顎下腺のしこりを押すと痛い原因とは?考えられる病気と受診のタイミング

顎の下にしこりのようなものを感じて、押すと痛みが走る——そんな経験はありませんか?

💬 「しばらくしたら治るかな…」と放置していませんか?
顎下腺のしこりは、早期治療が必要な病気が隠れているケースがあります。
🚨 この記事を読まないと…
📌 しこりの原因がわからないまま悪化するリスク
📌 受診すべきタイミングを逃してしまう可能性
📌 重篤な疾患の発見が遅れるケースも
この記事でわかること
⚡ 顎下腺しこりの「主な原因」と「見分け方」
今すぐ受診すべき症状のチェックポイント
⚡ 適切な診療科・治療の流れ
顎の下に位置する「顎下腺(がっかせん)」は、唾液を分泌する重要な器官です。しこりができる原因は唾石症・炎症・腫瘍などさまざま。本記事で原因から受診タイミングまでわかりやすく解説します。


目次

  1. 顎下腺とはどんな器官か
  2. 顎下腺のしこりを押すと痛い主な原因
  3. 唾石症(がっかせき)について詳しく解説
  4. 顎下腺炎(がっかせんえん)とその特徴
  5. 顎下腺腫瘍の可能性
  6. リンパ節の腫れとの違い
  7. 受診すべきタイミングと適切な診療科
  8. 診断の流れと主な検査内容
  9. 治療法の概要
  10. 日常生活でできるセルフケア
  11. まとめ

この記事のポイント

顎下腺のしこりを押すと痛い原因は唾石症が最多で、顎下腺炎・腫瘍・リンパ節腫脹も考えられる。食事のたびに腫れる・しこりが2〜3週間以上続く場合は耳鼻咽喉科への早期受診が重要。

💡 顎下腺とはどんな器官か

顎下腺とは、文字通り顎の下に位置する唾液腺の一種です。唾液腺は口の中に唾液を分泌して食べ物の消化を助けたり、口腔内を清潔に保ったりするための器官で、大唾液腺としては「耳下腺(じかせん)」「顎下腺」「舌下腺(ぜっかせん)」の三種類が存在します。

顎下腺は左右の下顎骨(下あごの骨)の内側にそれぞれひとつずつあり、大きさはクルミ程度といわれています。1日に分泌する唾液の量は全唾液腺の中でも最も多く、全体の約60〜70%を占めているとされています。顎下腺で作られた唾液は「ワルトン管」と呼ばれる導管を通り、舌の付け根近くに開口して口腔内へと分泌されます。

通常、顎下腺は外から触れてもほとんど気にならない器官ですが、何らかの原因によって腫れたり、石(唾石)ができたりすると、顎の下にしこりとして感じられるようになります。しこりを押したときに痛みが出るかどうか、しこりの硬さや大きさ、発症の経緯などが、原因を探るうえで重要な手がかりとなります。

Q. 顎下腺のしこりを押すと痛い原因で最も多い病気は?

顎下腺のしこりを押すと痛い原因として最も多いのは唾石症です。唾液中のカルシウムなどが固まった石(唾石)が導管に詰まり、炎症を引き起こします。唾石症全体の約80〜90%が顎下腺に発生するとされており、食事のたびに腫れと痛みが繰り返されるのが典型的な特徴です。

📌 顎下腺のしこりを押すと痛い主な原因

顎下腺の周辺にしこりができて、押すと痛みを感じる場合、その原因はいくつかのカテゴリーに分けて考えることができます。代表的なものを以下に挙げます。

まず最も頻度が高いのは「唾石症(だせきしょう)」です。唾液の通り道に石(唾石)が詰まることで炎症が起き、しこりと痛みが生じます。次に多いのが「顎下腺炎」で、細菌やウイルスの感染によって顎下腺自体が炎症を起こした状態です。このほか、「顎下腺腫瘍」として良性・悪性の腫瘍が発生することもあります。また、顎下腺そのものではなく、周辺のリンパ節が腫れていることで顎下部にしこりを感じているケースも少なくありません。

それぞれの原因によって、痛みの性質や出るタイミング、しこりの特徴が異なります。「食事をすると痛みが強くなる」「発熱を伴う」「しこりがだんだん大きくなる」など、症状の細かい特徴を把握しておくことが、適切な受診につながります。以降のセクションで、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。

