
「乾癬は完治するのだろうか」「完治した人は実際にいるのか」——乾癬と診断された方や、長年症状に悩んでいる方なら、一度はこのような疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。乾癬は慢性的な皮膚疾患であり、その性質や治療の難しさから「一生付き合っていくしかない病気」と言われることもあります。しかし、医療の進歩により治療の選択肢は大きく広がり、症状をコントロールして日常生活に支障なく過ごせている方も増えています。本記事では、乾癬の完治に関する医学的な見解をはじめ、症状改善のために知っておきたい情報をわかりやすくお伝えします。
目次
- 乾癬とはどんな病気か
- 乾癬は完治するのか?医学的な見解
- 乾癬が「完治した」と感じるケースとは
- 乾癬の症状が改善しやすい人・しにくい人の違い
- 乾癬の主な治療法
- 生活習慣の改善が乾癬に与える影響
- 乾癬と上手に向き合うための心構え
- まとめ
この記事のポイント
乾癬は現時点で根治困難な慢性疾患だが、生物学的製剤など治療の進歩により長期寛解の維持は十分可能。生活習慣の改善と継続的な治療の組み合わせが症状コントロールの鍵となる。
🎯 乾癬とはどんな病気か
乾癬(かんせん)は、皮膚の細胞が過剰に増殖することで、赤みを帯びた盛り上がり(紅斑)やその表面に白っぽい鱗屑(りんせつ)が付着するという特徴的な症状を引き起こす慢性の炎症性皮膚疾患です。日本における患者数はおよそ43万人と推定されており、決して珍しい疾患ではありません。
健康な皮膚では、表皮の細胞は約28日かけてターンオーバー(新陳代謝)を繰り返します。しかし乾癬の状態では、このサイクルが4〜7日程度に短縮されるため、未熟な皮膚細胞が急速に蓄積してしまいます。その結果、厚みのある鱗屑が皮膚表面に積み重なり、剥がれ落ちるという症状が現れます。
乾癬はその病態によっていくつかの種類に分類されます。最も多いのが「尋常性乾癬」で、全体の約90%を占めるとされています。その他にも、膿疱(のうほう)が生じる「膿疱性乾癬」、関節に炎症が起こる「乾癬性関節炎」、全身の皮膚が真っ赤になる「乾癬性紅皮症」などがあります。
乾癬の根本的な原因は完全には解明されていませんが、現在は免疫系の異常が深く関与していると考えられています。具体的には、T細胞(Tリンパ球)と呼ばれる免疫細胞が過剰に活性化し、インターロイキン(IL)や腫瘍壊死因子(TNF-α)などのサイトカインという物質を大量に放出することで、炎症が引き起こされます。また、遺伝的な素因も関係していることが明らかになっており、家族に乾癬の患者がいる場合は発症リスクが高まるとされています。
乾癬の症状を悪化させる要因としては、ストレス、感染症(特に扁桃炎などの上気道感染)、特定の薬剤(リチウム、βブロッカー、NSAIDsなど)、過度の飲酒、皮膚への外的刺激(擦り傷や日焼けなど)が挙げられます。これらの「悪化因子」を避けることが、症状の管理において非常に重要です。
Q. 乾癬は医学的に完治できる病気ですか?
現在の医学では、乾癬を根本から完全に治す方法は確立されていません。乾癬は糖尿病や高血圧と同様の慢性疾患であり、治療目標は「完治」ではなく「寛解の維持とQOL(生活の質)の向上」に置かれています。適切な治療により、症状がほとんどない状態を長期間維持することは十分可能です。
📋 乾癬は完治するのか?医学的な見解
結論から言えば、現在の医学において乾癬を根本から完全に治す(完治させる)方法は確立されていません。乾癬は「慢性疾患」に分類されており、糖尿病や高血圧と同様に、一度発症すると長期にわたって付き合っていく必要がある疾患です。
しかし、「完治しない」という事実は、「症状が改善しない」あるいは「良くなることはない」という意味ではありません。適切な治療と生活習慣の見直しによって、症状を大幅に軽減したり、長期間にわたって皮膚症状がほとんどない状態(寛解状態)を維持したりすることは十分可能です。
医学的には、乾癬の治療目標は「完治」ではなく「寛解(かんかい)の維持」と「QOL(生活の質)の向上」に置かれています。寛解とは、症状が著しく軽減または消失した状態を指します。治療によって寛解状態を達成し、それを長期間保つことが現代の乾癬治療における最大の目標です。
一方で、ごく少数のケースではありますが、特定の条件下で乾癬の症状が長期間ほとんど現れなくなるという報告もあります。特に軽症の乾癬や、発症初期に適切な治療を受けた場合、あるいは悪化因子(後述)をうまくコントロールできた場合などは、長期間の「実質的な寛解」が得られることもあります。こうした経験をした方が「完治した」と感じるケースもあるでしょう。
ただし、寛解状態にあってもその後再び症状が現れる(再燃・再発)可能性は常に存在します。そのため、自己判断で治療を中断することは推奨されておらず、症状が落ち着いている時期も定期的に医師の診察を受けることが大切です。
