手足に気づいたらできている硬いブツブツ、「これはイボかな?」と思った経験はありませんか。ウイルス性イボは、子どもから大人まで幅広い年代に発症する一般的な皮膚疾患です。放置すると数が増えたり、周囲の人にうつしてしまったりすることもあるため、正しい知識を持って早めに対処することが大切です。本記事では、ウイルス性イボの原因や症状、治療法から予防法まで、皮膚科医の視点でわかりやすく解説します。

目次
- ウイルス性イボとは
- ウイルス性イボの種類
- ウイルス性イボの原因
- ウイルス性イボの感染経路
- ウイルス性イボの症状と特徴
- タコ・ウオノメとの見分け方
- ウイルス性イボの診断方法
- ウイルス性イボの治療法
- ウイルス性イボの予防法
- 日常生活での注意点
- ウイルス性イボを放置するリスク
- よくある質問
- まとめ
- 参考文献
ウイルス性イボとは
ウイルス性イボとは、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)が皮膚に感染することで生じる良性の皮膚腫瘍です。医学用語では「疣贅(ゆうぜい)」と呼ばれ、一般的に手足の指や手のひら、足の裏などに多く見られます。
ウイルス性イボは非常に一般的な皮膚疾患であり、世界人口の約10%が罹患しているとされています。特に学童期の子どもでは10〜20%と高い有病率を示し、日本の皮膚科外来患者を対象とした調査では、6〜10歳で23.01%、11〜15歳で17.18%という報告もあります。
イボの原因となるヒトパピローマウイルスは200種類以上の遺伝子型に分類されており、感染したウイルスの型によって、イボができる部位や見た目が異なります。なお、ウイルス性イボを引き起こすHPVの型は、子宮頸がんの原因となる高リスク型HPVとは異なるタイプのものがほとんどです。
ウイルス性イボは良性であり、がん化することは基本的にありません。しかし、見た目の問題だけでなく、足の裏にできた場合は歩行時に痛みを伴うこともあります。また、感染力があるため他の部位や他人にうつる可能性があり、早めの治療が推奨されます。
ウイルス性イボの種類
ウイルス性イボには、感染するHPVの型によっていくつかの種類があります。それぞれ特徴的な症状や好発部位がありますので、代表的なものをご紹介します。
尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)
最も一般的なタイプのウイルス性イボです。「尋常性」とは「ありふれた」「一般的な」という意味で、手足に最も多く見られます。主にHPV2型、4型、7型、27型、57型の感染によって生じます。
表面はざらざらしており、肌色から褐色を呈します。大きさは数ミリから1センチ程度で、単発または複数個が同時にできることがあります。よく見ると表面に黒い点々が見えることがありますが、これはイボの中の血管が凝固したものです。
足底疣贅(そくていゆうぜい)
足の裏にできるウイルス性イボです。体重がかかる部位であるため、イボが皮膚の内側に押し込まれるような形で成長します。そのため、表面が平坦になりやすく、タコやウオノメと見間違えることが少なくありません。
足底疣贅は歩行時に体重がかかると痛みを生じることがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。複数のイボが融合して「モザイク疣贅」と呼ばれる状態になることもあります。
ミルメシア
HPV1型の感染によって生じるイボで、「蟻塚」を意味する名前の通り、ドーム状に盛り上がった外見が特徴です。手のひらや足の裏にできやすく、中央部が硬く突出しています。赤く腫れたり、強い痛みを伴ったりすることがあり、特に子どもに多く見られます。
青年性扁平疣贅(せいねんせいへんぺいゆうぜい)
主にHPV3型、10型の感染によって生じる、平たい形状のイボです。その名の通り青年期(10〜20代)に多く見られ、顔や手の甲、腕などに好発します。大きさは2〜5ミリ程度と小さく、肌色から淡い褐色を呈します。
