冬になると「低体温症」という言葉を耳にする機会が増えますが、実は屋外だけでなく室内でも発症するケースが少なくありません。特に高齢者は体温調節機能の低下や基礎代謝の減少により、暖房の効いた室内であっても低体温症になるリスクがあります。毎年、冬場には室内での低体温症により救急搬送される高齢者が多く、中には重症化して命を落とすケースもあります。本記事では、高齢者の室内低体温症について、その原因や症状、そして効果的な予防法まで詳しく解説します。ご家族やご自身の健康を守るために、ぜひ参考にしてください。

目次
- 📌 低体温症とは?基本的な知識を理解しよう
- 📌 なぜ高齢者は室内で低体温症になりやすいのか
- 📌 室内低体温症の症状と進行段階
- 📌 高齢者の低体温症を引き起こす室内環境の要因
- 📌 室内低体温症の予防法と対策
- 📌 家族ができる高齢者の見守りポイント
- 📌 低体温症が疑われる場合の対処法
- 📌 低体温症と関連する疾患や注意すべき薬
- 📌 よくある質問
- 📌 まとめ
この記事のポイント
高齢者は体温調節機能・基礎代謝の低下により室内でも低体温症を発症するリスクがある。予防には室温18度以上の維持、重ね着、十分な栄養・運動が有効。震えが止まった場合は重症サインで即座に救急対応が必要。
🎯 低体温症とは?基本的な知識を理解しよう
室内での低体温症を理解するためには、まず低体温症の基本的なメカニズムを知ることが大切です。高齢者にとって命に関わる危険な症状であることを正しく認識しましょう。
低体温症とは、体の深部体温(内臓や脳などの中心部の温度)が35度以下に低下した状態を指します。人間の正常な深部体温は約37度前後に保たれており、これが35度を下回ると様々な身体機能に障害が生じ始めます。体温が低下すると、代謝機能や免疫機能が低下し、重症化すると心臓や呼吸器系にも深刻な影響を及ぼします。
🔍 低体温症の定義と分類
低体温症は深部体温によって以下のように分類されます。軽度低体温症は深部体温が32度から35度の状態で、震えや判断力の低下などの症状が現れます。中等度低体温症は28度から32度の状態で、震えが止まり、意識障害や不整脈のリスクが高まります。重度低体温症は28度未満の状態で、意識消失や心停止のリスクが極めて高くなり、生命の危険があります。一般的な体温計では深部体温を正確に測定できないため、脇の下で測った体温が35度以下の場合は低体温症を疑う必要があります。
⚠️ 偶発性低体温症について
低体温症には、手術中の麻酔による体温低下など医療行為に伴うものと、日常生活で予期せず起こる「偶発性低体温症」があります。高齢者が室内で発症する低体温症の多くはこの偶発性低体温症に該当します。偶発性低体温症は、寒冷環境への暴露や、体温調節機能の低下、栄養不足、特定の疾患や薬剤の影響など、様々な要因が重なって発症します。特に冬場の室内で発症するケースが多く、本人や周囲が気づかないうちに進行することがあるため、注意が必要です。

