健康診断で「白血球が多い」と言われたら?原因から対処法まで徹底解説

健康診断の血液検査で「白血球の数値が高い」と指摘され、不安を感じている方は少なくありません。「白血病ではないか」「何か重大な病気が隠れているのではないか」と心配になるのは当然のことです。

実際には、白血球の増加にはさまざまな原因があり、その多くは一時的なものや生活習慣に関連したものです。しかし、まれに重篤な疾患のサインである可能性も否定できません。

本記事では、白血球が増加する原因から、検査で指摘された際の対応、日常生活での注意点まで、医学的根拠に基づいて詳しく解説します。正しい知識を身につけることで、適切な判断と行動につなげていただければ幸いです。


目次

  1. 白血球とは何か
  2. 白血球の種類と役割
  3. 白血球の基準値と判定基準
  4. 白血球が多くなる原因
  5. 白血球増加で疑われる疾患
  6. 健康診断で白血球増加を指摘されたら
  7. 白血球増加の検査と診断
  8. 日常生活での注意点と予防法
  9. まとめ

1. 白血球とは何か

白血球の基本的な役割

白血球は、私たちの体を外敵から守る免疫システムの中核を担う血液細胞です。血液中に存在する細胞成分には、赤血球・白血球・血小板の3種類がありますが、このうち白血球は細菌やウイルス、カビなどの病原体から体を守る「免疫細胞」として機能しています。

白血球は骨髄で産生され、血液を介して全身をパトロールしながら、異物を発見すると攻撃・排除する役割を果たします。傷口から細菌が侵入した際、白血球が集結して病原体と戦い、その残骸が膿として排出されることからも、白血球の防御機能を実感できるでしょう。

血液検査では「WBC(White Blood Cell)」と表記されることが多く、1μL(マイクロリットル)あたりの細胞数で測定されます。白血球数の増減は、体内で何らかの変化が起きていることを示す重要な指標となります。

白血球数の変動について

白血球数は、同じ人でも日によって変動することが知られています。朝は少なく夕方に増加する傾向があり、夏場よりも冬場の方が多くなることもあります。また、食後や運動後、ストレスを感じている時にも一時的に増加することがあります。

このように白血球数は比較的変動しやすい検査項目であるため、一度の検査で異常値が出たとしても、必ずしも病気を意味するわけではありません。しかし、持続的な異常値や著しい増減がみられる場合には、詳細な検査が必要となります。


2. 白血球の種類と役割

白血球は単一の細胞ではなく、形態や機能の異なる複数の細胞群の総称です。大きく分けると顆粒球、リンパ球、単球の3グループに分類され、さらに顆粒球は好中球、好酸球、好塩基球の3種類に細分化されます。それぞれが異なる役割を担い、協力しながら免疫機能を維持しています。

好中球

好中球は白血球の中で最も数が多く、全体の約50〜70%を占めています。細菌や真菌が体内に侵入すると、最初に現場に駆けつけて病原体を貪食(どんしょく)し、消化・殺菌する役割を担っています。

好中球には強い食作用と殺菌作用があり、感染巣に向かって積極的に移動する能力を持っています。血管壁を通過する能力もあるため、感染が起きている場所がどこであっても到達することができます。好中球の寿命は比較的短く、血液中では約10時間程度とされています。

細菌感染症では好中球が著しく増加することが多く、敗血症、肺炎、虫垂炎などの際には白血球数の上昇として検出されます。ただし、腸チフスやパラチフス、結核などの特定の感染症では、逆に好中球が減少することもあります。

リンパ球

リンパ球は白血球全体の約20〜40%を占め、免疫反応の司令塔として中心的な役割を果たしています。リンパ球にはT細胞、B細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞などの種類があり、それぞれが異なる免疫機能を担っています。

T細胞は細胞性免疫を担当し、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を直接攻撃します。B細胞は液性免疫を担当し、抗体を産生して病原体を無力化します。NK細胞は、ウイルス感染細胞やがん細胞を非特異的に攻撃する能力を持っています。

リンパ球は寿命が長く、数年間にわたって生存することができます。また、一度出会った病原体の情報を記憶する能力を持っているため、同じ病原体が再び侵入した際には迅速に対応することができます。これがワクチンの効果の基盤となっています。