Q. 乾癬の症状を悪化させる主な要因は何ですか?
乾癬の主な悪化因子には、精神的ストレス、扁桃炎などの感染症、過度の飲酒、喫煙、肥満、リチウムやβブロッカーなどの特定の薬剤、引っ掻き傷や日焼けといった皮膚への外的刺激が挙げられます。これらを特定・回避することが症状の安定的なコントロールに非常に重要とされています。
💊 乾癬が「完治した」と感じるケースとは
「完治した人はいるのか」という問いに対して、医学的な意味での「完治」ではなく、患者さんが主観的に「完治したと感じる状態」になるケースについて考えてみましょう。
実際に乾癬の患者さんの中には、「数年間まったく症状が出ていない」「皮膚がきれいな状態をキープできている」という方がいます。このような状態は、医学的には「長期寛解」と呼ばれますが、患者さん本人や周囲から見れば「完治した」と感じるのも無理はありません。
長期寛解が得られやすいとされるケースとして、以下のような状況が挙げられます。
まず、乾癬の程度が軽症であった場合です。皮膚症状が限られた部位にのみ現れている軽症の乾癬では、外用薬による治療だけで症状をほぼゼロに近い状態に持ち込めることがあります。そのまま長期間再発しない方も一定数存在します。
次に、悪化因子となっていたものを特定・除去できた場合です。たとえば、扁桃炎を繰り返すことで乾癬が悪化していた方が扁桃摘出手術を行ったところ、その後乾癬の症状が出なくなったという事例が報告されています。特に「滴状乾癬」と呼ばれるタイプでは、咽頭(のど)への感染が引き金になることが多く、感染因子を除去することで長期的な改善につながることがあります。
また、生活習慣の大幅な改善によって症状が落ち着くケースもあります。肥満の解消、禁酒、ストレス管理の徹底などを組み合わせることで、薬の量を減らしながらも症状をほぼ抑えられる方もいます。
さらに、近年急速に発展した生物学的製剤による治療では、これまで難治性とされてきた重症乾癬でも劇的な改善が見られるケースが増えています。「皮膚がほぼきれいな状態(PASI 90〜100達成)」になる患者さんも珍しくなく、こうした経験をした方が「完治したと感じた」と表現することも理解できます。
いずれにしても、乾癬の状態が良くなったとき、治療を自己判断で中断してしまうと再発リスクが高まります。主治医と相談しながら、維持療法の計画を立てることが重要です。
🏥 乾癬の症状が改善しやすい人・しにくい人の違い
乾癬の経過や治療への反応は個人差が大きく、同じ治療を行っても効果に差が出ることがあります。症状が改善しやすいケースと、そうでないケースにはどのような違いがあるのでしょうか。
症状が改善しやすいとされる傾向として、まず「発症年齢が若い(特に若年発症でない)場合」が挙げられます。中年以降に初めて発症した場合、免疫系のバランスが比較的安定していることもあり、治療への反応が良いことがあります。ただし、若年発症でも適切な治療によって十分な改善が見込めます。
「乾癬の重症度が低い(軽症〜中等症)」場合も、外用薬や光線療法などの標準的な治療で対応しやすく、症状のコントロールがつきやすい傾向があります。
「悪化因子を特定・管理できている」ことも重要な要素です。自分の乾癬がどのような状況で悪化するかを把握し、それを回避できている患者さんは、そうでない方と比べて症状が安定しやすいとされています。
一方、症状が改善しにくいとされる傾向としては、「乾癬性関節炎を合併している」ケースがあります。関節症状を伴う乾癬は皮膚症状のみの乾癬と比べて治療が複雑になることがあります。
「メタボリックシンドローム(肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症)を合併している」場合も、炎症が体全体で起きやすい状態にあるため、乾癬の症状が出やすく、治療効果が出にくいことがあります。
「喫煙・過度の飲酒習慣がある」場合も、乾癬の炎症を促進する方向に働くため、治療効果が十分に得られないことがあります。喫煙はとくに掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と呼ばれるタイプの皮膚炎との関連が強いとされており、禁煙が症状改善に大きく寄与することがあります。
「強いストレスが継続している」状況も、免疫系に影響を与え、乾癬の悪化につながることが知られています。精神的なストレスが引き金となって発症・悪化するケースは珍しくなく、メンタルヘルスのケアも乾癬管理の一部として重要視されています。