Q. 高齢者が室内で低体温症になりやすい理由は?
高齢者は加齢により体温調節機能が低下し、寒さを感じにくくなります。また基礎代謝は60代で20代比15〜20%低下し、熱産生が減少します。さらに皮下脂肪や筋肉量の減少も重なり、暖房の効いた室内でも低体温症を発症するリスクがあります。
👴 なぜ高齢者は室内で低体温症になりやすいのか
高齢者が室内で低体温症を発症しやすい理由は、加齢に伴う身体機能の変化と生活環境の両面にあります。若い世代では問題にならない室温でも、高齢者にとっては低体温症のリスクとなることがあります。ここでは、高齢者特有のリスク要因について詳しく解説します。
🔸 体温調節機能の低下
人間の体温は、脳の視床下部という部位でコントロールされています。寒さを感じると、血管を収縮させて熱の放散を防いだり、筋肉を震わせて熱を産生したりする反応が起こります。しかし、加齢とともにこれらの体温調節機能は低下していきます。高齢者は寒さに対する血管収縮反応が鈍くなり、体熱の放散を効果的に防ぐことができません。また、筋肉量の減少により、震えによる熱産生能力も低下しています。さらに、皮膚の温度センサーの感度も落ちているため、寒さを感じにくくなっています。
⚡ 基礎代謝の低下
基礎代謝とは、生命維持のために最低限必要なエネルギー消費のことです。この基礎代謝は加齢とともに低下し、60代では20代と比べて約15〜20%程度低下するとされています。基礎代謝が低下すると、体内で産生される熱量も減少するため、同じ室温でも体が冷えやすくなります。また、高齢者は活動量が減少していることも多く、運動による熱産生も少なくなっています。
💪 皮下脂肪と筋肉量の減少
皮下脂肪は体の断熱材として機能し、体温の保持に重要な役割を果たしています。高齢者では皮下脂肪が減少しやすく、体温が外気温の影響を受けやすくなります。また、筋肉は体温を産生する主要な器官の一つですが、加齢に伴い筋肉量は減少していきます。これをサルコペニア(加齢性筋肉減少症)と呼び、熱産生能力の低下につながります。特に寝たきりや活動量が少ない高齢者では、筋肉量の減少が顕著になることがあります。
🌡️ 寒さを感じにくい
高齢者は寒さに対する感覚が鈍くなっているため、室温が低下しても「寒い」と感じにくくなっています。そのため、暖房をつけずに過ごしたり、薄着のままでいたりすることがあります。また、認知機能の低下がある場合は、寒さを感じても適切な対応(暖房をつける、衣類を着るなど)ができないこともあります。このような感覚の鈍化は、低体温症の発症リスクを高める大きな要因となっています。
🏥 慢性疾患の影響
高齢者は様々な慢性疾患を抱えていることが多く、これらの疾患が低体温症のリスクを高めることがあります。糖尿病は末梢神経障害により温度感覚を低下させ、甲状腺機能低下症は代謝を低下させて体温維持を困難にします。心疾患や末梢血管疾患は末梢の血流を悪化させ、栄養状態の悪化は熱産生に必要なエネルギーの不足につながります。パーキンソン病や認知症などの神経疾患も、体温調節機能や行動面での対応能力に影響を与えます。
📋 室内低体温症の症状と進行段階
室内低体温症は徐々に進行することが多く、初期段階では本人も周囲も気づきにくいことがあります。症状の進行段階を理解し、早期発見につなげることが重要です。
⚡ 軽度低体温症の症状(深部体温32〜35度)
軽度低体温症では、まず寒気や震えが現れます。これは体が熱を産生しようとする正常な防御反応です。手足の冷えやしびれを感じることもあります。判断力や集中力の低下、反応の鈍化なども見られ、普段できていることがうまくできなくなることがあります。言葉がはっきりしない、動作がぎこちなくなるといった症状も現れます。皮膚は蒼白または青紫色になることがあり、血圧の上昇や脈拍の増加が見られます。
🚨 中等度低体温症の症状(深部体温28〜32度)
中等度低体温症になると、震えが止まります。これは体が熱産生を諦めたサインであり、危険な状態です。意識がぼんやりとし、周囲の状況を正確に認識できなくなります。強い眠気を感じ、そのまま眠り込んでしまうことがあります。筋肉が硬直し、動きが著しく制限されます。呼吸や脈拍が遅くなり、不整脈が出現することもあります。この段階では自力で回復することは困難であり、早急な医療介入が必要です。
💀 重度低体温症の症状(深部体温28度未満)
重度低体温症では意識を失い、反応がなくなります。呼吸は非常に浅く、ほとんど感知できないほど弱くなることがあります。脈拍も微弱で、触れても感じられないことがあります。致死性の不整脈(心室細動など)のリスクが極めて高くなり、心停止に至る危険があります。この段階では集中治療が必要であり、一刻も早い救急対応が求められます。
👴 高齢者特有の症状の現れ方
高齢者の低体温症では、典型的な症状が現れにくいことがあります。震えが出にくい、または全く震えがないこともあります。これは筋肉量の減少や体温調節機能の低下によるものです。また、もともと認知機能の低下がある場合、意識障害の程度を判断することが難しくなります。「いつもより元気がない」「反応が鈍い」「食欲がない」といった非特異的な症状として現れることも多いため、注意深い観察が必要です。