✨ 唾石症(だせきしょう)について詳しく解説

唾石症は、顎下腺のしこりや痛みの原因として最も多い疾患の一つです。唾石(だせき)とは、唾液の中に含まれるカルシウムなどのミネラル成分が固まってできた結石のことで、唾液腺の中や導管(唾液を口腔内に送る管)の中に形成されます。

唾石症が顎下腺に多い理由としては、顎下腺の唾液はほかの唾液腺と比べてカルシウム濃度やムチン(粘性成分)が高く、粘稠度が高いため、石が形成されやすいとされています。また、ワルトン管が口腔底から上方に向かって走行しており、重力に逆らうかたちで唾液が流れるため、唾液の流れが滞りやすく、結石が生じやすい環境といえます。統計的に唾石症の約80〜90%が顎下腺に発生するとされているほどです。

唾石症の典型的な症状は、食事の際に顎下部が腫れ上がって痛みが出て、食後しばらくすると引いていくという繰り返しのパターンです。これは、食事の刺激によって唾液の分泌が促進されると、唾石がある場所で唾液が詰まり、腺が内側から圧迫されるために起こります。この「食事のたびに腫れや痛みが出る」という特徴は唾石症を強く示唆するサインです。

しこりを押した際の痛みは、唾石の位置や大きさによって異なります。導管の入り口付近、つまり口腔底の舌の付け根近くに唾石があれば、顎下部よりも口の中を触ったときに硬い塊として確認できることもあります。一方、腺の中に唾石がある場合は、外から押したときに圧痛(押すと痛い感覚)として感じられます。

唾石症は一時的に改善したように見えても、根本的に石を取り除かない限り再発しやすい疾患です。また、長期間放置すると慢性炎症を繰り返し、顎下腺の機能低下を招くことがあります。さらに、炎症が急性化して蜂窩織炎(ほうかしきえん)という深部組織の感染症に進展することもあるため、早期の診断と治療が重要です。

Q. 顎下腺炎の種類と症状の違いを教えてください

顎下腺炎には細菌性・ウイルス性・慢性の3種類があります。細菌性は発熱や強い圧痛を伴い、重症化すると膿瘍を形成します。ウイルス性(おたふくかぜなど)は両側性に腫れることが多いです。慢性の場合は激しい症状は少なく、顎下部に鈍痛やしこりが続き、押すと軽い痛みを感じるのが特徴です。

🔍 顎下腺炎(がっかせんえん)とその特徴

顎下腺炎とは、顎下腺自体に炎症が起きた状態を指します。炎症の原因には、細菌感染によるものとウイルス感染によるものがあります。

細菌性の顎下腺炎は、口腔内に常在する細菌(黄色ブドウ球菌、連鎖球菌など)が導管を逆行して腺の中に入り込み、感染・炎症を起こすことで発症します。脱水や口腔内の衛生状態の悪化、免疫力の低下などが誘因となることが多く、唾石症に続発するケースもあります。症状としては、顎下部の腫れや発赤、押すと強い痛みがあることに加え、発熱や全身の倦怠感を伴うことが多いです。重症化すると化膿して膿瘍(のうよう)を形成することもあります。

ウイルス性の顎下腺炎の代表例としては、ムンプスウイルスによる流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)があります。おたふくかぜというと耳下腺が腫れるイメージが強いですが、顎下腺や舌下腺も侵されることがあります。ウイルス性の場合は両側性(左右両方)に腫れることが多く、発熱や頭痛を伴うことが一般的です。

慢性顎下腺炎という病態もあります。これは急性炎症を繰り返したり、唾石症などで慢性的な炎症が続いたりすることで、腺の組織が線維化(硬化)していく状態です。慢性の場合は急性期ほど激しい症状は出ないことが多いですが、顎下部に慢性的なしこりや鈍痛として現れ、しこりを押すと軽い痛みを感じることがあります。

また、IgG4関連疾患という免疫系の異常によって顎下腺が硬く腫れる「IgG4関連顎下腺炎(キュットナー腫瘍)」も知られています。この疾患は中高年男性に多く、顎下腺が硬く腫れ、押すと痛みを感じることがあります。ステロイド療法が有効ですが、診断が難しく悪性腫瘍と鑑別が必要なこともあるため、専門的な検査が求められます。

