ナジフロキサシンによるニキビ治療|効果・使い方・副作用を専門医が解説

ニキビに悩んでいる方の中には、皮膚科を受診して「アクアチム」という塗り薬を処方された経験がある方も多いのではないでしょうか。アクアチムの有効成分であるナジフロキサシンは、ニキビの原因菌に対して優れた抗菌作用を発揮する外用抗菌薬です。日本皮膚科学会が策定したガイドラインにおいても、炎症性ニキビに対する治療薬として「強く推奨」されている信頼性の高い医薬品です。

本記事では、ナジフロキサシンがどのようにニキビに効くのか、正しい使い方や注意点、他の治療薬との併用について、わかりやすく解説します。ニキビ治療を検討している方、処方された薬について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。


目次

  1. ニキビ(尋常性ざ瘡)とは
  2. ニキビが発生するメカニズム
  3. ナジフロキサシン(アクアチム)とは
  4. ナジフロキサシンの作用機序
  5. ナジフロキサシンが効果的なニキビの種類
  6. ナジフロキサシンの剤形と特徴
  7. 正しい使い方
  8. 効果が現れるまでの期間
  9. 副作用と注意点
  10. 耐性菌について
  11. 他のニキビ治療薬との併用
  12. ナジフロキサシンが効かない場合
  13. 市販薬について
  14. 日常生活で気をつけること
  15. まとめ

1. ニキビ(尋常性ざ瘡)とは

ニキビは医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれる皮膚の慢性炎症性疾患です。日本では約90%の方が生涯に一度は経験するといわれており、非常にありふれた皮膚トラブルのひとつです。

ニキビは主に思春期に多くみられますが、近年では20代以降の「大人ニキビ」に悩む方も増えています。思春期ニキビは皮脂の過剰分泌やホルモンバランスの変化が主な原因とされ、大人ニキビはストレス、生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの乱れなどが影響するとされています。

ニキビは単なる「青春のシンボル」ではなく、適切な治療を受けなければ炎症後の色素沈着やクレーター状の瘢痕(ニキビ跡)が残るリスクがあります。ニキビ跡の治療は保険適用外となることが多く、時間も費用もかかるため、早期に適切な治療を受けることが重要です。

2. ニキビが発生するメカニズム

ニキビの発生メカニズムを理解することは、なぜナジフロキサシンが効果的なのかを知るうえで大切です。ニキビは以下の4つの要因が複合的に関わって発生します。

毛穴の詰まり(角化異常)

正常な皮膚では、毛穴から皮脂が分泌され、肌の表面に排出されて皮膚を保護する役割を果たしています。しかし、さまざまな原因によって毛穴の出口部分(毛漏斗部)の角質が厚くなると、毛穴が詰まりやすくなります。この毛穴の詰まりがニキビの第一段階です。

皮脂の過剰分泌

思春期になると男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌が増加し、皮脂腺が活発になります。また、ストレスや生活習慣の乱れによってもホルモンバランスが崩れ、皮脂分泌が増加することがあります。過剰に分泌された皮脂が詰まった毛穴の中にたまっていきます。

アクネ菌の増殖

アクネ菌(学名:Cutibacterium acnes、旧名:Propionibacterium acnes)は、私たちの皮膚に常在する細菌のひとつです。通常は皮膚を弱酸性に保ち、病原菌の侵入を防ぐなど肌を守る働きをしています。

しかし、毛穴が詰まって酸素が少ない環境になると、嫌気性菌であるアクネ菌にとって格好の増殖場所となります。アクネ菌は毛穴内の皮脂を栄養源として増殖し、リパーゼという酵素を分泌して皮脂を分解します。この過程で遊離脂肪酸が生じ、炎症の原因となります。

炎症反応

アクネ菌の増殖や遊離脂肪酸の産生により、体の免疫システムが反応して炎症が起こります。好中球やマクロファージといった免疫細胞が活性化し、炎症性サイトカインや活性酸素が放出されます。この炎症反応によって毛穴の周囲が赤く腫れ、「赤ニキビ」へと進行します。