単球

単球は白血球全体の約3〜8%を占める大型の白血球です。血液中では単球として存在しますが、組織内に移動するとマクロファージという大食細胞に分化し、より強力な貪食能力を発揮します。

マクロファージは病原体を貪食するだけでなく、その情報をリンパ球に伝える「抗原提示」という重要な役割も担っています。これにより、リンパ球による特異的な免疫反応が活性化されます。また、老廃物や死んだ細胞の処理にも関与しています。

好酸球

好酸球は白血球全体の約1〜5%を占め、主に寄生虫感染に対する防御とアレルギー反応に関与しています。寄生虫が体内に侵入すると好酸球が増加し、寄生虫に対して細胞傷害を引き起こす物質を放出します。

一方で、アレルギー疾患では好酸球がアレルギー性炎症を引き起こす一因となります。気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患では、好酸球の増加が特徴的な所見として認められます。

好塩基球

好塩基球は白血球の中で最も数が少なく、全体の約0.5〜1%程度です。細胞内にヒスタミンやヘパリンなどの物質を含んでおり、アレルギー反応やアナフィラキシーに関与しています。

好塩基球はマスト細胞(肥満細胞)と類似した機能を持ち、IgE抗体と結合してアレルゲンに反応すると、ヒスタミンなどの化学物質を放出します。これが蕁麻疹や気管支喘息などのアレルギー症状を引き起こす原因となります。


3. 白血球の基準値と判定基準

白血球数の正常範囲

白血球数の基準値は、測定機関や施設によって多少の違いがありますが、一般的に成人では3,100〜9,000/μL(または3,500〜9,500/μL)程度とされています。日本人間ドック学会では、以下のような判定基準を設けています。

正常値(A区分)は3,100〜8,400/μL、軽度異常(B区分)は8,500〜9,000/μL、要経過観察(C区分)は9,000〜9,900/μL、要医療(D区分)は3,000/μL以下または10,000/μL以上とされています。

ただし、白血球数には大きな個人差があることを理解しておく必要があります。ある人の通常値が3,500〜4,500/μLである一方、別の人の通常値が7,000〜8,000/μLということもあります。そのため、基準範囲内であっても、その人にとっては異常な変化を示している可能性があります。

過去の検査結果と比較することで、自分の通常値を把握しておくことが重要です。普段の値よりも大きく増加または減少している場合には、基準範囲内であっても注意が必要な場合があります。

白血球分画の正常範囲

白血球の種類ごとの割合(白血球分画)にも正常範囲があります。一般的な目安として、好中球は40〜75%(絶対数として1,500/μL以上)、リンパ球は20〜50%(絶対数として1,000/μL以上)、単球は3〜8%、好酸球は1〜5%、好塩基球は0〜1%とされています。

白血球分画を調べることで、白血球増加の原因をより詳しく推測することができます。例えば、好中球が増加している場合は細菌感染症や炎症が疑われ、リンパ球が増加している場合はウイルス感染症が疑われます。


4. 白血球が多くなる原因

白血球が増加する原因は多岐にわたります。大きく分けると、生理的な変動によるもの、生活習慣に関連するもの、病気によるものの3つに分類できます。

生理的変動

白血球数は健康な人でもさまざまな要因で変動します。これを「生理的変動」と呼び、特に治療を必要としない一時的な変化を指します。

食後や運動後には白血球数が増加することがあります。また、精神的なストレスや興奮状態でも一時的に増加します。月経や出産の前後にも白血球数の変動がみられることがあります。

特に妊娠中は、ホルモン環境の変化により白血球数が生理的に増加することが知られています。妊娠中期以降では10,000/μL以上になることも珍しくなく、分娩時にはさらに急増して15,000〜25,000/μL程度に達することもあります。これは出産時の出血や感染から体を守るための生理的な反応と考えられています。

生活習慣に関連する要因

健康診断で軽度の白血球増加を指摘される場合、その多くは喫煙や肥満が原因とされています。

喫煙は気管支に慢性的な炎症を引き起こすため、白血球数が持続的に高くなります。タバコに含まれる有害物質に対する体の防御反応として、白血球が増加していると考えられています。禁煙することで白血球数は徐々に低下しますが、正常化するまでには数年かかることもあります。

