はじめに
新宿は東京の中心地として、多くの人々が生活し、働く街です。そんな新宿には数多くの医療機関が存在していますが、皮膚科や形成外科を受診する際には、それぞれの専門性や治療内容の違いを理解しておくことが重要です。
皮膚は人体最大の臓器であり、私たちの健康状態を反映する鏡でもあります。ニキビやアトピー性皮膚炎といった身近な疾患から、皮膚がんなどの重篤な疾患まで、皮膚科が扱う疾患は多岐にわたります。一方、形成外科は外傷やできもの、生まれつきの変形など、体表面の形態的な問題を扱う外科系診療科です。
本記事では、皮膚科と形成外科それぞれの専門性、治療内容、そして新宿で医療機関を選ぶ際のポイントについて、一般の方にも分かりやすく解説していきます。

皮膚科とは:扱う疾患と診療内容
皮膚科の役割と専門性
皮膚科は、皮膚、毛髪、爪などに生じるあらゆる疾患を診断し、治療する診療科です。日本皮膚科学会によると、皮膚科が扱う疾患は3,000種類以上にのぼるとされており、その範囲は非常に広範です。
皮膚科医は、視診や触診といった基本的な診察に加えて、ダーモスコピー検査、皮膚生検、パッチテスト、アレルギー検査など、さまざまな検査を駆使して診断を行います。また、内服薬や外用薬による薬物療法、レーザー治療、光線療法、液体窒素による冷凍療法など、多様な治療手段を用いて患者さんの症状改善を目指します。
皮膚科が扱う主な疾患
皮膚科で診療する疾患は、大きく以下のカテゴリーに分類されます。
湿疹・皮膚炎群には、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎(かぶれ)、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹などが含まれます。アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が慢性的に繰り返す疾患で、近年では患者数が増加傾向にあります。厚生労働省の調査でも、国民の約10%がアトピー性皮膚炎の既往があるとされています。
感染症も皮膚科の重要な診療領域です。細菌感染症としては、とびひ(伝染性膿痂疹)、蜂窩織炎、丹毒などがあります。ウイルス感染症では、単純ヘルペス、帯状疱疹、尋常性疣贅(いぼ)、伝染性軟属腫(水いぼ)などが代表的です。真菌感染症としては、白癬(水虫)、カンジダ症などがあり、特に白癬は日本人の5人に1人が罹患しているとも言われています。
蕁麻疹も皮膚科で頻繁に診療される疾患です。急性蕁麻疹は数日から数週間で自然に治癒することが多いですが、6週間以上症状が続く慢性蕁麻疹の場合は、専門的な治療が必要となります。
ざ瘡(ニキビ)は、思春期から青年期に多く見られる疾患ですが、成人になってから発症する成人ざ瘡も増加しています。適切な治療を行わないと、瘢痕(ニキビ跡)が残る可能性があるため、早期の皮膚科受診が推奨されます。
皮膚腫瘍も皮膚科の重要な診療対象です。良性腫瘍としては、脂漏性角化症(老人性いぼ)、軟性線維腫、粉瘤(アテローム)などがあります。悪性腫瘍では、基底細胞癌、有棘細胞癌、悪性黒色腫(メラノーマ)などがあり、早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
その他、乾癬、掌蹠膿疱症、円形脱毛症、白斑、薬疹など、皮膚科が扱う疾患は実に多様です。
皮膚科における診断と治療
皮膚科診療の基本は、詳細な問診と視診・触診です。皮膚病変の色、形、大きさ、分布、表面の性状などを丁寧に観察し、患者さんの症状の経過や生活環境、既往歴などの情報と合わせて診断を進めます。
ダーモスコピーは、皮膚の表面を拡大して観察する検査で、特に色素性病変(ほくろやシミなど)の良悪性の鑑別に有用です。皮膚腫瘍が疑われる場合には、局所麻酔下で皮膚の一部を採取して顕微鏡で観察する皮膚生検が行われることもあります。
アレルギーが関与する疾患では、パッチテストやプリックテスト、血液検査によるアレルゲンの特定が重要です。接触皮膚炎の原因物質を特定するパッチテストは、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会のガイドラインに基づいて実施されます。
