
わきの下や股の付け根、お尻など、皮膚が擦れやすい部位に繰り返しできる痛みを伴うしこりや膿。「放っておけばそのうち治るだろう」と思いながら、何度も再発を繰り返している方は少なくありません。この症状は化膿性汗腺炎(かのうせいかんせんえん)と呼ばれる慢性の皮膚疾患である可能性があります。化膿性汗腺炎は自然治癒するのかどうか、また適切な治療を受けないとどうなるのかについて、症状の特徴や原因、診断方法、治療法まで詳しく解説します。
目次
- 化膿性汗腺炎とはどのような病気か
- 化膿性汗腺炎の主な症状と進行の特徴
- 化膿性汗腺炎の原因とリスク因子
- 化膿性汗腺炎は自然治癒するのか
- 放置するとどうなる?進行した場合のリスク
- 化膿性汗腺炎の診断方法
- 化膿性汗腺炎の治療法
- 日常生活で気をつけたいこと
- まとめ
😰「また再発した。もう何度目だろう…」
😨「放っておいたら悪化するの?手術が必要になるの?」
- ⚡ 放置すると瘻孔(ろうこう)が形成され手術が必要になるリスクが上昇
- ⚡ 繰り返す再発で皮膚に深刻なダメージ・瘢痕(傷跡)が残る
- ⚡ 自己判断での市販薬対処では根本的な改善は見込めない
この記事のポイント
化膿性汗腺炎は毛包閉塞と免疫異常による慢性炎症性皮膚疾患で、自然治癒は困難。放置すると瘻孔形成・重症化のリスクがあり、抗生物質・生物学的製剤・外科的治療を組み合わせた早期治療が不可欠。
💡 化膿性汗腺炎とはどのような病気か
化膿性汗腺炎は、毛穴(毛包)が詰まることで起こる慢性炎症性の皮膚疾患です。毛包性の閉塞が起点となり、その周囲に炎症が広がり、膿のたまったしこりや瘻孔(ろうこう)と呼ばれるトンネル状の病変を形成することが特徴です。かつては「汗腺の炎症」と考えられていましたが、現在の医学的理解では毛包の閉塞が主な原因とされており、アポクリン腺(汗腺の一種)が直接の発症源ではないことがわかっています。
この疾患は一般的にあまり知られていないため、「ニキビが悪化したもの」「ただの粉瘤(ふんりゅう)」と自己判断してしまう方も多くいます。しかし化膿性汗腺炎はニキビや粉瘤とは異なり、繰り返す再発と慢性化が特徴です。痛みや不快感が強く、日常生活や精神的な健康にも大きな影響を与える疾患です。
発症しやすい部位としては、わきの下(腋窩)、鼠径部(そけいぶ、股の付け根)、会陰部(えいんぶ)、お尻、乳房の下などが挙げられます。これらは皮膚と皮膚が擦れ合う部位、あるいは毛包が多く集まりアポクリン腺が多い部位と一致しています。
有病率については諸説ありますが、一般人口の約1〜4%に発症するとされており、決して稀な疾患ではありません。特に思春期以降から30〜40代にかけての発症が多く、女性に多く見られますが、男性でも発症します。男性の場合は比較的重症化しやすい傾向があると報告されています。