肥満も白血球増加の原因となります。脂肪組織は炎症性物質を産生することが知られており、体内で慢性的な軽度の炎症状態を引き起こします。この炎症に反応して白血球が増加すると考えられています。体重管理を行い、適正体重に近づけることで白血球数の改善が期待できます。

感染症

感染症は白血球増加の最も一般的な原因です。細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの病原体が体内に侵入すると、免疫反応として白血球が増加します。

細菌感染症では主に好中球が増加します。扁桃炎、肺炎、虫垂炎、胆嚢炎、敗血症などの細菌感染症では、白血球数が10,000〜20,000/μL程度に上昇することがあります。重症感染症ではさらに高値となる場合もあります。

敗血症は特に注意が必要な感染症です。血液中に細菌が侵入し、全身性の炎症反応を引き起こす重篤な状態で、発熱、心拍数の増加、呼吸数の増加とともに白血球の著しい増減がみられます。早急な治療が必要な救急疾患です。

ウイルス感染症ではリンパ球が増加することが多いですが、感染初期には白血球数が減少することもあります。風邪やインフルエンザなどの軽症のウイルス感染症では、白血球数の変動は比較的軽度にとどまることが多いです。

炎症性疾患

感染症以外にも、体内で炎症が起きているときには白血球が増加します。関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病などの自己免疫疾患や炎症性腸疾患では、慢性的な炎症に伴って白血球数が上昇することがあります。

外傷や火傷、手術後などでも、組織の損傷や修復に伴って白血球が増加します。心筋梗塞や肺梗塞などの虚血性疾患でも、組織壊死に反応して白血球数が上昇することがあります。

アレルギー疾患

アレルギー反応では、特に好酸球が増加することが特徴的です。気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどでは、好酸球数の上昇がみられます。

アナフィラキシーなどの急性のアレルギー反応では、好酸球だけでなく全体的な白血球数の変動が生じることもあります。

薬剤の影響

一部の薬剤は白血球数に影響を与えることがあります。副腎皮質ステロイド(ステロイド薬)は好中球を増加させる作用があり、投与中は白血球数が高値を示すことがあります。G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤は、がん治療などで白血球を増加させる目的で使用される薬剤です。

悪性腫瘍

がんに伴って白血球が増加することがあります。悪性腫瘍による慢性的な炎症や、がん細胞が産生する物質の影響で白血球数が上昇します。また、がんの骨髄転移により血液細胞の産生に異常が生じることもあります。

白血病は白血球のがんであり、白血球数が著しく増加する代表的な疾患です。白血病については次章で詳しく解説します。


5. 白血球増加で疑われる疾患

白血球が増加している場合に疑われる主な疾患について解説します。白血球数の程度や増加している白血球の種類、他の検査所見などを総合的に判断して診断が行われます。

軽度の白血球増加(10,000〜15,000/μL程度)

軽度の白血球増加で最も多い原因は、感染症、喫煙、肥満です。風邪や軽い感染症に罹患している場合、喫煙習慣がある場合、肥満傾向にある場合には、このレベルの白血球増加がしばしばみられます。

ストレスや運動後、妊娠中などの生理的変動でも、この程度の増加が生じることがあります。多くの場合、原因が解消されれば白血球数は正常に戻ります。

中等度の白血球増加(15,000〜30,000/μL程度)

このレベルの白血球増加では、より明確な原因が存在することが多くなります。中等度から重度の細菌感染症、重度の炎症性疾患、自己免疫疾患の急性増悪などが考えられます。

また、類白血病反応と呼ばれる状態も考慮する必要があります。類白血病反応とは、白血病ではないにもかかわらず、白血病に類似した血液所見を示す状態です。重症感染症、重度の火傷、がんの骨髄転移、骨髄線維症などでみられ、白血球数が20,000〜30,000/μL以上に増加することがあります。

高度の白血球増加(30,000/μL以上)

白血球数が30,000/μLを超えるような高度の増加では、白血病などの血液疾患を積極的に疑う必要があります。特に50,000/μL以上の著しい増加では、白血病の可能性が高くなります。