治療方法は疾患によって異なりますが、外用療法(塗り薬)は皮膚科治療の基本です。ステロイド外用薬、非ステロイド性抗炎症外用薬、抗菌薬外用薬、保湿剤など、症状や部位に応じて適切な薬剤が選択されます。
内服療法も重要な治療手段です。抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬などが使用されます。重症の場合には、免疫抑制薬や生物学的製剤が用いられることもあります。
物理療法としては、液体窒素を用いた冷凍凝固療法がウイルス性いぼなどに、紫外線療法が乾癬やアトピー性皮膚炎に、レーザー治療が血管腫や色素性病変に用いられます。
形成外科とは:扱う疾患と診療内容
形成外科の役割と専門性
形成外科は、体表面の形態や機能の異常を、外科的手技を用いて治療する診療科です。日本形成外科学会は、形成外科を「身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、あらゆる手法や特殊な技術を駆使し、機能のみならず形態的にもより正常に、より美しくすることによって、生活の質の向上を目指す外科系の専門領域」と定義しています。
形成外科の特徴は、できるだけ目立たない傷跡で機能的・整容的に優れた結果を得ることを目指す点にあります。そのため、形成外科医は、微細な手術手技、皮弁や植皮などの組織移植技術、マイクロサージャリー(顕微鏡下手術)など、高度な外科技術を習得しています。
形成外科が扱う主な疾患
形成外科の診療範囲は非常に広く、以下のような疾患や状態を扱います。
外傷の治療は形成外科の重要な領域です。顔面骨折、顔面の切創や挫創、指の切断や損傷などの外傷に対して、機能と整容性の両面を考慮した治療を行います。特に顔面の外傷では、傷跡を目立たなくする繊細な縫合技術が求められます。
熱傷(やけど)の治療も形成外科の専門分野です。軽度の熱傷から、広範囲の重症熱傷まで、深度と範囲に応じた適切な治療を行います。重症熱傷では、植皮術や皮弁術などの外科的治療が必要となることがあります。
先天異常の治療も形成外科が担当します。口唇口蓋裂、耳介の変形、多指症・合指症などの手足の先天異常、漏斗胸などの胸郭変形など、生まれつきの形態異常に対して、成長に合わせた段階的な治療を行います。
腫瘍の治療では、皮膚・皮下腫瘍の切除を行います。母斑(あざ)、血管腫、脂肪腫、粉瘤、良性腫瘍から悪性腫瘍まで、さまざまな腫瘍を扱います。腫瘍を切除した後の組織欠損に対して、周囲の組織を移動させる皮弁術や、他の部位から皮膚を移植する植皮術を用いて再建します。
瘢痕・瘢痕拘縮の治療も形成外科の重要な役割です。外傷や手術後の傷跡、ケロイドや肥厚性瘢痕などに対して、保存的治療や外科的治療を行います。瘢痕によって関節の動きが制限される瘢痕拘縮には、拘縮を解除する手術が必要となります。
褥瘡(床ずれ)や難治性潰瘍の治療も形成外科が扱います。保存的治療で治癒しない褥瘡に対して、デブリードマン(壊死組織の除去)や皮弁術による閉鎖を行います。
眼瞼下垂や顔面神経麻痺など、機能的な問題を伴う疾患の治療も行います。眼瞼下垂は、まぶたが下がって視野が狭くなる状態で、手術によって改善します。
美容医療も形成外科の領域に含まれます。二重まぶた形成、鼻の形成、しわ・たるみの治療、脂肪吸引など、整容的な改善を目的とした治療を行います。ただし、美容医療の多くは保険適用外の自由診療となります。
形成外科における診断と治療
形成外科では、まず詳細な診察を行い、病変の部位、大きさ、深さ、周囲組織との関係などを評価します。必要に応じて、画像検査(CT、MRI、超音波検査など)を行い、病変の詳細な情報を得ます。
治療方針の決定にあたっては、機能面と整容面の両方を考慮します。例えば、顔面の腫瘍を切除する場合、腫瘍を確実に切除することはもちろんですが、切除後の傷跡をどのように目立たなくするか、顔面の対称性をどのように保つかといった点も重要です。
形成外科手術の基本は、組織を丁寧に扱い、正確な解剖学的知識に基づいて操作を行うことです。皮膚切開の方向は、皮膚の弛緩線(しわの方向)に沿って行うことで、傷跡を目立ちにくくします。縫合も、できるだけ細い糸を用いて、緊張がかからないように丁寧に行います。