Q. 化膿性汗腺炎は自然治癒しますか?
化膿性汗腺炎は自然治癒が非常に難しい慢性疾患です。膿が排出されて一時的に病変が小さくなることはありますが、毛包の詰まりやすさや免疫系の過剰反応という根本原因は解決されないため、ほぼ必ず再発します。放置するほど瘻孔形成など重症化リスクが高まるため、早期受診が重要です。
📌 化膿性汗腺炎の主な症状と進行の特徴
化膿性汗腺炎の症状は段階的に進行していくことが多く、国際的な分類としてハーリー分類(Hurley Staging)が広く用いられています。病気の進行度を把握することは、適切な治療方針を決める上でとても重要です。
初期の段階(ハーリーステージI)では、皮膚の深いところに痛みを伴う硬いしこりが形成されます。表面が赤くなって腫れ上がり、膿が自然に破れて出てくることがあります。この段階では皮膚の下にトンネル(瘻孔)は形成されておらず、瘢痕(はんこん、傷跡)も残りにくいため、一見すると「ニキビが悪化した」ように見えることがあります。しかし同じ場所や近い場所に何度も繰り返すのが特徴で、これが化膿性汗腺炎をニキビと区別する重要なポイントです。
中等度の段階(ハーリーステージII)では、炎症が繰り返されることで皮膚の下にトンネル(瘻孔・サイナストラクト)が形成されるようになります。瘻孔からは膿や血液が持続的に滲み出ることがあり、においを伴うこともあります。複数の病変が同じ部位に存在するようになりますが、病変同士はまだ完全には繋がっていません。
重症の段階(ハーリーステージIII)になると、皮膚の広い範囲にわたって瘻孔が複雑に連結し、慢性的に膿が排出され続けます。この段階では皮膚組織の破壊が進み、大きな瘢痕が残ります。痛みも常態化し、歩く、腕を動かすといった日常的な動作にも支障が出ることがあります。
症状の特徴として、生理周期や季節の変化、ストレス、体重増加などのタイミングで悪化することが知られています。また、一つの病変が落ち着いたとしても、近隣の部位や別の部位で新たな病変が発生するため、「完全に治った」と感じる機会がほとんどないという点も、この疾患の辛さの一つです。
✨ 化膿性汗腺炎の原因とリスク因子
化膿性汗腺炎の正確な発症メカニズムはまだ完全には解明されていませんが、現在の研究では毛包の閉塞と免疫系の異常が深く関わっていると考えられています。
まず毛包の観点から見ると、毛穴が角質などで詰まることで毛包に内圧がかかり、破裂します。破裂した毛包の内容物(ケラチンや皮脂など)が周囲の組織に漏れ出ると、異物として免疫系が反応し、強い炎症を引き起こします。この炎症が慢性化・繰り返すことで、やがて瘻孔や瘢痕の形成につながっていきます。
また、免疫系の関与については、炎症性サイトカインと呼ばれる物質(特にTNF-αやIL-1β、IL-17など)が過剰に産生されることが関係しているとされています。このため化膿性汗腺炎は、クローン病や関節炎などと同様に、「炎症性疾患」の一つとして位置づけられています。
遺伝的な要因も関係しており、家族内での発症が見られるケースが全体の約30〜40%に及ぶとされています。特定の遺伝子変異がリスクを高めるとの報告もあります。
発症や悪化に関連するリスク因子としては、以下のものが挙げられます。
肥満・過体重は最も重要なリスク因子の一つです。体重が増えることで皮膚と皮膚が擦れ合う部位が増え、物理的な刺激が毛包閉塞を促進します。また脂肪組織からも炎症を引き起こす物質が分泌されます。喫煙も発症率・重症度と強く関連しており、喫煙者では非喫煙者と比べて発症リスクが高く、症状も重くなる傾向があります。ニコチンが毛包に与える影響や免疫系への作用が関係しているとされています。
ホルモンの変化も影響しており、特に女性では生理前に症状が悪化することが多く見られます。これはアンドロゲン(男性ホルモン)の変動が皮脂分泌に影響することが一因とされています。そのほか、機械的な摩擦(きつい衣服やハーネス型のバッグなど)や発汗、細菌による二次感染なども症状の悪化につながります。
