できることが多いです。
皮膚剥脱(皮むけ)
皮膚がカサカサになり、フケのような細かい皮が剥がれ落ちる状態です。「鱗屑(りんせつ)」「落屑(らくせつ)」とも呼ばれます。過酸化ベンゾイルの角層剥離作用の結果として生じる症状で、これ自体が薬の効果が出ている証拠でもあります。
紅斑(赤み)
塗布部位に赤みが出る症状です。軽度のものから顔全体に及ぶものまで程度は様々です。過酸化ベンゾイルによる皮膚刺激が原因で生じることが多く、刺激性のものであれば使い続けることで軽減していきます。
灼熱感・刺激感
ヒリヒリする、ピリピリする、しみるといった感覚です。塗布直後に感じることが多く、数十分で収まることもあれば、数時間持続することもあります。皮膚のバリア機能が低下している状態では特に強く感じやすいです。
そう痒症(かゆみ)
塗布部位にかゆみを感じる症状です。軽いかゆみであれば経過観察で対応できますが、強いかゆみや引っかきたくなるほどのかゆみは、アレルギー性接触皮膚炎の可能性も考慮する必要があります。
接触皮膚炎(かぶれ)
薬剤に対する皮膚の反応として生じる炎症です。刺激性のものとアレルギー性のものがあり、アレルギー性の場合は使用を中止する必要があります。強い赤み、腫れ、かゆみ、水疱、ジュクジュクした滲出液などが特徴です。
顔面痛
塗布部位に痛みを感じる症状です。灼熱感と同様に、皮膚刺激によるものが多いですが、強い痛みがある場合は医師に相談が必要です。
全身性の副作用
デュアック配合ゲルの全身性副作用は非常にまれですが、添付文書には重大な副作用として以下が記載されています。
大腸炎(偽膜性大腸炎を含む)
クリンダマイシンは内服薬として使用した場合に偽膜性大腸炎を引き起こすリスクがあることが知られています。外用薬であるデュアック配合ゲルでも、頻度は不明ながら大腸炎の報告があります。腹痛、頻回の下痢、血便などの症状が現れた場合は直ちに使用を中止し、医師の診察を受けてください。
その他の副作用
その他、頻度は低いものの以下の副作用が報告されています。
皮膚の色素沈着または脱色、光線過敏症(日光に敏感になる)、頭痛、肝機能検査値の異常(AST、ALT、Al-Pの上昇など)などがあります。
5. 副作用が起こる原因とメカニズム
デュアック配合ゲルの副作用、特に皮膚への刺激症状が起こる原因について詳しく解説します。
過酸化ベンゾイルによる刺激
副作用の主な原因は、過酸化ベンゾイルの持つ作用にあります。
過酸化ベンゾイルは皮膚に塗布されると分解され、フリーラジカルを発生させます。このフリーラジカルがアクネ菌を殺菌すると同時に、角質細胞にも作用して角層の剥離を促進します。
つまり、過酸化ベンゾイルの「効果」と「副作用」は表裏一体の関係にあります。角質を剥離させる作用がニキビ治療に効果を発揮する一方で、正常な皮膚にも作用するため、乾燥や皮むけ、刺激感といった症状が生じるのです。
過酸化ベンゾイルの濃度は、ベピオゲルが2.5%であるのに対し、デュアック配合ゲルは3%とやや高めです。そのため、刺激がより強く感じられる場合があります。
皮膚バリア機能の破壊
過酸化ベンゾイルのピーリング作用により、皮膚表面の角質層が薄くなります。角質層は皮膚のバリア機能を担っており、外部刺激から肌を守るとともに、内部の水分蒸発を防ぐ役割があります。
角質層が薄くなることで、皮膚のバリア機能が一時的に低下し、外部からの刺激を受けやすくなります。また、水分が蒸発しやすくなるため、乾燥症状も生じやすくなります。
敏感肌・アトピー体質の影響
もともと敏感肌の方やアトピー性皮膚炎の既往がある方は、皮膚のバリア機能が低下していることが多く、デュアック配合ゲルの刺激をより強く受けやすい傾向があります。