💪 顎下腺腫瘍の可能性

顎下腺にも腫瘍(しゅよう)が発生することがあります。唾液腺腫瘍は比較的まれな病気ですが、顎下腺はその中でも腫瘍が生じやすい部位のひとつとされています。唾液腺腫瘍全体のうち、顎下腺に発生するものは約10〜15%程度と言われています。

顎下腺腫瘍の中で最も多い良性腫瘍は「多形性腺腫(たけいせいせんしゅ)」です。弾力性があってある程度動かせるしこりとして現れることが多く、ゆっくりと成長します。初期段階では押しても痛みがないことが多いですが、大きくなるにつれて圧迫症状が出ることや、まれに悪性化することもあるため、切除が基本的な治療方針となります。

悪性腫瘍(がん)としては「粘表皮癌(ねんひょうひがん)」「腺様嚢胞癌(せんようのうほうがん)」「腺房細胞癌(せんぽうさいぼうがん)」などがあります。悪性腫瘍の場合は、しこりが硬く、周囲の組織に固着して動きにくいことが特徴とされています。押すと痛みが出るケースもありますが、悪性腫瘍は痛みを伴わないことも少なくありません。急速な増大、顔面神経への浸潤による顔面麻痺、皮膚への浸潤による皮膚の変色などが見られる場合は特に注意が必要です。

顎下腺腫瘍を良性・悪性で区別するためには、触診だけでは限界があり、超音波検査・CT・MRI・細胞診などの検査が必要です。「しこりがあるけど痛みはないから大丈夫」と自己判断するのは危険であり、特に数週間以上しこりが続く場合は必ず専門医を受診することが大切です。

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🎯 リンパ節の腫れとの違い

顎下部のしこりがすべて顎下腺に由来するわけではありません。この部位には頸部リンパ節(けいぶリンパせつ)が多数存在しており、リンパ節の腫れが原因でしこりを感じているケースも非常に多くあります。

リンパ節は全身の免疫を担う器官で、細菌やウイルスが体に侵入すると、それに反応して腫れることがあります。顎下部のリンパ節は主に口腔内や咽頭、顔面の感染に反応するため、虫歯、歯周病、扁桃炎、口内炎、風邪などでよく腫れます。この場合のしこりは、炎症が収まると自然に縮小することが多く、押したときの痛みも急性炎症期には強く出ることがあります。

一方で、リンパ節の腫れが長期間持続する場合や、痛みを伴わずにじわじわと大きくなる場合は、悪性リンパ腫(リンパのがん)や、ほかの部位のがんがリンパ節に転移している可能性(転移性リンパ節腫大)も考慮する必要があります。悪性リンパ腫は発熱、寝汗、体重減少などを伴うことがあります。

顎下腺そのものの病変とリンパ節病変を自分で区別するのは難しいですが、一般的な目安として、顎下腺は顎の内側(下顎骨の内側)に触れる比較的大きな塊として感じられ、リンパ節は顎下部の皮下にころっとした小さな球状の塊として感じることが多いです。ただし、これはあくまで目安であり、確定診断には医療機関での検査が必要です。

そのほかにも、皮脂腺が詰まって生じる粉瘤(ふんりゅう)や、脂肪組織が増殖した脂肪腫、先天性の嚢胞(のうほう)などが顎下部にしこりとして触れることもあります。粉瘤や脂肪腫は一般に柔らかく押しても強い痛みはないことが多いですが、粉瘤が感染すると赤く腫れて強い痛みを伴うことがあります。

Q. 顎下腺腫瘍の良性と悪性はどう見分けますか?

顎下腺腫瘍の良性と悪性を自己判断で見分けることは困難です。良性の多形性腺腫は弾力があり動かせることが多い一方、悪性腫瘍は硬くて周囲に固着し動きにくい傾向があります。ただし触診だけでは判断できず、超音波検査・CT・MRI・細胞診などの検査が必要なため、専門医への受診が不可欠です。

💡 受診すべきタイミングと適切な診療科

顎下腺のしこりや押したときの痛みを感じたら、どのタイミングで受診すればよいのでしょうか。以下のような症状や状況が当てはまる場合は、早めの受診をお勧めします。

まず、しこりが2〜3週間以上続いている場合です。短期間で自然に消えるリンパ節の腫れとは異なり、長期間持続するしこりは器質的な病変(唾石、腫瘍など)の可能性を示しています。次に、食事のたびに顎下部が腫れて痛む場合です。これは唾石症の典型的なパターンであり、放置すると炎症が進行するリスクがあります。

