はじめに
顔や首、手の甲などに、茶色や黒色のシミのような「できもの」が増えてきたと感じていませんか。それは「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」と呼ばれる皮膚の良性腫瘍かもしれません。
脂漏性角化症は「老人性イボ」とも呼ばれ、加齢とともに多くの方に見られる非常にポピュラーな皮膚疾患です。世界的には40歳以上の成人の約80%以上に認められるとされており、80代になるとほぼすべての方に見られるようになります。良性腫瘍であるため健康上の問題はありませんが、顔など目立つ部位にできると見た目が気になり、治療を希望される方も少なくありません。
本記事では、脂漏性角化症の原因や症状、診断方法、そして皮膚科で受けられる各種治療法について詳しく解説します。新宿エリアで脂漏性角化症の治療を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

脂漏性角化症とは
定義と概要
脂漏性角化症(seborrheic keratosis)は、皮膚に発生する良性の腫瘍です。「老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)」や「老人性イボ」とも呼ばれますが、これはウイルス性のイボ(尋常性疣贅)とは全く異なるものです。ウイルスが原因ではないため、他人に感染することはありません。
MSDマニュアル家庭版によると、脂漏性角化症は「通常は肌色、褐色、黒色の組織がいぼ状に増殖する病気で、皮膚のどこにでも生じる」と定義されています。中年以降の高齢者に非常によくみられ、がん化することもない安全な疾患です。
発症年齢と頻度
脂漏性角化症は30代頃から出現し始め、40代以降に増加する傾向があります。早い方では20代から発症することもあり、紫外線を多く浴びる生活習慣がある場合は若年でも発症リスクが高まります。
加齢とともに発症頻度は上昇し、80代になるとほぼ全員に認められるようになります。これは皮膚の老化現象の一つとして捉えられています。
好発部位
脂漏性角化症は手のひらと足の裏を除く全身の皮膚どこにでも発生する可能性がありますが、特に以下の部位に多く見られます。
顔面(特にこめかみ、頬)は最も頻度が高い好発部位です。紫外線を浴びやすい部位であることが関係しています。頭部・頭皮にもよく発生し、髪をとかす際に引っかかって気になる方も多くいます。首・デコルテ部分では、首に多発する小さなできものは「首イボ」や「アクロコルドン」「スキンタッグ」と呼ばれることもあります。前胸部・背部(特に肩周辺)にも発生し、衣服との摩擦で気になることがあります。手の甲も日光に晒されやすいため発生しやすい部位です。
紫外線に当たりやすい部位に多く発生するのが特徴ですが、体幹や脇腹、鼠径部など日光が当たらない部位にも発生することがあります。これは加齢による表皮の遺伝子変異が原因とされています。
脂漏性角化症の原因
脂漏性角化症の明確な原因は完全には解明されていませんが、主に以下の要因が関与していると考えられています。
加齢
最も重要な要因は加齢です。皮膚の老化に伴い、表皮細胞のターンオーバー(新陳代謝)のサイクルが乱れることで発症しやすくなります。
健康な皮膚では約28日周期でターンオーバーが行われ、紫外線などの刺激で作られたメラニン色素は古い角質とともに体外に排出されます。しかし加齢とともにこのサイクルが長くなり、メラニンの排出が追いつかなくなると、徐々に色素が蓄積されていきます。この蓄積が皮膚を盛り上がるほどになった状態が脂漏性角化症です。
紫外線
紫外線は脂漏性角化症の重要な発症要因の一つです。長年にわたって紫外線を浴び続けることで、皮膚の表皮基底細胞の遺伝子に異常が生じます。
紫外線を浴びると、肌を守るために表皮でメラニン色素が生成されます。このメラニンは通常はターンオーバーで排出されますが、加齢や紫外線ダメージの蓄積により排出機能が低下すると、異常を起こした表皮基底細胞が増殖して盛り上がるようになります。これが脂漏性角化症の発生メカニズムです。