一つひとつは目立ちにくいですが、数十個から数百個と多発することが特徴です。かゆみを伴うことがあり、掻いてしまうとその部分に新しいイボができる「ケブネル現象」を起こすことがあります。
尖圭コンジローマ(せんけいコンジローマ)
主にHPV6型、11型の感染によって生じる、性器や肛門周囲にできるイボです。性行為によって感染することが多く、性感染症(STI)の一つとして扱われます。カリフラワー状または鶏冠状の形態が特徴で、通常は痛みやかゆみを伴いません。
尖圭コンジローマは他のウイルス性イボとは感染経路や治療法が異なるため、専門的な診察と治療が必要です。
ウイルス性イボの原因
ウイルス性イボの直接的な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。このウイルスが皮膚の表面にある小さな傷から侵入し、表皮の基底細胞に感染することでイボが形成されます。
ヒトパピローマウイルス(HPV)について
ヒトパピローマウイルスは、直径50〜55ナノメートルの非常に小さなDNAウイルスで、パポバウイルス科に属します。現在200種類以上の遺伝子型が確認されており、それぞれが異なる部位に感染して様々な病変を引き起こします。
ウイルス性イボを引き起こすHPVの型は「皮膚型」と呼ばれ、主に皮膚の角化した表皮に感染します。一方、子宮頸がんなどの原因となるHPV16型、18型などは「粘膜型」と呼ばれ、粘膜に感染するタイプです。したがって、手足にできる一般的なウイルス性イボからがんが発生することは基本的にありません。
感染のメカニズム
HPVが皮膚に感染すると、ウイルスは表皮の基底細胞内で増殖を始めます。感染から発症までには数週間から数ヶ月の潜伏期間があります。
ウイルスに感染した細胞は、正常な細胞よりも増殖スピードが速くなり、周囲の正常な細胞を押しのけるように異常に増殖します。その結果、皮膚表面に硬い盛り上がり(イボ)が形成されます。
イボの中に存在するウイルスは、古い角質とともに剥がれ落ち、他の部位や他の人への感染源となります。
ウイルス性イボの感染経路
ウイルス性イボは、主に以下の経路で感染します。
直接接触感染
イボがある人の患部に直接触れることで感染します。例えば、握手をしたり、イボのある部位に触れたりすることで、ウイルスが皮膚の小さな傷口から侵入します。
間接接触感染
ウイルスが付着した物を介して感染することもあります。具体的には以下のような場所や状況で感染リスクが高まります。
プールやスポーツジムでは、床や足拭きマット、シャワールームなどを介して感染することがあります。特に足の裏は湿った状態になりやすく、皮膚がふやけて傷がつきやすいため、感染リスクが高くなります。
銭湯やサウナ、温泉施設でも同様に、共用のスリッパやタオル、床などを介した感染が起こり得ます。
家庭内では、タオルやスリッパ、バスマットなどの共用によって家族間で感染することがあります。
自家感染
すでにイボができている人が、自分のイボを触ったり、引っ掻いたりすることで、ウイルスが体の他の部位に広がることがあります。これを「自家感染」といいます。
例えば、足のイボを指で触っているうちに、手指にも新しいイボができてしまうことがあります。また、カミソリで皮膚を傷つけてしまった部位にウイルスが入り込み、イボができることもあります。
感染しやすい条件
HPVに感染しやすい条件として、以下のようなものが挙げられます。
皮膚に傷がある場合は、ウイルスの侵入口となるため感染リスクが高まります。手荒れやささくれ、水虫による皮むけ、靴擦れなどがある場合は注意が必要です。
免疫力が低下している場合も感染しやすくなります。疲労やストレス、睡眠不足、栄養の偏りなどで免疫機能が低下すると、ウイルスを排除する力が弱まります。
子どもは皮膚が薄く傷つきやすいこと、また免疫システムが未熟であることから、大人よりもウイルス性イボに罹患しやすい傾向があります。