Q. 化膿性汗腺炎の症状はどのように進行しますか?
化膿性汗腺炎はハーリー分類で3段階に分けられます。初期(ステージI)は痛みを伴う硬いしこり、中等度(ステージII)は皮膚下に瘻孔が形成されて膿が滲み出る状態、重症(ステージIII)は瘻孔が広範囲に連結し慢性的に膿が排出され、日常動作にも支障が生じる状態です。
🔍 化膿性汗腺炎は自然治癒するのか
「放っておけば自然に治るのではないか」と考える方は多いですが、化膿性汗腺炎については、残念ながら自然治癒は非常に難しい疾患です。
個々の病変(しこりや膿)については、膿が排出されて一時的に小さくなることがあります。このとき「治った」と感じる方もいますが、根本的な問題(毛包の詰まりやすさ、免疫系の過剰反応など)は解決されていないため、ほぼ必ず同じ場所や近くに再発します。これが化膿性汗腺炎の本質的な特徴です。
また、治療を受けずに経過を見ていると、炎症が繰り返されるたびに皮膚の奥深くに瘻孔が形成され、やがて複数の瘻孔が連結して広範な病変へと進行していきます。初期(ハーリーI)であれば比較的少ない治療で管理できる場合が多いですが、中等度から重症(ハーリーII〜III)に進行した段階では治療の難易度が大幅に上がり、手術が必要になることもあります。
一方で、まれに若年女性において閉経後に症状が自然と軽快するケースが報告されています。これはホルモンバランスの変化が関係していると考えられますが、閉経まで長年にわたって症状を放置することは現実的ではなく、その間に病変が大きく進行してしまうリスクを考えれば、やはり早期の受診と治療開始が重要です。
また、生活習慣の改善(禁煙・減量など)が症状の改善に影響を与えることは研究でも示されています。特に禁煙は症状の軽快に関連するとの報告があります。しかし生活習慣の改善だけで完全に症状をコントロールできることは少なく、医療機関での治療と組み合わせることが推奨されています。
総合すると、化膿性汗腺炎は「待っていれば自然に治る病気」ではなく、「適切な治療と生活習慣の管理によってコントロールしていく病気」です。早期発見・早期治療が、長期的なQOL(生活の質)を守るうえで最も大切な選択肢となります。

💪 放置するとどうなる?進行した場合のリスク
化膿性汗腺炎を放置してしまった場合、どのような問題が起こりうるのかを知っておくことは、受診を決断する上でとても重要です。
まず最も懸念されるのは病変の進行と瘢痕の形成です。炎症が繰り返されることで皮膚の深部に瘻孔が形成され、それが広がっていきます。進行した病変は皮膚の構造を大きく変えてしまうため、仮に治療が成功しても完全に元の状態に戻すことは難しく、大きな瘢痕が残る可能性があります。
次に、リンパ浮腫のリスクがあります。病変がリンパ管の近くに及ぶと、リンパの流れが障害されてリンパ浮腫(むくみ)が生じることがあります。特に鼠径部や腋窩に広範な病変がある場合に起こりやすく、一度リンパ浮腫が生じると治療が難しい場合があります。
皮膚がんとの関連も報告されています。長期にわたって慢性的な炎症が続く瘻孔部位では、稀ではありますが扁平上皮がんが発生することが知られています。これは「マルジョランの潰瘍」とも呼ばれ、特に長年放置された重症例での発生が報告されています。
精神的な健康への影響も見逃せません。化膿性汗腺炎は慢性的な痛みや膿の排出、においなどを伴うため、患者さんの精神的な負担は非常に大きいものです。うつ病や不安障害の合併率が一般人口と比べて高いとされており、社会的な孤立や自己評価の低下につながるケースも報告されています。
日常生活への支障も深刻です。わきの下や鼠径部に大きな病変があると、腕を上げる・歩くといった基本的な動作が痛みで困難になります。仕事や学業、人間関係にも影響が及び、QOLを著しく低下させます。
さらに、化膿性汗腺炎は単独で存在するだけでなく、他の疾患との合併が報告されています。クローン病(炎症性腸疾患)、化膿性関節炎、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)などとの合併が知られており、「PAPA症候群」「PASH症候群」といった複合的な炎症性疾患の一部として現れることもあります。
Q. 化膿性汗腺炎の主な治療法を教えてください。
化膿性汗腺炎の治療は重症度に応じて選択されます。軽度から中等度には抗生物質やホルモン療法などの薬物療法が用いられます。中等度から重症には、アダリムマブやセクキヌマブといった生物学的製剤(保険適用あり)が有効です。瘻孔が形成された場合は広範切除などの外科的治療が必要になることもあります。
🎯 化膿性汗腺炎の診断方法
化膿性汗腺炎の診断は、主に患者の症状の経過と皮膚の視診・触診によって行われます。血液検査や画像検査が診断の決め手になるわけではなく、臨床診断(症状と経過から判断する診断)が基本となっています。