これらの要因を踏まえると、乾癬の改善には治療薬の使用だけでなく、生活全体を見直すことが不可欠であることがわかります。
Q. 乾癬に対する生物学的製剤とはどのような治療法ですか?
生物学的製剤は、乾癬の炎症に関わるTNF-α・IL-17・IL-23などの特定のサイトカインを標的とした注射・点滴製剤です。従来の治療が不十分だった中等症〜重症の乾癬に高い有効性を示し、皮膚がほぼきれいになる「PASI 100」を達成する患者さんも多く報告されています。
⚠️ 乾癬の主な治療法
乾癬の治療法は大きく「外用療法」「光線療法」「内服療法」「生物学的製剤」の4つに分けられます。重症度や病型、患者さんのライフスタイルや合併症の有無などを考慮しながら、最適な治療法を選択・組み合わせていきます。
🦠 外用療法
外用療法は乾癬治療の基本です。軽症から中等症の乾癬に用いられ、皮膚に直接塗る薬を使います。主に以下の2種類が使用されます。
ステロイド外用薬は、抗炎症作用によって皮膚の赤みや鱗屑を抑えます。効果の強さ(ストロングクラスからウィーククラスまで)に応じて複数の製品があり、患部の状態や部位に合わせて使い分けます。長期使用による皮膚萎縮などの副作用があるため、適切な使用が必要です。
活性型ビタミンD3外用薬は、皮膚細胞の過剰増殖を抑える効果があります。ステロイドと組み合わせた配合外用薬も開発されており、1日1回の塗布で効果が得られる使いやすさから、広く使われています。
👴 光線療法
光線療法は、特定の波長の紫外線を患部に当てることで免疫細胞の過剰な活性化を抑える治療法です。中等症から重症の乾癬に対して用いられることが多く、外用薬だけでは効果が不十分な場合に追加されます。
現在主流となっているのは、「ナローバンドUVB療法」と呼ばれる波長311nm付近の紫外線Bを照射する方法です。比較的安全性が高く、外用薬との併用でも効果が期待できます。週2〜3回の通院が必要なため、継続しやすい環境を整えることが大切です。
また、「エキシマライト療法」は乾癬の患部だけにピンポイントで紫外線を当てることができるため、体の一部にしか症状がない方に向いています。
🔸 内服療法
外用薬や光線療法だけでは十分な効果が得られない場合や、広範囲に病変がある場合などに内服薬が用いられます。代表的なものとして以下があります。
シクロスポリンは免疫抑制剤で、乾癬の原因となるT細胞の活性化を抑える効果があります。効果の発現が早い一方で、腎機能への影響や血圧上昇などの副作用があるため、長期使用には注意が必要です。
メトトレキサートは葉酸代謝拮抗薬で、皮膚細胞の過剰増殖と炎症を抑えます。乾癬性関節炎にも有効とされています。肝機能への影響などに注意しながら定期的な血液検査を行いつつ使用します。
エトレチナートはビタミンA誘導体で、皮膚細胞の分化・増殖を調節します。特に膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症に有効です。催奇形性があるため、妊娠可能な女性には使用が制限されます。
アプレミラストはPDE4阻害薬と呼ばれる比較的新しい内服薬で、炎症に関わる物質の産生を抑えます。生物学的製剤ほどの劇的な効果は期待しにくいこともありますが、注射ではなく内服で使えることが利点です。
💧 生物学的製剤
生物学的製剤は、乾癬の炎症に直接関わる特定のサイトカインやその受容体を標的とした薬剤で、注射や点滴によって投与されます。従来の治療では効果が不十分だった中等症〜重症の乾癬に対して、非常に高い有効性を示すことが多く、乾癬治療に革命をもたらしたと言われています。
TNF-α阻害薬(アダリムマブ、インフリキシマブ、エタネルセプトなど)は、炎症に関わるTNF-αという物質を阻害します。乾癬性関節炎にも有効です。
IL-12/23阻害薬(ウステキヌマブ)は、インターロイキン12・23を同時に阻害することで炎症を抑えます。投与頻度が少ない(最初の2回以降は12週に1回)ことが特徴です。
IL-17阻害薬(セクキヌマブ、イキセキズマブ、ビメキズマブなど)は、乾癬の炎症において中心的な役割を担うインターロイキン17を阻害します。高い有効性を示す薬剤が多く、皮膚症状がほぼ消える「PASI 100」を達成できる患者さんも多く報告されています。
