傷あとが赤く盛り上がる肥厚性瘢痕の治療|アイシークリニック新宿院
「手術の跡が赤く盛り上がってきた」
「怪我から数ヶ月経つのに傷あとが目立ったまま」
「この傷あとは自然に治るの?それとも病院に行くべき?」
このようなお悩みをお持ちの方は、肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)の可能性があります。
肥厚性瘢痕は、傷が治る過程で皮膚の組織が過剰に産生され、傷あとが赤く硬く盛り上がってしまう状態です。見た目の問題だけでなく、かゆみや痛み、ひきつれ感を伴うこともあり、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。
本記事では、肥厚性瘢痕の症状や原因から、具体的な治療法、日常生活での注意点まで詳しく解説します。適切な時期に治療を開始することで症状の改善が期待できますので、傷あとでお悩みの方はぜひ参考にしてください。
肥厚性瘢痕とは?傷あとが赤く盛り上がる仕組み
通常、皮膚に傷ができると2週間以内に表面が塞がり、その後約半年かけて徐々に傷あとが目立たなくなっていきます。最初の1〜2ヶ月は一時的に赤みが増しますが、その後は徐々に退色し、最終的には白っぽい平らな傷あと(成熟瘢痕)になるのが正常な経過です。
しかし、何らかの原因でこの正常な治癒過程がうまくいかないと、傷を修復するためのコラーゲン線維が過剰に産生され続け、傷あとが赤く硬く盛り上がってしまいます。これが肥厚性瘢痕です。
肥厚性瘢痕の主な症状には以下のようなものがあります。
- 傷あとが赤く盛り上がり、みみず腫れのように見える
- チクチクする痛みやかゆみを感じる
- 傷あと部分が硬くなっている
- 皮膚がひきつれる感覚がある
- 入浴後や運動後に赤みが強くなることがある
肥厚性瘢痕とケロイドの違い|治療方針を左右する重要な鑑別点
肥厚性瘢痕と似た症状に「ケロイド」があります。見た目は非常に似ていますが、治療の効きやすさや経過に大きな違いがあるため、両者の鑑別は重要です。
| 肥厚性瘢痕 | ケロイド | |
|---|---|---|
| 病変の範囲 | もとの傷あとの範囲内にとどまる | 傷あとの範囲を超えて周囲に拡大していく |
| 自然経過 | 時間とともに徐々に改善する傾向がある(1〜5年程度) | 自然に治ることはほとんどなく、徐々に拡大する |
| 症状の強さ | 痛みやかゆみは比較的軽度 | 痛みやかゆみが強い傾向がある |
| 治療効果 | 治療によく反応し、改善が期待できる | 治療が難しく、再発しやすい |
| 手術後の再発 | 再発のリスクは比較的低い | 手術だけでは再発率が高く、放射線治療の併用が必要 |
実際の臨床では、肥厚性瘢痕とケロイドの中間的な性質を持つ病変も多く、見た目だけで明確に区別することが難しい場合もあります。そのため、専門医による診察を受けることで、適切な治療方針を立てることが重要です。
肥厚性瘢痕になりやすい人の特徴と好発部位
同じような傷を負っても、肥厚性瘢痕になる人とならない人がいます。これには体質的な要因と局所的な要因の両方が関係しています。
肥厚性瘢痕になりやすい体質・全身的要因
- ケロイド体質:家族に肥厚性瘢痕やケロイドができやすい方がいる場合、遺伝的な素因がある可能性があります
- 年齢:小学校高学年から思春期にかけて発症しやすく、高齢になると発症しにくくなります
- アレルギー体質:アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患を持つ方に多い傾向があります
- ホルモンの影響:妊娠中はホルモンの変化により症状が悪化することがあります
- 高血圧:高血圧も悪化要因として報告されています
肥厚性瘢痕ができやすい部位
身体の部位によっても肥厚性瘢痕のできやすさは異なります。特に皮膚が常に引っ張られる部位や動きの多い部位に発症しやすい傾向があります。
| 発症しやすい部位 | 発症しにくい部位 |
|---|---|
| ・前胸部 ・肩から上腕 ・背部 ・下腹部(帝王切開の跡など) ・耳(ピアスの穴など) ・肘や膝などの関節部 ・フェイスライン、顎周り | ・手のひら ・足の裏 ・頭頂部 ・まぶた ・下腿(膝から足首の間) |