日光を浴びやすい顔や手足に多く発生することからも、紫外線の関与は明らかです。野外でのスポーツや仕事に従事している方、ゴルフ・登山・釣りなどを趣味とする方は発症リスクが高いとされています。
遺伝的要因
同じ年齢でも脂漏性角化症のできる数や大きさには個人差があることから、遺伝的な体質も関与していると考えられています。家族に脂漏性角化症の多い方がいる場合、発症リスクが高くなる傾向があります。
分子生物学的な研究では、脂漏性角化症の発症にはFGFR3、PIK3CA、RAS遺伝子などの活性化変異が高頻度に検出されており、これらの変異により表皮角化細胞の異常増殖が引き起こされることが明らかになっています。
摩擦・刺激
ネックレスや衣服などによる慢性的な摩擦も、脂漏性角化症の発症に関与することがあります。首周りに多発しやすい理由の一つとして、衣類の襟による摩擦が挙げられています。
脂漏性角化症の症状と特徴
外観的特徴
脂漏性角化症は以下のような外観的特徴を持っています。
色調については、肌色から淡褐色、茶褐色、黒色まで様々な濃さのものがあります。同じ方でも部位によって色が異なることがあります。大きさは数ミリメートルから2〜3センチメートル程度が一般的ですが、まれに5センチメートル以上の大きなものが発生することもあります。形状は円形または楕円形が多く、境界がはっきりしているのが特徴です。質感については、表面がザラザラしていることが多く、乾燥してカサカサした感触があります。「皮膚に貼り付いたような」外観と表現されることもあります。隆起度は平坦なものからわずかに盛り上がったもの、明らかに隆起したものまで様々です。最初はシミのように平らだったものが、時間の経過とともに徐々に盛り上がってくることもあります。
MSDマニュアルプロフェッショナル版では、「表面は疣状、ビロード状、または蝋様であったり、鱗屑や痂皮が付着していたりする」と記載されています。
自覚症状
脂漏性角化症は基本的に痛みやかゆみを伴いません。しかし、以下のような場合には自覚症状が出ることがあります。
摩擦による刺激として、衣類やアクセサリーにこすれることで炎症を起こし、かゆみや赤みを感じることがあります。大きくなる際のかゆみとして、脂漏性角化症が増大している時期にかゆみを感じることがあります。出血については、ひげを剃る時や髪をとかす時に引っかかって出血することがあります。
経過と予後
脂漏性角化症は良性腫瘍であり、放置しても悪性化(がん化)することはありません。ただし、自然に消えることもないため、一度できたものは治療しない限り残り続けます。また、加齢とともに数が増えたり、既存のものが徐々に大きくなったりする傾向があります。
脂漏性角化症と鑑別すべき疾患
脂漏性角化症は見た目が他の皮膚疾患と似ていることがあり、正確な診断が重要です。特に以下の疾患との鑑別が必要です。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫は皮膚がんの一種で、最も注意が必要な疾患です。脂漏性角化症と同様に黒色を呈することがありますが、悪性黒色腫には以下のような特徴があります。全体の形が非対称的であること、縁どりが凹凸不整であること、黒色・茶褐色・青色などが入り混じり色の濃さが不均一であること、大きさが7mm以上であること、隆起している箇所があること、大きさや形が変化していることなどが注意すべきポイントです。
慶應義塾大学病院の情報によると、日本人では人口10万人あたり約2人の発生率とされていますが、リンパ節や他臓器への転移が高頻度にあり、予後が不良な腫瘍です。見分けが難しい場合は、必ず専門医による診察を受けてください。
日光角化症(老人性角化症)
日光角化症は皮膚がんの前段階(前がん病変)とされる疾患です。脂漏性角化症と似ていますが、周囲にわずかに赤みを帯びていることが特徴です。日光を多く浴びる顔面に好発し、放置すると有棘細胞癌に進行する可能性があるため、早期の診断・治療が重要です。