ウイルス性イボの症状と特徴
ウイルス性イボの症状は、イボの種類や発生部位によって異なりますが、一般的な特徴をご紹介します。
外観的特徴
ウイルス性イボは通常、表面がざらざらとした硬い隆起として現れます。初期は平坦で小さな盛り上がり程度ですが、時間とともに徐々に大きくなり、表面の凹凸も顕著になります。
色は肌色から灰白色、褐色まで様々です。イボの表面をよく観察すると、小さな黒い点々が見えることがあります。これは「点状出血」と呼ばれ、イボの中の毛細血管が血栓化したものです。この黒い点の存在は、ウイルス性イボをタコやウオノメと区別する重要なポイントの一つです。
大きさは数ミリから1センチ程度が一般的ですが、放置すると2センチ以上に成長することもあります。また、近くにできた複数のイボが互いにくっついて融合し、一つの大きな局面を形成することもあります。
自覚症状
多くの場合、ウイルス性イボには痛みやかゆみなどの自覚症状がありません。しかし、以下のような場合には不快感や痛みを伴うことがあります。
足の裏にイボができた場合、歩行時に体重がかかることで圧痛を感じることがあります。特にイボが大きくなったり、硬い地面を歩いたりすると痛みが強くなります。
イボが亀裂を起こして皮膚がひび割れると、その部分に痛みを感じることがあります。
ミルメシアと呼ばれるタイプのイボは、赤く腫れて強い痛みを伴うことが特徴です。
青年性扁平疣贅では、かゆみを伴うことがあります。
好発部位
ウイルス性イボは体のどこにでもできる可能性がありますが、特に以下の部位に多く見られます。
手指と手のひらは最も一般的な発生部位です。日常的によく使う部位であり、小さな傷ができやすいためウイルスが侵入しやすいと考えられています。
足の裏と足指も頻度の高い部位です。靴の中で蒸れやすく、プールや浴場などで裸足になる機会も多いため、感染リスクが高くなります。
顔や首、膝、肘などにも発生することがあります。特に青年性扁平疣贅は顔に好発します。
タコ・ウオノメとの見分け方
足の裏にできたウイルス性イボは、タコやウオノメと見た目が似ているため混同されることが少なくありません。しかし、これらは原因も治療法も異なる別の皮膚疾患です。正しい診断と適切な治療のために、それぞれの違いを理解しておきましょう。
ウイルス性イボの特徴
ウイルス性イボはHPVの感染が原因であり、ウイルス性の疾患です。医学用語では「足底疣贅(そくていゆうぜい)」と呼ばれます。
外観的には、表面がざらざらしていて、よく見ると点状の出血(黒い点々)が確認できます。これはイボ特有の所見であり、タコやウオノメには見られません。皮膚の表面を削ると、点状の出血が見られることも特徴です。
ウイルス性イボは感染力があるため、触ることで他の部位や他の人にうつる可能性があります。
タコ(胼胝:べんち)の特徴
タコは、皮膚への繰り返しの摩擦や圧迫刺激によって角質が厚く硬くなった状態です。ウイルス感染は関与していません。
外観的には、皮膚が黄色みを帯びて厚く盛り上がります。芯はなく、表面は比較的平坦で滑らかです。角質が厚くなっているため、むしろ感覚が鈍くなっていることが多く、痛みを伴わないのが一般的です。
足の裏以外にも、ペンダコ(指)や座りダコ(くるぶし)など、生活習慣や職業に関連した部位にできることがあります。
タコは感染症ではないため、他人にうつることはありません。
ウオノメ(鶏眼:けいがん)の特徴
ウオノメもタコと同様に、皮膚への慢性的な機械的刺激が原因で生じます。タコとの違いは、厚くなった角質が皮膚の内側に向かって楔状に食い込んでいく点です。
中心に魚の目のような芯(角質の塊)が見られることから、ウオノメと呼ばれています。この芯が神経を圧迫するため、歩行時や押したときに鋭い痛みを感じます。
ウオノメは主に大人の足の裏や指にできます。子どもの足の裏にウオノメのような病変がある場合は、ウイルス性イボ(特にミルメシア)の可能性が高いため、注意が必要です。
ウオノメも感染症ではないため、他人にうつることはありません。