さらに炎症が進行すると、毛穴内に膿がたまる「黄ニキビ」になります。炎症が激しい場合や長期間放置した場合には、皮膚の深い部分にまでダメージが及び、瘢痕(ニキビ跡)が残ることがあります。

3. ナジフロキサシン(アクアチム)とは

ナジフロキサシンは、ニューキノロン系に分類される外用抗菌薬です。商品名「アクアチム」として知られており、大塚製薬から軟膏、クリーム、ローションの3つの剤形で販売されています。世界で初めて製造販売承認を受けたニューキノロン系の外用抗菌薬であり、1993年の発売以来、長年にわたりニキビ治療の第一線で使用されてきました。

アクアチムという名前は、「Acne and Trauma, Infection of Mucosa(にきび・外傷・粘膜の感染症)」の頭文字に由来しています。ニキビだけでなく、とびひ(伝染性膿痂疹)や毛包炎、おできなど、さまざまな皮膚感染症の治療に用いられています。

ナジフロキサシンは処方箋医薬品に分類されており、医師の処方がなければ購入することができません。市販薬としては販売されていないため、ニキビ治療にナジフロキサシンを使用したい場合は、皮膚科を受診して処方を受ける必要があります。

4. ナジフロキサシンの作用機序

ナジフロキサシンがニキビに効く仕組みを詳しく見ていきましょう。

ナジフロキサシンは、細菌のDNA複製に必要な酵素である「DNAジャイレース」および「トポイソメラーゼIV」を阻害します。細菌が増殖するためにはDNAを複製する必要がありますが、これらの酵素はDNAの複製過程で必須の働きをしています。ナジフロキサシンがこれらの酵素を阻害することで、細菌はDNAを複製できなくなり、増殖が止まります。さらに、細菌のDNA構造が損傷を受けることで殺菌作用も発揮します。

ナジフロキサシンは幅広い抗菌スペクトルを持っており、ニキビの原因菌であるアクネ菌に加え、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌、グラム陰性菌、嫌気性菌に対しても強い抗菌力を示します。

臨床試験では、ナジフロキサシンを使用することでニキビ患部から検出されるアクネ菌の菌量が有意に減少し、炎症性ニキビの数が改善することが報告されています。

5. ナジフロキサシンが効果的なニキビの種類

ニキビには進行度に応じていくつかの種類があり、ナジフロキサシンはすべてのニキビに効果があるわけではありません。

白ニキビ・黒ニキビ(非炎症性皮疹)

毛穴が詰まって皮脂がたまった状態のニキビです。毛穴が閉じている場合は白く見えるため「白ニキビ」、毛穴が開いて皮脂が酸化して黒く見える場合は「黒ニキビ」と呼ばれます。医学的には「面皰(めんぽう)」または「コメド」といいます。

この段階ではまだ炎症は起きておらず、アクネ菌も大量に増殖していません。そのため、抗菌薬であるナジフロキサシンの効果は限定的です。白ニキビ・黒ニキビには、毛穴の詰まりを改善するアダパレン(ディフェリン)や過酸化ベンゾイル(ベピオ)などの外用薬が適しています。

赤ニキビ(炎症性皮疹)

アクネ菌が増殖して炎症を起こし、毛穴の周囲が赤く腫れた状態のニキビです。医学的には「紅色丘疹」と呼ばれます。

赤ニキビに対してナジフロキサシンは高い効果を発揮します。アクネ菌に対する強い抗菌力により、原因菌を殺菌して炎症を鎮めます。日本皮膚科学会のガイドラインでも、炎症性皮疹に対する外用抗菌薬として「強く推奨」されています。

黄ニキビ(膿疱)