国際的に広く使われている診断基準では、以下の3つの要素がそろっていることが重要とされています。まず典型的な病変(深在性の有痛性しこり、膿瘍、瘻孔、瘢痕)が存在すること。次に典型的な部位(わきの下、鼠径部、会陰部、お尻、乳房の下など)に存在すること。そして再発・慢性的な経過(2回以上の再発)があることです。この3つの条件を満たす場合、化膿性汗腺炎と診断されます。
ただし、実際の診療では他の疾患との鑑別(見分け)が必要なケースもあります。例えば粉瘤は皮膚の下に袋状の構造物ができる疾患で、外見が似ていることがありますが、再発のパターンや病変の特徴が異なります。毛嚢炎(もうのうえん)は毛包に細菌が感染したもので、通常は抗生物質で治療できますが、化膿性汗腺炎は単純な感染症ではないため同じ治療では効果が不十分です。クローン病に伴う皮膚病変も、特に会陰部の病変では鑑別が必要なことがあります。
補助的な検査として、皮膚超音波検査(エコー)が近年注目されています。超音波検査によって皮膚の深部にある瘻孔の広がりや炎症の程度を視覚的に確認できるため、病変の全体像を把握し、治療方針を決める際に役立ちます。また感染の程度を評価するために血液検査(CRP、白血球数など)が行われることもあります。
化膿性汗腺炎は診断されるまでに平均7〜10年かかるとも言われています。これは患者さんが「ニキビ」「おできの繰り返し」と自己判断して受診が遅れること、また医療者側でも知名度が低く見逃されることが背景にあります。もし繰り返す有痛性のしこりに悩んでいる方は、皮膚科または形成外科を早めに受診することをお勧めします。
💡 化膿性汗腺炎の治療法
化膿性汗腺炎の治療は、病気の重症度(ハーリーステージ)や患者さんの生活状況に応じて選択されます。現時点では完治(根治)させる治療法はなく、症状をコントロールして再発を防ぎ、QOLを向上させることが治療の目標となります。
✅ 薬物療法
軽度から中等度の場合に最初に試みられるのが薬物療法です。
抗生物質は化膿性汗腺炎の治療においてよく使用される薬です。ただしこれは細菌感染を直接治療するというより、抗炎症作用を目的として使われることが多いです。テトラサイクリン系(ドキシサイクリンなど)が単剤で、またはクリンダマイシンとリファンピシンの併用療法として用いられることがあります。ただし長期使用による耐性菌の問題があるため、無期限に継続するわけではありません。
局所外用薬として、クリンダマイシンのゲルやローションが炎症の軽いものや補助的な治療として使われることがあります。
ホルモン療法は、特に女性で生理周期に合わせて症状が悪化する場合に有効なことがあります。低用量ピルやスピロノラクトン(抗アンドロゲン作用を持つ薬)が用いられることがあります。
生物学的製剤(バイオ製剤)は、中等度から重症の化膿性汗腺炎に対して近年注目されている治療法です。アダリムマブ(抗TNF-α抗体製剤、日本でも化膿性汗腺炎への適応を取得)は、重症化膿性汗腺炎に対して保険適用で使用できる薬剤です。炎症を引き起こすTNF-αというタンパク質を阻害することで、皮膚の炎症を強力に抑えます。定期的な皮下注射として投与されます。また近年では、IL-17Aを阻害するセクキヌマブも適応が認められており、治療の選択肢が広がっています。
レチノイド(ビタミンA誘導体)も使用されることがあります。アシトレチンなどが用いられますが、妊娠中には使用できないなど制約があります。
📝 外科的治療
薬物療法が効果不十分な場合や、瘻孔が形成されて慢性的に膿が排出されている場合には外科的治療が検討されます。
切開排膿は、急性に膿がたまった状態を緩和するための処置です。膿を切開して排出させることで痛みを和らげますが、これはあくまで一時的な対症療法であり、再発を防ぐことはできません。
根治的な外科手術は、瘻孔が形成された部位や病変が及ぶ皮膚を広範に切除する方法です。病変全体を十分なマージン(余白)を持って切除することで再発率を下げることができます。切除後は縫合、または皮膚移植が必要なこともあります。重症例では複数回の手術が必要になる場合もあります。
デロオフィング(Deroofing)と呼ばれる術式も行われることがあります。これは瘻孔の屋根部分のみを除去し、底の部分を残す比較的低侵襲な方法です。傷の縮小と再発抑制の両立を狙った方法で、特に局限した病変に有効とされています。
🔸 レーザー治療
炭酸ガスレーザーやNd:YAGレーザーなどのレーザーを用いた治療も化膿性汗腺炎に応用されています。毛包の破壊を目的として使用されることがあり、脱毛効果によって症状の改善が期待できます。ただしエビデンス(科学的根拠)はまだ十分とは言えず、症例によって効果にばらつきがあります。
⚡ 治療の選択について

治療は一つの方法だけでなく、薬物療法と外科的治療を組み合わせた集学的なアプローチが必要なことも多いです。また治療の反応には個人差があるため、専門の皮膚科・形成外科医と相談しながら患者さん一人ひとりに合った治療計画を立てることが重要です。自己判断で市販薬を使い続けるのではなく、早めに専門医を受診することが大切です。