組織欠損が生じた場合には、欠損部位の大きさ、部位、患者さんの全身状態などを考慮して、最適な再建方法を選択します。小さな欠損であれば、周囲の組織を寄せて縫合する単純縫縮や、局所皮弁(周囲の組織を移動させて欠損部を覆う方法)で対応できます。より大きな欠損では、遊離植皮(他の部位から皮膚を採取して移植する方法)や、血管を含む組織を移植する血管柄付き皮弁、マイクロサージャリーを用いた遊離皮弁などが選択されます。
皮膚科と形成外科の違いと連携
診療アプローチの違い
皮膚科と形成外科は、どちらも皮膚や体表面の疾患を扱う診療科ですが、そのアプローチには明確な違いがあります。
皮膚科は主に内科的なアプローチを取り、薬物療法を中心とした治療を行います。皮膚の炎症や感染症、アレルギー性疾患などに対して、外用薬や内服薬を用いた治療が基本となります。比較的侵襲の少ない処置(液体窒素療法、小手術など)も行いますが、大規模な外科的治療は基本的に行いません。
一方、形成外科は外科的なアプローチを取り、手術による治療を専門とします。組織の欠損や変形を、外科的手技を用いて修復・再建することが主な役割です。美しい仕上がりを目指すため、高度な縫合技術や組織移植技術を駆使します。
どちらを受診すべきか
では、どのような症状の時に皮膚科と形成外科のどちらを受診すべきなのでしょうか。
発疹やかゆみ、皮膚の赤みや腫れ、ニキビ、水虫など、皮膚の病気が疑われる場合は、まず皮膚科を受診するのが適切です。アトピー性皮膚炎や蕁麻疹などのアレルギー性疾患、感染症、自己免疫疾患なども皮膚科の診療範囲です。
一方、外傷(けが)、やけど、できもの(腫瘍)の手術的切除、傷跡の修正、先天的な形態異常などは、形成外科の受診が適しています。また、皮膚科で診断された腫瘍の切除や、治療が困難な褥瘡なども、形成外科で治療を受けることがあります。
ただし、実際には両科の診療範囲が重なる部分も多くあります。例えば、ほくろや粉瘤などのできものは、小さなものであれば皮膚科でも切除できますが、大きなものや顔面など目立つ部位のものは、整容面を重視して形成外科で切除することもあります。
診療科間の連携
実際の医療現場では、皮膚科と形成外科が連携して治療にあたることも少なくありません。
例えば、皮膚がんの治療では、まず皮膚科で診断を行い、腫瘍の性質や広がりを評価します。その後、切除範囲が大きくなる場合や、切除後の再建が必要な場合には、形成外科と連携して治療を進めます。皮膚科医と形成外科医が協力することで、確実な腫瘍の切除と良好な整容的結果の両立が可能になります。
また、重症の熱傷では、初期治療から皮膚科と形成外科が協力し、感染のコントロールと創部の管理を行いながら、必要に応じて植皮術などの外科的治療を実施します。
難治性の皮膚潰瘍の治療でも、皮膚科で原因疾患の治療や感染のコントロールを行いながら、形成外科で外科的なデブリードマンや皮弁術を行うといった連携が行われます。
このように、皮膚科と形成外科は、それぞれの専門性を活かしながら、患者さんにとって最善の治療を提供するために協力しています。
新宿で皮膚科・形成外科を選ぶ際のポイント
立地とアクセスの重要性
新宿は、JR、私鉄、地下鉄が集まる日本有数のターミナル駅であり、非常にアクセスが良い地域です。新宿駅周辺はもちろん、新宿三丁目、新宿御苑前、西新宿など、複数の駅があり、広範囲にわたって医療機関が点在しています。
皮膚科や形成外科の治療では、継続的な通院が必要になることも多いため、自宅や職場からアクセスしやすい場所にあるクリニックを選ぶことが重要です。特に、仕事帰りに通院したい場合には、駅から近く、夜遅くまで診療しているクリニックが便利です。
診療時間と予約システム
クリニックによって診療時間は異なります。平日の夕方まで診療しているクリニック、夜間診療を行っているクリニック、土日も診療しているクリニックなど、さまざまです。自分のライフスタイルに合った診療時間のクリニックを選ぶことで、無理なく通院を続けることができます。
また、予約制か当日受付制かも確認しておくべきポイントです。予約制のクリニックでは、待ち時間が短く、計画的に受診できるというメリットがあります。一方、急な症状の悪化時には、当日受付可能なクリニックの方が便利な場合もあります。最近では、オンラインで予約ができるクリニックも増えています。