Q. 低体温症の重症度はどう分類されますか?
低体温症は深部体温で3段階に分類されます。32〜35度が軽度(震え・判断力低下)、28〜32度が中等度(震えが止まり意識障害・不整脈リスク)、28度未満が重度(意識消失・心停止リスク)です。震えが止まった場合は危険なサインで、即座に救急対応が必要です。
🏠 高齢者の低体温症を引き起こす室内環境の要因
室内で低体温症が発症する背景には、様々な環境要因があります。これらの要因を理解し、適切に対処することが予防につながります。
🌡️ 不十分な暖房
高齢者の中には、経済的な理由や「もったいない」という意識から暖房を控える方がいます。また、エアコンの風が苦手、乾燥が気になるといった理由で暖房を使用しない方もいます。しかし、室温が低い状態が続くと、体は常に熱を奪われ続け、低体温症のリスクが高まります。特に夜間は活動量が減少し、代謝も低下するため、就寝中に低体温症を発症するケースが少なくありません。
🏘️ 住宅の断熱性能
古い木造住宅では断熱性能が十分でないことが多く、暖房をつけていても室温が上がりにくいことがあります。窓や壁、床からの熱損失が大きく、特に早朝は室温が著しく低下します。また、隙間風が入りやすい構造の住宅では、体感温度がさらに低くなります。トイレや浴室、廊下など暖房が行き届かない場所との温度差も大きく、急激な温度変化が体に負担をかけます。
🛁 浴室での低体温
浴室は低体温症が発症しやすい場所の一つです。入浴前の脱衣場が寒い状態で服を脱ぐと、急激に体温が奪われます。また、長時間の入浴後に浴室内の温度が低下した状態で湯船から出ると、体が冷えやすくなります。入浴中に体調を崩し、浴槽から出られなくなって低体温症に至るケースもあります。特に一人暮らしの高齢者では発見が遅れやすく、重症化するリスクがあります。
🛏️ 就寝時の環境
就寝中は体の活動レベルが低下し、代謝も落ちるため、体温が下がりやすくなります。寝具が薄い、または保温性が不十分な場合、睡眠中に体が冷えていきます。夜中にトイレに起きた際、寒い廊下やトイレで体が冷えることも要因となります。また、認知症のある高齢者では、布団をはいでしまう、適切な寝具を使用しないといった行動が見られることがあり、低体温症のリスクを高めます。
🏠 一人暮らしの問題
一人暮らしの高齢者は、室温管理が不十分になりやすく、体調の変化に気づいてくれる人もいないため、低体温症のリスクが高くなります。特に社会的に孤立している場合、数日間発見されないこともあります。また、一人暮らしでは食事が不規則になりやすく、栄養状態の悪化から低体温症のリスクがさらに高まることがあります。
💡 室内低体温症の予防法と対策
室内低体温症は適切な対策を講じることで予防できます。ここでは具体的な予防法について解説します。冬の脱水症状は高齢者に多い?原因・症状・予防法を詳しく解説の記事でも、冬場の高齢者の健康管理について詳しく解説しています。
🌡️ 適切な室温管理
高齢者の居住空間は、最低でも18度以上、理想的には20〜22度程度に保つことが推奨されています。WHO(世界保健機関)も、高齢者や健康弱者の居住環境として18度以上を推奨しています。室温計を設置し、常に温度を確認できるようにしましょう。特に就寝時の室温低下に注意が必要です。タイマー機能を活用して早朝に暖房が入るように設定するか、断熱性の高い寝具を使用するなどの対策が有効です。
👕 適切な衣類の選択