高熱、激しい痛み、顎下部の発赤と腫れが急速に広がる場合は急性細菌性顎下腺炎や蜂窩織炎が疑われ、緊急性が高い状態です。この場合は速やかに医療機関を受診してください。また、しこりが急速に大きくなっている、硬くて動かない、皮膚に引きつれや色調変化がある、顔面の感覚が変わった・動きにくくなったなどの場合は悪性腫瘍の可能性があり、迅速な診断が必要です。

受診する診療科としては、耳鼻咽喉科(頭頸部外科)が最初の窓口として適しています。唾液腺の疾患や頸部のしこりは耳鼻咽喉科の専門領域であり、超音波検査や内視鏡検査などを備えた医療機関では初診から詳しい評価を受けることができます。口腔外科でも唾石症や顎下腺の疾患を扱っており、特に唾石症で口腔内からのアプローチが必要な場合は口腔外科との連携が重要です。歯科・口腔外科では口腔内の状況も合わせて評価できるため、歯周病や口腔内感染との関連を調べるうえでも有効です。

「何科に行けばいいかわからない」という場合は、まずかかりつけ医(内科や一般外科)に相談し、適切な専門科を紹介してもらう方法もあります。

📌 診断の流れと主な検査内容

顎下腺のしこりで受診した際には、どのような診断が行われるのでしょうか。一般的な診断の流れを解説します。

まず問診では、しこりがいつから気になっているか、痛みの性質(食事との関連、常時あるか、押したときだけか)、発熱など全身症状の有無、口腔内の状態(虫歯や歯周病の有無)、喫煙歴などが確認されます。これらの情報は鑑別診断を絞るうえで非常に重要です。

次に触診では、しこりの位置、大きさ、硬さ、可動性(動くかどうか)、圧痛の有無、周囲リンパ節の状態などが評価されます。また、口腔内の診察によって、ワルトン管の開口部の状態(発赤・腫脹・膿の流出など)や、口腔底に唾石が触れるかどうかが確認されます。

画像検査としては、超音波検査(エコー)が最初に行われることが多いです。超音波検査は被曝がなく非侵襲的で、唾石の有無、腺の腫れ、腫瘍の有無を確認するのに優れています。唾石は超音波では石灰化した部分が明瞭な「音響陰影」として確認されます。より詳細な評価が必要な場合や、腫瘍が疑われる場合にはCT検査やMRI検査が行われます。CTは骨や石灰化した唾石の評価に優れており、MRIは軟部組織のコントラストが高く、腫瘍の性状評価に有用です。

腫瘍が疑われる場合には、細胞診や生検が行われることがあります。細胞診とは、細い針でしこりに刺して細胞を採取し、顕微鏡で検査する方法です(穿刺吸引細胞診:FNAC)。この検査によって良性・悪性の鑑別がある程度可能になります。さらに確実な組織診断が必要な場合は、組織の一部を採取する生検(生体検査)が行われます。

血液検査では、炎症の程度を示すCRP値や白血球数、また感染症の有無(ウイルス抗体検査など)、IgG4関連疾患が疑われる場合はIgG4の血清濃度などが調べられます。

Q. 顎下腺のしこりに対して日常でできるケアは?

顎下腺のしこりに対する日常的なセルフケアとして、こまめな水分補給で唾液の流れを促すこと、梅干しやガムで唾液分泌を促進すること、丁寧な歯磨きで口腔内を清潔に保つことが有効です。ただし、しこりを強く押したり自分でつぶそうとすることは炎症を悪化させるため厳禁で、医師の診断が最優先です。

✨ 治療法の概要

顎下腺のしこりや痛みの治療は、原因によって大きく異なります。代表的な原因ごとの治療方針を解説します。

唾石症の治療については、唾石の大きさや位置によって治療法が選択されます。小さな唾石(数mm程度)で導管の入り口近くにある場合は、口腔内から外科的に切開して唾石を摘出する方法が比較的簡便で有効です。この処置は局所麻酔下で行われることが多く、日帰りや短期間の入院で対応できます。唾石が大きい場合や腺の中深くにある場合は、腺ごと摘出する「顎下腺摘出術」が必要になることがあります。近年では、体外から衝撃波を当てて唾石を砕く「体外衝撃波砕石術(ESWL)」や、細い内視鏡をワルトン管の中に挿入して唾石を摘出する「唾液腺内視鏡(シアロスコピー)」も行われるようになっており、腺を温存できる低侵襲な治療として注目されています。