専門医資格の確認
皮膚科や形成外科を受診する際には、担当医が専門医資格を持っているかどうかを確認することも重要です。
皮膚科専門医は、日本皮膚科学会が認定する資格で、一定の研修期間と症例経験を積み、試験に合格することで取得できます。形成外科専門医も同様に、日本形成外科学会が認定する資格です。
専門医資格は、その分野における一定レベル以上の知識と技術を有していることの証明となります。ただし、専門医資格を持っていなくても優れた医師はいますし、専門医資格だけで医師の質が決まるわけではありません。あくまで一つの参考指標として考えるとよいでしょう。
設備と治療内容
クリニックによって、保有している設備や提供できる治療内容は異なります。
例えば、レーザー治療を受けたい場合には、適切なレーザー機器を導入しているクリニックを選ぶ必要があります。紫外線療法、冷凍療法、日帰り手術が可能かどうかなども、事前に確認しておくとよいでしょう。
また、病理検査や血液検査などの検査体制が整っているか、必要に応じて他の診療科や高次医療機関への紹介体制が確立しているかなども、安心して受診するための重要なポイントです。
保険診療と自由診療
皮膚科・形成外科では、保険診療と自由診療(保険適用外の診療)の両方が行われています。
一般的な皮膚疾患の治療や、疾患に伴う腫瘍の切除、外傷の治療などは保険診療の対象となります。一方、美容目的の治療(しわ・たるみ治療、医療脱毛、美容目的の二重まぶた形成など)は自由診療となり、全額自己負担となります。
自由診療を受ける場合には、事前に費用をしっかりと確認し、納得した上で治療を受けることが重要です。また、保険診療と自由診療を同日に受けることは、原則として認められていない(混合診療の禁止)点にも注意が必要です。
クリニックの雰囲気とコミュニケーション
医療機関を選ぶ際には、医師や医療スタッフとのコミュニケーションの取りやすさも重要な要素です。
皮膚の悩みは、外見に関わることも多く、デリケートな問題です。医師に気軽に相談でき、疑問点を丁寧に説明してもらえる環境であることが、安心して治療を受けるために大切です。
初診時に、医師が十分に時間を取って話を聞いてくれるか、治療方針を分かりやすく説明してくれるか、質問に丁寧に答えてくれるかなどを確認しましょう。また、スタッフの対応が親切で、クリニック全体の雰囲気が良いことも、通院を続ける上で重要なポイントとなります。
よくある皮膚疾患と治療法
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が慢性的に繰り返す疾患で、多くの場合、アレルギー体質と関連しています。乳児期から発症することが多いですが、成人になってから発症したり、症状が悪化したりすることもあります。
アトピー性皮膚炎の治療は、皮膚のバリア機能を改善するスキンケア、炎症を抑える薬物療法、悪化因子の除去の3つが柱となります。
スキンケアでは、保湿剤を毎日しっかりと使用することが基本です。皮膚のバリア機能が低下していると、外部からの刺激物やアレルゲンが侵入しやすくなり、炎症が起こりやすくなります。保湿剤で皮膚のバリア機能を補うことで、症状の悪化を予防できます。
薬物療法では、ステロイド外用薬が中心となります。ステロイド外用薬は、炎症を抑える効果が高く、適切に使用すれば非常に有効です。ただし、使い方を誤ると副作用のリスクがあるため、医師の指示に従って使用することが重要です。ステロイドの強さは部位や症状に応じて選択され、症状が改善したら徐々に弱いものに変更したり、使用頻度を減らしたりします。
近年では、タクロリムス軟膏やデルゴシチニブ軟膏といった非ステロイド性の免疫抑制外用薬も使用されています。顔など、ステロイド外用薬の長期使用が望ましくない部位に適しています。
症状が重い場合には、内服薬(抗ヒスタミン薬、免疫抑制薬)や、紫外線療法、最新の治療法である生物学的製剤(デュピルマブなど)が使用されることもあります。
ニキビ(尋常性ざ瘡)
ニキビは、毛穴に皮脂や角質が詰まり、そこにアクネ菌が増殖して炎症を起こす疾患です。思春期に多く見られますが、大人になってからできる大人ニキビも増えています。
