耳垢湿ってるけどワキガじゃない?その理由と正しい診断方法を医師が解説

「耳垢が湿っているとワキガ」という話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。インターネットで検索すると、耳垢の状態がワキガ体質を見分けるセルフチェック項目として紹介されていることがよくあります。しかし、耳垢が湿っているからといって必ずしもワキガであるとは限りません。実際に、耳垢が湿っていてもワキガではない方は約20%存在するという報告があります。本記事では、耳垢とワキガの関係性について医学的根拠に基づいて詳しく解説し、「耳垢が湿っているけどワキガじゃない」というケースがなぜ起こるのかを分かりやすくお伝えします。また、ワキガかどうかを正確に判断するための方法や、気になる場合の対処法についてもご紹介します。

図3 13.38.12

📋 目次

  1. 🎯 耳垢が湿っているとワキガと言われる理由
  2. 🧬 耳垢とワキガの関係を決める遺伝子「ABCC11」
  3. 💡 耳垢が湿っていてもワキガじゃない理由
  4. 🔍 ワキガの正確な診断方法
  5. ✅ ワキガのセルフチェック方法
  6. 📊 耳垢のタイプ別に見るワキガの可能性
  7. 💧 ワキガと多汗症の違い
  8. 🦠 ワキガの原因となるアポクリン汗腺とは
  9. 📈 日本人の耳垢タイプとワキガの割合
  10. 🧼 耳垢が湿っている場合の日常ケア
  11. 💊 ワキガの治療法
  12. 🏥 アイシークリニックのワキガ治療について
  13. ❓ よくある質問

この記事のポイント

耳垢が湿っていてもワキガではない人が約20%存在する。ABCC11遺伝子が耳垢タイプとワキガを決定するが、アポクリン汗腺の活動量や常在菌バランスも発症に影響する。正確な診断にはガーゼテスト等の医療機関受診が推奨される。

🎯 耳垢が湿っているとワキガと言われる理由

この章のポイント:耳垢とワキガには医学的な関連性があり、アポクリン汗腺の分布が重要な鍵となります。

📌 「耳垢が湿っているとワキガ」と言われる背景には、人間の体に存在する2種類の汗腺が深く関係しています。私たちの体には「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」という2つの異なる汗腺があります。

📌 エクリン汗腺は全身に分布しており、主に体温調節のために汗を分泌します。この汗腺から出る汗は99%が水分で、サラサラとしており、ほとんど臭いがありません。一方、アポクリン汗腺は脇の下、耳の中、乳輪周囲、外陰部など、体の限られた部位にのみ存在しています。アポクリン汗腺から出る汗には脂質やタンパク質、アンモニアなどが含まれており、これらの成分が皮膚表面の常在菌によって分解されることで、ワキガ特有の臭いが発生します。

📌 ここで重要なポイントは、耳の穴にはエクリン汗腺が存在せず、アポクリン汗腺のみが存在するということです。つまり、耳垢の湿り具合は耳の中にあるアポクリン汗腺から分泌される汗の量によって決まります。アポクリン汗腺の数が多い人は分泌物も多くなるため、耳垢が湿りやすくなります。逆に、アポクリン汗腺の数が少ない人は耳垢が乾燥しています。

📌 さらに、脇の下のアポクリン汗腺の数と耳の穴のアポクリン汗腺の数は比例する傾向があることが分かっています。そのため、耳垢が湿っている人は脇のアポクリン汗腺も多く、ワキガになりやすい体質である可能性が高いと考えられているのです。研究データによると、耳垢が湿っている人の約80%がワキガ体質であるという報告があります。

Q. 耳垢が湿っていても必ずワキガになるわけではないのはなぜですか?

耳垢が湿っている人の約20%はワキガではないと報告されています。ワキガの発症には、アポクリン汗腺の数だけでなく、その活動量・ホルモンバランス・皮膚の常在菌のバランス・食生活など複数の要因が関係しています。耳垢のタイプのみで断定はできません。