肥厚性瘢痕を引き起こしやすい状況
- 傷が深い場合
- 傷が化膿して治癒に時間がかかった場合
- 傷が治った後1〜3ヶ月以内に激しい運動をした場合
- ニキビが慢性的に炎症を繰り返している場合
- 帝王切開や外科手術の跡
- ピアスの穴、BCG注射の跡
肥厚性瘢痕は自然に治る?症状の経過について
肥厚性瘢痕はケロイドとは異なり、時間の経過とともに自然に改善する可能性があります。ただし、その期間は部位や症状の程度によって大きく異なります。
一般的な自然経過としては以下のような傾向があります。
- 比較的軽度な場合:1〜2年程度で赤みが引き、盛り上がりが平坦化する
- 関節部など引っ張られやすい部位:炎症が治まるまで3〜5年以上かかることも
- 適切な治療を行った場合:自然経過よりも短期間での改善が期待できる
自然に改善する可能性があるとはいえ、早期から適切な治療を開始することで、より早く症状を改善させ、瘢痕拘縮(ひきつれ)などの合併症を予防できます。傷あとが赤く盛り上がってきたら、できるだけ早めに医師に相談することをおすすめします。
肥厚性瘢痕の治療方法|症状に合わせた選択肢
肥厚性瘢痕の治療は、複数の治療法を組み合わせて行うのが一般的です。症状の程度や部位、患者様の状態に応じて最適な治療法を選択します。
保存的治療(手術を伴わない治療)
| 治療法 | 内容と特徴 | 治療期間の目安 |
|---|---|---|
| 圧迫固定療法 | テープ、スポンジ、シリコンジェルシートなどで患部を圧迫固定します。過剰な血流を抑制し、傷あとへの物理的刺激を軽減します。 | 数ヶ月〜 |
| ステロイドテープ | 弱いタイプ(ドレニゾンテープ)と強いタイプ(エクラープラスター)があり、症状に応じて使い分けます。1日1回、入浴時に交換します。 | 3ヶ月以上 |
| ステロイド局所注射 | ケナコルトなどのステロイド剤を直接患部に注射します。テープよりも速効性がありますが、硬い組織への注射のため痛みを伴うことがあります。 | 月1回、3〜6ヶ月以上 |
| 内服療法 | トラニラスト(リザベン)という抗アレルギー薬を服用します。赤みやかゆみの軽減、線維細胞の増殖抑制効果があります。 | 数ヶ月〜 |
| レーザー治療 | 血管の数を減らすレーザー(Nd:YAGレーザーなど)を照射します。※保険適用外 | 複数回 |
治療効果が不十分な場合や、症状が強い場合は、複数の治療法を併用します。例えば、内服薬とステロイドテープを組み合わせたり、テープで効果が見られない部分にはステロイド注射を追加したりします。
肥厚性瘢痕で手術が必要なケース
保存的治療だけでは十分な効果が得られない場合や、特定の状況下では手術が検討されます。
手術適応となるケース
- 瘢痕拘縮(ひきつれ)により関節が動かしにくくなっている場合
- 病変が狭い範囲に限局している場合
- 目立つ部位にあり、整容面での問題が大きい場合
- 保存的治療を長期間続けても改善が見られない場合
手術の方法
手術では肥厚性瘢痕を部分的または全て切除し、縫合します。再発を防ぐために、以下のような工夫がなされます。
- 傷にかかる緊張を分散させるため、Z形成術やW形成術でジグザグに縫合する
- 真皮より深い組織をしっかり縫い合わせ、皮膚への緊張を減らす
- 広範囲の場合は皮膚移植や皮弁形成術を行う
手術後も保存的治療を継続し、再発を予防することが重要です。術後数ヶ月間はテープ固定やステロイド治療を併用しながら経過観察を続けます。ケロイドの傾向が強い場合は、術後に放射線照射を行うこともあります。
肥厚性瘢痕を悪化させないための日常生活の注意点
治療と並行して、日常生活でも以下の点に気をつけることで、症状の悪化を防ぎ、回復を促進できます。
患部の安静を保つ
傷あとが引っ張られる動作は炎症を悪化させます。特に傷ができてから3ヶ月間は激しい運動を控え、患部をなるべく安静に保ちましょう。テープ固定で物理的な刺激から傷を守ることも有効です。
紫外線対策を行う
傷あとが治癒過程にある間(半年〜1年程度)は、紫外線を浴びると色素沈着(シミ)が残りやすくなります。顔や手など露出部の傷あとは、医療用テープで保護したり、SPF30以上の日焼け止めを使用しましょう。
入浴・飲酒・運動時の注意