また、アトピー体質の方はアレルギー反応を起こしやすい傾向があるため、アレルギー性接触皮膚炎のリスクも高くなります。
過剰塗布による影響
添付文書にも記載されているように、デュアック配合ゲルは過度に塗布しても上乗せ効果は期待されず、むしろ皮膚刺激が増すおそれがあります。
適量を超えて塗布したり、1日2回以上塗布したりすると、副作用のリスクが高まります。臨床試験のデータでも、1日2回塗布群は1日1回塗布群と比較して副作用発現率が約10%高くなっています。
他の外用薬との併用
デュアック配合ゲルをアダパレン(ディフェリンゲル)などの他のニキビ治療薬と併用すると、刺激感が強くなることが報告されています。複数の外用薬を使用する場合は、医師の指示に従って適切に使い分けることが重要です。
6. 刺激性の副作用とアレルギー性の副作用の違い
デュアック配合ゲルの副作用を理解する上で最も重要なのは、「刺激性の副作用」と「アレルギー性の副作用」を区別することです。この2つは対処法が大きく異なります。
刺激性の副作用(刺激性接触皮膚炎)
刺激性の副作用は、薬剤の刺激作用によって直接引き起こされる反応です。
特徴として、使い始めの数週間に最も強く現れ、使い続けるうちに肌が慣れて症状が軽減していくことが挙げられます。肌の状態によって症状の程度が変動し、調子の良いときは問題なく使用できることもあります。
症状としては、淡い赤み、ヒリヒリ感、皮むけ、乾燥などがあります。かゆみは軽度か、あまり目立たないことが多いです。
刺激性の副作用であれば、保湿ケアや塗布量の調整、一時的な休薬などで対処しながら、治療を継続することが可能です。多くの場合、2〜4週間程度で症状は軽減していきます。
アレルギー性の副作用(アレルギー性接触皮膚炎)
アレルギー性の副作用は、薬剤の成分に対するアレルギー反応(Ⅳ型アレルギー)によって引き起こされます。
特徴として、使い続けても症状が改善せず、むしろ悪化していくことが挙げられます。感作(アレルギー反応が成立すること)には一定期間が必要なため、使用開始からしばらく経ってから発症することもあります。一度感作が成立すると、少量の接触でも反応が起こります。
症状としては、強い赤み、腫れ、かゆみ、水疱、ジュクジュクした滲出液、びらんなどがあります。刺激性のものより症状が重篤な傾向があります。
アレルギー性の副作用の場合は、デュアック配合ゲルの使用を中止する必要があります。使用を継続しても改善せず、悪化する一方だからです。
見分け方のポイント
刺激性とアレルギー性の副作用を見分けるポイントを整理します。
症状の経過については、刺激性では使い続けると軽減するのに対し、アレルギー性では使い続けると悪化します。
かゆみの程度は、刺激性では軽度または少ないのに対し、アレルギー性では強いかゆみを伴います。
腫れの有無については、刺激性では通常は腫れないのに対し、アレルギー性では腫れを伴うことが多いです。
滲出液については、刺激性では通常は乾燥しているのに対し、アレルギー性ではジュクジュクすることがあります。
発症時期については、刺激性では使用開始直後から現れやすいのに対し、アレルギー性では数週間〜数ヶ月後にも発症し得ます。
ただし、これらの区別は専門医でも難しい場合があります。強い赤みやかゆみ、腫れ、ジュクジュクした症状が見られた場合は、自己判断せずに皮膚科を受診してください。
アレルギー性接触皮膚炎の発生頻度
過酸化ベンゾイルによるアレルギー性接触皮膚炎は、日本人では約3〜5%(30人に1人程度)の頻度で発生すると報告されています。
決して珍しい副作用ではないため、初めて使用する際には注意が必要です。一部の医療機関では、顔に塗布する前にパッチテスト(二の腕の内側などで試し塗り)を行うことを推奨しています。
7. 副作用がひどいときの対処法