赤ニキビがさらに進行し、毛穴内に膿がたまった状態のニキビです。中心部が黄色または白色に見えます。

黄ニキビに対してもナジフロキサシンは効果があります。膿の中にはアクネ菌や免疫細胞の残骸が含まれており、ナジフロキサシンでアクネ菌を殺菌することで症状の改善が期待できます。

ニキビ跡には効果がない

炎症が治まった後に残る色素沈着(茶色いシミ)や瘢痕(クレーター状のくぼみ、盛り上がった跡)に対して、ナジフロキサシンは効果がありません。ニキビ跡の治療には、レチノイド(ビタミンA誘導体)の外用、ケミカルピーリング、レーザー治療などが検討されます。

6. ナジフロキサシンの剤形と特徴

ナジフロキサシン(アクアチム)には3つの剤形があり、それぞれ特徴があります。症状や部位、患者さんの好みに応じて使い分けられます。

アクアチムクリーム1%

水中油型(O/W)の乳剤性基剤を使用したクリーム剤です。伸びが良く、ベタつきが少ないため、顔のニキビ治療に多く使用されています。肌なじみが良く、塗った後にメイクをすることも可能です。

保険適用される疾患は、尋常性ざ瘡(ニキビ)、表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症です。

アクアチムローション1%

液状の製剤で、頭皮や背中など、毛髪がある部位や広い範囲に塗りやすい剤形です。クリームに比べてさっぱりとした使用感があります。

保険適用される疾患はクリームと同様です。

アクアチム軟膏1%

油脂性基剤を使用した軟膏剤です。皮膚への密着性が高く、保護作用があります。ただし、軟膏は尋常性ざ瘡(ニキビ)には保険適用がなく、表在性皮膚感染症および深在性皮膚感染症にのみ使用されます。

ニキビ治療にはクリームまたはローションが処方されるのが一般的です。

ジェネリック医薬品

ナジフロキサシンにはジェネリック医薬品(後発医薬品)も存在します。「ナジフロキサシンクリーム1%」「ナジフロキサシンローション1%」といった名称で、先発品のアクアチムと同等の効果が期待できます。薬価が先発品より安いため、医療費の負担を軽減できます。

7. 正しい使い方

ナジフロキサシンの効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方を守ることが大切です。

基本的な使用方法

1日2回、朝と夜(または朝と就寝前)に使用します。

洗顔でメイクや汚れ、余分な皮脂をやさしく洗い流した後、化粧水や保湿剤でスキンケアを行います。その後、ナジフロキサシンを患部に塗布します。

クリーム剤は適量を指先に取り、ニキビのできている部分にやさしく塗り広げます。ローション剤は手のひらに適量を出し、指先で円を描くようにやさしく塗布します。強くすり込む必要はありません。

塗布した後は、しっかりと手を洗いましょう。

塗布する範囲について

ナジフロキサシンは、炎症を起こしているニキビの部分にピンポイントで塗布します。炎症のない部分や、ニキビのできていない健康な皮膚には塗らないようにしましょう。

顔全体に広く塗り広げる薬ではないことを覚えておいてください。

スキンケアやメイクとの順番

一般的な順番は以下のとおりです。

朝の場合: 洗顔 → 化粧水 → 乳液・保湿剤 → ナジフロキサシン → (必要に応じて)日焼け止め → メイク

夜の場合: クレンジング → 洗顔 → 化粧水 → 乳液・保湿剤 → ナジフロキサシン

ナジフロキサシンが乾いてからメイクをすることで、薬の効果が損なわれにくくなります。

他の外用薬と併用する場合

アダパレン(ディフェリン)や過酸化ベンゾイル(ベピオ)などと併用する場合は、医師の指示に従ってください。一般的には、保湿剤 → アダパレンまたは過酸化ベンゾイル → ナジフロキサシンの順で塗布します。