ニキビ治療の基本は、毛穴の詰まりを解消し、炎症を抑えることです。外用薬としては、アダパレンやベンゾイルペロキシドといった毛穴の詰まりを改善する薬剤と、抗菌作用のある外用薬が使用されます。
炎症が強い場合には、抗生物質の内服や、炎症を起こしているニキビに直接抗生物質を注射する治療が行われることもあります。
保険適用外の治療としては、ケミカルピーリング、イオン導入、レーザー治療などがあります。また、ニキビ跡の凹凸に対しては、フラクショナルレーザーやダーマペンなどの治療が効果的な場合があります。
ニキビは、適切な治療を行わないと瘢痕が残る可能性があるため、早期に皮膚科を受診することが重要です。
帯状疱疹
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によって起こる疾患です。子供の頃に水疱瘡にかかった後、ウイルスは神経節に潜伏しており、加齢やストレス、免疫力の低下などをきっかけに再び活性化します。
症状は、体の片側に帯状に現れる痛みを伴う水疱です。胸や背中に多く見られますが、顔面にも発症することがあります。顔面の帯状疱疹では、目や耳に合併症を起こすことがあるため、特に注意が必要です。
治療は、抗ウイルス薬の内服が中心となります。発症後できるだけ早く(72時間以内が理想)治療を開始することで、症状を軽減し、帯状疱疹後神経痛(PHN)と呼ばれる後遺症のリスクを減らすことができます。
帯状疱疹後神経痛は、皮疹が治った後も痛みが持続する状態で、数ヶ月から数年続くこともあります。高齢者に多く、生活の質を大きく低下させる要因となります。治療には、神経障害性疼痛に効果的な薬剤(プレガバリン、ミロガバリンなど)が使用されます。
近年、50歳以上を対象とした帯状疱疹ワクチンが利用可能になっています。ワクチン接種により、帯状疱疹の発症リスクを減らし、発症した場合でも重症化を防ぐ効果が期待できます。
白癬(水虫・爪水虫)
白癬は、白癬菌という真菌(カビ)が皮膚に感染して起こる疾患です。足に発症する足白癬(水虫)が最も一般的ですが、手、体、股部など、様々な部位に発症します。爪に感染した状態を爪白癬(爪水虫)と呼びます。
足白癬は、趾間型(指の間がジュクジュクする)、小水疱型(土踏まずなどに小さな水疱ができる)、角質増殖型(かかとなどの角質が厚くなる)の3つのタイプに分類されます。
診断には、皮膚や爪の一部を採取して顕微鏡で白癬菌を確認する検査(KOH検査)が行われます。見た目だけでは湿疹など他の疾患との区別が難しいため、確実な診断のためには検査が必要です。
治療は、外用抗真菌薬が基本です。症状が消失しても、菌が完全に死滅するまで、最低でも1ヶ月程度は継続して塗る必要があります。途中で治療をやめると再発しやすくなります。
爪白癬の場合、外用薬だけでは治りにくいため、内服抗真菌薬を使用します。内服期間は、足の爪で約6ヶ月、手の爪で約3ヶ月が目安です。定期的な血液検査で副作用のチェックを行いながら治療を進めます。
蕁麻疹
蕁麻疹は、皮膚に赤いふくらみ(膨疹)が現れ、強いかゆみを伴う疾患です。数時間以内に消えることが多いですが、繰り返し出現することもあります。
原因は、食物、薬剤、感染症、物理的刺激(寒冷、日光、圧迫など)、ストレスなど様々ですが、多くの場合、明確な原因を特定することは困難です。6週間以上症状が続く場合を慢性蕁麻疹と呼びます。
治療の基本は、抗ヒスタミン薬の内服です。症状が出た時だけ服用するのではなく、毎日規則的に服用することで、蕁麻疹の出現を予防します。1種類の薬で効果が不十分な場合は、薬の量を増やしたり、複数の薬を組み合わせたりします。
抗ヒスタミン薬で改善しない慢性蕁麻疹に対しては、オマリズマブという生物学的製剤が使用されることもあります。
蕁麻疹の中には、喉や唇が腫れたり、呼吸困難を伴ったりする重症のアナフィラキシーに進展する場合があります。このような症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
形成外科でよく扱う疾患と治療
粉瘤(アテローム)