デュアック配合ゲルの副作用がひどいと感じたときの対処法について、症状の程度別に解説します。
軽度の副作用(乾燥、軽い皮むけ、軽い赤み)の場合
軽度の副作用は、多くの場合、以下の対処で乗り越えることができます。
保湿ケアの強化
デュアック配合ゲルを塗る前に、しっかりと保湿を行いましょう。洗顔後、化粧水で肌に水分を与え、乳液やジェルクリームなどで保湿してから、デュアック配合ゲルを塗布します。
保湿剤は「ノンコメドジェニックテスト済み」と記載された製品を選ぶことをお勧めします。これは、ニキビの原因となるコメド(毛穴の詰まり)ができにくいことが確認された製品です。
油分の多いクリームやワセリンは、毛穴を詰まらせてニキビを悪化させる可能性があるため、使用には注意が必要です。
塗布量の調整
塗布量を減らしてみましょう。顔全体に塗る場合、最終的には人差し指の第一関節までの量(1FTU:フィンガーチップユニット)が目安ですが、副作用が強い場合は、米粒大(1/8FTU)やあずき大(1/4FTU)の少量から始め、徐々に増やしていく方法が有効です。
塗布範囲の限定
顔全体ではなく、ニキビのできやすい部位に限定して塗布することで、刺激を受ける面積を減らすことができます。
塗布頻度の調整
毎日の使用が難しい場合は、1日おきや2〜3日おきに塗布するなど、頻度を下げることで肌を休ませながら治療を継続できます。
中等度の副作用(持続する赤み、強い乾燥、不快な刺激感)の場合
症状が中等度の場合は、以下の対処を検討してください。
一時的な休薬
数日〜1週間程度、デュアック配合ゲルの使用を中断し、保湿ケアのみで肌を回復させます。症状が落ち着いてから、少量から再開します。
ショートコンタクト療法
デュアック配合ゲルを塗布した後、15分〜30分程度で洗い流す方法です。完全に洗い流しても一定の効果は得られ、刺激を軽減することができます。刺激感が強すぎる場合に有効な方法です。
医師への相談
症状が改善しない場合は、処方した医師や皮膚科医に相談しましょう。必要に応じて、一時的にステロイド外用薬を処方してもらうこともあります。
重度の副作用(強い腫れ、激しいかゆみ、水疱、滲出液)の場合
以下の症状が見られた場合は、直ちに使用を中止し、皮膚科を受診してください。
症状としては、顔全体や頸部にまで及ぶ強い赤み、強い腫れ、激しいかゆみ、水疱(水ぶくれ)、ジュクジュクした滲出液、びらん(ただれ)などがあります。
これらの症状は、アレルギー性接触皮膚炎の可能性が高く、使用を継続すると悪化します。皮膚科では、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬などで治療を行い、その後の治療方針を検討します。
全身症状が出た場合
腹痛、頻回の下痢、血便などの消化器症状が現れた場合は、偽膜性大腸炎などの重篤な副作用の可能性があります。すぐに使用を中止し、医療機関を受診してください。
8. 副作用を軽減するための正しい使い方
デュアック配合ゲルの副作用を最小限に抑えながら効果を得るためには、正しい使い方を守ることが重要です。
基本的な使用方法
デュアック配合ゲルは1日1回、夜の洗顔後に使用します。
使用の順番は、洗顔→保湿(化粧水・乳液など)→デュアック配合ゲル→(必要に応じて)日焼け止め、という順番が推奨されています。
洗顔のポイント
刺激の少ない洗顔料を使用し、ぬるま湯で優しく洗いましょう。ゴシゴシこすらず、泡で包み込むように洗うのがポイントです。
洗顔後は清潔なタオルで水分を優しく押さえるように拭き取ります。こすらないことが大切です。
保湿のポイント
洗顔後5分以内に保湿を行いましょう。時間が経つと肌の水分が蒸発し、乾燥が進んでしまいます。