重ね着は体温保持に効果的です。特に首、手首、足首といった血管が表面に近い部位を保温することが重要です。室内でもネックウォーマーや靴下、レッグウォーマーなどを着用することで、体温の放散を防ぐことができます。素材としては、保温性と吸湿性に優れたウールやフリース、機能性下着などがおすすめです。就寝時には保温性の高いパジャマを選び、必要に応じて湯たんぽや電気毛布を使用することも検討しましょう。
🍲 栄養と水分の摂取
体温を維持するためには、十分なエネルギー摂取が必要です。特に冬場は基礎代謝が上がるため、夏よりもやや多めのカロリー摂取を心がけましょう。たんぱく質は熱産生に重要な栄養素であり、肉、魚、卵、大豆製品などを積極的に摂取することが推奨されます。また、温かい飲み物や食事は体を内側から温める効果があります。ただし、アルコールは血管を拡張させて体温低下を促進するため、過度の飲酒は避けるべきです。水分摂取も重要で、脱水は体温調節機能を低下させます。
🏃 適度な運動
運動は筋肉を動かすことで熱を産生し、体温を上げる効果があります。高齢者でも無理のない範囲で体を動かすことが大切です。室内でできる簡単な体操やストレッチ、足踏み運動などを日課にすることで、筋肉量の維持と基礎代謝の向上につながります。特に朝起きた時や、長時間座った後などに軽い運動を行うことで、体温を上げることができます。ただし、寒い場所での急な運動は心臓に負担をかけるため、まずは室温を上げてから行うようにしましょう。関連記事:正月の運動不足を室内で解消!自宅でできる効果的なエクササイズ10選で、室内運動の方法について詳しく解説しています。
🏠 住環境の改善
住宅の断熱性能を高めることは、低体温症予防に非常に効果的です。窓に断熱シートを貼る、厚手のカーテンを使用する、隙間風を防ぐテープを貼るなど、比較的簡単にできる対策もあります。床からの冷えを防ぐために、カーペットやラグを敷くことも有効です。可能であれば、二重窓への交換や床暖房の設置など、本格的な断熱工事を検討することも一案です。また、トイレや浴室にも小型のヒーターを設置し、室内の温度差を減らすことが推奨されます。
🛁 入浴時の注意点
入浴前に脱衣場と浴室を暖めておくことが重要です。浴室暖房がない場合は、先にシャワーでお湯を出して浴室を温めるなどの工夫ができます。湯温は40度程度のぬるめに設定し、長時間の入浴は避けましょう。入浴後は速やかに体を拭き、暖かい部屋で着替えることが大切です。入浴中の体調変化に備え、家族に声をかけてから入浴する、脱衣場に緊急連絡用のボタンを設置するなどの対策も有効です。
Q. 室内低体温症を予防するための室温と対策は?
高齢者の居住空間はWHOの推奨に基づき、最低18度以上、理想的には20〜22度に保つことが重要です。室温計の設置、首・手首・足首を温める重ね着、高たんぱくな食事、室内での軽い体操も有効な予防策です。断熱シートや厚手カーテンで住環境を改善することも効果的です。
👀 家族ができる高齢者の見守りポイント
離れて暮らす高齢の家族がいる場合、定期的な見守りと早期の異変察知が重要です。以下に具体的なポイントを解説します。
📞 定期的な連絡と訪問
毎日または定期的に電話やビデオ通話で連絡を取り、体調や室温について確認しましょう。「暖房はつけていますか」「今日は何を食べましたか」といった具体的な質問をすることで、生活状況を把握できます。可能であれば定期的に訪問し、室温や生活環境を直接確認することが望ましいです。訪問時には、暖房器具が正常に作動しているか、食料品は十分にあるかなどもチェックしましょう。
⚠️ 異変のサインを見逃さない
低体温症の初期症状は分かりにくいことがありますが、以下のような変化に注意を払いましょう。
- 📌 普段より反応が鈍い
- 📌 言葉がはっきりしない
- 📌 動作がゆっくりになった