急性顎下腺炎の治療では、細菌感染が原因の場合は抗菌薬(抗生物質)の投与が基本となります。軽症であれば内服薬で対応できますが、重症化して膿瘍を形成した場合は切開排膿(ドレナージ)や入院での点滴治療が必要となることがあります。ウイルス性の場合は根本的な抗ウイルス薬が限られるため、対症療法(鎮痛・消炎薬など)が中心となります。

IgG4関連顎下腺炎はステロイド(副腎皮質ホルモン)による治療が有効で、多くの場合ステロイドの内服で腺の腫れが劇的に改善します。ただし、維持療法として長期的にステロイドを使用する場合もあり、定期的な経過観察が必要です。

良性腫瘍(多形性腺腫など)の治療は外科的切除が原則です。良性とはいえ放置すると大きくなり、まれに悪性化するリスクがあるため、診断がついた段階で切除が推奨されます。手術は腺とともに腫瘍を摘出する顎下腺摘出術が一般的で、全身麻酔下で行われます。

悪性腫瘍の場合は、外科的切除が基本となり、リンパ節への転移がある場合は頸部郭清術(首のリンパ節を含む組織を切除する手術)が追加されます。腫瘍の種類や進行度に応じて、術後に放射線療法や化学療法が組み合わされることもあります。早期発見・早期治療が予後に大きく影響するため、悪性腫瘍を疑う症状がある場合は速やかな診断と治療開始が大切です。

🔍 日常生活でできるセルフケア

顎下腺のしこりや痛みに対して、医療機関での治療と並行して、または受診前に日常生活で心がけられることもいくつかあります。ただし、これらはあくまで補助的なものであり、医師の診断と治療を代替するものではないことをご理解ください。

まず、水分を十分に摂取することは唾液の流れを促進するうえで大切です。唾石症では唾液の停滞が石の形成を促すため、日常的に水をこまめに飲む習慣をつけることが予防や再発防止に役立つとされています。コーヒーやアルコールは利尿作用により脱水を招きやすいため、水やお茶を中心に水分補給するとよいでしょう。

唾液の分泌を促すことも効果的です。梅干しやレモンなど酸味のある食品、ガムを噛むことなどは唾液の分泌を増やし、唾液腺の機能を保つ助けになります。唾石症で導管の出口近くに石がある場合は、唾液を多く分泌させることで石が押し出されることも報告されています(ただし、これは医師の指導のもとで行うことが望ましい)。

口腔内の清潔を保つことも重要です。歯磨きやうがいを丁寧に行い、口腔内の細菌数を減らすことで、細菌性の顎下腺炎の予防に役立ちます。虫歯や歯周病がある場合はそれらの治療を行うことも、顎下腺炎の誘因を取り除くうえで大切です。

急性炎症があって腫れや痛みが強い場合は、患部を冷やすことで一時的に楽になることがあります。ただし、長時間の冷却は血行を阻害することがあるため、適切な範囲で行ってください。市販の消炎鎮痛薬(イブプロフェンやアセトアミノフェンなど)も一時的な痛みの緩和に使用できますが、症状の根本的な解決にはならないため、早めの受診が必要です。

なお、しこりを強く押したり、自分でつぶそうとしたりすることは禁物です。炎症を悪化させたり、感染が広がったりするリスクがあります。しこりが気になっても、自己処置は避けて医療機関を受診するようにしてください。

喫煙者の方は禁煙を検討することも大切です。喫煙は唾液腺の機能に悪影響を与え、口腔内の乾燥を招くほか、唾液腺腫瘍のリスクを高める可能性があることが指摘されています。口腔内の健康全般のためにも、禁煙は有益です。

定期的な歯科検診や口腔ケアを受けることで、顎下腺周囲のトラブルの早期発見にもつながります。顎下部に何か気になる症状を感じたときは、かかりつけの歯科医師に相談することも一つの選択肢です。

👨‍⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】

高桑康太 医師(当院治療責任者)より

「顎下部のしこりを主訴にご来院される患者様の中で、唾石症や顎下腺炎が原因であるケースが多く見られますが、「食事のたびに腫れて痛む」という特徴的な症状があるにもかかわらず、長期間様子を見てしまってからご受診される方が少なくありません。最近の傾向として、超音波検査を早期に行うことで唾石の位置や腺の状態を迅速に把握でき、より低侵襲な治療方針を選択できるケースも増えています。

💪 よくある質問

顎下腺のしこりを押すと痛い原因で最も多いのは何ですか?