化粧水で水分を補給した後、乳液やジェルクリームで保湿します。ノンコメドジェニックの製品を選ぶことをお勧めします。
副作用が強い場合は、デュアック配合ゲルを塗る前だけでなく、塗った後にも保湿剤を重ねることで刺激を和らげることができます。
塗り方のポイント
塗布量は、顔全体で人差し指の第一関節までの量(約0.5g)が目安です。ただし、使い始めは少量から開始することをお勧めします。
塗り方は、米粒大を指先に取り、額、両頬、顎、鼻に点置きしてから、優しく伸ばします。こすりつけるのではなく、薄く均一に広げるイメージです。
目の周り、口の周り、粘膜、傷のある部位には塗らないでください。万が一これらの部位に付着した場合は、すぐに水で洗い流してください。
段階的に量を増やす方法
副作用を予防するために、以下のような段階的な使用法が効果的です。
第1週は、米粒大(1/8FTU)をおでこや頬の一部など、狭い範囲に塗布します。第2週は、あずき大(1/4FTU)に増量し、塗布範囲も少し広げます。第3週は、小豆大×2程度(1/2FTU)にさらに増量します。第4週以降は、問題がなければ1FTUの量を顔全体に塗布します。
このように徐々に量と範囲を増やすことで、肌を慣らしながら治療を進めることができます。
保管方法
デュアック配合ゲルは冷蔵保存(2〜8℃)が必要な薬剤です。冷凍庫で凍らせないよう注意してください。常温で保管すると薬の効果が低下する可能性があります。
衣類への付着に注意
過酸化ベンゾイルには漂白作用があります。デュアック配合ゲルが衣類、タオル、枕カバー、髪の毛などに付着すると、色落ちや変色を起こすことがあります。
塗布後は手をよく洗い、寝具には白いカバーを使用するなどの工夫をするとよいでしょう。
日焼け対策
デュアック配合ゲルの使用中は、紫外線に対して肌が敏感になります。日中は日焼け止めを使用し、できるだけ直射日光を避けるようにしましょう。日焼けランプの使用や紫外線療法も避けてください。
9. 副作用が出ても治療を続けるべき場合
デュアック配合ゲルの副作用が出ると不安になりますが、軽度〜中等度の刺激性の副作用であれば、対処しながら治療を継続することで、ニキビ治療の効果を得ることができます。
治療継続のメリット
ニキビ治療において、外用薬を途中で中断してしまうと、以下のような問題が生じます。
まず、ニキビの再発や悪化があります。治療を中断すると、一時的に改善したニキビが再発したり、新たなニキビができたりします。
また、ニキビ跡の形成リスクがあります。炎症性ニキビを適切に治療しないと、色素沈着や瘢痕(クレーター状のニキビ跡)が残るリスクが高まります。
さらに、治療期間の延長も問題です。治療を中断するたびに振り出しに戻り、結果的に治療に長い期間がかかってしまいます。
副作用を乗り越えるべき場合
以下のような場合は、副作用に対処しながら治療を継続することが推奨されます。
軽度の乾燥や皮むけがある場合は、保湿ケアで対処可能であり、使い続けることで改善することが多いです。
軽い赤みやヒリヒリ感がある場合は、塗布量や頻度の調整で対処可能です。
症状が使用開始から2週間以内に出現し、徐々に軽減している場合は、刺激性の反応であり、肌が慣れてきているサインです。
ニキビ自体は改善傾向にある場合は、薬の効果が出ている証拠なので、副作用への対処を行いながら継続することが望ましいです。
副作用は「効いている証拠」でもある
過酸化ベンゾイルの乾燥や皮むけといった副作用は、ピーリング作用が効いていることの表れでもあります。この作用により、毛穴の詰まりが改善され、ニキビができにくい肌へと変化していきます。
多少の不快感があっても、それが許容範囲内であれば、2〜3ヶ月の治療継続により、ニキビの大幅な改善が期待できます。
治療効果が現れるまでの目安
