引っ越しシーズンになると、腰痛を訴えて来院される患者さんが急増します。重い段ボールの運搬や、普段使わない体の動かし方が重なることで、腰への負担は日常生活の何倍にもなることがあります。「引っ越しが終わったら腰が痛くて動けなくなってしまった」「翌日から仕事なのに腰痛がひどい」といった声は決して珍しくありません。本記事では、引っ越し作業によって腰痛が起こりやすい理由を医療的な観点から説明するとともに、予防のための具体的な方法や、もし痛みが出てしまったときの対処法についてわかりやすくお伝えします。引っ越しを控えている方はもちろん、仕事や日常的に重いものを運ぶことが多い方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までお読みください。

目次
- 引っ越し作業が腰痛を引き起こしやすい理由
- 腰痛を引き起こす具体的な動作とそのメカニズム
- 引っ越し前にできる腰痛予防の準備
- 荷物の持ち方・運び方で腰への負担を減らす方法
- 引っ越し当日に実践できる腰痛予防のポイント
- 腰痛サポーターやコルセットの活用法
- 腰痛が出てしまったときの応急処置と対処法
- 病院を受診すべき腰痛のサイン
- 引っ越し後のケアと再発防止
- まとめ

🎯 1. 引っ越し作業が腰痛を引き起こしやすい理由
引っ越し作業は、一日の中でこれほど多くの腰への負担が重なることは滅多にないというほど、腰にとって過酷な作業です。その理由はいくつかあります。
まず、普段の生活ではなかなか行わない重量物の持ち上げと運搬を、長時間にわたって繰り返すことになります。段ボール箱一つの重さはおよそ10〜20kg程度になることも多く、それを何十回と持ち上げ、運び、積み重ねる動作が続きます。これは腰の筋肉や椎間板に対して慢性的かつ反復的な負荷をかけることになります。
次に、引っ越し作業は準備から片付けまで含めると1日以上かかることも珍しくなく、疲労が蓄積した状態でも作業を続けなければならない状況が生まれます。筋肉が疲労すると、腰を守るための体幹の支持力が低下し、腰椎に直接的なストレスがかかりやすくなります。
さらに、引っ越しでは狭い廊下や階段を通ることも多く、不自然な姿勢や体をひねった状態で荷物を運ぶ場面が増えます。こうした姿勢は脊椎への負荷を通常よりも大きくします。加えて、荷造りのために長時間かがんだ姿勢を続けることや、床に座って作業することなども腰への負担を蓄積させます。
また、引っ越し作業は気持ちが焦っていることが多く、「早く終わらせたい」という心理が働いて、本来は気をつけるべき姿勢や動作のチェックが疎かになりがちです。このような複合的な要因が重なることで、引っ越し作業は腰痛を引き起こしやすい環境となっています。
📋 2. 腰痛を引き起こす具体的な動作とそのメカニズム
引っ越し作業の中で特に腰痛を引き起こしやすい動作とそのメカニズムについて理解しておくことは、予防の第一歩となります。
最も危険な動作の一つが、腰を曲げたまま重いものを持ち上げる動作です。人間の腰椎(背骨の腰の部分)は、直立した状態で体重を支えるように設計されています。前かがみになると椎間板(椎骨と椎骨の間にあるクッション)への圧力が著しく増加します。さらにそこに重さが加わると、椎間板が後方に向かって突出しやすくなり、これがいわゆるヘルニア(椎間板ヘルニア)につながることがあります。
次に危険なのが、体をひねりながら荷物を持つ動作です。腰椎は前後方向への動きには比較的対応できていますが、回旋(ひねり)の動きに対しては弱い構造をしています。特に重いものを持った状態でのひねりは、腰椎の関節や周囲の靭帯、筋肉に強いストレスを与えます。
また、長時間の前かがみ姿勢も腰痛の大きな原因です。荷造りの際に床に座ったり、中腰で段ボールに荷物を詰めたりする作業を長く続けると、腰の筋肉(脊柱起立筋など)が緊張した状態を維持し続けることで疲労し、筋肉の硬直や微小な損傷が起こります。これがいわゆる「筋筋膜性腰痛」として現れます。