8. 効果が現れるまでの期間

ナジフロキサシンの効果が実感できるまでの期間には個人差がありますが、一般的には使用開始から1〜2週間程度で改善の兆しが見られることが多いです。

臨床試験のデータでは、ナジフロキサシンクリームを4週間使用した場合、約68.5%の患者さんで有効以上の改善が認められています。また、二重盲検比較試験では、基剤のみを塗布した群の有効率が30.9%であったのに対し、ナジフロキサシンクリームを塗布した群では81.3%と、明らかに高い有効率が報告されています。

ただし、4週間使用しても効果がみられない場合は、漫然と使い続けず、いったん使用を中止して医師に相談することが推奨されています。効果がみられた場合でも、炎症性皮疹(赤みや腫れ)が消失した時点で外用を中止します。

9. 副作用と注意点

ナジフロキサシンは外用薬であるため、全身的な副作用は起こりにくく、比較的安全に使用できる薬です。しかし、以下のような局所的な副作用が報告されています。

主な副作用

局所の副作用として、そう痒感(かゆみ)、皮膚刺激感、発赤、潮紅、丘疹、顔面熱感、接触皮膚炎(かぶれ)、皮膚乾燥、ほてり感などが報告されています。

これらの症状は軽度であれば使用を継続できることが多いですが、症状が強い場合やつらい場合は、いったん使用を中止して医師に相談してください。炎症性ニキビに効く外用抗菌薬は他にもあるため、薬を変更して経過をみることができます。

使用してはいけない部位

ナジフロキサシンは皮膚のみに使用する薬です。目(角膜・結膜)には絶対に使用しないでください。もし目に入った場合は、すぐに水で洗い流し、症状がある場合は眼科を受診してください。

口唇や粘膜への使用も避けてください。

光線過敏症について

ニューキノロン系抗菌薬の経口剤(内服薬)では光線過敏症が報告されています。ナジフロキサシンは外用薬であり、皮膚からの吸収は非常に少ないため、光線過敏症の報告は多くありませんが、使用中は強い日差しを長時間浴びることは避け、日焼け止めを使用するなどの紫外線対策を心がけるとよいでしょう。

妊娠中・授乳中の方

妊娠中または妊娠している可能性のある方への使用は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされています。妊娠中・授乳中の方は、使用前に必ず医師に相談してください。

小児への使用

低出生体重児、新生児、乳児、幼児を対象とした有効性・安全性を指標とした臨床試験は実施されていません。小さなお子さんに使用する場合は、医師の指示に従ってください。

10. 耐性菌について

抗菌薬を使用するうえで避けて通れないのが「耐性菌」の問題です。耐性菌とは、本来効くはずの抗菌薬が効かなくなった菌のことです。

耐性菌が生じる原因

抗菌薬を長期間、漫然と使い続けると、菌の中で遺伝子変異が起こり、その抗菌薬が効かない菌が出現することがあります。耐性を持った菌は抗菌薬の影響を受けずに生き残り、増殖していきます。

ナジフロキサシン使用時の注意

ナジフロキサシンの添付文書にも「耐性菌の発現等を防ぐため、疾病の治療上必要な最小限の期間の適用にとどめること」と記載されています。

具体的には以下のことに注意しましょう。

炎症が治まったら使用を中止する: 赤みや腫れがなくなったニキビには、もう塗る必要はありません。予防目的で漫然と塗り続けることは避けてください。

4週間で効果がなければ中止を検討: 4週間使用しても改善が見られない場合は、耐性菌の存在や他の原因が考えられます。医師に相談して治療方針を見直しましょう。

医師の指示を守る: 自己判断で使用期間を延ばしたり、症状がないのに予防的に使い続けたりすることは避けてください。

耐性菌が出現した場合

ナジフロキサシンが効かない場合や耐性菌の存在が疑われる場合は、他の外用抗菌薬(クリンダマイシン、オゼノキサシンなど)への変更や、抗菌薬に頼らない治療(過酸化ベンゾイル、アダパレンなど)への切り替えが検討されます。