デュアック配合ゲルの効果が実感できるまでには、一般的に2〜4週間程度かかります。明らかな改善が見られるのは8〜12週間後のことが多いです。
焦らずに継続することが、ニキビ治療成功の鍵です。
10. 使用を中止すべき重篤な副作用のサイン
以下のような症状が見られた場合は、デュアック配合ゲルの使用を直ちに中止し、速やかに医療機関を受診してください。
重度の皮膚症状
顔全体や頸部に広がる強い赤みや腫れがある場合、激しいかゆみが止まらない場合、水疱(水ぶくれ)ができた場合、皮膚がジュクジュクして滲出液が出る場合、皮膚がただれて(びらん)痛みがある場合は、アレルギー性接触皮膚炎の可能性が高いです。使用を継続すると症状が悪化します。
全身性の過敏反応
蕁麻疹が全身に出た場合、息苦しさや呼吸困難がある場合、唇や舌、喉の腫れがある場合、めまいや血圧低下がある場合は、これらはアナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応の可能性があり、緊急の対応が必要です。
消化器症状
激しい腹痛がある場合、頻回の下痢がある場合、血便がある場合は、偽膜性大腸炎などの重篤な大腸炎の可能性があります。クリンダマイシン成分による副作用として知られており、頻度は低いものの注意が必要です。
使用を中止する際の注意点
重篤な副作用が疑われる場合は、自己判断で市販の薬を使用せず、皮膚科や医療機関を受診してください。受診の際は、デュアック配合ゲルを使用していたことを医師に伝え、可能であれば薬を持参してください。
11. 他のニキビ治療薬との副作用の比較
デュアック配合ゲルと他の主要なニキビ治療外用薬の副作用を比較してみましょう。
ベピオゲル(過酸化ベンゾイル2.5%)
ベピオゲルは過酸化ベンゾイル単独の製剤です。主な副作用は、皮膚剥脱、紅斑、刺激感、乾燥、かゆみ、接触皮膚炎などで、デュアック配合ゲルと共通しています。
デュアック配合ゲルは過酸化ベンゾイルの濃度が3%とベピオゲル(2.5%)より高いため、刺激がやや強い傾向があります。一方で、クリンダマイシンとの配合により抗菌力は増強されています。
ディフェリンゲル(アダパレン0.1%)
ディフェリンゲルはレチノイド(ビタミンA誘導体)系の外用薬です。主な副作用は、皮膚乾燥、皮膚不快感、落屑、紅斑、そう痒症、湿疹などです。
ディフェリンゲルも使い始めに刺激症状が出やすく、「レチノイド反応」と呼ばれます。デュアック配合ゲルの副作用と似た傾向がありますが、作用機序が異なります。
エピデュオゲル(アダパレン0.1%+過酸化ベンゾイル2.5%)
エピデュオゲルはアダパレンと過酸化ベンゾイルの配合剤です。臨床試験では、副作用発現頻度が12.7%と報告されており、最も多い副作用は皮膚刺激(10.4%)でした。
アダパレンと過酸化ベンゾイルの両方の刺激が加わるため、デュアック配合ゲルやベピオゲルと比較して刺激感が強い傾向があるとの意見もあります。
ダラシンTゲル/ローション(クリンダマイシン1%)
ダラシンはクリンダマイシン単独の抗菌外用薬です。主な副作用は、そう痒、刺激感、発赤、つっぱり感などです。
過酸化ベンゾイルを含まないため、皮膚への刺激はデュアック配合ゲルより軽い傾向があります。ただし、単独使用では耐性菌が生じやすいという問題があり、長期使用には注意が必要です。
副作用の比較まとめ
過酸化ベンゾイルを含む製剤(ベピオ、デュアック、エピデュオ)は、ピーリング作用に由来する乾燥、皮むけ、刺激感といった副作用が共通して見られます。
デュアック配合ゲルは、ベピオゲルより過酸化ベンゾイル濃度が高く、エピデュオゲルよりは刺激が少ないという位置づけになります。