見分けるポイントのまとめ
これら3つを見分けるポイントを整理すると以下のようになります。
ウイルス性イボは、表面がざらざらしていて黒い点々(点状出血)が見られ、削ると出血することがあります。感染力があり、子どもから大人まで発症します。
タコは、表面が平坦で黄色みを帯びており、芯や黒い点はありません。痛みはなく、感染力もありません。
ウオノメは、中心に芯があり、押すと強い痛みがあります。主に大人に発症し、感染力はありません。
自己判断が難しい場合や、市販薬で改善しない場合は、皮膚科を受診して正確な診断を受けることをお勧めします。
ウイルス性イボの診断方法
ウイルス性イボの診断は、主に視診(目で見て診断すること)によって行われます。皮膚科専門医であれば、多くの場合はイボの外観から診断が可能です。
視診による診断
皮膚科医は、イボの形状、大きさ、色、表面の性状、発生部位などを総合的に観察して診断します。ウイルス性イボに特徴的な所見として、表面のざらざらした質感や点状出血の存在などを確認します。
角質削り検査
足の裏のイボなど、タコやウオノメとの鑑別が難しい場合には、メスやカミソリで表面の硬い部分を少し削る検査を行うことがあります。
ウイルス性イボの場合、削ると点状の出血(毛細血管からの出血)が見られます。一方、タコやウオノメでは出血は見られず、削っても角質が層状に剥がれるだけです。
ダーモスコピー検査
ダーモスコープ(皮膚拡大鏡)という特殊な器具を使って、皮膚の表面を10〜30倍程度に拡大して観察する検査です。肉眼では確認しにくい微細な構造を詳しく調べることができます。
ウイルス性イボでは、ダーモスコピーで特徴的な血管パターン(点状血管や糸球体様血管)や、乳頭腫構造などが観察されます。
病理組織検査
まれに、視診だけでは診断が確定できない場合や、悪性腫瘍との鑑別が必要な場合には、イボの一部を切り取って顕微鏡で調べる病理組織検査を行うことがあります。
組織学的には、表皮の肥厚(角質増殖)や、ウイルス感染に特徴的な細胞の変化(空胞化細胞の出現)などが確認されます。
ウイルス性イボの治療法
ウイルス性イボには様々な治療法があります。日本皮膚科学会の「尋常性疣贅診療ガイドライン2019」では、各治療法の推奨度が示されています。以下に主な治療法をご紹介します。
液体窒素凍結療法(冷凍凝固療法)
液体窒素凍結療法は、日本で最も広く行われている標準的なイボ治療法です。日本皮膚科学会のガイドラインでも、推奨度A(行うよう強く勧められる)とされています。
この治療法では、マイナス196度の液体窒素を綿棒やスプレー式の器具でイボに直接当て、組織を凍結させます。凍結と融解を繰り返すことで、ウイルスに感染した細胞を破壊するとともに、局所の免疫反応を活性化してウイルスの排除を促します。
治療は1〜2週間に1回の間隔で行い、数週間から数ヶ月かけて繰り返します。イボの大きさや部位、個人の治癒力によって必要な回数は異なりますが、完治までに時間がかかることが多いため、根気強く治療を続けることが大切です。
治療時にはチクチクとした痛みを伴い、治療後も数日間は痛みが続くことがあります。また、水ぶくれや血豆ができることがありますが、通常は自然に治癒します。
サリチル酸外用療法
サリチル酸は角質を軟化・剥離させる作用があり、イボに対する免疫力を高める効果もあるとされています。日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨度A(行うよう強く勧められる)とされています。
サリチル酸絆創膏(スピール膏)をイボに貼り付けることで、厚くなった皮膚を軟化させて剥がれ落としやすくします。液体窒素凍結療法と併用することで、より効果的な治療が期待できます。
市販のイボ治療薬にもサリチル酸が配合されているものがあります。ただし、自己判断での使用は、誤った診断による治療の遅延や、皮膚への刺激などのリスクがあるため、まずは皮膚科を受診することをお勧めします。