さらに、急に重いものを持ち上げる「ぎっくり腰」(急性腰痛症)も引っ越しの現場では非常に多く見られます。これは筋肉や靭帯の急激な損傷によって起こるもので、突然の強い痛みとともに動けなくなるケースもあります。準備運動をせずにいきなり重い荷物を持ち上げると、筋肉の対応が間に合わずにこうした急性障害が起こりやすくなります。
💊 3. 引っ越し前にできる腰痛予防の準備
腰痛を予防するためには、引っ越し当日だけでなく、その前からの準備が重要です。事前にできることをしっかり行っておくことで、腰への負担を大幅に減らすことができます。
体力と筋力のトレーニングを事前に行うことは非常に効果的です。特に体幹(胴体の深部にある筋肉群)を鍛えることで、腰椎を安定させる力が高まります。引っ越しの1〜2週間前からでも、プランク(うつ伏せの状態で肘とつま先で体を支えるポーズ)や、ドローイン(お腹を凹ませながら腹筋を意識する呼吸法)などを毎日少しずつ取り入れるだけで効果が期待できます。
荷物を軽くする工夫も大切です。不要なものは引っ越し前に処分し、一つの段ボールに詰め込みすぎないようにしましょう。特に本や衣類などの重たいものは、小さな箱に少量ずつ分けて詰めることで、一回に持ち上げる重量を抑えることができます。一般的に、一箱の重さは10〜15kg以内に抑えると腰への負担が軽減されます。
荷造りの際の姿勢にも気をつけましょう。床に置いた段ボールに詰め込む作業をする場合は、なるべく台の上に段ボールを乗せて作業高さを上げるか、膝をついて座った状態で作業するようにしましょう。長時間の中腰姿勢は腰に最もダメージを与えやすいため、できる限り避けることが重要です。
引っ越し前日はしっかりと睡眠をとることも忘れないでください。睡眠不足の状態では筋肉の回復が不十分となり、体全体のパフォーマンスが低下します。また、十分な睡眠は筋肉の修復を促進し、疲労耐性を高めます。引っ越し前日に夜遅くまで荷造りを続けて睡眠不足になってしまうことは、腰痛リスクを高める要因となります。
引っ越しに必要な道具も事前に準備しておきましょう。台車やキャリーカートは腰への負担を大幅に減らしてくれる非常に有効なツールです。引っ越し業者に依頼する場合は業者が持参することが多いですが、自分で引っ越しを行う場合はホームセンターなどでレンタルすることも検討してください。また、滑りにくい靴や動きやすい服装も事前に準備しておくと、作業中の転倒や無理な体勢を防ぐことができます。
🏥 4. 荷物の持ち方・運び方で腰への負担を減らす方法
引っ越し作業中の腰痛予防において、荷物の正しい持ち方と運び方を身につけることは最も重要なポイントの一つです。以下に正しい方法と意識すべきポイントを詳しく解説します。
荷物を持ち上げる際の基本は、腰を曲げるのではなく膝を曲げることです。具体的には、荷物の近くに立ち、足を肩幅程度に開いた状態で、背筋をまっすぐ保ちながら膝を曲げてしゃがみ込みます。この際、腰はできるだけ垂直に保ち、前かがみにならないようにします。荷物をしっかりと両手で持ったら、脚の力を使って立ち上がります。このとき腰を反り返らせすぎないように注意してください。
荷物を持ち上げるときに体幹に力を入れることも重要です。具体的には、持ち上げる直前にお腹を軽く引き締め(腹圧を高める)、腰椎を安定させた状態で動作を行います。この腹圧を高めることで、腰への負荷が分散され、脊椎への直接的なストレスが軽減されます。
荷物を運ぶ際は、体の近くに荷物を引き寄せるようにして持ちましょう。腕を伸ばした状態で荷物を持つと、梃子の原理により腰椎にかかる負荷が大幅に増大します。荷物を体に密着させるようにして持つことで、腰への負担を大きく軽減することができます。