Q. 化膿性汗腺炎を悪化させないための生活習慣は?
化膿性汗腺炎の悪化予防には禁煙と体重管理が特に重要です。喫煙は発症リスクや重症度と強く関連し、肥満は皮膚の摩擦を増やして症状を悪化させます。加えて、ゆったりした綿素材の衣服を選ぶ、汗をこまめに拭き取る、カミソリでの自己処理を避けるといったケアも症状の管理に有効です。
📌 日常生活で気をつけたいこと
化膿性汗腺炎の症状を悪化させないために、日常生活での工夫も大切です。医療機関での治療と並行して、以下の点に気をつけることが症状の管理に役立ちます。
禁煙は化膿性汗腺炎の管理において最も重要な生活習慣の改善の一つです。研究データでも、喫煙は化膿性汗腺炎の発症リスクや重症度と強く関連していることが示されています。禁煙することで症状が軽快するケースも報告されており、医療機関での治療と合わせて禁煙外来を利用することも検討してみてください。
体重管理も重要です。肥満は化膿性汗腺炎のリスク因子であり、体重を適正範囲に近づけることで皮膚の摩擦が減り、症状が改善することがあります。急激なダイエットではなく、医師や管理栄養士の指導のもとで無理のない範囲で取り組みましょう。
衣服の選択にも気を配ることが大切です。きつい衣服や摩擦の強い素材は皮膚への刺激となるため、ゆったりとした綿素材の通気性のよい衣服を選ぶとよいでしょう。特に病変のある部位にはなるべく摩擦が当たらないようにしましょう。
発汗対策も有効です。汗が多いと皮膚の蒸れや摩擦が起こりやすくなります。通気性のよい衣類を着用し、汗をかいたらこまめに拭き取るなどして清潔を保つようにしましょう。ただし強くこすることは皮膚への刺激になるため、やさしくおさえるようにします。
脱毛処理の方法にも注意が必要です。カミソリによる自己処理は皮膚に細かな傷をつけ、毛包を刺激するため避けた方が望ましいとされています。医療機関での光脱毛(レーザー脱毛)の方が、毛包への刺激が少ないため推奨される場合があります。ただし脱毛の可否については主治医に相談してください。
食事については、一部の研究でグリセミック指数の高い食品(白米、白パン、甘いお菓子など)や乳製品が化膿性汗腺炎の悪化に関連するという報告があります。ただしこれらの関連についてはまだ研究段階であり、確立したエビデンスとは言えません。バランスのよい食事を心がけることが基本です。
精神的なサポートも欠かせません。化膿性汗腺炎は慢性的な痛みやにおい、外見の変化などから精神的な負担が大きい疾患です。信頼できる医療者に症状だけでなく精神的な辛さも相談し、必要であれば心療内科やカウンセリングを利用することも選択肢の一つです。同じ疾患を持つ患者のコミュニティや支援団体も国内外に存在しており、情報共有や精神的なサポートを得られることがあります。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、「ニキビや粉瘤を繰り返しているだけだろう」と長年放置された後に受診される患者さんが少なくなく、診断までに数年以上かかっているケースも珍しくありません。化膿性汗腺炎は自然治癒を期待して待つほど病変が深部へと進行し、治療の選択肢が限られてしまうため、繰り返す有痛性のしこりに心当たりのある方にはできるだけ早めのご受診をお勧めしています。薬物療法から外科的治療まで、お一人おひとりの病態や生活スタイルに合わせた治療計画をご提案できますので、一人で抱え込まずにまずはご相談ください。」
✨ よくある質問