ヨクイニン内服療法
ヨクイニンは、イネ科の植物であるハトムギの種皮を取り除いた種子を乾燥させた生薬です。古くからイボ治療に用いられており、日本皮膚科学会のガイドラインでは推奨度B(行うよう勧められる)とされています。
ヨクイニンには免疫賦活作用があり、体の免疫力を高めることでウイルスの排除を促すと考えられています。保険適用があり、尋常性疣贅と青年性扁平疣贅に対して処方されます。
過去の研究では、ヨクイニンの有効率は年齢によって異なり、乳幼児で71%、学童で74%、青年で57%、成人で20%と報告されています。子どもに対して特に高い効果が期待でき、液体窒素凍結療法の痛みが苦手なお子さんに対する治療選択肢として有用です。
効果が現れるまでに時間がかかることがデメリットですが、痛みがなく、副作用も少ないため、長期間続けやすい治療法です。一般的には3ヶ月程度を目安に効果を判定します。
モノクロロ酢酸外用療法
モノクロロ酢酸は強い酸性の化学物質で、イボの組織を化学的に腐食・壊死させることで除去します。液体窒素凍結療法で痛みが強くて治療が困難な場合や、難治性のイボに対して用いられることがあります。
液体窒素よりも痛みが少ないことが利点ですが、周囲の正常な皮膚にダメージを与えないよう、慎重に塗布する必要があります。
接触免疫療法(SADBE療法など)
SADBE(スクアリック酸ジブチルエステル)などの感作性化学物質を塗布して、人工的にかぶれ(接触皮膚炎)を起こすことで、局所の免疫反応を活性化させる治療法です。円形脱毛症の治療にも用いられる手法です。
液体窒素凍結療法と比べて痛みが少なく、日本皮膚科学会のガイドラインでも有用な治療選択肢の一つとされています。ただし、保険適用がなく自費診療となります。
レーザー治療
炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)やVビームレーザーなどを用いてイボを焼灼・蒸散させる治療法です。
炭酸ガスレーザーはイボの組織を直接蒸発させて除去します。一方、Vビームレーザーはイボの中の血管を選択的に破壊することで、イボへの栄養供給を断ち、治癒を促します。
レーザー治療は保険適用外の自費診療となることが多いですが、通常の治療で効果が不十分な難治性のイボに対する選択肢となります。
外科的切除
大きなイボや、他の治療法で改善しない難治性のイボに対しては、外科的に切除する方法を選択することもあります。局所麻酔下でイボを切除し、縫合または開放創として治癒させます。
確実にイボを除去できる反面、傷跡が残る可能性があること、再発のリスクがあることなどがデメリットです。
ウイルス性イボの予防法
ウイルス性イボは感染症であるため、日常生活での予防対策が重要です。以下のポイントを心がけましょう。
皮膚を清潔に保つ
手洗いや入浴など、日常的に皮膚を清潔に保つことが基本です。HPVは皮膚の小さな傷口から侵入するため、清潔を保つことで感染リスクを低減できます。
皮膚の傷を作らない・ケアする
手荒れやささくれ、あかぎれなどがあると、そこからウイルスが侵入しやすくなります。保湿クリームなどで皮膚の潤いを保ち、傷ができにくい状態を維持しましょう。
傷ができてしまった場合は、適切に消毒し、絆創膏などで保護することで、ウイルスの侵入を防ぐことができます。
公共施設での注意
プール、スポーツジム、銭湯、温泉などの公共施設では、以下の点に注意しましょう。
裸足で歩き回ることを避け、できるだけサンダルやビーチサンダルを履くようにします。
共用のタオルやスリッパの使用はできるだけ避け、自分専用のものを持参しましょう。
利用後は足を石鹸でよく洗い、清潔なタオルでしっかり乾かしましょう。
イボに触れない
すでにイボがある場合は、自分で触ったり、むしったり、削ったりしないようにしましょう。触ることでウイルスが他の部位に広がったり(自家感染)、他の人にうつしたりする原因になります。
イボを触ってしまった場合は、石鹸で手をよく洗い、アルコール消毒をしましょう。