基底細胞癌
基底細胞癌は皮膚悪性腫瘍の中で最も頻度が高い疾患です。紫外線が誘引となるため、顔面(特に鼻を中心に頬のあたり)に好発します。日本人の場合は黒い基底細胞癌が多く、脂漏性角化症と見分けがつきにくいことがあります。
ほくろ(色素性母斑)
脂漏性角化症は「ほくろ」と間違われることがあります。ほくろは脂漏性角化症と比べて表面が滑らかで、触ると柔らかいのが特徴です。脂漏性角化症は表面がザラザラしており、指で触るとポロポロとかさぶたのように取れそうな感触があります。
老人性色素斑(シミ)
老人性色素斑は平坦なシミで、脂漏性角化症の前段階とも言えます。老人性色素斑が徐々に盛り上がって脂漏性角化症に移行することも珍しくありません。両者が混在していることも多く見られます。
Leser-Trélat(レーザー・トレラ)徴候
脂漏性角化症が数か月という短期間に全身に急激に多発し、かゆみを伴う場合は「Leser-Trélat徴候」と呼ばれ、内臓の悪性腫瘍(特に胃がんなど)が合併している可能性があります。このような症状がみられた場合は、すみやかに医療機関を受診してください。
脂漏性角化症の診断方法
視診
多くの場合、脂漏性角化症は見た目の特徴から診断が可能です。皮膚科専門医であれば、9割以上のケースで視診のみでほぼ診断がつきます。特徴的な所見として、境界がはっきりした褐色から黒色のイボ状の病変、表面のザラザラした質感、皮膚に貼り付いたような外観などが確認されます。
ダーモスコピー検査
ダーモスコピーは、ダーモスコープという特殊な拡大鏡(10倍程度)を使用して皮膚の表面を詳細に観察する検査です。
脂漏性角化症では、以下のような特徴的な所見が観察されます。面皰様開孔(comedo-like opening)は毛穴のような小さな開口部です。多発性稗粒腫様嚢腫(multiple milia-like cysts)は白色の小さな粒状構造です。指紋様構造(fingerprint-like structures)は指紋のような平行線パターンです。脳回転様外観(cerebriform pattern)は脳のしわのような溝と隆起のパターンです。ヘアピン様血管は繊細な血管パターンです。
これらの所見により、悪性黒色腫や基底細胞癌、日光角化症などとの鑑別が可能になります。ダーモスコピー診断により、肉眼診断と比較して診断精度が約20〜30%向上することが報告されています。
ダーモスコピー検査は保険適用で、4か月に1回算定可能です(72点)。
病理組織検査(生検)
視診やダーモスコピーでも診断がつかない場合や、悪性腫瘍の可能性が否定できない場合には、病理組織検査を行います。これは病変部の一部または全部を切除して、顕微鏡で細胞レベルまで詳細に調べる検査です。
病理検査を行うことで確定診断が可能になり、特に悪性腫瘍との鑑別に有用です。
脂漏性角化症の治療法
脂漏性角化症は良性腫瘍であり、健康上の問題がないため、必ずしも治療が必要ではありません。しかし、以下のような場合には治療が検討されます。見た目(整容面)が気になる場合、衣類やアクセサリーとの摩擦で不快感がある場合、ひげ剃りや髪をとかす際に邪魔になる場合、かゆみや炎症を起こしている場合、悪性腫瘍との鑑別が必要な場合などです。
治療法には保険適用のものと自由診療のものがあり、それぞれ特徴が異なります。
液体窒素凍結療法(保険適用)
治療原理
液体窒素凍結療法(冷凍凝固術)は、−196℃の超低温の液体窒素を患部に当てて急激に冷やす治療法です。綿棒やスプレーを用いて液体窒素を病変部に塗布し、凍結と解凍を繰り返すことで脂漏性角化症の組織を物理的に破壊します。
治療の流れ
治療は麻酔なしで行われます。患部に液体窒素を数秒間当て、凍結・解凍を3回程度繰り返します。治療後は凍傷を起こして組織が壊死し、その後かさぶたとなって1〜3週間で自然に剥がれ落ちます。