方向転換をする際は、腰をひねるのではなく、足を動かして体全体の向きを変えるようにしましょう。荷物を持ったまま腰だけを回転させる動作は、前述のように腰椎にとって非常に危険な動作です。方向を変えたいときは小さな歩みで足を動かし、体全体の向きを変えることを意識してください。
複数人での作業の場合は、コミュニケーションをとりながら動くことが大切です。特に大型家具や家電を運ぶ際は、合図を決めて同時に持ち上げ、同じペースで運ぶようにしましょう。一人が先に持ち上げてしまうと、もう一人が予期せぬ荷重を受けてしまい、腰を傷める原因になります。
台車やキャリーカートを積極的に活用することも腰痛予防の重要な手段です。重い荷物を台車に乗せることで、運搬中の腰への負担を大幅に削減できます。また、家具を動かす際はフローリングの上であれば毛布を敷いて滑らせることで持ち上げる必要をなくすことができます。このような工夫を積み重ねることが腰の保護につながります。
⚠️ 5. 引っ越し当日に実践できる腰痛予防のポイント
引っ越し当日は、作業開始前から終了後まで、腰を守るためのいくつかの習慣を実践することが大切です。
作業開始前には必ずウォームアップを行いましょう。いきなり重い荷物を持ち始めると、まだ温まっていない筋肉や関節に急激な負荷がかかり、ぎっくり腰などの急性損傷を招くリスクが高まります。5〜10分程度の軽いストレッチや体操で体を温めてから作業を始めることを習慣にしてください。腰に効果的なウォームアップとしては、股関節を大きく回す運動、膝を抱えて腰を伸ばすストレッチ、体をゆっくりと左右に捻る動きなどが有効です。
定期的な休憩を取ることも非常に重要です。引っ越し作業は終わりが見えると焦って休まずに続けてしまいがちですが、疲労した筋肉は正常なときよりも損傷を受けやすくなっています。少なくとも1時間に1回は5〜10分の休憩を取り、腰を伸ばしたりストレッチをしたりする時間を設けましょう。休憩中は立ったまま腰に手を当てて後ろに反る動作や、座って前に軽く屈む動作などが腰の緊張をほぐすのに効果的です。
水分補給を忘れないことも腰痛予防に関係しています。椎間板の約80%は水分で構成されており、脱水状態になると椎間板の弾力性が低下し、衝撃吸収能力が落ちます。特に夏の引っ越しでは汗をかきやすいため、こまめに水分を補給することが椎間板の機能を維持するためにも重要です。
作業の順序を工夫することも効果的です。重い荷物は体力が充実している作業の序盤に運び、疲れてくる後半には軽い荷物の移動を中心に行うようにしましょう。疲労した状態で無理に重い荷物を運ぶことが腰痛や怪我につながりやすいため、計画的に作業の順序を組み立てることが大切です。
また、一人で無理をしないことも大切な予防策です。「これくらいは一人で持てる」と思っても、明らかに重い荷物や大きな家具は複数人で運ぶようにしましょう。引っ越し業者に依頼している場合は、専門のスタッフに任せることをためらわないでください。プロは適切な器具と技術で安全に運搬することができます。自分でできることとプロに任せることを上手に使い分けることが、結果的に腰を守ることにつながります。
🔍 6. 腰痛サポーターやコルセットの活用法
引っ越し作業中の腰痛予防として、腰痛サポーターやコルセットの使用を検討する方も多いでしょう。これらのアイテムは正しく使えば効果的ですが、使い方を誤ると逆効果になることもあるため、その特性を理解した上で活用することが大切です。
腰痛サポーターやコルセットの主な効果は、腰椎を外側から支持することで安定性を高め、過度な動きを制限することです。重い荷物を持つ際の腰への負担を軽減し、姿勢の崩れを物理的に防ぐ効果が期待できます。また、腰を温める効果もあり、筋肉の緊張をほぐす助けにもなります。
ただし、コルセットを長時間装着し続けることには注意が必要です。外部から腰椎を支えることで、体幹の筋肉自体が働く機会が減り、筋力低下につながることがあります。引っ越し作業のような特定の重労働の場面で一時的に使用することには意味がありますが、日常的に長期間使用することは医師の指示のもとで行うことが推奨されます。