IL-23阻害薬(グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブなど)は比較的新しいクラスの薬剤で、高い有効性と比較的良好な安全性プロファイルが特徴です。投与間隔が長く(多くは12週に1回)、患者さんの負担を軽減できます。
生物学的製剤は効果が高い一方で、感染症(特に結核)のリスクや高額な治療費(ただし高額療養費制度や患者支援プログラムが利用可能)といった課題もあります。使用前には感染症のスクリーニング検査が必要です。
🔍 生活習慣の改善が乾癬に与える影響
薬物療法と並んで、日常生活における習慣の見直しは乾癬の症状管理において非常に重要な役割を果たします。「完治した人」の多くが、薬の効果だけでなく生活習慣の改善と組み合わせて良好な状態を保っていると言われています。
✨ 体重管理(肥満の解消)
肥満は乾癬の発症リスクを高めるだけでなく、既存の症状を悪化させる要因の一つです。脂肪組織から放出されるアディポカインという物質が炎症を促進することが知られており、BMI(体格指数)が高い患者さんほど乾癬の症状が重い傾向にあることが報告されています。
実際に、肥満の乾癬患者さんが減量に成功すると、薬の効果が上がりやすくなるという研究データも存在します。生物学的製剤の効果は体重によって影響を受けることがあるため、適正体重の維持は治療効果を最大限に引き出すためにも重要です。
📌 禁酒・節酒
飲酒は乾癬の悪化因子として広く認識されています。アルコールは免疫機能に影響を与え、乾癬に関わる炎症性サイトカインの産生を増加させることが示されています。また、飲酒は肝臓に負担をかけるため、肝毒性のある内服薬(メトトレキサートなど)と併用できなくなるという問題もあります。
乾癬患者さんの研究では、飲酒量が多い人ほど治療に対する反応が悪い傾向があることがわかっています。完全な禁酒が難しい場合でも、できる限り飲酒量を減らすことが症状改善につながります。
▶️ 禁煙
タバコに含まれるニコチンや化学物質は免疫系に影響を与え、乾癬の炎症を悪化させることがわかっています。特に掌蹠膿疱症(手のひらや足の裏に膿疱が生じる病態)との関係が強く、喫煙者に多く見られます。乾癬の症状改善と全身の健康のためにも、禁煙は強く推奨されます。
🔹 ストレス管理
精神的なストレスは乾癬を発症させたり悪化させたりする重要な因子です。ストレスを受けると、体内でコルチゾールなどのストレスホルモンが分泌され、これが免疫系のバランスを崩すことで炎症が促進されます。
ストレス管理の方法としては、十分な睡眠の確保、適度な運動、瞑想やヨガ、趣味の時間を作ること、信頼できる人との会話などが有効です。必要に応じて心療内科やカウンセリングを活用することも一つの選択肢です。乾癬によって自己イメージが傷ついたり、社会活動が制限されてしまうことでうつ状態になるケースもあるため、精神的なサポートは乾癬の総合的な管理において欠かせない要素です。
📍 食事の工夫
特定の食事療法が乾癬を治すというエビデンスは現時点では十分ではありませんが、抗炎症作用のある食事パターンが症状改善に貢献するという報告は複数あります。
地中海食(野菜・果物・全粒穀物・魚・オリーブオイルを多く摂り、赤身肉や加工食品を控える食事)は炎症を抑える効果があるとされ、乾癬患者さんへの有益性を示す研究があります。オメガ3脂肪酸(魚油に多く含まれる)も抗炎症作用があるとされており、青魚(サバ、イワシ、サーモンなど)を積極的に摂ることが勧められることがあります。
一方で、赤身肉の過剰摂取、精製糖質(白砂糖、白米、白パンなど)の多い食事、加工食品、ファストフードなどは炎症を促進する可能性があるとされており、控えめにすることが望まれます。
💫 スキンケアの徹底
乾癬の皮膚はバリア機能が低下しており、乾燥しやすい状態にあります。乾燥は乾癬の症状を悪化させることがあるため、日常的な保湿ケアが重要です。入浴後は時間を置かずに保湿剤を塗ること、刺激の少ない低刺激性の石けんやシャンプーを使用すること、熱すぎるお湯を避けることなどが基本的なスキンケアのポイントです。
また、皮膚への外的刺激(引っ掻き傷、摩擦、日焼けなど)は「ケブネル現象」と呼ばれる刺激を受けた部位に新たな乾癬が出現する反応を引き起こすことがあるため、注意が必要です。衣類は皮膚に刺激の少ない素材を選ぶことも有益です。