メリット
保険適用で費用を抑えられます。3割負担の場合、3か所以下で1回あたり約630円、4か所以上で約810円程度です。麻酔が不要で、手術や特別な処置が必要ありません。ほとんどの皮膚科で受けられる簡便な治療法です。特別な術後処置が不要な場合が多いです。
デメリット
1回の治療で完全に除去できないことが多く、1〜2週間おきに複数回(通常2〜3回以上)の通院が必要です。治療時および治療後に痛みを伴うことがあります。治療後に水ぶくれや血豆ができることがあります。炎症後色素沈着が半年から2年程度残ることがあり、特に顔面では美容上の問題となる場合があります。軽く凍結すると再発しやすく、強く凍結すると瘢痕が残るため、医師の経験が治療結果を左右します。
外科的切除(保険適用)
治療原理
メスを用いて脂漏性角化症を直接切除する方法です。局所麻酔を行った後に病変部を切り取り、縫合します。
適応
悪性腫瘍との鑑別が必要な場合に最も適しています。切除した組織を病理組織検査に出すことで、確定診断が可能になります。また、病変の面積が大きく他の治療法では対応が難しい場合にも選択されます。
メリット
切除した組織で病理検査ができ、正確な診断がつきます。一度で確実に除去でき、再発しにくい治療法です。保険適用で行える場合があります。
デメリット
切開と縫合が必要なため、線状の傷跡が残ります。1〜2週間後に抜糸のための通院が必要です。縫合部の凹凸(ドッグイアー)が残ることがあります。ケロイド体質の方は傷跡が目立つリスクがあります。
炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)治療
治療原理
炭酸ガスレーザーは波長10,600nmの赤外線領域のレーザーで、体内の水分に吸収されて高熱を発する性質があります。照射された組織は瞬時に蒸散され、周囲組織は熱により凝固するため、出血が少ないのが特徴です。
皮膚には水分が多く含まれるため、レーザー照射により一瞬で熱エネルギーに転換されて組織が蒸散します。脂漏性角化症は通常皮膚の浅い層にあるため、わずかに血がにじむところまで削れば除去できます。
治療の流れ
局所麻酔(注射または麻酔クリーム)を行った後、レーザーを照射して病変部を蒸散させます。治療時間は1か所につき2〜3分程度です。治療後は軟膏を塗布し、1〜2週間テープで保護します。約1週間で皮膚が再生し、数か月かけて赤みや色素沈着が消退していきます。
メリット
多くの場合、1回の治療で除去が完了します。切除手術と比較して出血が少なく、傷跡が目立ちにくいです。深部組織や周囲の正常な皮膚へのダメージが少ないため、治りが早いです。液体窒素治療と比較して、炎症後色素沈着が軽く、起こっても回復が早いです。頭皮の場合、毛根を残して治療できるため、毛が生えてくる場合が多いです。
デメリット
基本的に自由診療となり、保険適用外のため費用がかかります。治療後2〜4か月程度、赤みや色素沈着が残ることがあります。数か月間の紫外線対策(遮光)が必要です。
保険適用について
平成30年度の診療報酬改定により、脂漏性角化症への治療は「イボ等冷凍凝固術」「いぼ焼灼法」の2つの算定のみとなりました。そのため、広範囲の炭酸ガスレーザー治療は保険外の自由診療となります。ただし、数か所程度の少数であれば「いぼ焼灼法」として保険適用になる場合もあります。
電気焼灼法(電気メス・高周波メス)
治療原理
電気メスや高周波治療器(サージトロンなど)を用いて、脂漏性角化症の組織を焼灼・切除する方法です。高周波の働きにより切除と止血を同時に行えるため、従来のメスに比べて出血が少なく、傷跡も小さくなります。
治療の流れ
局所麻酔を行った後、電気メスまたは高周波メスで病変部を削り取るように除去します。治療後は軟膏塗布とテープ保護を1〜2週間行います。
メリット
液体窒素と比較して、赤みや色素沈着が残りにくいです。1回の治療で除去できることが多いです。出血が少なく、傷跡が小さくなります。
デメリット