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に角質や皮脂が溜まってできる良性腫瘍です。背中、顔、耳たぶの後ろなどにできやすく、徐々に大きくなる傾向があります。
粉瘤は、細菌感染を起こして炎症性粉瘤(化膿した粉瘤)になることがあります。赤く腫れて痛みを伴い、膿が出ることもあります。炎症を起こした場合は、まず抗生物質の投与や切開排膿を行い、炎症が治まってから根治手術を行います。
根治的な治療は、袋ごと完全に切除する手術です。局所麻酔下で行われ、袋を破らないように慎重に摘出します。袋の一部でも残ると再発するため、完全に摘出することが重要です。
手術の方法には、従来の紡錘形切開による方法と、小さな穴から内容物と袋を摘出するくり抜き法があります。くり抜き法は傷跡が小さくて済むという利点がありますが、すべての粉瘤に適用できるわけではありません。
眼瞼下垂
眼瞼下垂は、上まぶたが下がって目が開きにくくなる状態です。まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)や腱膜が緩んだり外れたりすることで起こります。
加齢による眼瞼下垂(老人性眼瞼下垂)が最も多いですが、長期間のコンタクトレンズ使用、白内障手術後、アトピー性皮膚炎で目をこする習慣がある場合なども、眼瞼下垂の原因となります。
眼瞼下垂により、視野が狭くなって日常生活に支障をきたす場合、手術の適応となります。これは機能的な問題を改善するための手術であり、保険診療の対象となります。
手術は、まぶたの皮膚を切開して、緩んだ腱膜を修復したり、短縮したりする方法が一般的です。局所麻酔で行われ、日帰り手術が可能です。
ただし、まぶたの開きを改善する美容目的の手術は自由診療となります。機能的な問題があるかどうかは、視野検査などで客観的に評価されます。
皮膚腫瘍の切除
皮膚や皮下にできる様々な腫瘍(できもの)の切除も、形成外科の重要な診療領域です。
良性腫瘍には、脂肪腫(皮下の脂肪組織が増殖してできる柔らかい腫瘍)、脂漏性角化症(老人性いぼ)、軟性線維腫(アクロコルドン)などがあります。これらは基本的には放置しても問題ありませんが、大きくなって日常生活に支障をきたしたり、整容的に気になったりする場合は切除を検討します。
母斑(あざ)には様々な種類があります。色素性母斑(ほくろ)、太田母斑、扁平母斑、血管腫などがあり、種類によって適切な治療法が異なります。大きなほくろや悪性化の可能性があるほくろは、手術で切除します。太田母斑や扁平母斑にはレーザー治療が効果的です。
悪性または悪性が疑われる腫瘍の場合は、十分な安全域を確保して切除することが重要です。切除した組織は病理検査に提出し、悪性度や切除断端の評価を行います。
腫瘍切除後の組織欠損に対しては、単純縫縮、局所皮弁、植皮などの方法で再建します。特に顔面など目立つ部位では、整容面に配慮した丁寧な再建が求められます。
外傷(けが)の治療
外傷の治療も形成外科の重要な役割です。特に顔面の外傷では、機能の回復とともに、傷跡を目立たなくすることが重要です。
切創(切り傷)の治療では、創部を丁寧に洗浄し、異物や汚染組織を除去した後、層ごとに正確に縫合します。皮膚の縫合には細い糸を使用し、皮膚の緊張が最小限になるように工夫します。顔面の創では、真皮縫合(皮膚の深い層の縫合)を行って皮膚表面の緊張を軽減し、さらに表皮を繊細に縫合することで、目立たない傷跡を目指します。
顔面骨折の治療も形成外科が担当します。鼻骨骨折、頬骨骨折、眼窩底骨折、下顎骨骨折などがあります。骨折の部位や程度によって、整復固定術が行われます。特に眼窩底骨折では、骨折片が眼窩内の組織を圧迫して複視(物が二重に見える)などの症状を起こすことがあり、早期の手術が必要となる場合があります。
動物咬傷や人咬傷などの汚染創では、感染のリスクが高いため、十分な洗浄と抗生物質の投与が重要です。必要に応じて破傷風の予防処置も行います。
瘢痕・ケロイドの治療
手術や外傷の後にできる傷跡(瘢痕)が、赤く盛り上がったり、痛みやかゆみを伴ったりすることがあります。これを肥厚性瘢痕と呼びます。肥厚性瘢痕は、時間とともに自然に改善することが多いですが、ケロイドは元の傷の範囲を超えて広がり、自然には改善しません。