コルセットを選ぶ際のポイントとしては、腰椎をしっかりと支えられる幅のあるもの(少なくとも10〜15cm程度)で、着脱が容易なものを選ぶとよいでしょう。市販品ではいくつかのタイプがあり、作業時の用途であれば中程度の固さのもので十分です。ただし、すでに腰痛の症状がある方は、整形外科などで適切なサイズや種類について相談することをおすすめします。
コルセットはあくまで補助的なものであり、正しい動作や姿勢の代替にはなりません。コルセットをしているからといって、前かがみで重いものを持ち上げたり、無理な動作をしたりすることは避けましょう。コルセットと正しい作業姿勢を組み合わせることで、より効果的に腰を保護することができます。
📝 7. 腰痛が出てしまったときの応急処置と対処法
引っ越し作業中や作業後に腰痛が出てしまった場合、適切な応急処置を行うことで症状の悪化を防ぎ、回復を早めることができます。
急に激しい腰痛が起きた場合(ぎっくり腰の疑い)は、まずは無理に動こうとせず、楽な姿勢で安静にすることが最優先です。多くの場合、横向きに寝て膝を軽く曲げた姿勢(シムス位)が痛みを和らげやすいです。また、仰向けに寝て膝の下にクッションや丸めた毛布を入れた姿勢も腰への負担が少なく楽になりやすいです。
急性期(発症後48〜72時間以内)の冷やすか温めるかについては、一般的に急性期は冷やすことが推奨されています。炎症が起きている部位を冷やすことで、炎症反応を抑制し、痛みを和らげる効果があります。氷をタオルに包んだアイスパックや保冷剤を使って、1回15〜20分程度、1日数回冷やすとよいでしょう。ただし、直接皮膚に当てることは凍傷の原因になるため避けてください。
急性期を過ぎた後(72時間以降)は、温めることで血流を促進し、筋肉の緊張を緩める効果が期待できます。温熱シップや入浴(熱すぎない温度で)なども効果的です。ただし、炎症が強い時期に温めると症状が悪化することがあるため、急性期を過ぎてから行うようにしましょう。
市販の鎮痛剤(ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)は、医師への受診が難しい状況であれば一時的な痛みの緩和に使用することができます。ただし、長期使用や過剰使用は胃腸障害などの副作用リスクがあるため、用法・用量を守ることが大切です。また、持病がある方や他の薬を服用中の方は事前に薬剤師に相談してください。
かつては「腰痛には安静が一番」と言われていましたが、現在の医学的知見では長期の安静は筋力低下や回復の遅延につながるとされています。激しい痛みが落ち着いてきたら、痛みの範囲内で日常的な動作から少しずつ再開することが回復を早めるとされています。ただし、これは症状の程度によって異なりますので、強い痛みや神経症状がある場合は必ず医師に相談してください。
💡 8. 病院を受診すべき腰痛のサイン
引っ越し後の腰痛の多くは数日から数週間で自然に軽快することが多いですが、以下のような症状がある場合は速やかに医療機関を受診することをおすすめします。
足に痺れや麻痺の症状がある場合は、椎間板ヘルニアや脊椎管狭窄症などの神経を圧迫する疾患の可能性があります。特に、片方または両方の足にかけての強い痺れ、感覚の低下、脱力感などが伴う腰痛は、早期の診断と治療が必要なサインです。
排尿・排便のコントロールが難しくなった場合は非常に重要な警告サインです。これは馬尾症候群と呼ばれる重篤な神経症状の可能性があり、緊急の対処が必要です。このような症状が現れた場合は、すぐに救急病院を受診してください。
発熱を伴う腰痛の場合は、感染性の疾患(化膿性脊椎炎など)の可能性があります。引っ越し作業の疲労による腰痛とは異なるため、発熱と腰痛が同時に起きている場合は早めに受診することが大切です。