自由診療となる場合が多く、費用がかかります。局所麻酔が必要です。浅く削ると再発、深く削ると瘢痕を残すリスクがあり、医師の技量が治療結果を左右します。
レーザー治療(Qスイッチレーザー・ピコレーザー)
治療原理
Qスイッチレーザー(ルビーレーザー、ヤグレーザーなど)やピコレーザーは、メラニン色素に選択的に反応するレーザーです。色素を破壊することで脂漏性角化症を除去します。
適応
隆起が少なく、比較的平坦な脂漏性角化症に適しています。
メリット
ダウンタイムが短く、赤みや色素沈着のリスクが低いです。周囲の正常組織へのダメージが少ないです。
デメリット
厚みのある脂漏性角化症では取り残しが生じやすく、再発することがあります。複数回の治療が必要になることが多いです。色は薄くなっても盛り上がりが残る場合があります。自由診療のため費用がかかります。
治療法の比較
それぞれの治療法を比較すると、以下のような特徴があります。
液体窒素凍結療法は保険適用で、治療回数は複数回(2〜3回以上)、痛みは中程度(治療時・治療後)、傷跡リスクは色素沈着が残りやすく、費用は1回600〜800円程度(3割負担)、適した症例は費用を抑えたい方や小さな病変です。
外科的切除は保険適用の場合があり、治療回数は1回(抜糸が必要)、痛みは少ない(麻酔使用)、傷跡リスクは線状の瘢痕が残る、費用は保険適用時は数千円〜、適した症例は悪性腫瘍との鑑別が必要な場合や大きな病変です。
炭酸ガスレーザーは自由診療が多く、治療回数は基本1回、痛みは少ない(麻酔使用)、傷跡リスクは目立ちにくい、費用は1か所数千円〜(大きさによる)、適した症例はきれいに治したい方や顔面の病変です。
電気焼灼法は自由診療が多く、治療回数は基本1回、痛みは少ない(麻酔使用)、傷跡リスクは比較的目立ちにくい、費用は1か所数千円〜(大きさによる)、適した症例はきれいに治したい方や顔面の病変です。
治療法の選択は、病変の大きさ・数・部位、患者様のご希望、費用、通院可能な回数などを総合的に考慮して決定されます。皮膚科専門医とよく相談し、最適な治療法を選択することが大切です。
治療後のケアと経過
治療直後のケア
どの治療法でも、治療後は傷口の適切なケアが重要です。
液体窒素治療後は、特に絆創膏などで保護する必要がない場合が多いですが、水ぶくれや血豆ができた場合は清潔に保ち、無理に剥がさないようにします。レーザー・電気焼灼治療後は、処方された軟膏を塗布し、1〜2週間テープで保護します。傷を乾燥させないことが重要で、軟膏を塗って湿潤環境を保つことで治りが良くなります。外科的切除後は、医師の指示に従って消毒や軟膏塗布を行い、1〜2週間後の抜糸まで傷口を清潔に保ちます。
紫外線対策
治療後の皮膚は紫外線の影響を受けやすく、色素沈着を起こしやすい状態です。治療後は数か月間、しっかりと紫外線対策を行うことが重要です。
日焼け止めはSPF50程度のものを使用し、こまめに塗り直しましょう。帽子や日傘を併用することで、より効果的に紫外線を防ぐことができます。
色素沈着への対処
治療後に炎症後色素沈着(一時的な茶色い跡)が生じることがありますが、多くの場合は数か月〜半年程度で自然に薄くなります。
色素沈着が気になる場合は、ハイドロキノン(美白剤)の外用やビタミンC、トラネキサム酸の内服を併用することで改善を早めることができます。ただし、美白剤の過度な使用はかえって色素沈着を長引かせることがあるため、医師の指示に従って使用してください。
再発と経過観察
脂漏性角化症は完全に除去できれば基本的に再発しませんが、以下の点に注意が必要です。
治療で表皮基底細胞が残っていると、数か月〜数年後に再発することがあります。既存の病変が治っても、別の部位に新しい脂漏性角化症ができることがあります。紫外線対策を継続することで、新たな発生を予防できます。
定期的に皮膚の状態をセルフチェックし、気になる変化があれば早めに皮膚科を受診しましょう。
脂漏性角化症の予防法