🧬 耳垢とワキガの関係を決める遺伝子「ABCC11」

この章のポイント:耳垢のタイプとワキガの関係は遺伝子レベルで解明されており、ABCC11遺伝子が重要な役割を果たしています。

📌 耳垢のタイプとワキガの関係は、遺伝子レベルでも解明されています。2006年に長崎大学の研究グループが発表した画期的な研究により、16番染色体上にある「ABCC11遺伝子」が耳垢のタイプを決定していることが世界で初めて明らかになりました。この研究成果は科学雑誌「Nature Genetics」に掲載され、大きな注目を集めました。

📌 ABCC11遺伝子には一塩基多型(SNP)と呼ばれる個人差があり、この遺伝子の特定の位置がグアニン(G)の場合は湿性耳垢、アデニン(A)の場合は乾性耳垢となります。人間は父親と母親からそれぞれ1つずつ遺伝子を受け継ぐため、GG型またはGA型の人は湿性耳垢、AA型の人は乾性耳垢になります。湿性耳垢の遺伝子型(G)は乾性耳垢の遺伝子型(A)に対して優性遺伝するため、片方の親からGを受け継いでいれば湿性耳垢になります。

📌 この遺伝子は耳垢のタイプだけでなく、腋臭症(ワキガ)とも密接に関連していることが判明しています。ABCC11遺伝子は細胞膜に存在する輸送タンパク質の設計図となる遺伝子であり、このタンパク質がアポクリン汗腺からの分泌物の輸送に関わっています。GG型やGA型の人はこのタンパク質が正常に機能するため、アポクリン汗腺から臭いの元となる成分が分泌されやすくなります。一方、AA型の人ではこのタンパク質がうまく機能せず、細胞内で分解されてしまうため、臭いの元となる分泌物が少なくなります。

📌 日本人を対象とした研究では、ワキガと診断された人の約98.7%がGG型またはGA型の遺伝子型を持っていたという結果が報告されています。このことから、耳垢のタイプとワキガには強い相関関係があることが科学的に証明されています。

💡 耳垢が湿っていてもワキガじゃない理由

この章のポイント:耳垢が湿っているからといって必ずワキガとは限らず、複数の要因が関係しています。

📌 耳垢が湿っているからといって、必ずワキガであるとは限りません。実際に、耳垢が湿っていてもワキガではない人は約20%存在するという報告があります。これにはいくつかの理由が考えられます。

🔸 アポクリン汗腺の活動量の個人差

📌 アポクリン汗腺の数が多くても、その活動量は個人によって大きく異なります。ワキガは単にアポクリン汗腺から汗をかくだけでは発症しません。アポクリン汗腺から分泌された汗が皮膚の常在菌によって分解され、独特の臭いを発生させるまでには、汗の量、汗に含まれる成分の濃度、皮膚の常在菌のバランスなど、複数の要因が関係しています。耳垢が湿っていても、脇のアポクリン汗腺の活動が穏やかであれば、強い臭いを発生させるほどの分泌物が出ない場合があります。

🔸 ホルモンバランスの影響

📌 アポクリン汗腺は性ホルモンの影響を強く受けます。思春期になると性ホルモンの分泌が活発になり、アポクリン汗腺の働きも活発化します。そのため、ワキガの発症は一般的に思春期以降に起こることが多いです。女性の場合は初潮の頃、男性の場合は18歳前後に発症するケースが多いとされています。耳垢のタイプは生まれつき決まっており、成長過程で変化することはありませんが、ワキガの臭いが実際に気になるようになるのは、ホルモンバランスの変化によってアポクリン汗腺が活性化してからです。

🔸 生活習慣や食生活の影響

📌 アポクリン汗腺から分泌される汗の成分は、食生活や生活習慣によっても変化します。動物性脂肪や油の多い食事、ジャンクフード、アルコール、タバコなどはアポクリン汗腺を刺激し、臭いを強くする原因となります。逆に、野菜中心の和食を心がけたり、適度な運動で老廃物を排出したりすることで、臭いを軽減できる場合があります。

🔸 皮膚の常在菌のバランス

📌 ワキガの臭いは、アポクリン汗腺から出た汗そのものではなく、その汗を皮膚の常在菌が分解することで発生します。常在菌の種類や量は個人によって異なり、特にグラム陽性球菌であるブドウ球菌がワキガの臭いの発生に関与していることが分かっています。常在菌のバランスによって、同じ量の汗をかいても臭いの強さに差が出ることがあります。