副作用の出方には個人差が大きいため、一概にどれが良いとは言えません。医師と相談しながら、自分に合った治療薬を選択することが重要です。
12. 医師に相談すべきタイミング
デュアック配合ゲルを使用する中で、以下のような状況では医師への相談をお勧めします。
副作用に関する相談
副作用が2週間以上続いて改善しない場合、副作用が日常生活に支障をきたすほど強い場合、アレルギー性接触皮膚炎が疑われる症状がある場合、副作用の対処法がわからない場合は、医師に相談してください。
治療効果に関する相談
12週間使用してもニキビの改善が見られない場合は、添付文書にも記載されている通り、使用の継続について医師の判断を仰ぐ必要があります。他の治療法への切り替えを検討する時期です。
炎症性ニキビが改善した後の維持療法についても、医師と相談して適切な治療計画を立てましょう。
その他の相談タイミング
妊娠中または妊娠の可能性がある場合は、デュアック配合ゲルの使用について医師に相談してください。治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ使用が検討されます。
授乳中の場合も、母乳への移行は不明とされているため、医師と相談の上で使用の可否を判断します。
他の薬を併用する場合、特に他のニキビ治療薬との併用は刺激が増す可能性があるため、必ず医師に相談してください。

13. よくある質問(Q&A)
刺激性の副作用(乾燥、皮むけ、軽い赤みなど)は、多くの場合、使用開始から2〜4週間程度で軽減していきます。肌が薬に慣れてくるためです。ただし、改善しない場合や悪化する場合は、アレルギー性の可能性があるため医師に相談してください。
軽度の副作用(乾燥、軽い皮むけなど)であれば、保湿ケアなどで対処しながら継続することが推奨されます。ただし、強い腫れ、激しいかゆみ、水疱、ジュクジュクした滲出液などの症状がある場合は使用を中止し、医師に相談してください。
Q3: デュアック配合ゲルでかぶれた場合、他のニキビ薬は使えますか?
過酸化ベンゾイルによるアレルギー性接触皮膚炎の場合、ベピオゲルやエピデュオゲルなど過酸化ベンゾイルを含む他の製剤も使用できません。一方、ディフェリンゲル(アダパレン)やダラシンTゲル(クリンダマイシン単独)など、過酸化ベンゾイルを含まない製剤は使用できる可能性があります。医師と相談して代替治療を検討してください。
Q4: 保湿剤はデュアック配合ゲルの前と後、どちらに塗るべきですか?
基本的には、デュアック配合ゲルの前に保湿剤を塗ることが推奨されています。保湿剤で肌を整えてから薬を塗布することで、刺激を軽減できます。副作用が強い場合は、デュアック配合ゲルの後にも保湿剤を重ねることで、さらに刺激を和らげることができます。
Q5: デュアック配合ゲルはどのくらいの期間使用できますか?
添付文書では、12週間で効果が認められない場合は使用を中止するよう記載されています。また、炎症性ニキビが改善した後は、他の適切な維持療法を検討することが推奨されています。12週間を超えて使用する場合は、医師の判断のもとで行われます。
Q6: ワセリンで保湿しても大丈夫ですか?
ワセリンは油分が多く、毛穴を詰まらせてニキビを悪化させる可能性があるため、ニキビ治療中の保湿剤としてはあまり推奨されません。ノンコメドジェニック(毛穴を詰まらせにくい)と表記された乳液やジェルタイプの保湿剤を使用することをお勧めします。
Q7: デュアック配合ゲルと他のニキビ薬を併用できますか?
他のニキビ外用薬(ディフェリンゲル、アクアチムなど)との併用は可能ですが、刺激感が増す可能性があります。併用する場合は、朝と夜で薬を分けるなどの工夫が必要です。必ず医師の指示に従ってください。
Q8: 副作用で肌が赤くなったとき、化粧で隠しても大丈夫ですか?