免疫力を維持する
バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理など、健康的な生活習慣を心がけることで、体の免疫力を維持することが大切です。免疫力が高ければ、たとえウイルスに接触しても感染を防いだり、自然治癒したりする可能性が高まります。
家庭内での感染予防
家族にイボがある人がいる場合は、タオルやスリッパ、バスマットなどの共用を避けましょう。また、感染している人は早めに治療を受け、他の家族への感染を防ぐことが大切です。
日常生活での注意点
ウイルス性イボがある場合、日常生活で以下の点に注意することで、悪化を防ぎ、他の人への感染を予防できます。
イボを自分で処置しない
自己判断でイボをハサミや爪切りで切ったり、市販のイボ取り液を不適切に使用したりすることは避けましょう。誤った処置により、イボが広がったり、細菌感染を起こしたり、正常な皮膚を傷つけたりするリスクがあります。
感染拡大を防ぐ
イボがある部位を他の人と接触させないよう注意しましょう。特に家族間での感染を防ぐため、タオルやスリッパの共用は避けてください。
プールやスポーツジムなど、裸足になる場所では、イボを絆創膏や防水テープで覆って保護することをお勧めします。
治療を継続する
ウイルス性イボの治療は時間がかかることが多いですが、途中で中断せずに根気強く続けることが大切です。治療を中断すると、イボが再発したり、数が増えたりすることがあります。
定期的に皮膚科を受診し、医師の指示に従って治療を続けましょう。
足のケア
足の裏にイボがある場合は、以下の点に注意しましょう。
通気性の良い靴下や靴を選び、足の蒸れを防ぎましょう。蒸れた状態は皮膚がふやけてウイルスが広がりやすくなります。
足の裏を圧迫するような硬い靴は避け、クッション性のある靴やインソールを使用することで、痛みを軽減できます。
毎日足を清潔に洗い、しっかり乾燥させましょう。
ウイルス性イボを放置するリスク
ウイルス性イボは良性であり、放置しても直接的に命に関わることはありません。しかし、以下のようなリスクがあるため、早めの治療をお勧めします。
自然治癒の不確実性
ウイルス性イボは、体の免疫力によって自然治癒することがあります。特に子どもでは自然治癒の例も多く報告されています。しかし、すべてのイボが自然に治るわけではなく、むしろ大きくなったり数が増えたりすることも少なくありません。
成人では自然治癒率が低い傾向にあり、長期間放置すると慢性的な問題となる可能性があります。
増殖と拡大
放置したイボは徐々に大きくなり、また、自家感染によって体の他の部位に広がることがあります。イボの数が増えると、治療にも時間がかかるようになります。
他人への感染
ウイルス性イボは感染力があるため、放置している間に家族や周囲の人にうつしてしまうリスクがあります。特にタオルやスリッパの共用、スキンシップなどを通じて感染が広がる可能性があります。
痛みや不快感
足の裏のイボは、歩行時に痛みを伴うことがあり、日常生活に支障をきたすことがあります。また、見た目の問題から精神的なストレスを感じる方も少なくありません。
治療の長期化
イボが大きくなったり数が増えたりすると、治療に要する期間も長くなります。早期に発見し、小さいうちに治療を始めることで、より短期間での治癒が期待できます。

よくある質問
ウイルス性イボは、体の免疫力によって自然に治癒することがあります。特に子どもでは自然治癒の可能性が比較的高いとされています。ある研究では、3〜4週間で2割強の患者さんが自然治癒したという報告もあります。
ただし、自然治癒を期待して放置している間にイボが大きくなったり増えたりすることも多いため、医療機関での治療をお勧めします。
はい、ウイルス性イボは子どもに多く見られます。これは、子どもの皮膚が薄く傷つきやすいこと、遊びやスポーツを通じて皮膚に傷を受ける機会が多いこと、免疫システムがまだ未熟であることなどが理由として挙げられます。