🔸 耳垢が湿る他の原因

📌 耳垢が湿っているのは、必ずしもアポクリン汗腺の分泌だけが原因とは限りません。耳掃除のしすぎで耳の中を傷つけてしまい、その傷から分泌物が出て耳垢が湿っているように見えることがあります。また、外耳炎などの炎症がある場合も耳垢が湿ることがあります。さらに、湿度の高い環境で過ごしている場合や、イヤホンを長時間使用している場合なども、耳の中が蒸れて耳垢が湿りやすくなることがあります。


🔸 耳垢が湿る他の原因


🔍 ワキガの正確な診断方法

この章のポイント:医療機関では問診・嗅診・視診などの検査でワキガの有無と重症度を正確に判定できます。

📌 耳垢のタイプだけでワキガかどうかを100%判断することはできません。ワキガかどうかを正確に知りたい場合は、専門の医療機関で診察を受けることをおすすめします。医療機関では以下のような方法でワキガの診断を行います。

📋 問診

📌 問診では、ワキガの発症時期、家族歴(両親や兄弟姉妹にワキガの人がいるか)、耳垢の性状、他人から臭いを指摘されたことがあるかどうかなどを確認します。ワキガは遺伝的要素が強いため、家族にワキガの人がいる場合は自分もワキガである可能性が高くなります。片方の親がワキガの場合は約50%、両親ともにワキガの場合は約75〜80%の確率で遺伝すると言われています。

👃 嗅診(ガーゼテスト)

📌 嗅診は、医師が実際に臭いを嗅いで評価する検査です。患者さんのワキの下にガーゼを5〜10分程度挟み、その後ガーゼの臭いを医師が確認します。臭いの強度は一般的に5段階で評価され、レベル3以上の場合にワキガと診断されることが多いです。

ガーゼテストの評価基準は以下の通りです。

  • 📌 レベル1:臭いがほとんどない状態
  • 📌 レベル2:ガーゼに直接鼻を近づけると臭いがわかる程度
  • 📌 レベル3:鼻を近づけると臭いに気づく軽度のワキガ
  • 📌 レベル4:狭い空間で臭いがわかる中度のワキガ
  • 📌 レベル5:1メートル以上離れていても臭いがわかる重度のワキガ

👀 視診

📌 視診では、脇の下の皮膚の状態、腋毛の量や生え方、衣類の黄ばみの有無などを確認します。アポクリン汗腺は毛根部に存在するため、腋毛の量が多い人はアポクリン汗腺も多い傾向があります。また、アポクリン汗腺から分泌される汗にはリポフスチンという色素成分が含まれており、これが衣類の黄ばみの原因となります。

🔬 試験切開法

📌 ガーゼテストでワキガの確認が難しい場合は、皮膚を一部切開してアポクリン汗腺を直接目視で確認する方法があります。ワキガの人はアポクリン汗腺が大きい、または数が多いという特徴があります。ただし、これは侵襲的な検査であるため、通常は他の検査で判断がつかない場合に行われます。

Q. ABCC11遺伝子とワキガの関係を教えてください。

2006年に長崎大学が発見したABCC11遺伝子は、耳垢のタイプとワキガの両方を決定します。遺伝子型がGG型またはGA型の人は湿性耳垢でワキガになりやすく、AA型の人は乾性耳垢でワキガになりにくいとされています。ワキガ診断者の約98.7%がGGまたはGA型と報告されています。

✅ ワキガのセルフチェック方法

この章のポイント:自宅で簡単にできるワキガのチェック項目をご紹介します。複数該当する場合は専門医への相談をおすすめします。

📌 医療機関を受診する前に、自分がワキガの可能性があるかどうかを確認したい場合は、以下のセルフチェック項目を参考にしてください。複数の項目に該当する場合は、ワキガの可能性が高いと考えられます。

💧 耳垢が湿っている

📌 耳垢がベタベタと湿っている、キャラメル状、または飴のような粘り気がある場合は、アポクリン汗腺の数が多い可能性があります。ただし、前述の通り、耳垢が湿っていても約20%の人はワキガではありません。あくまで可能性が高いという目安として捉えてください。