ケロイドは体質的な要因が強く、同じ傷でもケロイドになりやすい人とそうでない人がいます。胸、肩、上腕などにできやすく、ピアスの穴や注射痕、ニキビ痕などからもケロイドが発生することがあります。
肥厚性瘢痕やケロイドの治療には、保存的治療と外科的治療があります。
保存的治療としては、ステロイド含有テープの貼付、ステロイドの局所注射、圧迫療法などがあります。これらの治療で瘢痕を平坦化し、赤みや症状を軽減します。
外科的治療では、瘢痕を切除して再縫合する瘢痕形成術が行われます。ただし、ケロイド体質の人では、手術だけでは再発のリスクが高いため、術後に放射線療法を併用したり、ステロイド注射を継続したりすることがあります。
新しい治療法として、トラニラスト内服やレーザー治療なども試みられています。
最新の治療技術と今後の展望
生物学的製剤による治療
近年、皮膚科領域では、生物学的製剤と呼ばれる新しいタイプの薬剤が登場し、治療の選択肢が広がっています。
生物学的製剤は、特定の免疫に関わる物質をピンポイントで阻害する薬剤で、従来の治療で効果が不十分だった重症例にも効果を発揮します。
アトピー性皮膚炎に対しては、デュピルマブ(デュピクセント)が使用されています。IL-4とIL-13という炎症に関わる物質の働きを抑えることで、かゆみや皮疹を改善します。2週間に1回の皮下注射で、長期的な症状コントロールが可能です。
乾癬に対しては、複数の生物学的製剤が使用可能です。TNF-α阻害薬、IL-17阻害薬、IL-23阻害薬など、作用機序の異なる薬剤があり、患者さんの状態に応じて選択されます。
慢性蕁麻疹に対しては、オマリズマブが使用されます。抗ヒスタミン薬で改善しない症例に効果的です。
生物学的製剤は非常に高価な治療ですが、保険適用となっており、高額療養費制度を利用することで、患者さんの負担を軽減できます。
レーザー治療の進歩
レーザー治療は、皮膚科・形成外科領域で広く使用されています。レーザーの種類によって、吸収される色素や深達度が異なるため、治療目的に応じて適切なレーザーが選択されます。
色素性疾患(シミ、あざ、ほくろなど)に対しては、Qスイッチレーザーやピコ秒レーザーが使用されます。メラニン色素に選択的に吸収され、周囲の正常組織へのダメージを最小限に抑えながら、色素を破壊します。
血管腫や毛細血管拡張症に対しては、ヘモグロビンに吸収される波長のレーザー(色素レーザー、ロングパルスNd:YAGレーザーなど)が効果的です。
いぼ(尋常性疣贅)に対しては、炭酸ガスレーザーが使用されることがあります。いぼの組織を蒸散させて除去します。
美容医療の分野では、フラクショナルレーザーが人気です。皮膚に微細な穴を開けて、コラーゲンの再生を促すことで、ニキビ跡の凹凸、小じわ、毛穴の開きなどを改善します。
再生医療の応用
皮膚科・形成外科領域でも、再生医療の研究が進んでいます。
PRP(多血小板血漿)療法は、患者さん自身の血液から血小板を濃縮したものを使用する治療法です。血小板に含まれる成長因子が組織の修復を促進します。難治性の皮膚潰瘍や薄毛治療などに応用されています。
培養表皮・培養真皮は、広範囲の熱傷や難治性潰瘍の治療に使用されています。患者さん自身の皮膚細胞を培養して作製した皮膚を、創部に移植します。
幹細胞を用いた治療の研究も進んでおり、将来的には様々な皮膚疾患の新しい治療法となることが期待されています。
テレダーマトロジーとオンライン診療
新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、オンライン診療が普及しました。皮膚科領域では、患部の写真を送信して医師が診断・処方を行うテレダーマトロジーが実用化されています。
慢性疾患で定期的な受診が必要な患者さんや、通院が困難な患者さんにとって、オンライン診療は有用な選択肢となります。ただし、すべての疾患がオンライン診療に適しているわけではなく、初診や急性の症状、詳細な検査が必要な場合などは、対面診療が必要です。
今後、AIによる画像診断支援システムなどの技術が発展すれば、より正確で効率的な遠隔診療が可能になるかもしれません。
日常生活でできるスキンケアと予防
保湿の重要性