安静にしていても改善しない持続的な夜間の痛みや、安静にしていても悪化する痛みも注意が必要なサインです。通常の筋肉疲労による腰痛であれば、安静にすることで一定の改善が見られますが、そうでない場合は他の疾患が隠れている可能性があります。
1週間以上経過しても全く改善しない腰痛、または徐々に悪化する腰痛も受診の目安となります。単純な筋肉痛であれば通常は数日で改善が見られますが、それ以上続く場合は専門的な診断を受けることで適切な治療法を見つけることができます。
医療機関では、問診や身体診察に加え、必要に応じてX線(レントゲン)検査やMRI検査などの画像検査が行われます。診断に基づいて、薬物療法(鎮痛剤、筋弛緩薬、神経障害性疼痛薬など)、物理療法(温熱療法、電気療法)、リハビリテーション、神経ブロック注射などの治療が行われます。重症の椎間板ヘルニアや脊椎管狭窄症では手術が検討されることもありますが、多くの場合は保存療法で改善が見込めます。
✨ 9. 引っ越し後のケアと再発防止
引っ越し作業が終わった後も、腰のケアを継続することが大切です。腰痛の再発を防ぎ、健康な腰を維持するためのポイントをご紹介します。
引っ越し後しばらくは、新居での荷物の整理作業も続くことが多いでしょう。棚や収納への荷物の収納作業も腰に負担をかける動作を伴います。高い場所への収納は踏み台などを使って体を近づけてから行い、低い場所への収納は膝をついた姿勢で行うなど、引っ越し中と同様に正しい姿勢を意識して作業を行いましょう。
引っ越し後の疲れた体を回復させるために、十分な睡眠と栄養摂取を心がけましょう。特に筋肉の修復に必要なたんぱく質を積極的に摂取し、抗炎症作用のあるオメガ3脂肪酸(青魚など)や、骨や関節の健康に必要なカルシウム・ビタミンDを含む食品も意識して取り入れると良いでしょう。
引っ越し後の日常生活でも腰に優しい習慣を身につけることが再発防止につながります。長時間のデスクワークや座り仕事をしている方は、1時間に1回程度立ち上がって体を動かす習慣をつけましょう。また、正しい座り姿勢(背筋を伸ばし、椅子の深いところに座って腰をしっかり支える)を意識することも大切です。
定期的な運動習慣を持つことは腰痛の再発防止に非常に効果的です。特に水泳やウォーキングは腰への負担が少なく、体幹の筋力を高めることができる有酸素運動として推奨されています。また、ヨガやピラティスは体幹の安定性を高め、柔軟性を向上させることで腰痛予防に役立てられています。
体幹トレーニングを日課にすることも長期的な腰痛予防として効果的です。腹横筋や多裂筋などの深部体幹筋を鍛えることで、日常動作における脊椎の安定性が高まります。最初から激しいトレーニングをする必要はなく、無理のない範囲から少しずつ始めて継続することが大切です。
体重管理も腰痛予防において見落とされがちながら重要な要素です。体重が増えると腰椎にかかる負荷が増大します。特にお腹周りの脂肪が増えると重心が前方にずれ、腰椎への負担が増すことが知られています。適正体重を維持することは腰痛予防のみならず、全身の健康維持にもつながります。
また、睡眠環境の見直しも腰痛予防に役立ちます。新居では寝具が変わることもありますが、腰に優しい寝具選びをすることも大切です。一般的に、硬すぎず柔らかすぎないマットレスが腰痛予防に適しているとされています。横向きで眠る方は膝の間にクッションを挟むと腰椎の安定性が高まります。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、引っ越しシーズンになると腰痛を訴えて来院される患者様が増加する傾向があり、その多くは「重い荷物を持ち上げた瞬間」や「作業後の翌朝」に症状が現れるケースです。引っ越し作業は普段の生活では経験しないほどの負荷が腰に集中するため、事前の体幹トレーニングや正しい荷物の持ち方を意識するだけで、リスクを大きく減らすことができます。足の痺れや排尿・排便への影響など神経症状を伴う腰痛は特に注意が必要ですので、気になる症状がある場合はどうかお一人で抱え込まず、お早めにご相談ください。」