軽度の赤みであれば、ノンコメドジェニックの化粧品を使用して隠すことは可能です。ただし、強い炎症がある場合は、化粧品の刺激で症状が悪化する可能性があるため、できるだけ肌を休ませることをお勧めします。
14. まとめ
デュアック配合ゲルは、過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンの2つの有効成分を配合した、効果の高いニキビ治療薬です。しかし、その効果の裏返しとして、乾燥、皮むけ、赤み、刺激感などの副作用が比較的高い頻度で見られます。
副作用への対処で最も重要なのは、「刺激性の副作用」と「アレルギー性の副作用」を区別することです。
刺激性の副作用は、使い始めに多く見られ、使い続けることで軽減していきます。保湿ケアや塗布量の調整などで対処しながら、治療を継続することが可能です。
一方、アレルギー性の副作用(強い腫れ、激しいかゆみ、水疱、滲出液など)が疑われる場合は、使用を中止して皮膚科を受診する必要があります。
副作用を軽減するためには、正しい使用方法を守ることが重要です。少量から始めて徐々に増量する、しっかり保湿する、夜1回の使用を守るなど、基本的なことを実践することで、副作用のリスクを最小限に抑えることができます。
多少の副作用があっても、適切に対処しながら2〜3ヶ月治療を継続することで、ニキビの大幅な改善が期待できます。副作用に不安を感じたら、自己判断せずに、処方した医師や専門医に相談することをお勧めします。
当院では、患者様一人ひとりの肌の状態やニキビの程度に合わせて、最適な治療法をご提案しています。デュアック配合ゲルの副作用でお困りの方、ニキビ治療についてご相談されたい方は、お気軽にご来院ください。
参考文献
- 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023 – 日本皮膚科学会/Mindsガイドラインライブラリ
- 医療用医薬品:デュアック – KEGG MEDICUS(医薬品情報データベース)
- デュアック配合ゲルの基本情報 – 日経メディカル処方薬事典
- 過酸化ベンゾイル製剤の解説 – 日経メディカル処方薬事典
- 重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽膜性大腸炎 – 厚生労働省/医薬品医療機器総合機構(PMDA)
- クリンダマイシン – MSDマニュアル プロフェッショナル版
図表
表1:デュアック配合ゲルの主な副作用と発生頻度(1日1回塗布群)
| 副作用 | 発生頻度 | 発生例数 |
|---|---|---|
| 皮膚乾燥 | 7.4% | 15/204例 |
| 接触性皮膚炎 | 5.4% | 11/204例 |
| そう痒症 | 4.4% | 9/204例 |
| 顔面痛 | 4.4% | 9/204例 |
| 紅斑 | 3.9% | 8/204例 |
| 灼熱感 | 2.9% | 6/204例 |
| 皮膚剥脱 | 2.0% | 4/204例 |
| 剥脱性皮膚炎 | 2.0% | 4/204例 |
出典:デュアック配合ゲル添付文書(国内臨床試験データ)
表2:刺激性副作用とアレルギー性副作用の比較
| 項目 | 刺激性副作用 | アレルギー性副作用 |
|---|---|---|
| 症状の経過 | 使い続けると軽減 | 使い続けると悪化 |
| かゆみ | 軽度または少ない | 強いかゆみ |
| 腫れ | 通常なし | しばしばあり |
| 滲出液 | なし(乾燥傾向) | ジュクジュクすることあり |
| 発症時期 | 使用開始直後に多い | 数週間〜数ヶ月後も |
| 対処法 | 保湿・量調整で継続可 | 使用中止が必要 |
表3:過酸化ベンゾイル含有ニキビ治療薬の比較
| 製品名 | 有効成分 | 過酸化ベンゾイル濃度 |
|---|---|---|
| ベピオゲル | 過酸化ベンゾイル | 2.5% |
| デュアック配合ゲル | 過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン | 3.0% |
| エピデュオゲル | 過酸化ベンゾイル+アダパレン | 2.5% |
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務