残念ながら、自然治癒は非常に難しい疾患です。個々の病変が一時的に小さくなることはありますが、根本的な原因は解決されないため、ほぼ必ず再発します。放置すると皮膚の深部に瘻孔が形成され、重症化するリスクがあるため、早めに皮膚科や形成外科を受診することが重要です。
化膿性汗腺炎は、同じ部位や近くに繰り返し再発する慢性的な経過が最大の特徴です。ニキビや粉瘤と外見が似ることがありますが、皮膚の深部に瘻孔(トンネル状の病変)を形成し、慢性化する点が異なります。自己判断せず、専門医による正確な診断を受けることが大切です。
禁煙と体重管理が特に重要です。喫煙は発症リスクや重症度と強く関連しており、肥満は皮膚の摩擦を増やして症状を悪化させます。また、ゆったりした綿素材の衣服を選ぶ、汗をこまめに拭き取る、カミソリによる自己処理を避けるといった日常的なケアも症状の管理に役立ちます。
重症度に応じて治療法が選択されます。軽度〜中等度には抗生物質やホルモン療法などの薬物療法が用いられます。中等度〜重症には、アダリムマブやセクキヌマブといった生物学的製剤(保険適用あり)が有効です。瘻孔が形成された場合は外科的切除が必要になることもあります。
診断は主に症状の経過と視診・触診による臨床診断が基本です。典型的な部位に有痛性のしこりや瘻孔が2回以上再発している場合に診断されます。皮膚科または形成外科への受診が適切です。当院でも慢性的な皮膚疾患について丁寧に診察・ご相談をお受けしていますので、お気軽にご相談ください。
🔍 まとめ
化膿性汗腺炎は、毛包の閉塞と免疫系の過剰反応を起点とする慢性炎症性皮膚疾患です。わきの下や鼠径部などに繰り返す痛みを伴うしこりや膿が特徴であり、放置することで徐々に重症化していく疾患です。
「自然治癒するのでは」という期待については、残念ながら現在の医学的知見では否定的です。個々の病変が一時的に小さくなることはあっても、根本的な治癒にはつながらず、ほぼ必ず再発します。放置すると瘻孔の形成・拡大、瘢痕、まれには皮膚がんのリスクまで生じることがあります。
一方で、早期に適切な治療を開始することで症状をコントロールし、日常生活への影響を最小限に抑えることは十分可能です。抗生物質や生物学的製剤による薬物療法、必要に応じた外科的治療、そして禁煙・体重管理などの生活習慣の改善を組み合わせたアプローチが効果的です。
もし繰り返すしこりや膿に悩んでいる方は、「どうせまたおできができた」と諦めずに、ぜひ早めに皮膚科または形成外科を受診してください。適切な診断と治療が、長期的なQOLを守るための大切な第一歩となります。アイシークリニック新宿院では、このような慢性的な皮膚疾患についても丁寧に診察・ご相談をお受けしています。一人で抱え込まずに、まずはご相談ください。
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📚 参考文献
- 日本皮膚科学会 – 化膿性汗腺炎の診断基準・ハーリー分類・治療指針(抗生物質・生物学的製剤・外科的治療)に関する皮膚科領域の診療ガイドライン
- 日本形成外科学会 – 化膿性汗腺炎における外科的治療(広範切除・デロオフィング・皮膚移植)および瘻孔形成例への形成外科的アプローチに関する情報
- PubMed – 化膿性汗腺炎の有病率・病態(毛包閉塞・炎症性サイトカインTNF-α・IL-17)・リスク因子(喫煙・肥満)・生物学的製剤(アダリムマブ・セクキヌマブ)の有効性に関する国際的な査読済み臨床研究・システマティックレビュー
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