11. 他のニキビ治療薬との併用

現在のニキビ治療では、ナジフロキサシン単独で使用するよりも、他の治療薬と併用することが推奨されるケースが多くなっています。日本皮膚科学会のガイドラインに基づいて、主な併用療法を紹介します。

アダパレン(ディフェリン)との併用

アダパレンは、毛穴の角化異常を改善し、毛穴の詰まりを解消する作用があります。白ニキビや黒ニキビ(面皰)の段階から効果を発揮し、ニキビの発生自体を予防する働きがあります。

ナジフロキサシンは炎症を起こした赤ニキビに対して効果的ですが、毛穴の詰まり自体を改善する作用はありません。そのため、アダパレンと併用することで、「毛穴の詰まりを改善してニキビを予防する」と「炎症を鎮める」の両方の効果が期待できます。

日本皮膚科学会のガイドラインでは、アダパレンと外用抗菌薬(ナジフロキサシンを含む)の併用は「強く推奨」されています。

過酸化ベンゾイル(ベピオ)との併用

過酸化ベンゾイルは、強い酸化作用によりアクネ菌に対する殺菌作用を発揮します。また、角質を剥離する作用もあり、毛穴の詰まりを改善します。

重要なのは、過酸化ベンゾイルに対しては現在のところ耐性菌が報告されていないという点です。そのため、耐性菌の問題を回避しながら長期間使用できる薬剤として位置づけられています。

ナジフロキサシンと過酸化ベンゾイルを併用することで、相補的な抗菌作用が期待できます。

配合剤について

近年では、複数の成分を配合した製剤も登場しています。

エピデュオゲル:アダパレン + 過酸化ベンゾイル デュアック配合ゲル:クリンダマイシン + 過酸化ベンゾイル

これらの配合剤は1本で複数の効果が得られるメリットがありますが、皮膚への刺激が強くなることもあるため、医師と相談しながら使用します。

内服抗菌薬との併用

炎症が中等度から重症の場合は、外用薬だけでなく内服抗菌薬(飲み薬)が併用されることがあります。主にテトラサイクリン系(ドキシサイクリン、ミノサイクリン)やマクロライド系の抗菌薬が用いられます。

内服抗菌薬も漫然と長期間使用することは避け、炎症が落ち着いたら外用薬による維持療法へ移行します。

12. ナジフロキサシンが効かない場合

ナジフロキサシンを正しく使用しても効果が実感できない場合、いくつかの原因が考えられます。

非炎症性ニキビが多い場合

白ニキビや黒ニキビが中心で、炎症性の赤ニキビが少ない場合、ナジフロキサシンの効果は限定的です。この場合は、アダパレンや過酸化ベンゾイルなど、毛穴の詰まりを改善する薬への変更や追加が検討されます。

耐性菌の存在

ナジフロキサシンに対する耐性を持った菌が原因となっている可能性があります。この場合は、他の系統の外用抗菌薬への変更や、過酸化ベンゾイルなど耐性菌の心配がない薬剤への切り替えが有効です。

ニキビ以外の疾患

「ニキビだと思っていたものが実は別の疾患だった」というケースもあります。例えば、酒皶(しゅさ)、毛包炎、脂漏性皮膚炎などは、見た目がニキビに似ていることがありますが、治療法が異なります。効果がない場合は、改めて皮膚科で診断を受けることをお勧めします。

生活習慣やスキンケアの問題

いくら薬を塗っても、ニキビを悪化させる生活習慣を続けていては改善が難しいことがあります。睡眠不足、偏った食生活、過度のストレス、不適切なスキンケアなどが原因となっている場合は、生活習慣の見直しも必要です。