ただし、感染症は稀であり、このレベルの白血球増加の多くは白血病によるものです。急性白血病と慢性白血病では病態が大きく異なり、治療方針も異なるため、正確な診断が重要です。

慢性骨髄性白血病

慢性骨髄性白血病(CML)は、造血幹細胞に異常が生じ、成熟した白血球が過剰に産生される疾患です。フィラデルフィア染色体(BCR-ABL1融合遺伝子)の存在が特徴的で、診断の確定に用いられます。

慢性骨髄性白血病は進行がゆっくりであり、初期の慢性期ではほとんど症状がありません。健康診断で偶然に白血球増加を指摘され、精査の結果診断されることが半数以上を占めます。白血球数は10万/μL以上と著しく増加することが多く、好中球だけでなく好塩基球の増加も特徴的です。

治療を行わないと、慢性期から移行期、急性転化期へと進行します。急性転化期になると急性白血病に類似した状態となり、治療が困難になります。現在は分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)による治療が中心で、適切な治療により慢性期を長期間維持することが可能です。

急性白血病

急性白血病は、未熟な白血球(芽球)ががん化し、急速に増殖する疾患です。急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病に大別されます。

急性白血病では、白血球数の増加だけでなく、貧血(赤血球減少)や血小板減少を伴うことが特徴です。「白血球増加+貧血+血小板減少」の組み合わせは急性白血病を強く疑う所見です。

症状としては、発熱、倦怠感、貧血症状(動悸、息切れ)、出血傾向(鼻血、歯肉出血、あざができやすい)などがみられます。急速に進行するため、疑われた場合は緊急で専門医療機関を受診する必要があります。

慢性リンパ性白血病

慢性リンパ性白血病(CLL)は、リンパ球のうちB細胞が異常に増加する疾患です。欧米人に多く日本人には比較的少ない白血病です。進行が緩やかで、初期には無症状であることが多く、健康診断で偶然発見されることがほとんどです。

進行すると疲労感、リンパ節の腫れ、発熱などの症状が現れます。治療は病状に応じて判断され、初期の場合は無治療で経過観察することも多いです。

骨髄増殖性腫瘍

骨髄増殖性腫瘍は、造血幹細胞の異常により血液細胞が過剰に産生される疾患群です。慢性骨髄性白血病のほか、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症が含まれます。

これらの疾患では、白血球だけでなく赤血球や血小板も増加することがあります。白血球、赤血球、血小板がすべて増加している場合は、骨髄増殖性腫瘍を疑う必要があります。


6. 健康診断で白血球増加を指摘されたら

健康診断で白血球の増加を指摘された場合、どのように対応すればよいのでしょうか。状況に応じた適切な対応について解説します。

まずは冷静に判断を

白血球の増加が指摘されても、すぐに重大な病気を心配する必要はありません。実際には、白血球増加の原因の大半は感染症や炎症、喫煙、肥満などの良性の原因です。一度の検査結果だけで判断せず、経過を見ることも重要です。

健康診断を受けた際に風邪をひいていた、発熱があった、激しい運動をした直後だった、強いストレスを感じていたなどの状況があれば、一時的な増加である可能性が高いです。

再検査の重要性

白血球の増加を指摘された場合、まずは再検査を受けることが推奨されます。健康診断で数値が高かった場合でも、再検査では正常範囲内に収まることも少なくありません。

再検査の際には、できるだけ体調の良い状態で、午前中に受けることをお勧めします。白血球数は日内変動があり、夕方には増加しやすい傾向があります。また、検査前には激しい運動を避け、十分な睡眠をとるようにしましょう。

医療機関を受診すべき場合

以下のような場合には、医療機関を受診して詳しい検査を受けることをお勧めします。

白血球数が10,000/μL以上の場合、特に15,000/μL以上の場合は詳細な検査が必要です。また、再検査でも白血球増加が持続している場合、過去の検査結果と比較して大きく増加している場合にも受診が推奨されます。

白血球の増加だけでなく、赤血球や血小板にも異常がある場合は、血液疾患の可能性があるため、早めの受診が必要です。特に、白血球が増加し、赤血球と血小板が減少している場合は急性白血病が疑われるため、緊急で受診することが重要です。