学童期の子どもでは10〜20%が罹患しているというデータもあり、非常に一般的な皮膚疾患です。
Q. 液体窒素の治療は痛いですか?
液体窒素凍結療法は、治療中に冷たさとチクチクとした痛みを伴います。痛みの程度は個人差がありますが、多くの場合は我慢できる程度です。治療後も数時間から翌日にかけて痛みが続くことがありますが、通常は自然に軽減します。
痛みが強くて液体窒素療法が難しい場合、特にお子さんでは、ヨクイニン内服やモノクロロ酢酸外用など、痛みの少ない治療法を選択することもできます。
Q. 市販のイボ治療薬で治せますか?
サリチル酸配合の市販薬でウイルス性イボが改善することもあります。しかし、自己判断で使用する場合、以下のような問題が生じる可能性があります。
まず、自分ではウイルス性イボだと思っていても、実際にはタコやウオノメ、あるいは他の皮膚疾患である可能性があります。正確な診断なしに市販薬を使用しても効果が得られないばかりか、治療が遅れる原因になります。
また、市販薬の使用方法を誤ると、周囲の正常な皮膚を傷つけたり、感染を悪化させたりするリスクがあります。
市販薬を使用しても改善しない場合や、イボが大きくなる場合は、早めに皮膚科を受診することをお勧めします。
Q. 治療後に再発することはありますか?
ウイルス性イボは、治療後に再発することがあります。これは、目に見えるイボは除去できても、周囲の皮膚に潜伏しているウイルスが残っている場合があるためです。
再発を防ぐためには、完全にイボがなくなるまで根気強く治療を続けること、治療後も定期的に皮膚を観察し、再発の兆候があれば早めに対処することが大切です。
Q. プールに入っても大丈夫ですか?
ウイルス性イボがある場合でも、絶対にプールに入ってはいけないということはありません。ただし、イボを防水性の絆創膏やテープでしっかり覆って保護することをお勧めします。これにより、他の人への感染リスクを低減できます。
プール利用後は足をしっかり洗い、清潔を保つようにしましょう。
まとめ
ウイルス性イボは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって生じる一般的な皮膚疾患です。良性であり、命に関わることはありませんが、放置すると増殖したり、他の人にうつしたりするリスクがあります。
タコやウオノメと見た目が似ていることがありますが、原因も治療法も異なるため、正確な診断が重要です。気になる症状がある場合は、自己判断せずに皮膚科を受診することをお勧めします。
治療法には、液体窒素凍結療法、サリチル酸外用療法、ヨクイニン内服療法など、様々な選択肢があります。イボの状態や患者さんの年齢、希望に応じて最適な治療法を選択します。治療には時間がかかることが多いですが、根気強く続けることで、多くの場合は完治が期待できます。
日常生活では、皮膚を清潔に保つこと、公共施設での感染予防を心がけること、イボに触れないことなどが大切です。
当院では、患者様お一人おひとりの症状に合わせた最適な治療をご提案しております。ウイルス性イボでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版) – 日本皮膚科学会
- イボとミズイボ、ウオノメとタコ─どう違うのですか?─ – 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A
- ヒトパピローマウイルス感染症とは – 厚生労働省
- 子宮頸がんとその他のヒトパピローマウイルス(HPV)関連がんの予防 – 国立がん研究センター
- 一般公開ガイドライン – 日本皮膚科学会
- 尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版) – Mindsガイドラインライブラリ
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務