治療の選択肢

ナジフロキサシンが効かない場合の選択肢として、以下のような治療が検討されます。

他の外用抗菌薬への変更: クリンダマイシン(ダラシン)やオゼノキサシン(ゼビアックス)など、作用機序の異なる外用抗菌薬に変更します。

アダパレンや過酸化ベンゾイルの追加・変更: 毛穴の詰まりを改善する薬を追加したり、主軸として使用したりします。

内服抗菌薬の追加: 炎症が強い場合は、一時的に内服抗菌薬を併用して炎症を鎮めます。

その他の治療: 重症の場合や難治性の場合は、ケミカルピーリング、面皰圧出、漢方薬、ホルモン療法(女性の場合)などが検討されることもあります。

13. 市販薬について

「病院に行く時間がない」「軽いニキビだから市販薬で何とかしたい」と考える方も多いでしょう。しかし、ナジフロキサシンは処方箋医薬品であり、市販薬としては販売されていません。

ドラッグストアなどで購入できるニキビ用の塗り薬には、抗炎症成分(イブプロフェンピコノール、グリチルレチン酸など)や殺菌成分(イソプロピルメチルフェノール、レゾルシンなど)、角質軟化成分(イオウ、サリチル酸など)を配合したものがあります。

軽症のニキビであれば、市販薬で症状が改善することもあります。しかし、以下のような場合は皮膚科の受診をお勧めします。

市販薬を2週間程度使用しても改善しない場合、炎症が強い赤ニキビや膿を持ったニキビが多数ある場合、ニキビが繰り返しできる場合、ニキビ跡(色素沈着や瘢痕)が気になる場合。

皮膚科を受診することで、ナジフロキサシンをはじめとする効果の高い処方薬を使用でき、症状に合った適切な治療を受けることができます。また、ニキビ跡を残さないための早期治療という観点からも、専門医への相談をお勧めします。

14. 日常生活で気をつけること

ナジフロキサシンによる治療効果を高め、ニキビを改善・予防するために、日常生活で気をつけたいポイントをまとめます。

正しい洗顔

1日2回、朝と夜に洗顔を行います。洗顔料をよく泡立て、肌をこすらずにやさしく洗いましょう。ぬるま湯でしっかりとすすぎ、清潔なタオルで水分を押さえるように拭き取ります。

過度な洗顔は皮脂を取りすぎてしまい、かえって皮脂分泌を促進することがあるため注意が必要です。また、スクラブ入りの洗顔料やゴシゴシこする洗い方は、炎症を悪化させることがあるので避けましょう。

適切な保湿

ニキビ肌でも保湿は大切です。乾燥すると肌のバリア機能が低下し、かえってニキビが悪化することがあります。また、ナジフロキサシンやアダパレンなどの外用薬は肌を乾燥させることがあるため、保湿剤の併用が推奨されています。

ノンコメドジェニック(ニキビのもとになりにくい)と表示された保湿剤や化粧品を選ぶとよいでしょう。油分の多いクリームやオイルは毛穴を詰まらせる可能性があるため、ニキビが気になる方は避けた方が無難です。

紫外線対策

紫外線は肌のターンオーバーを乱し、毛穴の詰まりを悪化させることがあります。また、ニキビの炎症後の色素沈着を悪化させる原因にもなります。日焼け止めを使用するなど、適切な紫外線対策を行いましょう。

生活習慣の見直し

十分な睡眠:睡眠不足はホルモンバランスを乱し、皮脂分泌を増加させることがあります。

バランスの良い食事:特定の食品がニキビを悪化させるという明確なエビデンスは限られていますが、バランスの良い食事を心がけることは肌の健康にも良いとされています。糖質や脂質の過剰摂取は避け、ビタミンや食物繊維を含む野菜・果物を積極的に摂りましょう。

ストレス管理:ストレスは皮脂分泌やホルモンバランスに影響を与え、ニキビを悪化させる要因となります。適度な運動やリラックスできる時間を設けるなど、ストレス解消を心がけましょう。

避けるべき行動

ニキビを手で触る、つぶす:手には雑菌がついており、ニキビを触ることで炎症を悪化させたり、感染を広げたりする可能性があります。また、ニキビをつぶすと、皮膚組織を傷つけてニキビ跡が残りやすくなります。