Q. 乾癬の改善に生活習慣の見直しは効果がありますか?
乾癬の症状管理において生活習慣の改善は非常に重要です。肥満の解消により生物学的製剤の治療効果が高まることが研究で示されており、禁酒・禁煙は炎症性サイトカインの産生を抑える効果があります。また、地中海食や青魚に含まれるオメガ3脂肪酸の摂取、十分な睡眠や保湿ケアも症状コントロールに有益とされています。
📝 乾癬と上手に向き合うための心構え
乾癬は「完治しない」という現実と向き合いながら長期にわたって治療を続ける必要がある疾患です。しかし、適切な治療と生活習慣の改善によって、症状をしっかりコントロールしながら充実した日常生活を送っている方は非常に多くいます。乾癬と上手に向き合うために、いくつかの大切な心構えをお伝えします。
🦠 「完治」を目指すのではなく「良好な状態の維持」を目標に

「完治」という目標を設定してしまうと、症状が再発したときに大きな失望感を覚えてしまいます。乾癬の治療目標を「症状をできるだけ少なく保ち、日常生活への影響を最小限にすること」に置くことで、治療へのモチベーションを維持しやすくなります。「完全にゼロにする」ではなく「うまくコントロールする」という考え方が乾癬との長期的な付き合いにおいては大切です。
👴 治療を自己判断で中断しない
乾癬の症状が落ち着いてくると、「もう治ったから薬は必要ない」と感じて治療を中断してしまう方がいます。しかし、自己判断での治療中断は再燃のリスクを高めます。症状が改善したと感じたときこそ、主治医に相談のうえ適切な維持療法について話し合うことが重要です。
🔸 主治医とオープンなコミュニケーションを取る
乾癬の治療には多くの選択肢があり、一つの治療法で効果がなくても別の方法で改善するケースは珍しくありません。「この薬は効いていない気がする」「副作用が気になる」「もっと効果的な方法はないか」といった疑問や不安は、遠慮せず主治医に伝えることが大切です。また、新しい治療薬が続々と承認されている分野でもあるため、最新の治療情報について積極的に情報収集することも有益です。
💧 患者会や支援団体を活用する
乾癬と診断されると、外見上の変化から精神的なダメージを受けたり、社会活動が制限されてしまったりすることがあります。同じ乾癬を持つ人々が集まる患者会や支援団体では、病気に関する情報共有だけでなく、感情的なサポートも得られます。日本にも「日本乾癬患者連合会」などの団体があり、オンラインでの情報収集も可能です。
✨ 乾癬に関連する合併症にも注意を払う
乾癬は皮膚だけの問題ではなく、全身性の炎症疾患としての側面があります。乾癬の患者さんは心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中)、糖尿病、メタボリックシンドローム、抑うつ、炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)などのリスクが一般の方より高いことが知られています。
特に乾癬性関節炎は乾癬患者さんの約20〜30%に合併するとされており、発見が遅れると関節が破壊されてしまうこともあります。関節の痛みや腫れがある場合は、早めに皮膚科または整形外科・リウマチ科に相談することが大切です。
乾癬の治療と並行して、これらの合併症の予防・管理にも目を向け、定期的な健康診断を受けながら全身の健康維持に努めることが、長期的な生活の質の向上につながります。
📌 専門の医療機関への受診を継続する