健康な皮膚を保つための基本は、適切な保湿です。皮膚のバリア機能を維持することで、外部刺激から皮膚を守り、様々な皮膚トラブルを予防できます。
保湿剤は、入浴後5分以内に塗るのが効果的です。入浴後は皮膚が水分を含んでいますが、時間が経つと急速に乾燥します。このタイミングで保湿剤を塗ることで、水分を閉じ込めることができます。
保湿剤には、ローション、クリーム、軟膏など様々なタイプがあります。夏場はさっぱりしたローション、冬場はしっとりしたクリームなど、季節や部位に応じて使い分けるとよいでしょう。
紫外線対策
紫外線は、日焼けだけでなく、しわ、しみ、皮膚がんの原因にもなります。日常的な紫外線対策が重要です。
日焼け止めは、毎日使用することが推奨されます。SPF30以上、PA++以上のものを選び、2〜3時間おきに塗り直すのが理想的です。曇りの日でも紫外線は降り注いでいるため、天候に関わらず使用しましょう。
帽子、日傘、長袖の衣服なども効果的です。特に午前10時から午後2時の紫外線が強い時間帯は、できるだけ直射日光を避けるようにしましょう。
適切な洗浄
皮膚を清潔に保つことは重要ですが、過度の洗浄は皮膚のバリア機能を低下させます。
入浴時は、ぬるめのお湯(38〜40度)で、強くこすらずに優しく洗います。石鹸やボディソープは、低刺激性のものを選び、よく泡立ててから使用します。
洗顔も同様に、優しく行うことが大切です。特にアトピー性皮膚炎や敏感肌の人は、刺激の少ない洗浄料を選びましょう。
生活習慣と皮膚の健康
皮膚の健康は、全身の健康状態と密接に関係しています。
バランスの取れた食事は、皮膚の健康維持に重要です。ビタミンA、C、E、亜鉛などは、皮膚の健康に特に重要な栄養素です。
十分な睡眠も大切です。睡眠中に成長ホルモンが分泌され、皮膚の修復が行われます。
ストレスは、ニキビやアトピー性皮膚炎、円形脱毛症などの悪化因子となります。適度な運動や趣味の時間を持つなど、ストレス管理も皮膚の健康に役立ちます。
喫煙は、皮膚の老化を促進し、創傷治癒を遅らせます。禁煙は皮膚の健康にも有益です。

まとめ
新宿で皮膚科や形成外科を受診する際には、それぞれの診療科の特徴を理解し、自分の症状に適した診療科を選ぶことが重要です。
皮膚科は、湿疹、感染症、アレルギー性疾患など、皮膚の病気全般を内科的に治療する診療科です。一方、形成外科は、外傷、腫瘍、先天異常、瘢痕など、体表面の形態的な問題を外科的に治療する診療科です。
両科の診療範囲には重なる部分もあり、疾患によっては連携して治療にあたることもあります。どちらを受診すべきか迷う場合は、まず一方の科を受診し、必要に応じて他科への紹介を受けるとよいでしょう。
新宿には多くの医療機関があり、専門医による質の高い医療を受けることができます。立地、診療時間、専門性、設備、医師との相性など、様々な要素を考慮して、自分に合ったクリニックを選びましょう。
皮膚の健康は、生活の質に大きく影響します。気になる症状があれば、早めに専門医に相談することをお勧めします。また、日常的なスキンケアや生活習慣の改善によって、多くの皮膚トラブルは予防できます。
本記事が、新宿で皮膚科・形成外科を受診する際の参考になれば幸いです。
参考文献
- 日本皮膚科学会ホームページ https://www.dermatol.or.jp/
- 日本形成外科学会ホームページ https://www.jsprs.or.jp/
- 厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/
- 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会ホームページ https://jscia.umin.jp/
- 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡治療ガイドライン」
- 日本皮膚科学会「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン」
- 日本形成外科学会「形成外科診療ガイドライン」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務