👨‍👩‍👧‍👦 家族にワキガの人がいる

📌 ワキガは遺伝的要素が強い体質です。両親、兄弟姉妹、祖父母などの血縁者にワキガの人がいる場合は、自分もワキガ体質である可能性があります。両親の状況によっては遺伝がはっきりしない場合もありますが、家族歴は重要な判断材料となります。

🟡 衣類のワキ部分が黄ばむ

📌 白い服や下着のワキ部分に黄色い汗じみがつきやすい場合は、アポクリン汗腺からの分泌物が多いことを示しています。特に、洗濯しても落ちにくい黄ばみや、黄ばみの境目がはっきりしている場合は、ワキガの可能性が高いです。ただし、制汗剤やデオドラント製品の成分が黄ばみの原因となることもあるため、これだけで判断はできません。

✨ 腋毛の量が多い、または太い

📌 アポクリン汗腺は毛根部に存在するため、腋毛の量が多い人はアポクリン汗腺も多い傾向があります。また、女性の場合は腋毛が太く、1つの毛穴から2本の毛が生えている場合、男性の場合は猫毛のように細く柔らかい腋毛の場合に、アポクリン汗腺が多く見られる傾向があるとされています。

🗣️ 他人から臭いを指摘されたことがある

📌 自分の体臭は慣れてしまって気づきにくいものです。家族や友人から臭いを指摘されたことがある場合は、ワキガの可能性を考える必要があります。ただし、臭いはデリケートな問題であるため、なかなか指摘してもらえないこともあります。

🧪 自宅でできるガーゼテスト

📌 医療機関で行われるガーゼテストは、ご自身でも簡単に試すことができます。清潔なガーゼやティッシュペーパーを脇の下に5分ほど挟み、その後臭いを確認してください。ツンとした刺激臭、香辛料のような臭い、生乾きの雑巾のような臭い、鉛筆の芯のような臭い、玉ねぎのような臭いなどが感じられる場合は、ワキガの可能性があります。

⚠️ 注意!
入浴直後は臭いが弱いため、1日活動した後のタイミングで行うのがおすすめです。また、自分では判断しにくい場合は、信頼できる家族などに協力してもらうとよいでしょう。

📊 耳垢のタイプ別に見るワキガの可能性

この章のポイント:耳垢は複数のタイプに分類され、それぞれワキガの可能性が異なります。

📌 耳垢のタイプは大きく「乾性耳垢」と「湿性耳垢」に分けられますが、湿性耳垢の中にもいくつかの種類があります。タイプによってワキガの可能性が異なりますので、ご自身の耳垢がどのタイプに該当するか確認してみてください。

🔸 粉末タイプ(乾性)

📌 粉のように細かく乾燥した耳垢です。耳の中にアポクリン汗腺がほとんどなく、皮脂腺の数も少ないタイプです。乾性耳垢の中でも最も乾燥しており、ワキガの可能性は極めて低いと考えられます。

🔸 パン粉タイプ(乾性)

📌 少し大きめの塊になっている乾燥した耳垢です。粉末タイプよりも皮脂の分泌がありますが、粘着性はありません。こちらもワキガの可能性は低いタイプです。

🔸 かさぶたタイプ(乾性〜中間)

📌 虫の脱皮殻のように形を維持しながら剥がれるタイプの耳垢です。皮脂などの分泌物によって耳垢の形が維持されていますが、湿り気はあまりありません。ワキガの可能性はそれほど高くありません。

🔸 パイ生地タイプ(湿性・軽度)

📌 しっとりとした耳垢ですが、粘度はそれほど高くありません。パイ生地のように厚みがあり、湿り気を帯びています。アポクリン汗腺が少し多めですが、このタイプの方はワキガの可能性はそれほど高くありません。

⚠️ キャラメルタイプ(湿性・高度)

📌 溶けたキャラメルのようにドロドロとした粘り気の強い耳垢です。アポクリン汗腺の数がかなり多いと考えられ、ワキガの可能性が高いタイプです。耳垢がこのタイプに該当する場合は、専門医に相談することをおすすめします。