厚塗りのメイク:毛穴を塞いでしまうような厚塗りのメイクは避け、ノンコメドジェニックの化粧品を使用しましょう。帰宅後は早めにクレンジングでメイクを落とすことも大切です。

15. まとめ

本記事では、ナジフロキサシンによるニキビ治療について詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。

ナジフロキサシン(アクアチム)は、ニューキノロン系の外用抗菌薬であり、細菌のDNA複製を阻害することで、ニキビの原因菌であるアクネ菌に対して強い殺菌作用を発揮します。

日本皮膚科学会のガイドラインにおいて、炎症性皮疹(赤ニキビ)に対する外用抗菌薬として「強く推奨」されている、エビデンスに基づいた治療薬です。

白ニキビ・黒ニキビ(非炎症性皮疹)に対しては効果が限定的であり、赤ニキビや黄ニキビ(炎症性皮疹)に効果的です。ニキビ跡には効果がありません。

1日2回、洗顔後に患部へ塗布します。炎症が消失したら使用を中止し、4週間使用しても効果がなければ医師に相談しましょう。

副作用は軽度のものが多く、かゆみ、刺激感、発赤などが報告されています。耐性菌の発現を防ぐため、漫然と長期間使い続けないことが大切です。

アダパレンや過酸化ベンゾイルとの併用が推奨されています。これにより、毛穴の詰まりの改善と炎症の鎮静を同時に行うことができます。

処方箋医薬品であるため、使用には医師の処方が必要です。市販薬として購入することはできません。

ニキビは適切な治療によってコントロール可能な疾患です。軽く考えて放置したり、自己流のケアを続けたりすると、ニキビ跡が残ってしまうこともあります。ニキビが気になる方は、早めに皮膚科を受診して、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。

当院では、患者さま一人ひとりの症状やお肌の状態に合わせた最適なニキビ治療をご提案しております。ニキビでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。


参考文献


図表

表1:ニキビの種類とナジフロキサシンの効果

ニキビの種類状態ナジフロキサシンの効果
白ニキビ(閉鎖面皰)毛穴が詰まり、皮脂がたまった状態△ 効果は限定的
黒ニキビ(開放面皰)毛穴が開き、皮脂が酸化して黒く見える状態△ 効果は限定的
赤ニキビ(紅色丘疹)アクネ菌の増殖により炎症を起こした状態◎ 高い効果
黄ニキビ(膿疱)炎症が進行し、膿がたまった状態○ 効果あり
ニキビ跡(瘢痕・色素沈着)炎症後に残る跡× 効果なし

表2:ナジフロキサシン製剤の比較

製品名剤形特徴ニキビへの適応
アクアチムクリーム1%クリーム伸びが良く、ベタつきが少ない。顔に使いやすい
アクアチムローション1%ローションさっぱりとした使用感。頭皮や背中に使いやすい
アクアチム軟膏1%軟膏密着性が高く、保護作用がある× 適応外

表3:主なニキビ外用薬の比較

薬剤名(商品名)系統主な作用推奨度*
ナジフロキサシン(アクアチム)ニューキノロン系抗菌薬殺菌作用A
クリンダマイシン(ダラシン)リンコマイシン系抗菌薬殺菌作用、抗炎症作用A
オゼノキサシン(ゼビアックス)キノロン系抗菌薬殺菌作用A
アダパレン(ディフェリン)レチノイド様作用薬毛穴詰まり改善、ニキビ予防A
過酸化ベンゾイル(ベピオ)酸化剤殺菌作用、角質剥離作用A

*日本皮膚科学会ガイドラインにおける推奨度(A:強く推奨する)


本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療を行うものではありません。症状が気になる場合は、医療機関を受診して医師の診断を受けてください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

プロフィールを見る

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

プロフィールを見る

電話予約
0120-780-194
1分で入力完了
簡単Web予約