脂漏性角化症は加齢に伴う皮膚の変化であり、完全に予防することは難しいですが、以下の対策により発症リスクを軽減することが期待できます。
紫外線対策
紫外線対策は脂漏性角化症予防の最も重要なポイントです。
日焼け止めの使用については、紫外線防止効果の高いSPF50、PA+++以上のものを選びましょう。日焼け止めの持続効果は2〜3時間程度なので、屋外での長時間の活動では塗り直しが必要です。夏だけでなく、冬や曇りの日でも紫外線は降り注いでいるため、年間を通じて対策することが大切です。室内にいる時も窓ガラスを通して紫外線は入ってくるため、低刺激性のタイプを使用するとよいでしょう。
日傘・帽子の活用も効果的です。外出時は日傘や帽子を使用して、直接日光を浴びることを避けましょう。UVカット機能のある衣類も有効です。
サングラスの着用は、目の周りへの紫外線を防ぐだけでなく、まぶしさによる表情じわの予防にもなります。
スキンケア
肌の保湿は、バリア機能を保ち、紫外線によるダメージを軽減するために重要です。
洗顔後はすぐに化粧水や保湿クリームで保湿しましょう。乾燥した肌は外部からの刺激に弱くなるため、適切な保湿を心がけてください。
栄養と生活習慣
抗酸化作用のある栄養素を積極的に摂取することで、紫外線による肌ダメージを軽減できる可能性があります。
ビタミンCは抗酸化作用があり、メラニン生成を抑制する働きがあります。柑橘類、キウイ、ブロッコリーなどに多く含まれています。ビタミンEも抗酸化作用があり、肌の老化を防ぐ効果が期待できます。アーモンド、アボカド、植物油などに含まれています。
バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠など、健康的な生活習慣を心がけることも、肌の健康維持に重要です。
定期的なセルフチェック
日頃から自分の肌の状態をチェックし、新しいシミやイボができていないか、既存のものに変化がないか確認する習慣をつけましょう。特に、背中や頭皮など見えにくい部位も忘れずにチェックしてください。
気になる変化があれば、早めに皮膚科専門医を受診することで、脂漏性角化症の早期発見・早期治療が可能になります。
市販薬について
脂漏性角化症に効果のある市販薬は存在しません。
「イボコロリ」などのイボ治療薬は、ウイルス性のイボ(尋常性疣贅)に対するものであり、脂漏性角化症には効果がありません。同様に、ヨクイニン(ハトムギエキス)を含む内服薬も、脂漏性角化症には効果が期待できません。
また、自分でイボを取ろうとすることは絶対に避けてください。傷跡が残ったり、感染症を起こしたり、本来は悪性腫瘍だった場合に適切な治療の機会を逃したりするリスクがあります。
脂漏性角化症の除去を希望される場合は、必ず皮膚科を受診し、適切な診断と治療を受けてください。

よくある質問(Q&A)
A. はい、脂漏性角化症は良性腫瘍であり、放置しても健康上の問題はありません。がん化することもないため、見た目が気にならなければ治療の必要はありません。ただし、自然に消えることはなく、加齢とともに数が増えたり大きくなったりする傾向があります。見た目が気になる場合や、摩擦でかゆみ・不快感がある場合は治療を検討してください。
A. 一般の方が見た目だけで正確に区別することは困難です。脂漏性角化症は境界がはっきりしており、表面がザラザラしているのが特徴ですが、皮膚がんと似た外観を呈することもあります。急に大きくなった、形が不規則になった、色むらがある、出血しやすいなどの変化があれば、すぐに専門医を受診してください。ダーモスコピー検査で多くの場合は鑑別可能です。
Q. 治療後に再発することはありますか?
A. 完全に除去できれば同じ場所からの再発は少ないですが、表皮基底細胞が残っていると再発することがあります。また、別の部位に新しい脂漏性角化症ができることはあります。再発を防ぐためには、治療法の選択と医師の技術が重要です。また、紫外線対策を継続することで新たな発生を予防できます。