💧 ワキガと多汗症の違い

この章のポイント:ワキガと多汗症は混同されやすいですが、原因となる汗腺が異なる全く別の疾患です。

📌 ワキガと多汗症は混同されやすい症状ですが、原因となる汗腺が異なる全く別の疾患です。それぞれの特徴を正しく理解しておきましょう。

🔸 ワキガ(腋臭症)

📌 ワキガは「腋臭症」や「アポクリン臭汗症」とも呼ばれ、アポクリン汗腺から分泌される汗が原因で発生する臭いの問題です。アポクリン汗腺から出る汗には脂質やタンパク質が含まれており、これらが皮膚の常在菌によって分解されることで特有の臭いが発生します。アポクリン汗腺の数や大きさは生まれつき決まっており、遺伝的要素が強い体質です。ワキガは厚生労働省によって病気として認められており、医師の診断を受けることで保険適用の治療を受けられる場合があります。

🔸 多汗症

📌 多汗症は、エクリン汗腺から過剰な量の汗が分泌される疾患です。エクリン汗腺から出る汗は99%が水分で構成されており、臭いそのものの原因にはなりません。多汗症は脇だけでなく、手のひら、足の裏、頭部など様々な部位に発症することがあります。ワキガが遺伝的な体質であるのに対し、多汗症は後天的な病気とされており、自律神経の乱れやストレスなどが原因となることがあります。

💡 ポイント
ワキガと多汗症は併発することもあります。多汗症によって脇が常に湿った状態になると、アポクリン汗腺由来の汗が常在菌によって分解されやすくなり、ワキガの臭いが強くなることがあります。

Q. 医療機関ではワキガをどのように診断しますか?

医療機関ではワキガ診断に問診・嗅診・視診などを用います。代表的な嗅診(ガーゼテスト)では、脇にガーゼを5〜10分挟み医師が臭いを5段階で評価し、レベル3以上でワキガと診断されることが多いです。試験切開でアポクリン汗腺を直接確認する場合もあります。

🦠 ワキガの原因となるアポクリン汗腺とは

この章のポイント:アポクリン汗腺の特徴と役割を理解することで、ワキガの発症メカニズムが分かります。

📌 ワキガを理解するためには、アポクリン汗腺について詳しく知ることが重要です。アポクリン汗腺は私たちの体の特定の部位にのみ存在する汗腺で、その性質や役割はエクリン汗腺とは大きく異なります。

🔸 アポクリン汗腺の分布

📌 アポクリン汗腺は、脇の下、外耳道(耳の穴)、乳輪周囲、へその周り、外陰部などに分布しています。これらの部位は、人間以外の哺乳類では全身に存在していた汗腺が、進化の過程で限定された場所に残ったものと考えられています。動物においてアポクリン汗腺は、仲間同士の確認や異性を引きつけるフェロモンとしての役割を果たしています。

🔸 アポクリン汗腺から出る汗の特徴

📌 アポクリン汗腺から分泌される汗は、エクリン汗腺からの汗とは成分が大きく異なります。アポクリン汗腺からの汗は乳白色でベタベタとしており、脂質、タンパク質、脂肪酸、アンモニア、鉄分、蛍光物質、色素成分(リポフスチン)などを含んでいます。

📌 これらの成分自体は無臭ですが、皮膚表面に存在する常在菌(主に表皮ブドウ球菌などのグラム陽性球菌)によって分解されることで、ワキガ特有の臭いが発生します。特に、3メチル2へキセノイン酸という物質がワキガの臭いの主成分であることが分かっています。

🔸 アポクリン汗腺の発達時期

📌 アポクリン汗腺は生まれたときから体内に存在していますが、その働きは思春期になるまで活発ではありません。性ホルモンの分泌が盛んになる思春期以降にアポクリン汗腺の働きが活発化し、ワキガの臭いが発生するようになります。女性の場合は初潮の頃、男性の場合は18歳前後に発症することが多いとされています。