発熱、倦怠感、体重減少、リンパ節の腫れ、出血傾向(あざができやすい、鼻血が止まりにくい)などの症状がある場合も、早めに受診しましょう。

受診すべき診療科

白血球の異常を指摘された場合、まずは内科を受診することが一般的です。問診や身体診察、追加の血液検査などを行い、必要に応じて専門の診療科に紹介されます。

発熱や感染症状がある場合は感染症内科、関節痛や皮疹がある場合はリウマチ科・膠原病内科、白血球数が著しく高い場合や他の血球にも異常がある場合は血液内科での精密検査が必要です。


7. 白血球増加の検査と診断

白血球の増加が認められた場合に行われる検査と、診断の流れについて解説します。

血液検査

再検査として、まず血液検査が行われます。白血球数だけでなく、赤血球数、ヘモグロビン、血小板数なども確認し、血液全体の状態を評価します。

白血球分画(白血球分類)は重要な検査です。好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球それぞれの比率と絶対数を調べることで、白血球増加の原因を推測できます。好中球が増加していれば細菌感染症や炎症、リンパ球が増加していればウイルス感染症、好酸球が増加していればアレルギー疾患や寄生虫感染が疑われます。

CRP(C反応性タンパク)は炎症の程度を示す指標です。感染症や炎症性疾患で上昇します。白血球数とCRPを組み合わせて評価することで、炎症の有無や程度をより正確に判断できます。

末梢血液像検査

血液を顕微鏡で直接観察し、白血球の形態を確認する検査です。白血病では、通常は骨髄内にしか存在しない未熟な細胞(芽球)が血液中に出現します。この検査により、白血病の可能性を評価することができます。

生化学検査

肝機能、腎機能、血糖値、尿酸値などを調べ、全身状態や合併症を評価します。白血病では、細胞の破壊に伴いLDH(乳酸脱水素酵素)や尿酸が上昇することがあります。

画像検査

必要に応じて、胸部X線検査やCT検査、腹部超音波検査などが行われます。肺炎などの呼吸器感染症、リンパ節の腫大、脾臓の腫れ、虫垂炎や胆嚢炎などの腹部疾患を確認するために実施されます。

骨髄検査

白血病などの血液疾患が疑われる場合には、骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)が行われます。腸骨(骨盤の骨)に針を刺して骨髄液を採取し、骨髄内の細胞を顕微鏡で詳しく観察します。

骨髄検査では、骨髄内での血液細胞の産生状態、異常な細胞(芽球)の有無と割合、染色体異常の有無などを調べることができます。慢性骨髄性白血病ではフィラデルフィア染色体の検出が診断の確定に必要です。


8. 日常生活での注意点と予防法

白血球の数を適正に保ち、免疫機能を健全に維持するために、日常生活で心がけたいポイントについて解説します。

禁煙

喫煙は白血球増加の主要な原因の一つです。タバコに含まれる有害物質が気管支に慢性的な炎症を引き起こし、白血球数を上昇させます。また、喫煙は心筋梗塞や脳梗塞のリスク因子でもあり、白血球増加と合わさってさらにリスクが高まる可能性があります。

禁煙により白血球数は徐々に減少しますが、正常化するまでには数年かかることもあります。できるだけ早期に禁煙することをお勧めします。

適正体重の維持

肥満は体内の慢性的な炎症状態を引き起こし、白血球増加の原因となります。また、肥満は2型糖尿病や心臓病などの慢性疾患のリスク因子でもあり、これらの疾患も白血球増加と関連している可能性があります。

バランスの良い食事と適度な運動により、適正体重を維持することが重要です。BMI(体格指数)が25未満を目標に、体重管理を心がけましょう。

ストレス管理

ストレスは自律神経の乱れを引き起こし、白血球数に影響を与えることがあります。慢性的なストレスは免疫機能の低下にもつながるため、こまめにストレスを発散することが大切です。

十分な睡眠、趣味や運動によるリフレッシュ、リラクゼーション法の実践など、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。