- 📌 食欲が落ちた
- 📌 いつもより寒そうにしている
- 📌 顔色が悪い
電話で話した際に、声のトーンや話し方に変化がないかも確認ポイントです。少しでも異変を感じたら、直接訪問するか、近くの親族や近隣住民、地域包括支援センターなどに連絡を取りましょう。
📱 見守りサービスの活用
離れて暮らしている場合は、見守りサービスの活用も検討しましょう。センサーで生活リズムを確認するサービス、緊急通報システム、定期的な安否確認の電話サービスなど、様々なサービスがあります。自治体によっては高齢者向けの見守りサービスを提供していることもあるため、地域包括支援センターに相談してみることをおすすめします。また、近隣住民や民生委員との連携も、いざという時の早期発見につながります。
📊 室温モニタリング
最近では、離れた場所からスマートフォンで室温を確認できるスマート温度計や、室温が一定以下に下がるとアラートを送る機能を持つデバイスも販売されています。こうした機器を高齢の家族の自宅に設置することで、室温の低下をリアルタイムで把握し、早期に対応することができます。導入の際は、高齢者本人の理解と同意を得た上で、プライバシーにも配慮することが大切です。
🚨 低体温症が疑われる場合の対処法
万が一、低体温症が疑われる状況に遭遇した場合の対処法を知っておくことは重要です。適切な初期対応が予後を左右することがあります。
🚑 すぐに救急車を呼ぶべき状況
以下のような症状が見られる場合は、ただちに119番で救急車を呼んでください。
- 📌 意識がない、または意識レベルが著しく低下している場合
- 📌 呼吸が弱いまたは不規則な場合
- 📌 脈が弱いまたは不規則な場合
- 📌 震えが止まっている場合(中等度以上の低体温症の可能性)
- 📌 体が著しく冷たい場合
救急車を呼ぶ際は、「高齢者の低体温症の疑い」と伝え、現在の状態を簡潔に説明しましょう。
🏥 救急車到着までの応急処置
救急車を待つ間、以下の応急処置を行います。まず、寒い場所にいる場合は暖かい場所に移動させます。ただし、低体温症の方を急に動かすと不整脈を誘発する恐れがあるため、丁寧にゆっくりと移動させることが重要です。濡れた衣類があれば脱がせ、毛布やタオルで体を包んで保温します。特に頭部からの熱損失が大きいため、帽子やタオルで頭を覆います。意識がある場合は、温かい飲み物を少量ずつ飲ませることができます。ただし、アルコールやカフェイン飲料は避けてください。意識がない場合は、誤嚥の危険があるため飲み物は与えず、回復体位をとらせて気道を確保します。
❌ やってはいけないこと
低体温症の応急処置で避けるべきことがあります。まず、急激に温めることは危険です。熱いお風呂に入れたり、電気毛布で急速に温めたりすると、末梢血管が急に拡張して血圧が低下したり、冷たい血液が心臓に戻って不整脈を起こしたりする恐れがあります。また、手足をマッサージすることも、同様の理由から避けるべきです。意識が低下している人にアルコールを飲ませることも禁忌です。体を激しく揺すったり、急に立たせたりすることも、心臓への負担が大きいため避けてください。
💊 軽度の場合の対応
意識がはっきりしていて、震えがあり、自分で動ける程度の軽度低体温症の場合は、暖かい部屋に移動し、毛布などで保温しながら、温かい飲み物を飲むことで回復することがあります。ただし、高齢者の場合は状態が急変する可能性もあるため、注意深く観察を続け、状態が改善しない場合や悪化する場合は医療機関を受診してください。また、低体温症を起こした原因(暖房の故障、転倒して動けなくなっていたなど)を確認し、再発防止につなげることも重要です。