📈 日本人の耳垢タイプとワキガの割合

この章のポイント:耳垢のタイプやワキガの有病率は民族によって大きく異なり、日本人は世界的に見て特徴的な分布を示します。

📌 耳垢のタイプやワキガの有病率は、民族によって大きく異なります。日本人を含む東アジア地域の人々と、ヨーロッパやアフリカの人々では、その割合に顕著な差があります。

🔸 日本人の耳垢タイプの割合

📌 日本人の約70〜80%は乾性耳垢であり、湿性耳垢の人は約20〜30%(4人に1人程度)と報告されています。これは世界的に見ると非常に特徴的な割合です。ヨーロッパやアフリカの人々ではほとんどが湿性耳垢であり、乾性耳垢は少数派です。

🔸 日本人のワキガの割合

📌 日本人のワキガの有病率は約10〜15%とされています。これは欧米人の有病率(約70〜100%)と比較すると非常に低い割合です。日本ではワキガは少数派であるため、周囲との違いが目立ちやすく、悩んでいる方も多いです。一方、欧米ではほとんどの人が程度の差はあれワキガ体質を持っているため、体臭は生理的現象の一つとして受け入れられており、治療を求める人は少ないとされています。

🔸 縄文人と弥生人の耳垢

📌 日本人の耳垢タイプの分布には、日本人のルーツが関係しているという説があります。日本人は大きく、先住民族である縄文人(古モンゴロイド)と、朝鮮半島から渡来した弥生人(新モンゴロイド)の2つの系統に分けられます。ある学説によると、縄文人は湿性耳垢(ワキガあり)であり、弥生人は乾性耳垢(ワキガなし)であったと言われています。

🧼 耳垢が湿っている場合の日常ケア

この章のポイント:適切な日常ケアにより臭いの発生を予防・軽減することができます。

📌 耳垢が湿っていてもワキガではない方も多くいらっしゃいますが、アポクリン汗腺が多い体質であることは事実です。将来的にワキガの臭いが気になる可能性もあるため、日頃から以下のようなケアを心がけることをおすすめします。

🔸 脇を清潔に保つ

📌 ワキガの臭いは、アポクリン汗腺から出た汗が常在菌によって分解されることで発生します。脇を清潔に保つことで、菌の繁殖を抑え、臭いの発生を軽減することができます。入浴時には脇を丁寧に洗い、汗をかいたらこまめに拭き取るようにしましょう。

🔸 腋毛の処理

📌 腋毛があると汗や分泌物が毛に付着し、菌が繁殖しやすい環境になります。腋毛を処理することで、臭いの発生を抑えることができます。ただし、脱毛によってアポクリン汗腺が破壊されるわけではないため、ワキガが根本的に治るわけではありません。

🔸 制汗剤・デオドラント製品の使用

📌 市販の制汗剤やデオドラント製品を使用することで、汗の分泌を抑えたり、臭いをマスキングしたりすることができます。塩化アルミニウムを含む制汗剤は、汗腺に栓をして発汗を抑える効果があります。

🔸 食生活の改善

📌 動物性脂肪や油の多い食事、ジャンクフード、アルコール、タバコなどは、アポクリン汗腺を刺激し、臭いを強くする原因となります。野菜中心のバランスの良い食事を心がけ、特に和食は臭いを軽減する効果があるとされています。

🔸 ストレス管理

📌 アポクリン汗腺はストレスや緊張によっても刺激されます。精神的なストレスが強いと、アポクリン汗腺からの発汗が増え、臭いが強くなることがあります。適度な運動や趣味などでストレスを発散し、リラックスできる時間を持つことも大切です。

🔸 衣類の管理

📌 アポクリン汗腺からの分泌物は衣類に付着すると黄ばみや臭いの原因となります。汗をかいた衣類はすぐに洗濯し、脇部分についた汚れは漂白剤などでしっかり落とすようにしましょう。また、通気性の良い素材の衣類を選ぶことで、蒸れを防ぎ、臭いの発生を抑えることができます。

Q. ワキガの治療法にはどのような選択肢がありますか?

ワキガ治療は症状の重さに応じて選択します。軽度には塩化アルミニウム製剤などの外用薬、中程度にはボトックス注射(効果3〜6ヶ月)が用いられます。根治を目指す場合は、皮膚を切開しない「ミラドライ」や、保険適用が認められている手術法「剪除法」が選択肢となります。