乾癬の治療は急速に進歩しており、数年前には選択肢がなかった治療法が今では利用できるようになっているケースも多くあります。長年同じ治療を受けていて効果が不十分だと感じている方や、「新しい治療を試してみたい」という方は、乾癬の診療経験が豊富な専門医や、乾癬を専門に扱う医療機関に相談することも有益です。セカンドオピニオンを求めることも、患者さんの権利として認められています。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、乾癬と診断されてから長期間にわたり症状に悩まれ、「もう治らないのでは」という不安を抱えてご来院される患者様が多くいらっしゃいます。確かに乾癬の完全な根治は現時点では難しいものの、生物学的製剤をはじめとする治療法の進歩により、皮膚がほぼきれいな状態を長期間維持できる方が以前と比べて大幅に増えており、「完治したと感じる」という喜びの声をいただくことも珍しくありません。一人ひとりの生活背景や合併症の状況に合わせた治療プランをご提案できますので、諦めずにぜひ一度ご相談ください。」
💡 よくある質問
現在の医学では、乾癬を根本から完全に治す方法は確立されていません。ただし、「完治しない」は「良くならない」という意味ではありません。適切な治療と生活習慣の改善により、症状がほとんどない状態(寛解)を長期間維持できるケースは多くあります。治療目標は「完治」ではなく「寛解の維持とQOLの向上」です。
医学的な完治ではありませんが、数年間まったく症状が出ない「長期寛解」を達成し、完治したと感じる患者さんは実際にいます。特に軽症の場合や悪化因子を除去できた場合、また生物学的製剤で皮膚がほぼきれいな状態(PASI 100)になった場合などに、こうした経験をされる方が多いです。
主な悪化因子として、ストレス、感染症(扁桃炎など)、過度の飲酒、喫煙、肥満、特定の薬剤(リチウム・βブロッカーなど)、皮膚への外的刺激(引っ掻き傷・日焼けなど)が挙げられます。これらをできる限り回避・管理することが、症状コントロールにおいて非常に重要です。
生物学的製剤は、乾癬の炎症に直接関わるサイトカイン(TNF-α・IL-17・IL-23など)を標的とした注射・点滴製剤です。従来の治療で効果が不十分だった中等症〜重症の乾癬に高い有効性を示します。
自己判断での治療中断はお勧めできません。症状が改善した状態でも、治療をやめると再燃・再発するリスクが高まります。症状が落ち着いているときこそ、主治医に相談のうえ適切な維持療法について話し合うことが大切です。
✨ まとめ
乾癬は現在の医学において完全に根治させる方法はまだ確立されていませんが、「症状がほとんどない状態(寛解)を長期間維持する」ことは十分に可能です。近年の生物学的製剤をはじめとする治療法の進歩により、かつては難治性とされてきた重症の乾癬でも、皮膚がほぼきれいになるほどの改善が得られるケースが増えています。
「乾癬が完治した」と感じている方の多くは、適切な医療を受けながら生活習慣の改善にも取り組み、長期寛解を達成している方々です。そのためには、主治医との良好なコミュニケーションを保ちながら治療を継続し、自己判断で治療を中断しないこと、そして悪化因子(肥満・飲酒・喫煙・ストレスなど)を可能な限りコントロールすることが重要です。
乾癬は慢性疾患であることに変わりはありませんが、「うまくコントロールすることで日常生活を豊かに過ごすことができる疾患」でもあります。症状や治療に不安を感じている方は、ぜひ皮膚科専門医への相談を検討してみてください。
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📚 参考文献
- 日本皮膚科学会 – 乾癬の定義・分類・病態・治療ガイドラインに関する情報。尋常性乾癬・膿疱性乾癬・乾癬性関節炎などの病型分類、外用療法・光線療法・生物学的製剤を含む治療選択肢の根拠として参照
- 厚生労働省 – 乾癬を含む難治性皮膚疾患に関する行政情報、生物学的製剤の承認状況、高額療養費制度など医療費支援制度に関する情報の根拠として参照
- PubMed – 乾癬の寛解維持・生物学的製剤の有効性(PASI 90/100達成率)・肥満や飲酒・喫煙が治療効果に与える影響・地中海食や生活習慣改善に関する国際的な臨床研究・エビデンスの根拠として参照
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