📌 よくある質問
重い段ボールの反復運搬、狭い廊下での不自然な姿勢、長時間の前かがみ作業、疲労の蓄積など、複数の腰への負担要因が一度に重なることが原因です。椎間板への圧力増加や筋肉の疲労により、日常生活の何倍もの負荷が腰にかかります。「早く終わらせたい」という焦りから姿勢への注意が疎かになることも一因です。
腰を曲げるのではなく、膝を曲げてしゃがむことが基本です。背筋をまっすぐ保った状態で荷物に近づき、お腹を軽く引き締めて腹圧を高めてから、脚の力を使って立ち上がります。また、荷物は体に密着させるように持つことで腰への負担を大幅に軽減できます。方向転換の際は腰をひねらず、足を動かして体全体の向きを変えましょう。
重い荷物を運ぶ際の補助として、一時的に使用することは有効です。腰椎を外側から支えて安定性を高め、過度な動きを制限する効果があります。ただし、コルセットはあくまで補助的なものであり、正しい姿勢の代替にはなりません。また、長時間の装着は体幹筋力の低下につながる場合があるため、すでに腰痛症状がある方は当院などの医療機関で適切なタイプを相談することをおすすめします。
発症後48〜72時間の急性期は、炎症を抑えるために「冷やす」ことが推奨されます。タオルに包んだ保冷剤などで1回15〜20分、1日数回を目安に冷やしてください(直接皮膚に当てると凍傷になるため注意)。急性期を過ぎた72時間以降は、温めることで血流を促進し筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。炎症が強い時期の温めは症状悪化につながるため避けましょう。
以下の症状がある場合は速やかにアイシークリニックなどの医療機関を受診してください。①足に痺れ・脱力・感覚低下がある、②排尿・排便のコントロールが難しくなった(緊急性が高い)、③発熱を伴う腰痛がある、④安静にしても改善しない夜間の痛みがある、⑤1週間以上経過しても改善しない、または悪化する腰痛がある場合です。神経症状を伴う場合は特に早期受診が重要です。

🎯 まとめ
引っ越し作業は腰に対して非常に大きな負担をかけるイベントです。重い荷物の反復運搬、不自然な姿勢、長時間の作業、そして疲労の蓄積など、腰痛を引き起こす要因が複合的に重なる環境だといえます。しかし、事前の準備と正しい知識を持つことで、腰痛のリスクを大幅に減らすことができます。
引っ越し前は体幹のトレーニングや荷物の軽量化、荷造りの工夫などの準備を行い、当日はウォームアップ・正しい持ち方・定期的な休憩・コルセットの活用などを実践しましょう。もし腰痛が起きてしまった場合は、適切な応急処置と安静を心がけ、神経症状や強い痛みが続く場合は早めに医療機関を受診することが大切です。そして引っ越し後も、日常的な運動習慣や正しい姿勢を意識することが腰痛の再発防止につながります。
引っ越しは新生活の始まりという大切な節目です。腰痛によってその後の生活に支障をきたさないためにも、本記事で紹介した予防策をぜひ実践してみてください。腰に痛みや違和感が続く場合は、ためらわずに専門の医療機関に相談することをおすすめします。アイシークリニック新宿院では、腰痛に関するご相談や診療を行っておりますので、気になる症状がある方はお気軽にご来院ください。
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📚 参考文献
- 厚生労働省 – 腰痛予防・職場における腰痛対策、身体活動・運動に関する公式ガイドライン情報
- PubMed – 重量物の持ち上げ動作による腰痛発症メカニズムおよび予防に関する国際的な医学的エビデンス
- WHO(世界保健機関) – 腰痛の世界的な疫学データ・予防と管理に関するWHO公式ファクトシート
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