💊 ワキガの治療法

この章のポイント:ワキガの治療法は対症療法から根治療法まで様々な選択肢があり、症状に応じて適切な治療を選択することが重要です。

📌 日常のケアだけでは臭いを抑えられない場合や、臭いが中度以上で日常生活に支障をきたしている場合は、医療機関での治療を検討することをおすすめします。ワキガの治療法は大きく「対症療法」と「根治療法」に分けられます。

💊 外用薬による治療

📌 軽度のワキガや、手術に抵抗がある方には外用薬による治療が選択されることがあります。塩化アルミニウム製剤は汗腺に栓をして発汗を抑える効果があります。また、エクロックゲルやラピフォートワイプなど、保険適用の外用薬も登場しています。

💉 ボトックス注射

📌 ボトックス(ボツリヌストキシン)を脇の下に注射することで、汗の分泌を一時的に抑える治療法です。施術時間は約5〜10分程度と短く、ダウンタイムもほとんどありません。効果の持続期間は3〜6ヶ月程度であるため、定期的な治療が必要です。原発性腋窩多汗症と診断された場合は保険適用となることがあります。

⚡ ミラドライ

📌 ミラドライは、マイクロ波を脇の下に照射してアポクリン汗腺とエクリン汗腺を熱破壊する治療法です。皮膚を切開しないため傷跡が残らず、ダウンタイムも比較的短いのが特徴です。一度破壊された汗腺は基本的に再生しないため、効果は半永久的に持続します。ミラドライは厚生労働省や米国FDAから医療機器として認可されており、安全性も確認されています。ただし、保険適用外の自費診療となるため、費用は20〜50万円程度と高額です。

🔪 剪除法(皮弁法)

📌 剪除法は、ワキガ治療で保険適用が認められている唯一の手術法です。脇の下の皮膚を2〜4cm程度切開し、皮膚を裏返してアポクリン汗腺を直接目視しながら切除していく方法です。医師が直接見ながら汗腺を除去するため、最も確実性の高い治療法とされています。保険適用の場合、自己負担額は3割負担で約2〜5万円程度です。

🎯 治療法の選び方

📌 どの治療法を選ぶかは、症状の重症度、ライフスタイル、予算、ダウンタイムへの許容度などを総合的に考慮して決定する必要があります。軽度のワキガであれば外用薬やボトックス注射で対応できることもありますが、中度以上の場合は手術やミラドライなどの根本的な治療が推奨されます。

🏥 アイシークリニックのワキガ治療について

この章のポイント:当院では患者様一人ひとりの症状に合わせた最適な治療をご提案しています。

📌 アイシークリニックでは、患者様一人ひとりの症状やご希望に合わせた最適なワキガ治療をご提案しています。保険診療と自費診療の両方に対応しており、初診時の診察は保険診療でお受けいただけます。

📌 当院では、問診、視診、嗅診(ガーゼテスト)などの検査でワキガの有無と重症度を判定し、その結果に基づいて適切な治療法をご提案します。「検査だけ受けたい」という方も歓迎しておりますので、診断結果を聞いてからゆっくりと治療をご検討いただけます。

📌 当院ではミラドライによる治療を行っており、切らずに行えるワキガ・多汗症治療として多くの患者様にお選びいただいています。施術時間は両脇で約60分程度で、傷跡が残らず、翌日から日常生活に戻ることができます。ワキガや脇汗でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。経験豊富な医師が丁寧にカウンセリングを行い、最適な治療法をご提案いたします。

👨‍⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】

高桑康太 医師(当院治療責任者)より

当院に相談にいらっしゃる方の中にも、「耳垢が湿っているからワキガかも」という理由で受診される方が約30%程度いらっしゃいます。診察してみると、確かに湿性耳垢でも臭いの程度は軽く、日常ケアで十分対応できるレベルの方も多くお見受けします。正しい知識を持って適切に判断することが、不必要な心配を避ける第一歩だと感じています。


👨‍⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】

❓ よくある質問

耳垢が湿っているとワキガですか?