最も多い原因は「唾石症」です。唾液の通り道に石(唾石)が詰まることで炎症が起き、しこりと痛みが生じます。特に「食事のたびに顎下部が腫れて痛み、食後しばらくすると引く」というパターンが唾石症の典型的なサインです。統計的に唾石症の約80〜90%が顎下腺に発生するとされています。

顎下腺のしこりは何科を受診すればよいですか?

最初の窓口として「耳鼻咽喉科(頭頸部外科)」が適しています。唾液腺の疾患や頸部のしこりは耳鼻咽喉科の専門領域です。唾石症で口腔内からのアプローチが必要な場合は「口腔外科」も対応しています。「何科かわからない」場合はかかりつけ医に相談し、専門科を紹介してもらう方法もあります。

顎下腺のしこりはどのタイミングで受診すべきですか?

以下の場合は早めの受診をお勧めします。①しこりが2〜3週間以上続いている、②食事のたびに腫れと痛みが繰り返される、③高熱・激しい痛み・急速な腫れがある(緊急性あり)、④しこりが硬くて動かない・急速に大きくなる場合は悪性腫瘍の可能性もあるため、迅速な診断が必要です。

顎下腺のしこりが腫瘍だった場合、良性と悪性の見分け方はありますか?

自己判断での見分けは困難です。一般的に良性腫瘍は弾力があって動かせることが多く、悪性腫瘍は硬くて周囲に固着し動きにくい傾向があります。ただし触診だけでは判断できず、超音波検査・CT・MRI・細胞診などの検査が必要です。「痛みがないから大丈夫」と自己判断するのは危険で、専門医への受診が不可欠です。

顎下腺のしこりを悪化させないために日常生活でできることはありますか?

いくつかのセルフケアが補助的に有効です。①こまめな水分補給で唾液の流れを促進する、②梅干しやガムで唾液分泌を促す、③丁寧な歯磨き・うがいで口腔内を清潔に保つ、④喫煙者は禁煙を検討する、などが挙げられます。ただししこりを強く押したり自分でつぶそうとしたりすることは炎症悪化につながるため厳禁です。

🎯 まとめ

顎下腺のしこりを押すと痛みが出る場合、その原因として最も多いのは唾石症ですが、ほかにも顎下腺炎、顎下腺腫瘍(良性・悪性)、リンパ節の腫れなどさまざまな可能性が考えられます。それぞれの疾患によって症状の特徴が異なるため、「食事のたびに腫れと痛みが出る」「しこりが数週間以上続いている」「発熱を伴う」「しこりが硬くて動かない」などの状況に応じて、適切なタイミングで受診することが重要です。

顎下腺の疾患は専門性が高く、超音波検査やCT・MRI、細胞診などの検査を組み合わせて正確な診断を行う必要があります。耳鼻咽喉科(頭頸部外科)や口腔外科での受診をお勧めします。早期に診断を受けることで、より侵襲の少ない治療の選択肢が広がることもあります。「なんとなく気になるけど大丈夫だろう」と自己判断して放置せず、気になる症状があれば早めに専門医に相談されることを強くお勧めします。

📚 関連記事

📚 参考文献

  • 厚生労働省 – 顎下腺腫瘍(悪性腫瘍)の早期発見・治療方針や、頭頸部がんに関する医療情報の参照元として活用。悪性腫瘍の診断・治療の概要説明に対応。
  • 国立感染症研究所 – ウイルス性顎下腺炎の代表例であるムンプスウイルス(流行性耳下腺炎・おたふくかぜ)に関する感染症情報の参照元として活用。顎下腺炎の原因・症状説明に対応。
  • PubMed – 唾石症(Sialolithiasis)および顎下腺腫瘍・顎下腺炎に関する国際的な医学論文・エビデンスの参照元として活用。唾石の発生メカニズム、治療法(シアロスコピー・ESWLなど)の根拠情報に対応。

監修者医師

高桑 康太 医師

保有資格

ミラドライ認定医

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任
  • 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
  • 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
  • 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
  • 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報

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佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務

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