Q. 治療費用はどのくらいかかりますか?
A. 治療法によって異なります。液体窒素治療は保険適用で、3割負担の場合1回600〜800円程度です。外科的切除も保険適用となる場合があり、数千円程度です。レーザー治療や電気焼灼法は多くの場合自由診療となり、1か所あたり数千円〜(大きさや数により異なります)です。詳しい費用は各医療機関にお問い合わせください。
Q. 治療後、日常生活に制限はありますか?
A. 治療翌日から通常の仕事や生活が可能です。洗顔や入浴も基本的に問題ありません。ただし、治療部位を強くこすったり、かさぶたを無理に剥がしたりしないよう注意してください。また、数か月間は紫外線対策を徹底し、日焼けを避けてください。メイクは治療法や経過によって異なりますので、医師の指示に従ってください。
Q. 1回の通院で治療は完了しますか?
A. 治療法によって異なります。液体窒素治療は通常2〜3回以上の通院が必要です。炭酸ガスレーザーや電気焼灼法は多くの場合1回で除去できますが、数が多い場合は複数回に分けて治療することもあります。外科的切除は1回の手術で除去できますが、後日抜糸のための通院が必要です。
新宿で脂漏性角化症の治療をお考えの方へ
新宿エリアには多くの皮膚科・形成外科がありますが、脂漏性角化症の治療を受ける際は、以下のポイントを参考に医療機関を選びましょう。
まず、専門医が在籍していることが重要です。正確な診断には専門的な知識と経験が必要です。皮膚科専門医または形成外科専門医が診察している医療機関を選びましょう。次に、ダーモスコピー検査が可能であることを確認してください。悪性腫瘍との鑑別のため、ダーモスコピー検査ができる環境が整っている医療機関が望ましいです。また、希望する治療法が受けられるかどうかも重要です。液体窒素治療はほとんどの皮膚科で受けられますが、レーザー治療や電気焼灼法は設備のある医療機関に限られます。事前に確認しておくとよいでしょう。さらに、治療後のフォローアップ体制も確認してください。万が一の再発や合併症に対応できるよう、治療後の経過観察体制が整っている医療機関を選びましょう。
アイシークリニック新宿院では、専門医による丁寧な診察と、患者様一人ひとりの症状やご希望に合わせた最適な治療法をご提案しています。脂漏性角化症でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
脂漏性角化症は加齢や紫外線の影響で発症する良性の皮膚腫瘍です。健康上の問題はありませんが、見た目が気になる場合は皮膚科で治療を受けることができます。
治療法には液体窒素凍結療法(保険適用)、外科的切除(保険適用の場合あり)、炭酸ガスレーザー治療、電気焼灼法などがあり、それぞれメリット・デメリットがあります。患者様の症状やご希望に合わせて最適な治療法を選択することが大切です。
また、脂漏性角化症と似た外観の皮膚がんも存在するため、自己判断せず、必ず皮膚科専門医の診察を受けてください。ダーモスコピー検査や病理検査により、正確な診断が可能です。
予防としては、日常的な紫外線対策が最も重要です。若いうちから日焼け止めや帽子・日傘を活用し、肌へのダメージを最小限に抑えましょう。
気になるシミやイボがある方は、早めに専門医にご相談ください。早期に治療することで、より簡単に、傷跡も目立ちにくく治療することができます。
参考文献・引用元
- MSDマニュアル家庭版「脂漏性角化症」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/17-皮膚の病気/皮膚の良性腫瘍/脂漏性角化症
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「脂漏性角化症」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/14-皮膚疾患/良性の皮膚腫瘍-増殖性病変-および血管性病変/脂漏性角化症
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS「脂漏性角化症」 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000287/
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS「悪性黒色腫」 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000288.html
- 日本医事新報社「脂漏性角化症[私の治療]」 https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=17661
- 時事メディカル「肌老化で起こる脂漏性角化症〜紫外線対策とビタミン摂取で予防」 https://medical.jiji.com/topics/2530
- 北海道大学皮膚科「脂漏性角化症」 https://www.derm-hokudai.jp/wp/wp-content/uploads/2021/12/21-01.pdf
- 医学書院 臨床皮膚科「ダーモスコピーで確定診断できる脂漏性角化症所見」 https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1412103973
本記事は医療情報の提供を目的としたものであり、診断や治療の代わりとなるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務