耳垢が湿っている場合、ワキガの可能性は高くなりますが、必ずしもワキガであるとは限りません。耳垢が湿っている人の約80%がワキガ体質であるという報告がありますが、残りの約20%の方は耳垢が湿っていてもワキガではありません。

これは、ワキガの発症にはアポクリン汗腺の数だけでなく、その活動量、ホルモンバランス、生活習慣、皮膚の常在菌のバランスなど、複数の要因が関係しているためです。耳垢のタイプだけでワキガかどうかを判断することはできませんので、正確な診断を希望される場合は医療機関を受診されることをおすすめします。

耳垢が乾燥していればワキガではないですか?

耳垢が乾燥している場合、ワキガである可能性は極めて低いと考えられています。ある学会での調査結果では「耳垢がドライであるのにワキガと診断したケースはない」という報告もあります。

これは、耳垢のタイプとワキガの両方がABCC11遺伝子によって決定されているためです。乾性耳垢の遺伝子型(AA型)を持つ人は、アポクリン汗腺からの臭い成分の分泌が少なく、ワキガになりにくい体質です。耳垢が乾燥している方で脇の臭いが気になる場合は、ワキガではなく、汗による一般的な体臭である可能性が高いです。

耳垢のタイプは途中で変わることがありますか?

耳垢のタイプは遺伝子によって決まっており、基本的に一生を通じて変化することはありません。アポクリン汗腺の数は生まれたときから決まっており、成長の過程でも増減しないため、耳垢の乾湿状態が根本的に変わることはないとされています。

ただし、外耳炎などの炎症、耳掃除のしすぎによる傷からの分泌物、湿度の高い環境、イヤホンの長時間使用による蒸れなどによって、一時的に耳垢が湿っているように感じることがあります。これらはアポクリン汗腺とは関係のない一時的な状態です。

ワキガは遺伝しますか?

はい、ワキガには強い遺伝的要素があります。ワキガ体質を決めるABCC11遺伝子は優性遺伝するため、片方の親がワキガの場合は約50%以上、両親ともにワキガの場合は約75〜80%の確率で子どもに遺伝すると言われています。

また、祖父母からの隔世遺伝もあり得ます。家族にワキガの方がいる場合は、ご自身もワキガ体質である可能性を考慮しておくとよいでしょう。ただし、遺伝的にワキガ体質を持っていても、臭いの強さは生活習慣や環境要因によって変わることがあります。

ワキガの治療は保険が適用されますか?

ワキガ(腋臭症)は厚生労働省に病気として認められているため、医師の診断を受けることで保険適用の治療を受けられる場合があります。

保険が適用される手術法は「剪除法(皮弁法)」のみです。保険適用を受けるためには、医師による診断で腋臭症と確定されること、中等度以上の症状があること、日常生活に支障をきたしていることなどの条件を満たす必要があります。軽度の場合は美容目的とみなされ、保険適用外となることがあります。

ミラドライやボトックス注射(多汗症以外の場合)は保険適用外となり、自費診療となります。治療法によって費用が異なりますので、詳しくは医療機関でご相談ください。

自分がワキガかどうか分からない場合はどうすればいいですか?

自分の体臭は慣れてしまって気づきにくいものです。ワキガかどうか分からない場合は、まずセルフチェックを試してみてください。耳垢が湿っているか、家族にワキガの人がいるか、衣類のワキ部分が黄ばむか、などの項目を確認することで、ワキガの可能性を推測できます。

また、ガーゼやティッシュを脇の下に5分ほど挟んで臭いを確認するガーゼテストも自宅で行うことができます。家族など信頼できる人に臭いを確認してもらうのも一つの方法です。

セルフチェックで複数の項目に該当する場合や、それでも判断がつかない場合は、専門の医療機関で診察を受けることをおすすめします。医師による客観的な診断で、ワキガかどうかを正確に判定してもらえます。


📚 参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

保有資格

ミラドライ認定医

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任
  • 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
  • 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
  • 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
  • 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報

プロフィールを見る

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

プロフィールを見る

電話予約
0120-780-194
1分で入力完了
簡単Web予約
運営:医療法人社団鉄結会