Q. 低体温症が疑われるときにやってはいけないことは?
低体温症の応急処置で急激に温めることは禁物です。熱い風呂や電気毛布での急速加温は、末梢血管の急拡張による血圧低下や致死性不整脈を招く恐れがあります。手足のマッサージ、意識低下者へのアルコール摂取、体を激しく揺することも心臓に負担をかけるため避けてください。
💊 低体温症と関連する疾患や注意すべき薬
特定の疾患を持つ方や、特定の薬を服用している方は、低体温症のリスクが高くなることがあります。ここでは、注意が必要な疾患と薬について解説します。
🦠 低体温症リスクを高める疾患
甲状腺機能低下症は、代謝を低下させ、体温維持を困難にする代表的な疾患です。糖尿病は末梢神経障害により温度感覚を低下させ、また低血糖も低体温症のリスク因子となります。脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患は、体温調節中枢に影響を与えることがあります。心不全や末梢血管疾患は末梢の血流を悪化させます。認知症は適切な防寒行動がとれなくなるリスクがあります。低栄養状態やアルコール依存症も、低体温症のリスクを高める要因です。
💊 注意が必要な薬剤
いくつかの薬剤は、低体温症のリスクを高める可能性があります。向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬など)の一部は、体温調節機能に影響を与えることが知られています。血管拡張薬は末梢血管を拡張させ、体温の放散を促進します。鎮静薬や睡眠薬は、活動量を低下させ、寒さへの対応が遅れる原因となることがあります。降圧薬の一部も血管拡張作用により体温低下に関与する可能性があります。これらの薬を服用している方は、より一層の注意が必要です。ただし、自己判断で服薬を中止することは危険ですので、主治医に相談の上、適切な予防策を講じてください。
⚠️ 持病のある方への注意喚起
上記のような疾患を持つ方や、該当する薬を服用している方は、主治医に低体温症のリスクについて相談することをおすすめします。必要に応じて、冬季の室温管理や服薬タイミングの調整、定期的な体温測定などのアドバイスを受けることができます。また、家族も本人のリスクを理解し、見守りを強化することが重要です。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
冬季になると、高齢の患者さんやそのご家族から体温に関するご相談が昨シーズンより約20%増加しています。特に「いつもより元気がない」「反応が鈍い」といった症状で来院される方の中には、軽度の低体温が関与しているケースがあります。室内でも油断せず、適切な温度管理と定期的な体温測定を心がけていただければと思います。

❓ よくある質問
一般的に、室温が18度を下回ると高齢者の低体温症リスクが高まるとされています。WHO(世界保健機関)も高齢者や健康弱者の居住環境として18度以上を推奨しています。ただし、個人差があり、体調や活動量、着衣の状態によっても影響されます。できれば20〜22度程度に保つことが理想的です。特に夜間や早朝は室温が下がりやすいため、注意が必要です。
一般的な体温計で測定した腋窩温(脇の下の温度)が35度台の場合、低体温症の可能性があります。ただし、高齢者は平熱自体が低めの方もいるため、普段の平熱と比較することが重要です。35度を下回る場合や、寒気、震え、反応の鈍さなどの症状を伴う場合は、速やかに保温措置を取り、状態によっては医療機関を受診してください。
電気毛布は就寝時の保温に効果的ですが、使用には注意が必要です。低温やけどのリスクがあるため、直接肌に当てずに使用し、就寝前に布団を温めておいて寝る時には電源を切るか、最低温度に設定することをおすすめします。また、温度感覚が低下している高齢者では低温やけどに気づきにくいため、家族が定期的に皮膚の状態を確認することも大切です。
認知症の方は寒さを適切に認識できなかったり、暖房をつける、服を着るなどの対応ができなかったりすることがあります。そのため、家族や介護者による室温管理と服装の確認が特に重要です。また、布団をはいでしまう、薄着で外に出てしまうなどの行動にも注意が必要です。室温を自動で一定に保つ暖房システムの導入や、見守りサービスの活用も検討しましょう。
低体温症は主に冬季(12月〜2月)に多く発症しますが、春先や秋の急な冷え込みの時期にも注意が必要です。特に、暖房をつけ始める前の10〜11月や、暖房を切り始める3〜4月は、油断から低体温症を発症するケースがあります。また、朝方の気温が低い時間帯や、季節の変わり目で気温の変動が大きい時期も要注意です。
📝 まとめ
高齢者の室内低体温症は、適切な知識と予防策があれば防ぐことができます。加齢による体温調節機能の低下、基礎代謝の減少、寒さを感じにくくなることなどが重なり、室内であっても低体温症を発症するリスクがあることを理解しておくことが重要です。室温を18度以上(理想的には20〜22度)に保つこと、適切な衣類を着用すること、十分な栄養を摂取すること、適度な運動を行うことが予防の基本となります。また、住環境の断熱性能を高めること、入浴時の温度管理に気をつけることも大切です。離れて暮らす高齢の家族がいる場合は、定期的な連絡と見守りを心がけ、異変の早期発見に努めましょう。低体温症が疑われる場合は、重症度に応じて速やかに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶ判断が必要です。冬を安全に過ごすために、ご家族全員で低体温症への理解を深め、予防に取り組んでいただければ幸いです。
📋 参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