入浴や飲酒、運動後に傷あとが赤くなることがありますが、これは一時的な血流反応であり、直接的な悪化ではありません。ただし、頻繁に起こると炎症が長引く原因になりますので、患部を過度に温めることは避けましょう。
かかないようにする
かゆみを感じても患部をかくと炎症が悪化します。かゆみがある場合は、冷やしたり、処方された内服薬や外用薬で対処しましょう。
肥厚性瘢痕に関するよくある質問
はい、ニキビが原因で肥厚性瘢痕ができることがあります。ニキビの炎症が慢性化すると、修復のためにコラーゲンが過剰に産生され、肥厚性瘢痕を発症することがあります。特にフェイスラインから顎周りは皮膚が動きやすく発症しやすい部位です。ニキビが繰り返しできる方は、ニキビ自体の治療も重要になります。
市販薬だけで肥厚性瘢痕を治すことは難しいです。肥厚性瘢痕の治療に効果が認められているステロイドテープ(ドレニゾンテープ、エクラープラスター)は医療用医薬品のため、医師の処方が必要です。市販の傷あとケア用品はあくまで予防や軽度の傷あとの保護が目的であり、すでに盛り上がっている肥厚性瘢痕への効果は限定的です。早めに皮膚科や形成外科を受診することをおすすめします。
皮膚科または形成外科を受診してください。特に手術が必要な場合や整容面での改善を希望される場合は、形成外科専門医のいる医療機関がおすすめです。肥厚性瘢痕は長期間の治療が必要になることが多いため、継続して通院できる医療機関を選ぶことも大切です。
症状の程度や部位によって異なりますが、一般的には3ヶ月〜1年以上の治療期間が必要です。関節部などの動きが多い部位では、さらに長期間かかることもあります。ステロイド注射の場合は月1回を3〜6ヶ月以上継続し、症状が安定した後も再発予防のためのケアを続けることが望ましいです。
妊娠中・授乳中でも一部の治療は可能です。ただし、妊娠中はホルモンの影響で症状が悪化しやすい時期でもあります。ステロイド注射などは避け、圧迫固定療法や保湿ケアを中心に行うことが多いです。授乳が終わってから本格的な治療を開始するケースもあります。詳しくは担当医にご相談ください。
多くの治療は健康保険が適用されます。ステロイドテープ、ステロイド注射、内服薬、手術などは保険診療で受けられます。ただし、一部のレーザー治療など保険適用外のものもありますので、事前に医療機関でご確認ください。
東京(新宿)で肥厚性瘢痕の治療ならアイシークリニック新宿院へ
肥厚性瘢痕は、傷あとが赤く盛り上がり、かゆみや痛みを伴うことがある皮膚疾患です。ケロイドとは異なり適切な治療によって改善が期待できますが、治療開始が早いほど効果が出やすく、症状の軽減も早まります。
「この傷あとは放っておいても大丈夫?」「どんな治療が自分に合っているの?」と迷われている方は、まずは医師の診察を受けることをおすすめします。
アイシークリニック新宿院では、患者様一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせた治療プランをご提案しています。肥厚性瘢痕やケロイド、傷あとでお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本皮膚科学会・日本創傷外科学会. 「ケロイド・肥厚性瘢痕診断・治療指針2018」. 日本皮膚科学会雑誌, 128(12), 2503-2512, 2018.
- 日本形成外科学会. 「形成外科診療ガイドライン」. 2021年版.
- 一般社団法人日本創傷外科学会. 「傷跡の治療について」. 2021.
- Ogawa R. et al. “Diagnosis and Treatment of Keloids and Hypertrophic Scars-Japan Scar Workshop Consensus Document 2018”. Burns Trauma. 2019.
- 慶應義塾大学医学部形成外科. 「ケロイド・肥厚性瘢痕」. 2024.
※本記事の内容は医学的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療の代わりとなるものではありません。症状がある場合は必ず医師にご相談ください。
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