バランスの良い食事

免疫機能を維持するためには、栄養バランスの良い食事が重要です。タンパク質、ビタミン、ミネラルなどを適切に摂取し、免疫細胞の材料となる栄養素を確保しましょう。

特にビタミンC、ビタミンE、亜鉛、セレンなどは免疫機能に関与する栄養素として知られています。野菜、果物、魚、肉、卵、大豆製品などをバランス良く摂取することをお勧めします。

適度な運動

適度な運動は免疫機能を高め、全身の健康維持に役立ちます。ただし、激しすぎる運動は一時的に白血球を増加させたり、免疫機能を低下させたりすることがあります。

ウォーキング、軽いジョギング、水泳、サイクリングなど、無理のない範囲で継続できる運動を選びましょう。週に3〜5回、1回30分程度の運動が推奨されています。

感染症予防

感染症は白血球増加の最も一般的な原因です。手洗い、うがい、マスクの着用など、基本的な感染予防対策を徹底しましょう。また、インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種も有効な予防法です。

定期的な健康診断

白血球の異常は自覚症状に乏しいことが多いため、定期的な健康診断を受けることが重要です。血液検査の結果を経年的に比較することで、自分の通常値を把握し、異常の早期発見につなげることができます。

過去の検査結果を保管し、受診時に医師に見せられるようにしておくと、より正確な評価が可能になります。


9. まとめ

白血球の増加は、健康診断で比較的よく指摘される所見の一つです。その原因は多岐にわたり、一時的な感染症や生活習慣に関連した良性のものから、白血病などの重篤な疾患まで様々です。

健康診断で白血球の増加を指摘された場合、まずは冷静に対応することが大切です。多くの場合、再検査で正常に戻ったり、原因が特定されて適切な対応が取れたりします。

しかし、白血球数が著しく高い場合、持続的に増加している場合、他の血球にも異常がある場合、発熱や倦怠感などの症状がある場合には、早めに医療機関を受診し、専門的な検査を受けることをお勧めします。

日常生活では、禁煙、適正体重の維持、ストレス管理、バランスの良い食事、適度な運動、感染症予防などを心がけることで、白血球数を適正に保ち、免疫機能を健全に維持することができます。

白血球は私たちの体を守る大切な免疫細胞です。その数値の変化は、体からの重要なサインである可能性があります。定期的な健康診断を受け、異常が指摘された場合には適切に対応することで、病気の早期発見・早期治療につなげましょう。


参考文献

  1. 日本人間ドック・予防医療学会「検査表の見方」 https://www.ningen-dock.jp/public_method/
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  4. 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト KOMPAS「慢性骨髄性白血病」 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000021/
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  8. 厚生労働省「感染症法に基づく医師の届出のお願い – 侵襲性肺炎球菌感染症」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-09-02.html

白血球に関するよくある質問

Q. 白血球が多いと必ず白血病ですか?

A. いいえ、そうではありません。白血球増加の原因の大半は、感染症や炎症、喫煙、肥満などの良性の原因です。白血病で白血球が増加する場合、通常は数万〜数十万/μLと極めて高値となり、貧血や血小板減少を伴うことが多いです。心配な場合は血液内科を受診し、詳しい検査を受けることをお勧めします。

Q. 白血球が多い状態は一生続きますか?

A. 原因によって異なります。感染症などの一時的な原因であれば、治療後は正常に戻ります。喫煙や肥満が原因の場合も、生活習慣を改善すれば正常化が期待できます。ただし、白血病などの血液疾患が原因の場合は、適切な治療を継続する必要があります。

Q. 妊娠中に白血球が増加するのは正常ですか?

A. はい、妊娠中は生理的に白血球数が増加します。特に妊娠後期には10,000〜15,000/μL程度になることは珍しくありません。これは出産時の出血や感染から体を守るための生理的な反応です。ただし、発熱や腹痛などの症状を伴う場合は感染症の可能性もあるため、主治医に相談してください。

Q. 白血球が多いと運動してはいけませんか?

A. 軽度の白血球増加で他に症状がなければ、通常の運動は問題ありません。ただし、発熱や強い倦怠感がある場合、白血球数が極めて高い場合(30,000/μL以上)は、激しい運動を避けて安静にすることをお勧めします。血液疾患がある場合は、主治医と相談の上、運動の可否を判断しましょう。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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